表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/121

第92話 思わぬ苦戦

 前面にブラックホールを展開し、敵の前線から1キロほどの距離まで近づくことができた。

 ここからどれだけ近づけるかが、こちらの作戦の成功率を左右する。

 慎重に、音も極力ださずに、ゆっくりと進む。

 手前500メートル、まだいけるか。

 300メートル、200メートル。

 ここいらが限界のようだ。


 「ケンシロウ、いいか、いくぞ。」

 「ああ、合図してくれ。」

 「カウントダウンいくぞ、サダコ、雪子もいいな。」

 「うむ。」

 「うん。」

 「3、2、1、GO!」


 ブラックホールを消し、同時にケンシロウが敵兵器へ向けてレーザーを打ち込む。

 突然現れた俺たちに、敵の対応は若干遅れた。

 俺とサダコ、雪子はそのまま走り突き進む。

 俺の魔法と雪子の魔法で、一番の脅威と思われるガトリング砲を中心にある程度は敵戦力を無力化できた。

 やがてケンシロウからの砲撃は止んだ。

 もう弾切れらしいが、充分だ。


 ケンシロウは一目散に撤退する。

 追撃しようとする人型アーマーは可能な限り俺が撃破する。

 その間にも、雪子が魔法で敵兵器を抑える。

 通常兵器さえ無力化できればこっちのもんだ。

 そう思っていた。


 通常兵器群の無力化はできた。

 残るは獣型と人型のアーマーだ。

 ケンシロウはどうやら逃げ切れたようだな。

 アーマー達をファントムで切り裂きながら、さらに進んでいく。

 と、突然、光る空気の塊のようなものが迫ってきた。


 「ちッ!ウェンディ!グノーメ!」


 咄嗟に水と土の魔法を合わせて壁を作った。

 その壁は破壊されたものの、俺たちにダメージは無い。

 これはもしかすると、衝撃波か?

 光る空気の塊が放たれた方を見ると、人型アーマーとは違う、まんま人間のような影があった。

 距離にして10メートルほど先。

 HQの入口らしいところに、その人らしきものは佇んでいた。

 が、それを視認した俺はそこから動かなかった。

 いや、動けなかった。


 「サ……クラ?……」


 その人影は、サクラだった。

 いや、サクラと違って髪は銀髪だし、そもそもサクラがここに居るわけがない。

 サクラらしき者は、無言のままこちらを冷たい目で見つめ、再び手を上にあげ、振り下ろす。


 「主様!何をしておる!」

 「あ?え?」


 サダコが神通力なる力で、衝撃波を逸らしてくれた。


 「しっかりするのじゃ、あれはサクラではない。」

 「あ、ああ……」


 まだ、思考が追い付かない。

 というか、混乱している。

 いや、わかってる。サクラがここに居るわけがない。

 というか、アレがサクラの訳がない。

 分かっている。だけど……


 「人間ごときが、よくもここまで来れたものだな。貴様がタカヒロか。」

 「な、なぜ俺の名前を?」

 「貴様がそれを知る必要はない。」

 「お前は……?」

 「私はラヴァ。この星を統べるブルーの分身体。」

 「お前が、ラヴァ……」


 なんの冗談なんだ、これ。

 何でこいつがサクラと同じ容姿なんだ。


 「これ以上、貴様らに好き勝手させるわけにはいかない。この星は私が救い、統べる。」

 「お、お前に…この星が救えるのかよ。」

 「貴様がそれを知る必要はない。」

 「ふざけんな!星を救う行為を妨害しているのは、お前らじゃないか!」

 「それは違う。そもそもこのような状態にしたのは人間だ。」

 「それとこれとは別だろうよ。このままじゃ星そのものが消えるんだぞ!」

 「それがどうした。人間さえいなければ、消えることもあるまい。」


 だめだ、こいつは根本的な部分でこの星の危機を理解していない。

 人間云々の話じゃないって所を分かろうともしていない。

 やはり人工知能は人工知能、想像力や発想力を持ちえないのか。


 「いいか、この星の危機は人間云々の話じゃない。二つに分かれた世界を一つに戻さない限り、星は消滅を待つだけなんだぞ?」

 「それは人間の勝手な解釈だ。人間が自分勝手な地球の汚染をしなければ、地球は元に戻る。」


 アトモスフィアと同じ事を言っている。

 ブルーとかいう親玉も、きっと同じなんだろうか。

 これは、これ以上話をしても堂々巡りだろう。

 こいつを撃破するしかない。

 しかない、のだが……


 ちくしょう。

 何だって、よりにも寄ってサクラの姿なんだ。

 どんな嫌がらせなんだよ、これ。


 「どのみち、貴様はここで潰す。貴様の存在は捨て置けぬ。」


 くそ、俺にあいつを攻撃することができるのか。

 分かってはいるが、サクラだぞ。

 今の俺にはかけがえのない存在、大切な人だぞ。


 「主様!しっかりせい!見た目に惑わされるでない!」

 「ああ、わかっている!けど……」


 無情にも、ラヴァは攻撃してくる。

 一撃一撃が、アトモスフィアより迅く、重い。

 それ以上に、サクラの姿が俺を殺そうとしている事に心が……痛む。

 こっちの攻撃が鈍る。


 「その程度で、よくここまで来れたものだ。こんな弱い生物が私に挑むなど、人間は愚かだ。」

 「くっ!」


 防戦一方なってしまう。

 このままじゃ、こいつを撃破する事が出来ない。

 どうすればいいってんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