第85話 小手調べ
装備も整った事で、俺たちは早速行動に出る事にした。
「ケンシロウ、明日、早速大陸に渡るよ。日本列島の防衛はそのまま継続できるんだろう?」
「できるけど、タカさん達だけで行くつもりか?言っちゃなんだけど、またあの時みたいに……」
「いや、恐らくは問題ないかもしれない。そういや、この辺にまだあの兵器どもはいるのか?」
「あ、ああ、まだ数体その辺をうろうろしているが……」
「じゃあ、小手調べだ。今からまずそれを排除しよう。」
「今から?」
「うん、今から。」
どうやらあの兵器どもが越えられない結界のようなものの外で、あいつらはこちらの様子を伺っているみたいだ。
こちらから手出しすると反撃の機会を与えかねないという事で、監視だけをしているそうだ。
そこへ向かうと、あの兵器が4体、じっとこちらを伺っている。
さて、じゃあ、やってみるか。
「行ってくる。カスミ達はここに。流れ弾があるかもしれないから、気を付けてな。」
「タカさん、やっぱり無謀な気がするんだが……」
「危ない時は直ぐに引くさ。」
そう言って、あの4体へむけてダッシュする。
と、自分でもびっくりするくらい体が軽い。
エルデに居た時と同じか、それ以上に身体能力が高まっている気がする。
前回とは比較にすらならない程だ。
(ヒャッハー!力が、力が出せるぞ!)
(凄い!なんかシンクロ率が半端なく高まってますよ!)
精霊たちも何某かの変化があったみたいで、フェスタ―は興奮してもはやヒャッハー状態だ。
《さっきも言ったがな、物理的な力はそのまま受けちまうからな、調子にのんなよ。》
「ああ、その時はお前が何とかしてくれるんだろ、ウリエル。頼りにしてるぜ?」
《なな、何をいって……》
あっという間に兵器の前にでた。
まずはこちらの打撃がどれほど有効かを確認する。
兵器の顔らしき部分へと右こぶしを打ち込むと、その部分はひしゃげ、なおかつもげて吹き飛んだ。
そのまま胴体へもラッシュをかけると、発泡スチロールのようにボロボロになり機能停止したようだ。
そんな俺にもう1体がレーザーを打ち込んできたので、小手でそれを受けてみる。
怖かったが、結果はレーザーを吸収したみたいだ。
《そのまま剣で反撃!》
ウリエルが叫んだのと同時に、俺は剣を抜きその一体めがけて袈裟斬りをした。
どうもレーザーのエネルギーがそのまま剣に乗っていたみたいで、まるで豆腐を切るみたいにその1体は真っ二つになった。
(さーて、じゃぁ、オイラ達の力も確認しようぜ!)
「じゃ、いつもの行ってみようかぁー!」
精霊たちの言うままに、今度は魔法を使ってみた。
単体でどれほどの威力か、通用するかを確認するので、まずは火の魔法だ。
左手のひらから、最大限の力で火の魔法を放つ。
と、発せられたのは火どころじゃなかった。
プラズマをさらに高温にしたような球体が、1体めがけてそれこそ光の速さで突き進む。
当たった1体は溶解した。
(は?)
「え?」
「嘘?マジ?」
精霊自体驚いている。
「あたしにこんな力ないと思うんだけど……」
「サラマンダ、お前すげえな。」
「いやいやいや、こんなの、あたしじゃなくない?」
《へへん、これがアタイの力の一端だぜ?驚けよ!》
「マジか、まんまチートだな、これ。」
残る1体に、今度は技を使ってみる。
あのブラックホールだ。
ブラックホールは残る1体を吸い込んだと思ったら、その1体はベキベキと音をたてて圧壊し始めた。
大爆発すら吸収し、完全に無になったようだ。
「すげえな、俺自身びっくりだよ。」
《まぁ、そもそもお前が星の力を得たんだから、これくらいは当然だろうよ。》
「というかさ、お前の力って一体……」
《あー深く考えんなよ。アタイもよく知らねぇし、うまく説明もできねぇからな》
「そ、そうなのか。ともあれ、お前のお陰で何とかなりそうだな。ありがとう、ウリエル。」
《んぐぐ……》
そんな戦闘の様子をみていたケンシロウたち。
目を見開いて口をあんぐりとあけて固まっている。
比較的冷静だったカスミ達でさえ
「あいつ、もはや何でもアリになっちゃったね……」
「主様、もう人間じゃないじゃろう……」
「旦那様、やっぱり素敵。」
「とと様、強い、カッコいい、大好き!」
圧倒的な力を目の当たりにして、驚いていたのだった。




