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モンスターズジェネレート11


 海底を進むこと数十分。

 泳ぐというか飛ぶというか、水中をそんな感じで進んでいるんだけど、かなりの速度が出せる。

 思うように進むことができるってのも、凄いな。


 すでに水深は数百メートルを超えているだろうけど、水圧は全く感じられないし呼吸も問題ない。

 ただ、光が届かないので少し暗い。

 フェスタ―の魔法で明るくできるかを試した所


 (ちょっと工夫してみたぜ。これなら見やすいだろ?)

 「おお!お前凄いな。さすがは光の精霊だな。」

 (へへーん。)


 ライトで照らすような感じではなく、周囲に陽光が指すというか、暗い部屋の天井に照明が付いたような感じであたりが明るくなった。

 

 「これなら何も問題ない、か。あとは何処まで潜水できるか、だな。」


 結果として、いわゆる相模湾の底まで行けた。概ね1800メートル前後か。

 これなら問題ない。

 やはりシヴァって凄いんだな。

 こんな魔法を授けてくれるなんて、ほんと、感謝してもしきれない。


 あまり時間をかけていてもサダコたちが待ちくたびれてしまうので、早々に引き返す事にした。

 既に時間は午後になっていて、フランがお弁当を広げて待っていてくれた。


 「ただいま、みんな。」

 「お帰りなさいませ、旦那様。」

 「主様、潜水病とかは大丈夫なのかや?」

 「ああ、全くないな。凄いなこの魔法。」 

 「これってアレか?私が飛行時に使っている結界魔法みたいなものなのか?」

 「そうだなぁ、シャヴィのそれも低酸素症とかにならないし、気圧も関係ないしな。同じなのかな。」

 (でも、ボクが感じた限りじゃ現象は似ているけど、法の構成は全く違いますね。)

 「ムーンでも解析できないレベルだしな。とはいえ、シャヴィの結界もそれはそれで凄いよな。」

 「ふふ、ありがとう。ま、そうだな、まだまだシヴァ様の境地にはほど遠い、ってことだろうな。」


 一仕事終えた達成感みたいなものを感じながら、俺たちは浜辺で遅めの昼食を楽しんだ。

 城へと戻り、一泊して明朝イワセ温泉郷へと戻った。


 と、総合庁舎の前まで来たのだが、そこに一人の美しい女性が立っていた。

 門の衛兵が困った顔で立っているのだが、はて。

 ひとまず、衛兵にご苦労様と言ってから、女性に声をかけてみる。


 「あのー、何か御用でしょうか?」


 と、声をかけた途端、なんとその女性は俺に抱きついて来て


 「お会いしとうございました!タカヒロ様!」

 「え?え!?、ちょ、ちょっと!」

 「この時をどれだけ待ち望みましたことでしょう、嬉しいです!」

 「あ、あの!貴女は?」

 「ああ、これは失礼いたしました。初にお目にかかります。ネモフィラと申します。」

 「ネモフィラ姫!?」

 「はい!」

 「いや、姫、もしかしてお一人でここへいらしたんですか?」

 「いいえ、父上とご一緒です。父上は既に庁舎内で寛いでいますわ。」


 ブナガ王、俺がしらばっくれているもんだから強硬手段に出たのかな?

 とはいえ、そんな私的な事でこんな所までやってくる人ではないと思うけど、何かあったのかな。


 「ひ、姫、ひとまず中へお入りください。」

 「はい、有難うございます。」


 と、俺はネモフィラ姫を貴賓室までエスコートする事となった。

 衛兵も困っただろうし、彼には後で何か奢ってやろう。


 庁舎の貴賓室に入ると、そこにはブナガ王とサクラが居た。

 俺が不在だったのでサクラが代行で対応したんだろう。

 しかし

 

