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第62話 世の理

 ラファールとアルチナ、シャヴィの治癒魔法でサクラの容体は安定し体力も戻った。

 なので、場所を変えて今回の騒動のまとめと今後の事を話し合う事になった。


 「結局、あのダルシアは何がしたかったんだろうな?」


 ラークはもっともな事を言った。

 聞けば、あいつはラークに真っ先に切りかかってきたんだそうだ。

 それを守ろうと、サクラはとっさにラークの前に立ち、代わりに刺された、という事らしい。


 後手に回ってしまったラーク達は、リサとファルク、フラン、ラファール、クフィール、そしてサダコが一斉にダルシアを抑え込み、怒り心頭となったリサが四肢を食いちぎったんだそうだ。

 が、あいつはそれでも執拗にラークとプラムに襲い掛かろうとしていたらしく、丁度その時に俺たちが帰ってきた、と。


 単なる権力欲に駆られた逆賊の行動にしては、あまりにも根深い恨みと執拗な行動。

 一介の宰相にしては、所持していた武力も到底納得できない程の強大な兵器。

 根が深い、なんてレベルの話じゃないよなコレ。

 もしかすると、星の危機にも関係しているのかもしれない、そんな気がする。


 「あのさ、ちょっとみんなに聞きたいんだけどさ。」

 「何でしょう?」

 「この世界って、工業技術ってそんなに進んでいるのか?」

 「こうぎょうぎじゅつ?とは?」

 「あ、いや、あのトラもどきのからくりさ、あれって、どこで造ってんだ?」

 「からくり?造った、だって?」

 「あれはああいう生物なんじゃないの?」

 「あれはモンスターでもありませんでしたね。」

 「うん、何というか、生きてる感じはしなかったな。私のブレスで焼かれなかったしな。」


 …………。

 という事は、だ。

 人間界でも魔界でも龍族でも、精密機械工業はその欠片も発展してない以前に目も出ていない、という事か。

 電話どころか、電気すらない世界だもんな。


 「のう主様よ、それは、いわゆるロボット兵器、という事か?」

 「ああ、この間の一体目を破壊した時、色々と機械の部品が見えたしな。それも、俺が見たことも無い駆動部品やセンサーがあった。」

 「それは、もはや未来の殺戮兵器、と言える物じゃな。」

 「ああ、今の話じゃ、少なくともこの世界のモノじゃない、ってことだな。」

 「それは、いったい何なのですか?」

 「うーん、よく分からない。ま、こういう時は直接本人に聞いたほうが早いな。」

 「「「「 は? 」」」」


 俺は手のひらを上にして、黒い渦状の球体を出した。


 「「「「「「 な!!! 」」」」」」


 球体の中に話しかけてみる。


 「おい、ダルシアとやら。あのロボットは一体何なんだ、というか、お前はどこであれを準備したんだ。」

 「……グ、グウウ……」

 「おっと、無理して話す必要もないし、ウソはすぐばれるからな。」

 「……アアアア……」

 「なるほど、わかった。じゃ、消えろ。」

 「グワアアアア………」


 「タカヒロ様?それは一体?」

 「ちょっと、ボクも知らない魔法…魔法?だよね、それ?」

 「魔族でもそのような魔法は見た事ありませんわ……」

 「龍族でもそんなのは見たことがないぞ。」


 「ああ、これはな、魔法というか、技、だな。」

 「ほう、技、じゃと?」

 「ああ、これは小さなブラックホールを作ったんだ。何か、あの時は無意識にこれを使えた。」

 「ブラックホールってアンタ……」

 「あの、ブラックホール、とは一体?」

 「んーとね、簡単に言うとすべてを飲み込む空間だな。地球がどうこうとか聞いたからなんだろうな。こういうことが出来るんじゃないかと考えてはいたんだけどさ。」

 「タカヒロ、もう、何でもアリね……」

 「ここに放り込んだダルシアは、ここに入っている間は死ぬことも無く永遠に苦痛を受け続けてるだろうな。」

 「はー……」

 「まあ、それは良いんだ、それよりも、だ。」


 結局のところ、ダルシアは事の発端、つまり王国乗っ取りの理由は覚えておらず、あのトラもどきは譲り受けた、と言っていた。

 いつ、誰に、というのは、奴自身も理解できなかったようだが、とある場所で不思議な声を聴き、その者に頼み受け取ったと言っていた。

 特別仕様だといって、ダルシアの思念で標的や行動をある程度統制できるようにされていた、と。


 どうも、また別の、とんでもない存在がラディアンス王国、いや、この世界にちょっかいを出しているような気がする。

 その辺りも、シヴァ様という方なら教えてくれるのだろうか。


 そう、俺はシヴァ様、という方に会わなくちゃならないようだ。

 そこで、殆どの疑問や謎は解消できるのかもしれない。

 このゴタゴタの後始末が終わったら、行かなけりゃならないな。


 「なあ、アルチナ、シャヴィ。シヴァ様って、どういう存在なんだ?」

 「そうですね、私達魔族よりもはるかな太古に、この世に出現した大精霊、と聞き及んでいます。」

 「私は直接会ったことはないが、お母さま曰く、ひどく冷酷で無慈悲で、強大な力を持っているそうだ。」

 「なんか、怖いな……」

 「コロルが言うには、ミノリさんよりも遥かに高位の精霊で、この大地の守護神のような存在なんだってさ。」


