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第51話 いざ、龍族の里へ

 数日後、ファルク達は戻ってきた。

 話の通り、人間界では魔族への派兵は取りやめになり、ファルク達に一任することでまとまったそうだ。


 ついでに、魔族が一方的に人間への攻撃をするような種族ではない事もそれとなく納得させたそうだ。

 先の10数名の人間界への侵攻は、実はあの魔獣が逃げ出したため捕獲のために出てきたと嘯いたそうだ。

 まぁ、ちょっと考えれば穴だらけの言い訳だが、バイアスがかかっている人間では簡単に信じてしまうだろうな。

 それに、まるっきりウソでもないからな。


 で、ファルク達は長旅の後なので1日休んだ後に、龍族の里へ向かう事になった。

 なお、ギブソン達偽勇者一行はこのまま城下町で待機となった。

 何でも町の人たちに偽勇者と詰め寄られた際、泣きながら謝罪し、勇者を騙り今に至る経緯を素直に話した結果、町の人に同情されて仲良くなったんだそうだ。

 まぁ、こいつらも根は悪人ではないし、無理やり連れてきたんだし、エイダムにお願いしてしばらく軟禁生活をエンジョイしてもらおう。


 龍族の里へは俺たち一行に加え、ピコとアルチナさんも同行することとなった。

 魔王の紹介状だけでは素直に通してもらえるかどうかわからない、という事も理由の一つなんだが


 「夫のサポートをするのは妻の務めですから!」


 といってアルチナさんが引かなかったというのもある。

 それには魔王も


 「す、すまんタカヒロ、とりあえず連れて行ってくれんか?一応娘はあちらのムスメとは認識もあるしな。」


 だってさ。

 どうもこの魔王、親バカなんじゃないのか?

