里恵の遺書・美玖の手記二
私の人生は後悔が先にたつようなくだらないものでした。幾度となく死の道を選びましたが、その全てがことごとく、私の持ちうる使命によって打ち砕かれました。自身の存在と歴代の亡霊が自ら死ぬことを許さなかったのです。
その全貌を親族であるあなた方は知る由もないでしょうけれど、しかしながら、私の歴史書を直接手渡した美玖であれば知ることとなるでしょう。
私は死期を悟れますので、あらかじめ遺産や私物は全て燃やし、灰にしました。それらのものは、これからの未来を歩む親族の方々には不必要なものだからです。私自身、仕事をしていたわけでも、貯金があるわけでもないので、財産も残念ながら残りません。唯一、手元に残したのはこの遺書と孫に渡した自身を綴った歴史書のみです。
生きる気力も意味も持ち合わせていない私ですので、これ以上遺書に書き残すことはありません。私の存在意義はこの遺書を読んだどなたかがいつか証明してくれると信じています。
浅間 里恵
美玖の手記二
私はこの遺書を始めて読んだ時、きっと祖母は私には想像もつかない、熾烈な人生を送ってきたのだと知りました。あの人の目を見る度、どうしてこの人はこんなにも生気が宿っていないのだろう。この人の目はどのような像を映しているのだろうって、そんなことを考えていましたが、私がそのように思う理由の一端が、この遺書に記されているのだと思いました。私が今さらあの人に対してどうこうできるわけではないですが、それでも、あの人を知ることは私自身の選択肢を変えるものだと、私は考えました。
私はこれから、祖母の書いた書物を読むことにします。