 ひとまず、次にすべきことはそのシヴァ様に会う事か。

 そういえば、そう簡単に会う事は出来ないっていってたな。


 「そうなると、一旦魔界、もしくは龍族の里に立ち寄る必要があるな。」


 結構な長旅になるな。

 そうなると、行くメンバーも絞らないといけない、かな。

 それと、周辺国家への根回しも必要かもしれない。

 無断でラディアンスの者が魔界や龍族の里へ赴いた、なんて後から知られたらどうなる事か。


 「いろいろと準備も必要になってくるな。人選も含めて。」

 「もちろん、私は一緒に行きます。」

 「わたしもね。」

 「でも、サクラ、大丈夫なのか、その……」

 「今から、という訳ではないのでしょう?でしたら、問題ありませんよ?」

 「そうか。まぁ、ローズも一緒なら心強いしな。」

 「私は当然行かなくてはいけませんわね。」

 「私も、当然だな。何しろお母さまの力が必要だし。」

 「ワシは一緒に行かねばならぬ、そんな予感がするぞ。」

 「まぁ、リサとカスミはデフォだしなぁ、結局、メンバー全員か。」

 「あの、僕達もご一緒します。」

 「ファルク、いや、お前は……」

 「ギブソン達も気になりますし、危険は無いとも言い切れませんので。」


 まぁ、これ以上騒動に巻き込まれることは、たぶん無いとは思うけど。

 ファルク達も首を突っ込んだ以上、この後の展開は気になるのは解るが。

 ま、いいか。


 「じゃあ、いつものメンバーで行くことにしよう。」

 「ちょっと待て、兄上。」

 「何だ?」

 「我も行く。」

 「は?何で?」

 「この国の王として、魔族の実情を見知りしておくのは当然だろう。役目だ。」

 「いや、お前はここに居ないといけないだろうよ。王様なんだし。」

 「執務等はプラム姉と大臣たちに割り振ればよい。たかが一時の不在で国が回らなくなるという事は無い。」

 「しかしだな……」


 魔王城までは行っても問題はないだろうけど、その先はさすがにマズイと思うな。

 でも、ラークの言う事も一理ある気がする。

 それなら、だ。


 「なあ、ラーク、今回は目的が目的だから、それは一旦止めておこう。で、だ。」

 「一旦、とは?」

 「魔王に俺から、ラークとの会談をお願いしておくよ。」

 「魔王様との会談、か。」

 「たぶん、魔王は時間の都合で会えないとは思うが、王子は快く応じてくれるかもしれないぞ。」

 「そうですわね、といいますか、断らないように取り計らいますわ。」


 ちょっと、アルチナが怖い。

 エイダムが断ったら、お仕置きでもするつもりなんだろうか。


 「とはいえ、それには準備も含めて時間が必要ですわ。ですからラーク王もそれに向けた準備をしておくことをお勧めいたします。」

 「そうであるか、アルチナ殿は魔王様の長女でありましたね。わかりました、そうしましょう。」

 「すまんが、その準備と並行して各国への根回しもしておいてくれるかな?」

 「ああ、そうだな。しっかりやっておこう。」

 「うむ、こちらはわらわとラークで進めておこう。」

 「すまん、ありがとうプラム。」


 俺たちの出発は一週間後となった。

 一応、結界の件もあるので「門」経由での魔界入りとなる。

 そして、道中は馬車での移動となるので、居住性は改善する必要がある。

 ということで


 「こ、これは……」

 「すごい……」


 乗り心地をよくするためトラもどきの残骸を利用したサスペンションを装着した。

 合わせて車軸部分にこれまたトラもどきから回収したベアリングを追加。

 そして、荷台部分は小さいながらも寝室を備えた2階建てだ。

 重量が少し増加した分、引く馬は2頭が必須になるが、ベアリングのお陰で一頭あたりの負荷はそれ程増えないと思う。


 「これなら長時間の移動も、それほど苦にならないだろう。」

 「はー、これ、キャンピングカーみたいだね。」

 「参考にはしたよ。」

 「それにしても、タカヒロにこんな才能があったとはねー。」

 「まあ、一応俺はエンジニアみたいな事をしてたからな。」

 「えんじにあ?」

 「ああ、機械、からくりを直したり組んだりする仕事だな。」


 馬車を2台改造したところで、今度はそのトラもどきの調査を始めた。

 やはりというか、トラもどきはロボットで、使っている部品にメーカー名や部品名、シリアルナンバーやロットナンバーというものは表記されていない。

 という事はこれ、一つ一つの部品や配線の一本に至るまで、一か所でほぼハンドメイドで造られた可能性がある。

 こういう造り方は、俺のいた世界では考えられない事だ。


 しかもこれ、都合4体あったわけで、ハンドメイドで量産している、という事だ。

 とてもじゃないが、この世界の産業レベルでは到底不可能なんじゃないかと思う。

 そして、それ以上に解せない点が一つ。


 動力源が分からない。

 バッテリーだかコンデンサみたいなものはあるにせよ、とてもこの巨体を長時間駆動させるほどのキャパは無いように思う。

 内燃機関らしきものもない。

 というか、訳の分からないユニットも多く、その内どれかがそんなモノなのかもしれないな。


 これはこれで、また別の問題がありそうだな。


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