表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/121

第90話 情報戦

 ケンシロウの元に帰ってきた俺は、ケンシロウとマイケルさんに入手した情報を全て開示した。

 スマホのようなデバイスがないので、写真のコピーはすべて手書きとなった。

 この作業だけで丸々一日を費やした。

 その間、やはりアーマーの襲撃は止まらなかった。


 どうやら製造拠点の危機に全世界からアーマーがこちらに集結しているような感じか。

 しかし、これはこれで討伐へ赴く手間が省けてこちらとしては助かる。

 何しろもう追加でアーマーが増産されることは無い、あとは減る一方なのだからな。


 迎撃戦、という事もあって俺たちもフルパワーで応戦している。

 とはいっても俺と雪子が主な戦力なのだが。

 そんな中でも雪子の暴れっぷりはすさまじかった。


 「あははは!壊れろ!壊れてしまえ!楽しいー!」


 雪子って、シヴァそのものだったよな確か。

 シヴァって、戦闘狂なのかな。

 ちょっと雪子が怖い。


 意外にもフランとカスミ、サダコも奮闘していた。

 驚いたのはサダコの補助もあったんだと思うけど、カスミがアーマーをどついて退けた事だ。

 何と言うか、皆も何某かの強化があったのかもな。


 さっきの情報では、アーマーは全世界に5000体ほど出回っているらしい。

 今この瞬間までに片づけたのはせいぜい300体ほどだ。

 まだまだ脅威は薄れているとは言い難いが、追々片づけるほかはない。


 襲撃の波が去ったようで、今は静かなものだ。

 情報整理をしていたマイケルさんとケンシロウがビークルの外にでてきた。


 「これはまた、凄まじいな。」

 「なんとか今は落ち着いてるな。しばらくは静かだろうよ。」

 「しかし、タカヒロさんひとりでこんなにもアッサリとこいつらを叩けるなんてな。やはり信じられないよ。」

 「まぁ、俺だけじゃなくてこの子も、だけどな。」

 「えへん。雪子頑張った。楽しかったよ。」

 「た、楽し……」

 「その子はタカヒロさんの娘さんですか?」

 「あー、違うと言えば違うし、そうと言えばそうかな?」

 「????」

 「あ、私はとと様のお嫁さんだよ!」


 これ、雪子、マイケルさんがさらに混乱するから止めておきなさい。


 「と、ともかく、今からレーダーを稼働しますので、皆さん中に入ってください。少し休みましょう。」

 「そうだな、腹も減ったし、少し眠いし。」

 「やたー、ご飯ご飯。」

 「あのご飯、意外と美味しいから好き。」

 「ほんにな。あれは驚いたの。」

 「あれ、美味いでしょう?ご先祖さんが開発したのを、曾お爺さんが改良して今の奴になったんだよ。」

 「ご先祖さん?俺はそんなの開発してないぞ?」

 「ヤマトって人さ、確かタカさんの息子さんだったよな。」

 「あいつ、そんな事を……」

 「ヤマトさんは、ある意味人類を救った人だな。俺も鼻が高いよ。」

 「そう、か……そうか。」


 ビークルの中で食事がてら休憩する。

 すると、マイケルさんはどうしてここにあるのか不明だが、ギターを取り出して弾きだした。


 「マイケルさんって、ギター弾くんだな。」

 「俺にとって唯一の楽しみなんですよ。みんなを元気づける事もできるしね。」

 「凄いな、上手いじゃないか。」

 「タカさんは何か楽器できるのか?」

 「俺もギター弾けるよ、少しだけどね。」

 「へー、一曲聞かせてくれよ。」

 「じゃあ、一曲だけ。」

 「それは楽しみだ。それじゃ、これ。」


 そう言って俺にギターを手渡すマイケルさん。

 普通のアコースティックギターだが、かなり弾きこまれている感じだ。

 ネックの握り具合もフレットの高さも俺に合ってて、音も良い。

 早速俺は一曲披露してみせた。


 皆聴き入ってくれた。

 弾き終わった後はみんな拍手してくれたよ。

 ちょっと照れくさい。


 「タカヒロさんも上手いんだな。驚いたよ。」

 「旦那様、カッコいい……」

 「意外な才能よね、凄いわ。」

 「ふむ、ホンにな、意外じゃ。」

 「とと様、カッコいい。」


 「良い曲だな。何て曲なんだ?」

 「これはな、“ポジティブ・フォワード”って曲なんだ。」

 「タカさんが作ったのか?」

