モンスターズジェネレート10
早朝、超ご機嫌な笑顔で、シヴァは見送ってくれた。
「むふふー♪、タカヒロ、ではまたな!」
「は、はい、じゃあ、行くよ。シヴァ。」
心なしか、ピラトゥスさんの飛行が荒れているような気もするが、無事イワセ温泉郷に到着した。
「ありがとう、ピラトゥスさん。」
「うむ、しかしタカヒロ、一つ聞いてよいか?」
「ん?何ですか?」
「君はその、誰とでもああして、その、口づけを交わしたりするのか?」
「へ?あ、いや誰とでもって、それはないですよ?」
「そ、そうなのか。」
「どうしました?」
「い、いや、何でもない。」
もしかして、ピラトゥスさんはああいうのに免疫がないのかな。
「とと様、とと様はもう少し、女性の気持ちを汲んだ方が良いと思う。」
「??」
ま、まぁ、それは後で考えよう、な、雪子。
と、結局徹夜となってしまったので、少しだけ仮眠をとる事にした。
サクラ達に事の次第を話した後、露天風呂に浸かって寝た。
昼頃に目が覚めたのだが、一人で寝たはずなのに隣にはシャヴィが添い寝していたのだ。
「あれ、シャヴィ。なぜここに?」
「うーん、おはよう、タカ。」
「おん、おはよう。で、なぜここに?」
「特に意味は無いが、せっかくなので、な。」
何がせっかくなのかはわからないが、もしかしてピラトゥスさんにヤキモチでも妬いたのかな。
でも、心配しなくてもピラトゥスさんと何かするとかはないので安心して欲しい、と思っただけで言わなかったが。
という事で。
昨夜シヴァから授かった魔法のテストをする事になった。
ジパングの調査団の一部がジパングへ帰還したとの事なので、その報告の確認がてらジパングへと飛んだ。
フランとサダコが同行してくれた。
ジパングの調査団はまだ南米大陸での調査を進めているが、先日こちらの情報を伝え調査方法を変更した結果、発現場所の絞り込みの段階まで進んだとの事だ。
ただ、あちらでは人員も限られている為に特定には時間がかかる、との事だった。
ひとまず、俺達としては直近の発生源対策を急ぐ事にする。
で、早朝にやってきたのはジパングの東側の海だ。
「さて、とりあえずテストだな。みんなちょっと待っててくれ。」
「しかし、大丈夫なのか、主様よ。」
「ま、それの確認って意味もあるからな。シヴァの魔法だ、大丈夫だよ、きっと。」
「旦那様、気を付けて。」
「ああ、じゃ、やってみるか。」
シヴァから受け取った潜水の魔法は、俺に宿っている精霊達も知らない魔法らしい。
なので、おっかなびっくりではあるが、まずは発動をかけてみた。
「おお、なんか、ドーム状に展開するんだな。何というかこれ、泡?」
「タカヒロ、これ、結構魔力を消費するけど?」
「ウェンディ、これって水系の魔法、じゃないのか?」
「違うね。ウチらが扱う要素じゃないねコレ。」
「そうなのか。」
そんな事を精霊と話しながら、砂浜を海に向かって歩いていく。
波打ち際をそのまま進み、20メートル程来たところで完全に水面から没した。
「すげえな、俺の周りだけ完全に防水された空間になってる。」
「やっぱりこれ、泡みたいなもんかな?」
「ま、今の所はな。」
「今の所?」
「この魔法な、もう一段階あるみたいだぞ。」
そう、この魔法はこの泡を作るだけじゃない。
ここから、泡ではなく水中でも陸上と同じように行動できるようになるみたいだ。
「では、次のステップだ。」
その次の段階へと進めると、泡は俺の体表面に張り付くように収縮し、さながら陸上での状態と同じになった。
呼吸も問題なくできて、水圧も感じられない。
もっとも、まだ水深5メートル程だけどな。
「おお、何というか、凄いなこれ。水中を自由に動き回れるぞ。」
(しかし、これはタイムリミットとかあるんでしょうか?)
「ムーン、お前これ解析とかってできるか?」
(いえ、無理です。全く分かりません。)
「お前がそんな即答するくらいだから、まぁ、そうなんだろうな。とりあえず一旦上がろう。」
砂浜へ引き返し、フラン達の所へと戻って状況を説明した。
という事で、おおよその感覚は掴めたし確認もできたので、次は……
「では、私が一緒に行ってみよう。」
「シャヴィ、海水って問題ないのか?」
「ああ、海水浴は好きだからな。よく泳ぎに行ってたし。」
「そ、そうか。あ、ひとつお願いがあるんだけど。」
「ん?なんだ?」
「龍の姿になって付いて来てほしいんだけど。」
「ああ、いいよ。というか、その大きさで行けるのか?」
「その確認だよ。悪いけど、付き合ってほしい。」
「わかった。じゃぁ」
シャヴィは龍本来の姿になって、俺と一緒に海中へと突入した。
「おお、これは凄いな。というか、海の中ってこんな感じなのか……」
「潜った事はなかったのか?」
「そうだな、泳ぐだけ、だったしね。」
人数が増えても大丈夫なようだな。
各個が普通に陸上と同じ行動ができるみたいだ。
同じようにフランとサダコも連れて確認してみると、これも問題ないみたいだ。
「なぁ、ムーン、魔力の消費量って増加してるか?」
(いいえ、人数が増えても変化しないみたいですね。)
「そうか、ありがとう。」
一旦再び砂浜へと戻り、今度は潜航深度の限界を確認してみる。
「ちょっとかなーり深くまで行ってみるから、時間がかかるかもしれない。」
「いいさ、待ってるよ。」
「旦那様、お弁当がありますから、その間に準備しておきます。」
「ワシはちょっと貝でも獲ろうかの。」
「あはは、じゃあ、行ってくるよ。」
さて、じゃあ、行ってみるか。