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モンスターズジェネレート13

 その夜、俺とサクラとローズは、街を眺められる最上階のテラスに居た。

 少し仕事というか作業も落ち着いて、明日から出発の準備に取り掛かれる目途がついたからだ。

 

 「何というか、夜風が気持ちいいな。」

 「ふふ、そうね。」

 「そうですわね。こうして3人でここに居るのも久しぶりのような気がします。」

 「ここ最近、忙しかったもんな。」

 「ねぇ、タカヒロ……」

 「ん?」

 「やっぱり、あのダルシアって、モンスターのせいでああなったのかな?」

 「あー、切っ掛けは間違いないと思うよ。その後の行動はダルシアの元々の思惑だとは思う。」

 「でも、ジーマへの干渉というのは、信じられませんね。」

 「実際、人間が行き来できたのはあのゲートだけだったと思う。でも」

 「でも?」

 「思念というか、そういうのはまた別のルートがあったのかもしれないな。あるいは、もう一つのゲートとか。」


 あのラヴァがサクラの姿だった、というのは、そうした情報伝達の経路があった、という事だろうな。


 「でも、それらは全てダルシアの手腕で、という事なのよね?」

 「そうだな。だが、そうなった原因はやはりモンスターの瘴気、に間違いないだろう。」

 「もしかして、ですけど、そのジーマとの繋がりによって、その瘴気があちらに流れていったとしたら……」

 「やはり、そういう考えに行きつくよな……」

 「そうであれば、ルナさん、いいえ、ブルーさん、でしたか、その方もその瘴気で……」

 「まぁ、それがAIにまで影響を及ぼせるか、というのは解らないけど、その可能性もあるかも、な。」

 「えーあい?」

 「あ、電子計算機で作られた人工の知能って感じのモノだよ。」


 「なるほど、そういう事か。」

 「ルナ、お前いつの間に?」

 「だから、最初から居たが?お前にとって私はガンチュ無しか?」

 「いや、だから気配を消すなよ。」

 「おお、うっかり。」


 「で、なるほどってどういう事だよ。」

 「AIといえど、悪意や憎悪という単語の意味は理解できても、その本質、気持ちは理解しえないと思う。」

 「そう言われれば、そうだよな。」

 「となると、ブルーだった私に人間への憎悪を埋め込んだ、いや、憎悪一色に染めたのは……」

 「ルナ、止めよう。可能性の話だよ。それに、もう過去の事じゃないか、な。」

 「タカヒロ……」


 こいつの事だ。

 それじゃあの惨事は自分が全ての元凶だ、とでも思ってしまうだろう。

 客観的にみると確かにその通り、なんだけど、その発端はこいつじゃないんだ。

 そんな重みを、今のこいつに背負わせるのは違うと思うしな。


 「とにかく、発生源さえ何とかしちまえば全てカタが付くだろうしな、それに向けて進もうぜ。」

 「あ、ああ。」

 「サクラも、ローズも、な。」

 「というかさ、タカヒロは無茶したらダメだからね。」

 「もちろんさ。無茶はできない。お前達の為にも、な。」


 3日後、探索の準備も整い探索チームが集結した。

 チームは2組、俺、雪子、サダコ、ルナの4人、そしてピコ、ネモフィラ姫のバディだ。

 サクラとアルチナ、ピラトゥスさんが管制連絡役として陸上で待機となる。

 ネモフィラ姫はピコ一人なら海中へ一緒に連れていけるという事なのでこの編成になったのだ。

 残ったメンバーは引き続きモンスター対処の為、イワセ温泉郷でアラート待機としている。


 「さて、行くか。」

 「主様は久々の完全武装じゃの、凛々しいな。」

 「そ、そうか。」

 《デレデレしてんじゃねーよバカ。ま、とはいえ久しぶりにお前と暴れられるんだな!》

 「いや、暴れないよ?」

 《んだよそれ。つまんねぇな。》

 「ま、久しぶりにお前と一緒にお出かけできるんだ。それで我慢してくれよ。」

 《むむむ……》


 海岸に到着し、いよいよ海中探索を始める。

 姫からおおよその位置を聞き、そこを重点的に二手に分かれての探索だ。

 早ければ今日中にも発見できるかもしれないけど、遅ければ数日はかかるだろう。

 なので、臨時統制所を兼ねた天幕も設営し、サクラ達はここで待つ事となる。


 「じゃあ、行ってくるよ。」

 「あなた、気を付けてくださいね。」

 「ああ、大丈夫さ。」

 「タカヒロ様、何かあったら直ぐに連絡してください。」

 「ありがとう、アルチナ。」


 そう言ってくれる二人と口づけを交わす。


 「タカヒロ、その、気を付けてな。」

 「ピラトゥスさんも、ありがとう。」

 「……それだけ、か?」

 「あー、いや、だけじゃないですよ。」


 と、目でせがむピラトゥスさんにもキスしてしまった。

 これ、後で既成事実だとか言って一騒動起こしそうだなぁ。


 こうして、俺たちは海中へと突入した。

 索敵範囲は半径200キロとかなりの広範囲だ。

 ただ、水深はそれほど深くはないのである程度の深度を維持して走査という感じだ。


 「タカヒロ。」

 「ん?どうしたルナ?」

 「私は、間違っていたのだろうか?」

 「そうか、やっぱり気にしてたのか。いや、間違っていたのは事実だろうな。」

 「私はどうすれば……」

 「あのな、ルナ。大小の差はあるが、誰しも間違いはある。ただな、それを間違いと認め、同じ間違いを犯さないように進んでいくっていう事こそが大事なんじゃないかな。」

 「次に、進む……」

 「ああ、ルナは今、その間違いを理解し後悔もしたんだろ?それが何を意味するかも、分かったはずだよ。」

 「……そう、かも知れない。」

 「いいかルナ、お前の傍には、お前を支えてくれる者がいる。俺もそうだ。悩むのはいっぱい悩めばいい。解決は、俺たちが手伝うさ。忘れるなよ、お前には俺が、俺達が付いているんだからな。」

 「そう、か。わかった。」


 もう、完全にルナは自我、いや、人間と同じ心を持てたのかも知れないな。

 自分がしたことを後悔しているんだろう。

 ただ、それもブルーとして発現したものじゃない、この瘴気に中ったから、なんだ。

 ルナがそれを納得するまで、フォローするしかないな。


 《お前ってさ、なんでそんなにルナの気持ちを解ってあげられるんだ?》

 「解ったつもりはないよ。こういうのって本人にしか解らないもんだからな。でも」

 《でも、なんだよ》

 「間違いや後悔なんて、俺も腐るほどしてきたし、それに苦しんできたからな。本来の俺は、皆が思うほど善人じゃないんだよ。」

 《そうなのか。いや、でも今のお前はアレだぜ、聖人みたいだぜ?》

 「よしてくれよ。そんなんじゃないさ。」


 こうして1日目と2日目の探索は成果もなく終了した。

 そして、探索は3日に突入した。

 

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