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第95話 ブルーの秘密

 「で、主様よ、これからどうするんじゃ?」

 「ああ、まずは今のままだと、ブルー、というかあの機械類の所へ行くこともできない。」

 「ブルーが、いたんですか?」

 「いた、というよりも、立体映像が出た、かな。」

 「あれはワシらというか、カスミのようなものか?」

 「ちょっと違う、かな。あの立体映像は実体がない。空気中に映像を映し出しただけのようなものだ。」


 「では、あの奇妙な圧力やワシや雪子の調子が悪くなったのは?」

 「恐らくだけど、電磁波、みたいなもんだろう。」

 「電磁波?」

 「というと、レーダーに使っている電波か?」

 「ああ、地場に影響を及ぼす特殊な波長と出力で調整しているんだろう。」


 概ね間違ってはいないと思う。

 あの壁みたいなものは、電磁シールドと言ったところだろう。

 電磁力で疑似的に重力魔法のような現象を起こしているかも知れない。


 サダコや雪子が気分悪くなったのは、単純に電磁波のせいだろう。

 霊体、あるいは精神体であるサダコや雪子にとってはこの上なく相性の悪い要素だ。


 電磁波は人体にも影響を及ぼすので、あの場に長く留まることは危険だ。

 下手をすると細胞が沸騰しかねないからだ。

 撤退を即決したのもそのためだ。


 「電磁波を無効化するには、元の電力を切るか、カウンターをあてるか、だと思うんだが。」

 「しかし、そんなものがあるなら、それ以外にも防御をかけている可能性もあるんじゃ?」

 「そうだな。意外と用心深い感じだし、電力を使わない防御方法も用意している可能性は高いな。」

 「鉄壁の防御ってわけか。タカさん、何か手はあるのか?」

 「うーん、そうだなぁ。」


 ちょっと違った視点からの意見も聞いてみようと思い


 「なぁ、フェスター。」

 (何だい?)

 「あの電撃魔法で、電磁波を何とかできそうか?」

 (どうだろうな。あの手の物理現象はおいらも知らないから、何ともいえないかな。)

