第11話 リサとカスミと精霊たちと
部屋に戻ると、再び精霊たちに話しかけた。
聞けば、5体の精霊はやっぱり固有の名前は無い様だ。
なので、フェスター達と同じように個体名を付けるのはどうか、と相談したところ
「いいよ、というか早くつけて!」
とせがまれた。
フェスターとムーンに話を聞いたみたいだ。
で、それぞれに名前を付けた。
かなり適当というか、俺の知る創造上の妖精やら精霊の名前をそのまま付けたんだけどな。
火の精霊は“サラマンダ”
水の精霊は“ウェンディ”
風の精霊は“シルフィード”
土の精霊は“グノーメ”
金の精霊は“バジャー”
という感じで決まった。
みんな喜んでくれて、こちらとしても嬉しい。
んで
聞くとフェスターやムーンと、サラマンダ達はあまり交流がないんだそうだ。
要素の区分があるから、なんだろうけどどうもそう言う事じゃないらしい。
魔力の質というか存在の特性というか、そういうのが少し異なるんだそうだ。
フェスターとムーンが、実体ではなく直接俺に宿ったのはそういう違いがあるからなんだってさ。
まぁ、そう言われてもそもそもよく分からないんだけどな。
と、カスミが何か言いだした。
ずいぶんと大人しかったな、そういえば。
「ねぇ、タカヒロ。」
「ん、なに?」
「あんた、サクラと一緒だと、何か緊張しつつも浮かれてるよね。」
「ん?まぁ緊張はするけど、浮かれてはいないんじゃないかな、そんな余裕ないし。」
「いーや、それはないと思う。というかさ、あんたサクラの事どう思う?」
「そうだなー、あの人絶対山賊をやってて良いような人じゃないんじゃないかと感じた。」
「へー、それで?」
「何というか、もっとこう高貴な位の身分の人なんじゃないかな、恐らく。」
「というと?」
「最初に見た時に貴族というより皇族?みたいな印象を受けたんだよ。」
「それはまた随分好奇な目で見てたのね、高貴なだけに!」
お前、それ絶対に人前でやらない方がいいぞ。
おやじギャグはおやじの専売特許、言い換えればおやじの証拠だ。
お前おやじギャルになっちまうぞ。
俺は嫌いじゃないけどな、おやじギャル。
「やかましいわ!で、他には?」
「これ以上は俺の想像なんだけど、山賊に身をやつしてまでやらないといけない事があるような感じ、かな。」
「そうじゃなくてね」
「ん?」
「んもー、あんた結構鈍いって言われない?」
「何が?」
「……まぁ、いいわよ。」
と、そんなやり取りを見ていたリサは
「タカヒロさ、サクラの事好き?」
「え?」
「タカヒロ、サクラと居るとっていうか、サクラに対しては何か、優しい目というか、そんな顔するよね。」
「あー、どっちかって言うと、緊張してる顔じゃね?」
「そうなの?でも、なんて言うか、あったかい気持ちが伝わってくるんだけどさ。」
「リサ、タカヒロにそれを聞くのはまだ早いかもよ?」
「え?そうなの?」
「こいつさ、絶対アレよ、アレ。」
「アレって?」
「ちょっと耳をかして、リサ。」
「なになに、わたし達にも教えてよ!」
何やら俺以外でこそこそと話を始めてしまった。
俺、ちょっと疎外感。
ま、いいけどね。
そんなやり取りを子守歌に、その日は寝たのだった。