モンスターズジェネレート5
アメリカ大陸の調査は、ジパングが請け負ってくれた。
その依頼にジパングへ行った時の事だが
「兄者、その依頼は承った。こちらとしてもモンスターの動向は注視しているからな。」
「というか、だな……」
「ん、何だ?」
「結局、兄者で固定されたんだな。」
「当然だろう?フランの良人なのだからな。」
「普通、妹の旦那は弟、じゃないの?」
「まぁ、前にも言ったが、兄者は紛れもない勇者なのだ。僕がその兄になど畏れ多いじゃないか。」
「……いいけどさ。」
ジパングを実質統べている殿様から兄者とか言われたら、何かこう、こそばゆい。
とはいえ、それはこうした密室で身内だけの場合だけで、公の場ではその限りじゃないので特に問題はないとは思うけど、ねぇ。
「しかし、ジパングでもモンスターは出現頻度は上がっているんだろ?」
「そうだな。徐々に増えてきてはいる。が、ケンシロウの采配で事なきを得ているがな。」
「そういや、ケンシロウは?」
「あやつは最近執務に追われているようだ。何やら発明に没頭していて業務を溜め込んでいたとか。」
「あー、アレか……」
ケンシロウは鉄道の開発と併せて飛行船の開発も進めている。
もっとも、それを教えて推奨したのは俺なんだが、それがケンシロウの開発意欲をさらに刺激してしまったようだ。
ジパングの西半分の統括を任されたので、その仕事量は莫大だろうにな。
「まぁ、あいつには今回の事は言わない方がいい、な。」
「そうだな、僕も黙っておくことにする。仕事を優先させないとな。」
ジパングは島国なので、ある意味警戒しやすく守りもしやすいからか、モンスターの被害は大陸よりは少ないそうだ。
もっとも、今では魔族の人もジパングに移住していて、さらには元々ジパングの兵は強かったので心配はない、と思う。
そんなこんなでモンテニアル王国へも事の次第を伝えた。
丁度その時にエスト王国の国王が訪問していたので、エスト王にも今回の話は伝わった。
「しかしな、タカヒロ殿。エスト近隣でも被害の報告は増えているのだ。調査そのものはこちらでも既に行っておるぞ?」
「そうなんですか。調査の進捗としてはどういう状況ですか?」
「それがだな、芳しくはない。今回シムネの元に来たのはその相談でもあるのだ。」
「エスト王国の調査範囲としてはこの大陸の北東が主になるのだが、それがどうしても広大でな。人財の応援を受けたところなのじゃ。」
「それでしたら、そちらはお願いしてもよろしいですか?」
「うむ、アリシア王国方面にもこうした話はしてある故、各国に任せるがよいぞ。」
「では、俺がまとめた情報はブナガ王へ報告した方が良いですね。」
「そうじゃな、ワシよりはブナガ王への報告を優先した方が良いの。」
「ふっ、タヌキめ。タカヒロ殿からの情報なれば、元よりお前は儂よりも早く掴めるだろうに。ま、一応はそのような仕組みとしようか。」
「わかりました。では、今日はこれで失礼します。」
「まて、タカヒロ殿。」
「へ?」
「先般の話はどうなったのじゃ、うん?」
「えーっと……」
ブナガ王からは先日、エスト王国の姫、ネモフィラ様との昼食会への参加を打診されたのだ。
姫も大層楽しみにしているとの事だったのだが、いまだに一度も会っていない者同士、そんな食事会に行くのはちょっと気が引けている。
まして、姫は大陸一との呼び声が高い美しい姫、らしいのだ。
もちろん、俺にはその点では関係ない事なのだが、どうも姫は俺とどうにかなりたいらしい、とはヨシム王の言だ。
なので保留にしているわけだが…
「ブナガ王、正式には後日返答しますけど、お受けする事とします。」
「おお、そうか。では、逢引の……」
「では失礼します!」
そそくさとその場を後にしたが、どうやらブナガ王も姫と俺をどうにかしたいらしいな…
そんな訳で俺たちが持つ情報を元に各国の合同調査団が結成された。
これで俺たちはある程度的を絞って調査ができるようにはなったのだが、逆に大っぴらに活動することはできなくなった。
各国の顔を潰さないようにしないと、な。
ありがたい事に調査団の情報は真っ先にイワセ温泉郷へ流してくれるとの事だ。
これで情報網の構築はできた。
あとは、的を絞る事に注力しよう。