 気持ちはとってもわかるけどさ。

 まぁ、それは良いんだが、こっちもちょっと大変である。


 サクラ、ローズに加え、フランさんも加わってピリピリとした雰囲気が漂っている。怖い。

 ちなみに、ピコはただただ俺と一緒にいたいから、という理由であった。

 とはいえ、竜の眷属とあって龍族に知り合いもいるそうなので、何か役に立つかもしれないとは本人の弁だ。


 そんな火薬庫みたいな雰囲気を持ちつつも、俺たちは龍族の里があるロプロス領へと向かった。

 魔界へ来た時同様、馬車2台での旅だ。

 馬車で4日の距離だ。途中、丁度中間地点あたりに町があるそうで、ひとまずそこを目指す。


 一回の野宿の後、中継地点の町に着いた。

 ここに来るまでに、馬車の中の雰囲気は一変していた。

 サクラとローズとリサ、アルチナ、ピコ、カスミ、みんな打ち解けて仲良くなってた。

 一体何があったのかは全くわからないが、仲良きことは美しきかな、である。

 良い事だ。

 そんな俺たちを見て、ファルクが一言


 「タカヒロ様の同行者って、女性限定なんですね。」


 言われてみればみんな女性だな。今気づいたよ。

 これじゃ、コージーや魔王のこと言えた義理じゃないな。


 で、この町は火山に近いからなのか、温泉が湧いているらしい。

 どうりで硫黄のにおいがほのかに香ってくるとおもった。

 という事は、アレだな。

 また湯船でひと騒動ありそうだな、これは。

 そして案の定。

 わざわざ俺一人で入れるようにタイミングを計り、こっそり温泉場に来たはずなのに。


 「ふうう、気持ちいいですねぇ。」

 「ここは魔界でも有数の温泉なのですよ。」

 「ちょっと熱めだけど、気温が低いから丁度いいかも。」

 「ピコ、君ちょっと胸大きくない?」

 「そう?リサと同じくらいじゃないかな?」

 「ちょっと、それはアタシに対する何かなわけ?」

 「胸。私はもうちょっと欲しい。タカヒロ様デカいの好き?」

 「ボクは胸無いけど、問題ないよね?」


 いつの間にか全員集合である。

 それとな、ラファールちゃん、君はそれ以前の問題だからね。

 とはいえ、前ほどの騒動にならずに済んだかな。

 まぁ、眼福なので俺的にはラッキーだったかな。


 宿では各部屋2名ずつの部屋割りなのだが、そこでひと悶着あった。

 俺と誰が同室になるか、で揉めている。

 さんざん揉めた挙句決着がつかず、結局くじ引きで決めることになった。

 で、決まったのが


 「まあ、これが一番無難よね、うん。」


 カスミだった。


 ―――――


 「ねえ、アンタさ、この後どうするつもりなん?」

 「ん?この後は龍族の里へ行って」

 「ち・が・う・わ・よ!」

 「へ?」

 「もー、アンタいい歳して何でそんなに朴念仁なんだよ。」

 「朴念仁っておまえ……」


 「サクラとローズはもう、実質的にアンタのお嫁さんなんでしょ?」

 「ま、まぁ、そうだな、うん。」

 「で、リサももう、それに近いよね、というか、アンタリサをどう思ってんのさ?」

 「まー、リサも好きだし、ずっと一緒にいたいとは思ってんだけど、魔族って結婚とかすんの?」

 「おバカ!何をいまさら!魔王の町でさんざん見てきたでしょうに。

 普通に人間と同じように夫婦がいたでしょうよ。」

 「そういやそうだな、ピコの両親もそうだしな。」

 「まったく。んでそのピコも、どうすんのさ?」

 「いや、ピコはどうするも何も……」


 「もうね、はっきり言うけど、リサもピコも、アンタと結婚して子を授かりたいって思ってんのよ。」

 「そ、そうなのか?」

 「お、意外と理解が早いのね。」

 「んでもさ、俺無職だぞ、今の所。甲斐性なしだぜ?」

 「それが何なのさ。甲斐性なんて、後で死ぬほど頑張って持ちゃ良いんじゃないの?」

 「後でって、お前それ、典型的なダメ男の言い訳だろ、後で頑張るってのは。」

 「アンタは頑張んないの?」

 「頑張るけども、それ以前に使命ってのが何かも分からんしさ。」


 「うーんとね、アタシが言うのもなんだけど、元の世界の倫理観はこの際捨てた方がいいかもよ?」

 「そうなの?」

 「というか、あれだけ諸国のお偉いさんと面識が出来て、魔王にも気に入られて、そんなん甲斐性なんかどうとでもなるでしょうよ。」

 「むー、言われれば……」

 「問題なのはアンタの気持ちと、簡単に死なないって事だと思うけど、どうよ?」

 「どうよって、でも、そう、かもな……」

 「さあーどうするタカヒロ!ここが男の見せ所だぜ!」

 「あー、そうだな、きちんとケジメつけなきゃいけないかな。」


 「あのね、できれば、あの子たちに告白される前に、アンタから言うべきだってのは解るよね?」

 「ま、まあな。」

 「答えてあげなさいよ、まったく……」

 「でもさ、そんなお前はどうなんだよ?」

 「へ?」

 「俺はお前も好きだぞ。」

 「は、な、なななな!」

 「何だよ、一番付き合いが長いんだ、当たり前だろ、それに俺から言わなきゃだめなんだろ?」

 「いやいやいや、そ、そ―じゃなくて、いや、その!」

 「ははは、いや、ゴメン、悪乗りしすぎたな。」

 「は、じゃ、じゃあ、ウソなん!?」

 「バカ、ウソなわけあるか。お前の事は大好きだよ。コロル込みで、な。」

 「うぅ……」


 ぽわーっとした表情になってしまった。

 言われっぱなしってのも何だかな、と思って、思い切って言ってみたんだけど。

 ちょっと、急すぎたかな。

 でも、うん。本気だからね。


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