 「おお、タカヒロ殿、急に押しかけてすまぬな。」

 「いらっしゃいませブナガ王。こちらは全然いいですけど、珍しいですね。」

 「うむ、実はな、お主にどうしても知らせないといけない事があってな。」

 「知らせないといけない事、ですか?」

 「そうだ。それ故此度はネモフィラを連れ出したのだ。」

 「そ、そうなのですか。」


 もしかして強制的に引き合わせようとしたのかと思ったが、何やら雲行きがおかしい気がする。

 姫は俺の腕に抱きついて満面の笑顔ではあるんだけど、それを見るサクラの表情や態度が少しおかしい。

 ともかく、座って話をすることにしたんだが。


 「ブナガ王、その、知らせないといけない事って、なんですか?」

 「それなんだが、お主、先程まで海へ行っていたそうだな。」

 「はい。とある実験の為、とでもいいますか、少し用事がありましたので。」

 「それは例のモンスターに関わる事、ではないか?」

 「そうです。実は、モンスターの発生源が海中である可能性もありまして、海中で行動する為の実験をしてました。」

 「して、それは満足のいく結果が得られた、という事じゃな。」

 「はい。」

 「うむ。そこで、なんだが……」


 ブナガ王にしては歯切れの悪い様子だ。

 何か、とても大きな問題でもあったんだろうか。


 「時に、タカヒロ殿は我が娘ネモフィラが殆ど表舞台に出ないというのは知っているのだな。」

 「え?あ、そうですね、そう聞き及んでいます。」

 「実は、だな……」

 「父上、それにつては、私が直接タカヒロ様へ伝えたいと存じます。」

 「ネモ、それは……」

 「父上をこれ以上、困らせたくはありませんもの。」

 「そ、そうか。」

 「タカヒロ様。」

 「はい、何でしょう、姫?」

 「タカヒロ様は、西方に伝わる“人魚伝説”というものをお聞きになられたことはございますか?」

 「人魚伝説、ですか?すみません、聞いたことはありません。」

 「サクラ様はいかがでしょう?」

 「は、はい。私は聞いたことがあります。」


 人魚伝説。

 ネモフィラ姫はその伝説を語り始めた。

 遥か西方の海の民の間に伝わる伝承で、人魚の里の話だそうだ。


 その昔人魚族はかつての魔族や龍族と同じように、人間とも共存関係にあったらしいが、いつからか人間とは距離を置くようになった、と。

 理由は定かではないが、特に人間を嫌ったから、という事ではないらしい。

 その人魚の里では急速に人魚の数が減り、更には何某かの危機により里の存続も危ぶまれたという。


 そんな中、里の女性の人魚と人間の男性が恋仲であったが、人魚が里を離れなければならなくなった。

 恋人と離れたくない二人は、人魚が里を離れる前に結婚し子を授かり、地上で静かに暮らした。

 しかし、里が何者かに襲われると、人魚は子を残して男性の元を去り、里へと向かった。


 その後、里は消滅し、人魚は帰る事なく、その近くの海岸にはその人魚がしていた指輪だけが打ち上げられた。

 悲しみに沈む男性は、人魚との間にできた子を連れて何処かに消えたそうだが、その後その対の指輪はとある国家で発見されたらしい。

 しかし、その指輪は人魚の血を引く者以外は触れる事もできず、触れるとその部分が大やけどをしたり、下手をすると触れた部分が欠損するという。

 魔族の力を借りて何とか宝箱へしまう事ができ、それは今でも厳重に保管されている、という話だ。


 とりたてて何か物語に大きな抑揚もない、子供に聞かせるようなおとぎ話、かとも思った。

 が、これが寓話ではないのは、その後すぐに理解できた。

 姫が懐から、その対の指輪を取り出したのだ。


 「え?なぜ、姫が?」

 「発見された国家、というのはエスト王国、私がこうして持てるのは、そういう事なのです。」

 「姫は、人魚の血を引く、と?」

 「はい。箱入りと言われ、そのように育てていただいた理由は、この事が世間に知られたら私に害が及ぶ、という理由で父上が匿っていたから、なのです。」

 「え?でも、それってブナガ王は人魚を妃にされた、って事?」

 「いいえ、父上は、実の父ではないのです。私は、東海岸で父上に助けられた人魚そのものなのです。」

 「……。」


 そういう話もあるんだなぁ、というのが率直な感想だ。

 つまりは、姫は人魚で、何かトラブルがあってブナガ王に助けられ、そのままエスト王国で暮らしている、と。

 でも、それが俺やモンスターの対策と、どう繋がっているんだろう。

 そこがちょっと解らない。


 「私の故郷でもある西方の里、そこが消滅した原因が、モンスターによる襲撃なのです。」


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