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第9話 鍛冶師の少女


「クエストをお願いします。ちなみに今日から冒険者活動再開するのでよろしくお願いします」


 冒険者ギルドの受付嬢に話かける。


「んー……新人君ですか? 私はミエハ。登録はした? しないとクエストは受けられないからね」


 見慣れない顔にミエハは再度確認を取る。


「大丈夫です。多分、……半年前くらいかな。たまたま出会った副ギルド長に直々に登録してくれました。これ、登録カードです」


 金属のカードを出す。受付嬢のミエハは素早く手続きし、返却した。


「新人君だね。じゃあ、どんなクエストにする? 今のおすすめは繁殖期で増えているモンスターの討伐の報酬が中々いいと思う。けど割と狩りまくってて個体数少なくなってるから少し北に行ったほうがいいかも」


「なんか注意することとかあります?」


「あー、先月にA級魔物の雷弧(ライコプ)が出現したって言う報告が北にあるホク領の方であったけど、それからの進展は聞かないから見間違えだと思う。森自体はこのクリア領とホク領で繋がってはいるもののそんな心配はしないで平気じゃないかな。まあ確実に誤報だよ。雷弧(ライコプ)なんておとぎ話だもん」


「なるほど。ちなみにそういう想定外の魔物の討伐代は出ないのですか?」



 心配性だが用意周到に越したことはない。


 ミエハは笑いながら教えた。


「ああ、そういう場合は死体を直接持ってきてもいいけど、それだと荷物がかさばるからお金になる部位だけ持ってくるのもありだね。そもそも雷弧(ライコプ)なんて伝説上の魔物だよ。少なくともこんな人里にいるわけないから安心しな」


 今回のクエストは、慣れを目標にして選ぶ。


 特別なクエストなど選ぶ必要性がイロハにはないため、普通のおすすめクエストを選択した。今回はシュガーズ傭兵団の仕事では無い。


 異世界での冒険。RPG程度の知識しか持っていないがそれでもできる限りの準備はする予定だ。


「クエストの期限は十四日以内。指定個数は特になし。まあ、いつもの売価にちょっとした色がつく感じです。頑張ってくださいね」


「……さて、準備しないと。準備しないときっと痛いだろうから」


 返却された冒険者カードを仕舞う。

 次に向かうのは先生から紹介されたとある鍛冶師だ。武器をそこで揃えよう。




 ■ ■ ■




 カーン…コン…カーン…コン


 鉄を叩く音が何種類もの音程で重なる。


 たまに鍛冶職人の家族らしい人が忙しそうに家の前の掃除などをしていた。


「……やっぱり黒の方がよかったな。少し恥ずかしい」


 先生から餞別で貰った白いマントがやけに視線を集めている気がする。羞恥を頭の片隅に捨て、広場の椅子に座る。背中に伝わる噴水の水音が気持ちいい。


「……ああ、そうだった。俺は公園でボーとするのが好きだった」


 不意に思い出した。前世と言ってもいいのかは分からないが、取りあえず前世の自分は、今のように公園などのベンチで様々な自然の音を聞くのが好きだった。


 よくそうしていたのに、久しぶりに思い出した。


 まだ前世はだいぶ引きずってしまっている。転生したからといって捨てきれるものでもない。




「ねぇ」


 不意に声をかけられた。鈴のように透き通った声だ。


「貴方が私の救世主?」


 噴水に耳を傾け、目は閉じていたが声の主は知っている。

 まともに武器や防具を持っていない俺に先生が気を使い、今回会わせてくれた人物だ。



 先生の友人の友人で、変人で狂人。されど一流の鍛治職人とやらを紹介された。


 待ち合わせは今いる場所だった。つまり彼女がそうなのだろう。


 瞑っていた目を開くとそこには予想とはかけ離れた美人がいた。声からして女性というのは予想していたが、とてつもなく美しい少女だ。



 噴水から零れた水のように輝く青白い髪。長いまつ毛の下にある大きな瞳。服装は鍛治職人に似つかわしくないフリルの付いたミニスカート。


 長袖から出る包帯を巻いた腕は少女の細腕そのものだった。


 腰には不釣り合いなハンマーらしきものがぶら下がっていた。


 どこか儚げな様子の少女。



「君が俺の防具とかを揃えてくれるサラさん?」


「私はサラ。あってる。ね、質問に答えてはくれない、の?」


 意図が分からないことから、あえて無視した質問を追求される。用事をさっさと済ませようと会話の話題を合わせる。


「救世主? とやらがどんな隠語なのか知らないし、何を求めるのかは分からないけど代金はしっかり払いますよ。先生からは手持ちで絶対足りると聞いたから一応全財産を持ってきています。俺は早いところ独立した生活の基盤を揃えたいんですよ」


 サラが俺の手を取り、握る。こそばゆい感覚に落ち着かない。


「ふーん……」


 俺の反応が面白いのかサラは微笑する。上品な笑みは到底鍛治職人に見えなかった。貴族と言われた方がしっくりとくる。


「かわいいね。確かに私が作る武器と防具の代価は誰でも払え、る。こんなに綺麗でかわいい君が払ってくれるかは、分からないけど、取り敢えず私の家までおい、で」


 やや吃音症なのか、サラは独特な話し方をする。


「かわいいって……男に言うか。まあ、よろしくお願いします」



 サラに手を握られたまま、彼女の家に導かれていった。



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