第88話 快進撃
第7章最終話となります。
いよいよ次章、クライマックスとなります。
マイケルさん達の拠点を出て2日目。
大き目のトラックを改造したという戦闘・補給用ビークルでの移動だ。
ブルー側の兵器製造拠点の手前3kmほどの場所まできた。
ここに来るまでに、あのアーマーが襲撃してきたが全て撃破した。
雪子の魔力を温存するため、全て俺一人で破壊した訳だが。
「ケンシロウさん、俺は夢でも見ているのか?」
「な?信じられないだろう?。」
「ああ、たった一人だぞ?なんであんな事が出来るんだ?」
「魔法とか言っていたが、それ抜きにしてもちょっと次元が違うよな。」
マイケルさん達は驚愕の表情をしていた。
いままで数十人がかりでようやく1体のアーマーを足止めするのが関の山だったのに、たった一人で破壊してしまう人間がいるのを目の当たりにしたのだ。
信じられないのも無理はない。
とはいえ
俺としてもこのアーマーがこの程度の個体ばかりじゃないと感じている。
拠点を防御する個体は、もっと強力なはずだ。
慢心するにはまだ早い。
「タカさん、申し訳ないが俺たちはここまでが精いっぱいだ。」
「充分だよ、ありがとう。さ、あとは安全地帯で身を隠していてくれ。」
そういって俺たちはその場を後にした。
意外と大きな製造施設で、一つの王都程度の広さがある。
ここで部品から完成体まで一貫して製造しているみたいだが、そこは城壁もあり数メートル置きにアーマーが配置されている。
そして、案の定ここを守るアーマーは今までよりも大きく堅固な筐体だ。
「のう、主様よ。まずはあの中に入らねばならんのであろう?」
「そうだな。問題は入口がどこなのか、なんだが……」
「そこなの?あのアーマーとかいうのは眼中なし?」
「今の所はな。あれらは敵じゃない。」
「とと様、あたしはまだ戦っちゃダメ?」
「雪子はまだだよ。でも、この中ではいっぱい頑張ってもらうかもな。」
「えへへ、頑張る!」
「私も頑張る。」
「フランはカスミとサダコと一緒に行動な。お互い孤立しないように気を付けてくれよ。」
「うん。」
とはいえ、見る限り出入口のようなものはない。
ぐるりと囲む城壁みたいなものは完全に外界との接触をシャットダウンしているようだ。
城壁は綺麗な造りではなく、瓦礫などを積み上げて固めたような感じで、高さは10メートルくらいある。
アーマー達も、城壁の上から降ってくるように現れるから、恐らくは出入口は無いんだろう。
さて、どうするか、だが……
「よし、あれを使うか。」
「あれって、アーマーの残骸?」
「ああ、あれを積み上げて階段を作っちまおう。」
「作っちまおうって主様よ、あれは相当な重さではないか?」
「重さは関係ないよ。俺には技があるからな。みんなちょっと待っててくれよ。」
俺はあちこちに転がるアーマーの残骸を、片っ端からブラックホールで吸い込んでは城壁前に吐き出して積み上げた。
恐らくはこの辺に軍事工場があったんだろう。かなり古びたガラクタも一緒に。
面白いのは、ここは確か中国あたりだと思ったのだが、ロシア製はもちろん、ヨーロッパ製やアメリカ製の兵器の残骸も転がっていた。
驚くことにF-15やF-18、Su-35なんかもあった。
たぶん素材や部品取りの為に全世界から集積したのかもしれない。
あっちこっち走り回ってスロープ状に積み上げることができた。
その間にもアーマーの襲撃は止まらなかったので材料には事欠かなかったのはラッキーだな。
3時間かけてできた階段を登り、城壁の上に立つ。
「凄いね、ホントに工業団地みたいだわ。」
「これは、なかなか壮観じゃの。」
城壁内は本当に製造工場らしき建造物が集まっていた。
今この瞬間にも製造されているようで、物資運搬の車両が忙しなく動いている。
どこかに工場を総合的に管理する場所があるはずだが、恐らくはあの真ん中にあるタワーみたいな所だろうか。
「じゃあ、ひとまずあのタワーを目指そう。俺が先行するから、みんなは後についてきてくれ。」
「旦那様、大丈夫?」
「ああ、まだ魔力は殆ど消費していないみたいだしな。ひとまずあのタワーまでは全力で周りを壊しながら進むぞ。」
もはや出し惜しみする必要もないし、今後を考えれば壊しておく方が正解だ。
タワーまでおおよそ2キロほどある。そこまで一直線に進む。
城壁内ではアーマーも下手に飛び道具は使えないようで、肉弾戦になる。
そうなるともうアーマーは単なる金属の塊だ。ただただなぎ倒すだけだ。
当然ながら、人はいない。
魔法が届く範囲の建造物は片っ端から破壊する。
タワーのふもとまで来た時にはすっかり陽も落ちていた。
街灯のようなものは一切ないが、炎上する建造物のお陰で暗闇ではないのが幸いだ。
「さて、到着したが、これには入口があるのかどうか、だな。」
「あ、タカヒロ、あれ!」
カスミが指さす先には入口らしきものがあった。
まあ、今更罠もくそもないだろうから、あそこから入るしかないか。
入口は大きく、扉のようなものもない。
俺たちは、その入口を潜って中に入った。




