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第41話 エスト王国からの使者

 温泉から帰って数日、今日は戴冠式が行われる。

 これでラークが正式に新たなラディアンス王国の国王になる。


 サクラ達はこれで王位継承権が無くなるわけだが、今まで通りこれからも城に居住するわけなんだけど、俺まで一緒に居ていいものかはちょっと悩みどころではある。

 まだサクラとは正式に婚姻の儀をしたわけでもなく、身分としては一般人のままなのだ。

 国民は皆、先の騒動というかクーデターの一番の功労者という事で大賛成との事らしいが、それでも、だ。

 まして、今後どこへ行くとも限らないのでなおさらである。


 その事をサクラに告げると


 「では、その問題は今すぐに解決しましょう!」


 と、その場でニーハさんに何か指示した。

 その決断力と行動力には目を見張るものがあるんだけども。

 で、その解決策ってのが、なんと城の敷地内に別邸を建設する、という事だった。

 しかも、だ。

 なんとそれを国民に是非を問い、建設費を募るという、王族としては前代未聞の行動にでたのだ。

 これは俺の意を汲んで、血税で別邸を立てる事を国民にも納得してもらうための処置なんだそうだ。

 これを考えたのはローズだそうで、ローズもしっかりと国の事を見ているんだなぁと安心した。


 で、戴冠式は滞りなく執行され、今はそのパーティーの真っ最中。

 来賓がハンパない方々なので非常に豪華な中にも緊張感がある。


 ネリス公国首相、モンテニアル国王、アリシア王国国王、エスト王国国王、ロマリア西方連邦国大統領、アインフリアン公国首相、と、近隣周辺国の王やトップが勢ぞろいだ。

 遠方の国からは、再開した領事館制度で再び駐在し始めた大使が出席していた。

 この方々もそれぞれの首長の代理なので、扱いとしては近隣諸国の王たちと変わらない。

 そんな人たちが一同に会しているんだから壮観である。


 と、アリシア国王が俺の所へ来た。


 「ふむ、貴様がタカヒロとかいう者か?」

 「あ、はい、そうです。アリシア国国王様ですね。初めまして。」

 「ふん。高貴な場には似つかわしくないな。なぜ貴様はサクラ女王を誑かしたのだ。」

 「誑かしたって、私にそのつもりはありません。」

 「先の騒動で活躍し、英雄にも迫る強さを誇ると聞いたが、そのような出鱈目でサクラ姫の気を引いたか。」

 「いえ、皆その場にいましたし、出鱈目でもありません。」

 「ほう。」

 「それに、私はそのような手管で誰かを騙すような真似はいたしません。」


 この国王様、妙に喧嘩腰だな。

 俺とアリシア国王のやり取りが始まった時、周囲の雰囲気が変わった。

 近くに居たエスト国国王やロマリアの大統領は話を止めてこちらに注目した。

 心なしか、俺とアリシア国王とのやり取りを楽しんでいる様にも思えるんだが。


 「そうであるか。では問おう、貴様はこの王国をどうするつもりであるか?」


 まー、おそらくそれは全員が聞きたいことだろうな。

 遠慮してそこに触れないでいる人が多い中、直球で聞きに来たアリシア国王は、そういう意味で遠慮しない性格なんだろうか。


 「……私にはすべき事があります。この国をどうこうするつもりはありませんし、そのような時間は無いと感じています。」

 「ほほう。」

 「確かに私は平民です。が、此度こうして縁を結べたからには、私は私の力を、縁を結んだ全ての者の為に惜しみなく行使します。それに……」

 「それに?何であるか?」

 「何よりも、私はサクラ姫を愛しています。王族のサクラ姫ではなく、一人の女性として、愛しているのです。そのような邪な気持ちは持ち合わせておりません。」

 「……貴様。」


 なんだろう、物言いや態度が、わざと俺を煽っているような感じがするけど。

 視界に映るモンテニアル国王のシムネ様は、何故か呆れたように額に手を当て首を振っている。

 アリシア国王って、どこでもこんな感じなのかな。

 国際的に孤立しちゃわないか、それ。


 俺がそう答え、しばしの沈黙の後


 「ふふ、ふわははははは!良い!良いではないか!さすがサクラ姫が選んだ殿方よのう!」


 その言葉が合図のように、静まり返っていた会場は割れんばかりの歓声に包まれた。

 サクラを見ると、やっぱり呆れてシムネ様と同じことをしている。

 ひとしきり大笑いしたアリシア国王は笑いを止め


 「いや、申し訳ありませんでしたな、タカヒロ様。ほんの余興でございますよ。ご無礼はお許しくだされ。」

 「はい?」

 「実は、ワシは貴殿がそんな軽い男であるとは思ってはおりませんぞ。最初から真相は理解し貴殿を認めております。」

 「は、はあ。」

 「そして、一国の国王の威圧にも怯まず、あのような事をはっきりと言えるその心胆と覚悟、大したものだ。」

 「タカヒロ殿、こやつはたまにこんな悪戯を仕掛けては、余興と言っては場を盛り上げる男なのだよ。」

 「まてシムネ、ワシは場に話題を提供し楽しんでもらう事が楽しみなのだ。悪戯ではないぞ。」

 「一緒じゃ。が、此度の悪戯は皆が聞きたかった事を聞けたのだから、良かったがのう。」


 うーん、この王様、なかなかな曲者みたいだけど、根は良い人みたいだな。

 というか、こういう余興に楽しみを見出すとは、面白い事好きな王様なんだな。

 これ、俺やカスミ以外はみんな知ってたんだな。


 「タカヒロ様、アリシア王国は貴殿を全面的に支持することを約束しましょう。わしは貴殿を気に入った。」

 「は、はあ、ありがとうございます。」

 「うむ。では、さっそくだが」


 そう言うと、アリシア国王は腰にしていた一本の剣を取り、俺に差し出した。


 「聞けば貴殿の剣は先の騒動で損失したとの事。それ故この剣を貴殿に進呈しましょう。」


 見ればかなり立派な剣だ。無駄な装飾もなく、実用本位の、しかし見るからに至高の一品とわかる剣だ。


 「これは我が王家に代々伝わる宝剣で、持つ者の力を何倍にも増幅してくれるという不思議な剣なのですよ。」

 「そんな大切な剣、受け取れませんよ。」

 「いや、ワシらが持っていても、文字通り宝の持ち腐れでしかないのでね、まあ、今回の非礼の侘びと、祝福の貢ぎ物として受け取ってくだされ。」

 「……はい、そういう事でしたら、受け取ります。」

 「うむ、では進呈いたしますぞ。」


 こうして俺は第二の剣を得た。

 会場は割れんばかりの拍手に包まれ、パーティーは再び盛況となった。


 そんなパーティーの最中、その場を一瞬で凍り付かせるような知らせが届いた。



第3章終了です。

次章から、物語の核心部分に迫っていきます。ご期待くださいませ。

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