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第54話 龍族の神殿

PVが1,000を超えてました。

ありがとうございます。

 マリューさんの案内で到着したのは、「神殿」と呼ばれている場所。

 ここは龍族でも滅多に立ち入らない神聖な場所で、マリューさん自身も十数年ぶりだという。


 ちなみに、ファルク達英雄一行はひとまず魔王城下町まで引き返すことになった。

 この先は、サクラとローズ以外、人間は入れないそうなのだ。

 サクラとローズは、俺の親族扱いなので大丈夫なんだそうだ。


 ファルクとラファールはがっかりと落ち込み、フランは悲しんでた。


 神聖な割に人の手がはいっていない場所にもかかわらず、床には埃一つ無く、柱や壁も輝きを保っている。

 誰かが管理しているわけではなく、ずっとこのまんまなんだそうだ。


 「ここじゃ。」

 「これは……凄い綺麗な場所ですね。」

 「うむ、まさに神聖な場所、と呼ぶにふさわしい場所であるな。わらわも久しぶりじゃ。」

 「ここは主に何をする場所なのですか?」

 「良い質問じゃな。実はな、知らんのじゃ。」

 「そうなのですか?」

 「うむ、この神殿で何かをした、あるいは何かが起こった、というのは、わらわが産まれ出でてからただの一度もない。」

 「では、今回なぜここに来ることになったのでしょう?」

 「それも判らぬが、いずれにしろシヴァ様の言じゃ、わらわ如きでは理解できぬことが起こるのではないか?」


 神殿の中央、噴水のような丸く囲まれた泉がある。

 きわめて透明な水を湛えていて、水面に波紋ひとつなく静かに佇んでいる。

 そこまで来た時


 『よくきましたね、ありがとう』


 突然、頭の中に声が響いた。

 みんなにも聞こえているようだ。


 「こ、これは……」

 「何か、話しかけられているけど、声なのこれ?」

 「頭の中に直接?」

 「ふむ、わらわも初めて聞く声じゃな。」


 『こんな形でお願いすることをご容赦ください、タカヒロ。』

 「あなたは、、誰なのですか?」

 『私の事はまた後でお話しいたします。まずは、お願いを聞いてください。』

 「は、はい。」


 威厳もあり、かといって優しさに溢れたような美しい声。

 聞くものの感情が一切消え、聞き入ってしまうような声だ。


 『あなたへのお願いは、日本の、とある山に落ちた光の玉を回収してきて欲しいのです。』

 「日本?それに光の玉、ですか?」

 『そうです、それは“月の欠片”と呼ばれる、この星の消滅を止めるために必要なものなのです。』

 「この星の消滅? 地球が消滅するのですか?」

 『まだ確定ではありませんが、その可能性が非常に高まっています。』


 ここにきて、またとんでもない事を聞いてしまったな。

 マリューさんが言っていた、人間同士や魔族でいがみ合っている場合じゃない、ってのはこの事か。


 「あの、なぜ消滅するのでしょうか、それに、いつ?」

 『それも、あなたが光の玉を回収できた時に、お話しできると思います。今は、回収する事だけをお考え下さると助かります。』

 「……わかりました。ですが、回収って……」

 『光の玉自体は、とある場所に祀られているようです。そこを知るのは、あなたが以前会った事のある者です。』

 「俺があったことのある人?」

 『人、であるかは甚だ疑問ですが、確実に会っています。あなたは忘れていても、その者は覚えているはずです。』

 「ちょっと待ってください、という事は、俺は元の世界、というか、時代に戻れるのですか?」


 話を聞く限りじゃ、そういう事だよな。

 でも、返ってきた言葉は衝撃的で絶望的な事だった。


 『ごめんなさい、タカヒロ。あなたが居た場所は、壊滅しています。』

 「か、壊滅って、それって……」

 『詳しくは後で話します。』

 「でも、日本に行くんですよね?」

 『正確には、別の平行世界の地球、その西暦でいう2023年の世界です。あなたがこの世界に飛ばされた年ですね。』

 「平行世界?パラレルワールドですか?」

 『その認識で宜しいでしょう。そこはまだ影響が及んでいない数少ない世界なのです。』

 「しかし……」


 『時間がありません。その世界との繋がりは間もなく途切れてしまいます。』

 「考える時間すらない、という事ですか?」

 『ごめんなさい、私の力をもってしても、これが精いっぱいなのです。』

 「……わかりました。行きます。」

 『危険はありませんので安心してください。また、確実にここに返ってこれることも約束します。』


 「では、俺たち全員で行きます。」

 『それが、行けるのはあなたとカスミの二人だけなのです。その時空に縁のある者だけが、そこへ行けるのです。』

 「そ、そうなのですか……」

 『送る場所はあなたがこちらに来る時に消えた場所、目的の山がある場所は、あなたの故郷にある、あなたが良く知る山です。』

 「そこは……」

 『では、さっそく送ります。よろしいですか?』

 「ちょ、ちょっと待ってください!」


 なんてこった。

 また帰ってこられるってのも確信はない。

 でも、行かなきゃいけない状況、か。


 「サクラ、ローズ。」

 「タカヒロ様……」

 「タカヒロ……」


 二人と抱擁し告げる。


 「すぐに帰ってくるさ。待っていてくれ。絶対に返ってくる。」


 涙を流す二人とキスを交わして、その後カスミの手をとり


 「カスミ、すまんな、付き合わせて。」

 「いいって、付き合うよ。どこまでも。」


 そうして、泉の所まで戻り声の主に言った。


 「お待たせしました。行きます。」

 『では、送ります。必ず、光の玉を回収してください。お願いします。』


 その声と同時に、俺とカスミは黒い光に包まれ、その場から消えた。


 「!!!」


 全員が声もなく、俺たちが消えたのを目の当たりにしていた。


 「タカヒロ様!」

 「タカヒロ!」


 リサやピコ、アルチナも俺の名を叫んだ。

 その途端、泉の前に今度は白い光が現れ、俺たちは帰ってきた。


 「「ただいまー!」」

 「「「「「早いわ!」」」」」


 こちらでは一瞬の出来事だったようだ。


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