 《はははーバカめ。こいつらにはそんなもん理解できるわけねーだろうよ。》

 「お、ウリエル、お前ならできるのか?」

 《できねーよ。》

 「何だよ、できるみたいに出てきてそれかよ。」

 《だけどな、電磁波云々はしらねぇけど、それ以外の防御ってのは良い読みだぜ。》

 「やっぱり、あるのか、それ。」

 《へへーん、ったりめーだ。アタイをなめんなよ。その防御ってのは簡単に突破できるぜ。》

 「それって……」

 『その先は私から説明します。』

 「ジーマさん。」


 ジーマの話はこうだ。


 ブルーはこの星のエネルギー抽出を何らかの方法で成功させていたそうだ。

 そのエネルギーはブルー本体を防御するために使われているらしく、そのせいでブルー本体に魔法や物理的な攻撃は一切通用しない。

 唯一その防御壁を消す方法は、月の欠片をあてる事のみだそうだ。


 「つまり、その防御壁はジーマさんの力を使っている、と。で、それを解除するには月の欠片が必要、と。」

 『はい、その通りです。』

 「しかし、月の欠片か、そういえば……」

 「主様、あれの事ではないのか?」


 俺はバックから、サダコが居た世界で入手した月の欠片を取り出した。


 「あったな、月の欠片。これで解除はできるってことか。」

 『そうです。それは元々この地球のエネルギーの塊なのです。単なるエネルギーではなく、使う時の状況に応じて最適な効果を付加する、私達のもう一つの形なのです。』

 「へ、へぇー……」

 『かつて、ある者が私達この星を憂いて、その仕組みを作り上げたそうです。』


 正直いまいち理解できない部分もあるけど、これで一つの問題は片付く。

 となると、残る問題は対電磁波という事か。


 「やはり一番手っ取り早いのは動力源の破壊だよな。」

 「でもさ、そういうのってバックアップがあったりするんじゃないの?」

 「カスミ、詳しいな。」

 「ま、アタシはこう見えても工業高校の電子科出身だからね。」

 「おお、意外な過去。」

 「こうぎょうこうこう?でんしか?とと様、それ、何?」

 「あはは、後で教えてあげるよ。」


 さて、あの電磁波が純粋な電磁波なのかどうかもわからないが、似たような性質ではあると思う。

 物理的な障害になっている以上、これは無くさないといけないが、その正体がわからない。

 だけど、あれが展開されていたのって、あの部屋の中だけだったな。

 通路は何ともなかった。それに、最初から展開されていた訳じゃない。

 あのホログラムが現れた時と、ほぼ同じ時に展開されたのかもしれない。

 となると……


 「電磁波そのものに対してどうにかしようと思うのが、そもそも間違いなのかもしれないな。」

 「というと?」

 「例えばだ、俺のブラックホールでレーダー波は吸収したけど、レーダー波そのものは出続けていたわけだろう?」

 「それはそうですね。発信源はそのままなのですから。」

 「となると、普通に考えればそれを排除しようとしたら発信源を叩くよな。ワイルドヴィーゼルってのはそれが目的だったしな。」

 「しかしじゃ、あの部屋にそれらしい物はあったかの?」


 「何もあからさまな物体じゃなくてもいいわけだ。例えば壁そのものがフェーズドアレイレーダーみたなモノかも知れない。」

 「フェーズド……何?」

 「あ、要するにだな、このビークルについているレーダーはアンテナを使っているだろう。そのアンテナを小さくして、それをたくさん並べるんだよ。」

 「小さなレーダーアンテナを?」

 「それを壁一面に配置するんだ。レーダーとして使う場合はその一個一個のアンテナが走査するから隙がなくなる。ただ、その面方向しか見られないから、360度見ようと思ったら少なくとも4面の壁が必要になるけどな。」

 「それと同じ仕組みで、壁一面がその電磁波の発生源だと?」

 「そんな気がするだけ、なんだけど、あながち間違いでもないと思う。」

 「じゃあ、アンタが暴れれば済む話ってことじゃない?」

 「そういう事だな。結局は力業ってことか。」


 ま、案ずるよりって事か。

 これで打開策は見えたな。

 ところで


 「ジーマさん、結局、ブルーってのは何なんだ?」

 『ブルーは元々、環境開発用に作られたスーパーコンピューターに管理用AIを組み込んだものです。』

 「そんなものが、どうしてこんな訳の分からない事をやりだしたんだ?」

 『管理用AIを開発したのは軍部でした。ですので軍部のネットワークとも繋がっていたのです。その軍部のコンピューターにウィルスとしてブルーが侵入し支配することなったのです。』


 「それにしても、色々と他にも変な知識を持ってたような気がするんだけど。」

 『開発に携わった人間の影響かと思われます。個人の思想、宗教観、世界感、願望などを、プログラム段階でAIに吹き込んだのかも知れません。

 あるいは、後にウィルスによって思考を曲げられた可能性もあります。』

 「あー、そういう事か。結局、元凶は人間ってことだな、なんてこった。」


 「タカさん、結局どういう事だ?」

 「俺たちの敵は、元をたどれば一人の人間だったかもしれない、という事だよ。」

 「何だよ、それ……」

 「恐らくはかなり偏った思想の持主みたいだな。もっとも、あんな出来事があった後だ。一概にそれが悪とも言えないが、結果として人類の敵になったって事だな。

 そう考えりゃ、ブルーも被害者っていう見方もできなくはない、かな。」

 「俺たちは、結局人間によってここまで追い込まれたってことか……」

 「いずれにしても実行したのはブルーそのものだ。倫理観など欠片もない機械だからな。酌量の余地はないな。」


 ブルーが何者なのかってのは、この際もう関係ない事ではある。

 ただ、ここまで人間に対して敵意をむき出しにしている理由は知りたいと思うのは当然だろう。

 だが、そういう疑念や心配もこれで終わりにしないとな。


 「じゃあ、打開策も見えたことだし、行くか。」

 「え、もう行くのですか?」

 「ああ、少し休憩もできたし、あまり間を開けても良くないだろうしな。」

 「タカさん、今度は俺たちも行くよ。もうアーマーもいないみたいだしな。」

 「そうだな、このままビークルでHQ入口まで行こうか。」


 こうして、ブルーとの本当の最終決戦に挑んだ。



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