 「いや、マイケルさんと同じ名前の人が作った曲だ。俺が大好きな世界的ロックギタリストだよ。」

 「俺と同じ名前、か。もしかして、俺の先祖だったりしてな。」


 そんな訳、と思うが、意外とそうかも知れない。


 「さて、人心地着いたところで、これからの事なんだが。」

 「タカさん、やはりあのヘッドクウォーターってところへ行くのだろう?」

 「そうだな。どうもそこが本丸のようだし、片づけるなら早急に手を打ちたいな。」

 「タカヒロさん、この車なら早くそこへたどり着ける。途中に仲間の拠点もあるから補給もできる。このまま行けるぞ。」

 「いや、それは有り難いが、あんたたちは良いのか?拠点ほったらかしになっちまうだろ?」

 「大丈夫さ、前にも言ったろ、俺やマイケルの代わりはいるし、一人二人抜けたところで大差ないよ。」

 「そう言ってもらえると、とってもありがたい。すまん、頼んでいいか?」

 「もちろんだ。なあ、ケンシロウ?」

 「ああ、その通りだよ、タカさん。」

 「恩に着るよ。」


 こうして、俺たちはそのままHQを目指すことになった。

 HQまでは砂漠地帯を含め、わりと起伏に富んだ地形を走破することになる。

 このビークルなら走行自体は問題はないが、不安なのは燃料と食料だ。

 マイケルさんの仲間がいる地点まで燃料がギリギリだという。

 そこにもまだ燃料は残っているらしいが、あまり融通もできないくらいの量らしい。


 そもそも、この世界はもう化石燃料が底をつきかけているんだそうだ。

 石油採掘はもちろん、製油もできないのでは当然なのだが、むしろ今まで残っている事の方が奇跡に近いといえる。

 そこで


 「あのアーマーの動力源って、使えないのか?」

 「そういう事、考えたことも無かったな。」

 「このビークルって、駆動は内燃エンジンとバッテリーのハイブリッド、両立駆動だよな。」

 「そうだ。駆動そのものはバッテリーだけでもできるな。」

 「なら、あの発電システムを組み込んじまえば行けるんじゃないか?」


 「しかし、俺はメカはてんでダメだよ。ケンシロウは?」

 「俺も機械は苦手だな。」

 「そうなのか……じゃあ、俺が何とかしよう。」

 「え?タカさん機械とかって弄れるのか?」

 「それほど詳しいってわけじゃないけどな。発電システムの仕組みはあの情報から得たし、基本、線をつなげて起動させられりゃいいわけだしな。」

 「よくはわからないけど、できるんだ。」

 「上手くいくかはわからんけど、やってみるさ。」


 外にでて壊したアーマーから発電システムを抜き取った。

 50ccのバイクのエンジン程度の大きさだ。重量は思ったほど重くないんだが、あの資料によるとこれでも相当な出力みたいだ。

 でもこれ、交流だな。ビークルのバッテリーに充電するには直流に変換しないといけないのか。

 極力、ビークルそのものには手を加えたくない。

 下手に改造したりすると何が起こるかわからないからだ。


 なので、バッテリーへ充電できればそれだけで済む話なんだが。

 発電システムとビークルのバッテリーの規格の差が大きい。

 まずは交流を直流に変換する必要がある。その上で電流電圧、出力をビークルの規格に合わせる必要があるな。

 ビークルの緊急整備用ツールキットにテスターがあるので出力の確認はできるしシンプルな構造で回路は作れるはずだが、はたしてその部品があるかどうか、だが。


 幸いなことにアーマーの残骸に全て使用できそうな部品があった。

 試行錯誤を経て、半日ほどで完成したよ。


 「毎度思う事だけどさ、アンタってもう何でもありなのね。」

 「いや、何でもって……」

 「普通のおっさんはさ、こんな事できないでしょうよ。日曜大工だって覚束ない人が多いのに。」

 「まぁ、こういうのが好きだし、仕事でもこういう知識や技術は必要だからな。年齢なりの蓄積ってやつだよ。」

 「旦那様、素敵すぎ。」

 「器用なもんじゃの。」

 「タカさん、あんた凄え、凄すぎるよ。」

 「ちょっと時間かかっちまったけど、これで燃料の心配はなくなったし、結果オーライだな。」


 「ケンシロウ、君、とんでもない人連れてきたんだな……」

 「ああ、俺もビックリだよ。あの人が俺のご先祖様……」


 さて、それじゃHQへ向けて出発だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