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第5話 覚醒【不死】

 

 静かな覚醒は、確かな高揚感と共に訪れた。


 翼が生えるでもなければ、魔法が使えるようになる訳でもない。

 だが、ひとつだけ確かな変化があった。


 感覚が活性化されるかのように、熱を感じた場所の傷が治っていった。



「痛みが……消えた? それに怪我までも」


 手を何度も握りしめ、感覚を確かめる。

 視界は確かに光を受け入れてあり、とても澄んでいる。


 他にもあまりの痛みに感覚が消えていた所や全身に付いていた傷が綺麗に無くなっていた。


 しばらく呆けていたが、能面の化け物はその隙を逃さず攻撃を加える。


「こ……れは。痛っ! 痛ぇ!」


 能面の機械は触手の先端を剃刀にして全身を切ってくる。何度も何度も切り付けられ痛みが増長していく。鈍痛が脳にまで去来していく。


 しかし、意識が途切れかけた次の瞬間だ。


 確かに見た。

 傷口が逆再生のように再生している様を。


 切られて、回復して、切られて、回復。それを延々と繰り返されていた。



 痛みは何度も訪れた。全身に巻き付く痛みが脳に警鐘を鳴らしていたのも分かった。

 しかし、どうしようもなかった。傷は出来た側から治っている。感覚だと死ぬことはない。


 ただ死ぬほど痛いだけだ。




 能面の機械は作業的に暴力を振るう。


 三分は経った頃。もはや慣れ始めた痛みの中、虚ろな意識で段々と理解してきた。


 まず、今回自分に訪れた変化、違和感と言ってもいい。

 それは肉体再生能力。かなり強力で即効性のある仮の不死身の様なものだ。


 正直、今はそれぐらいしか分からない。


 また、能面の機械を破壊するのは限りなく不可能。

 一度も動きを止めず、剣やチェーンソーを振るう限界のないエネルギーに無尽蔵の魔力。


「どうにかしないと」


 能面の機械は少なからず心が存在するはず。そうでもないと、俺をいたぶって楽しむ人間臭いことしないはずだ。

 ということは必ずこの状態を打開出来る手段が存在するはず。


 隙でも作ればチャンスは必ずあるはず。


「……(楽観的だがしょうがない)」


 風のように降り注ぐ猛威から逃れようと攻撃を避け、走り出す。


 八回ほど体が切断され、ようやく少しの距離を動くことが可能になった。


 続いて周りに散乱しているアイテム群の中から使えそうなものを探し出す。




 さびた呪いの剣を握る。

「があああああ! 痛った! 使いもんにならねえ」


 柄を握った瞬間、指先から激痛と共に腐敗していった。いくら何でも呪われすぎていて使えない。腐敗した部分は再生されるが、そのたび金槌で殴られるような痛みを帯びていればまともには使えない。


 凶悪な見た目の短剣を振りかぶり投げつける。

「うわあ……」


 能面の機械に当たった場所を球体上に消し去った。明らかに持ち手を含んだ短剣の数倍の範囲を消失させていた。剣として使わせる気が微塵も感じない。だが能面の機械の動きが鈍くなった。


 金色に輝く盾。

「重い! 持てるか」

 重量がありすぎて使えない。


 ハンドガンのようなもの。

「当たりだ!」


 一般的知識で操作してみる。引き金を引くと銃口に小さな太陽のようなものが生成され僅かなラグの後打ち出された。


 豪炎を纏った球体は銃口の向く先に立っていた能面の機械に直撃する。今までのどんな武器よりも手応えを感じたハンドガンで奴を火柱にする。


 ハンドガンを握る手が熱により焦がされていくのを感じながらも打ち続けた。




 ドガァアアアアアン!


 能面の期間にいくつか繰り返し攻撃を当て続け、やっと巨体を地面に沈めた。


「ガガガガガガガッガガガ。思考経路に異常………緊急モード発動『プロテクト』『防御力アップ』『自動再生』『進化』再起動まで四分三十秒」


 突如、能面の機械が動きを止めた。全身から生える腕などを体内にしまい、亀のように体を変形させる。


 ご丁寧に音声として出したアナウンスではこれが緊急モードとやらなのだろう。


「ひとまず助かった。今のうちに何かしらしないと」


 果てしない空間に反して、すぐそばに存在する能面がついた巨大な機械に気持ちがこわばる。


「俺はついさっきまでこいつと戦っていたんだよな……」


 数分前まで、全身を切り刻まれていた。


 改めて信じられなかった。敵は明らかに人智を超えた暴走殺戮兵器。一方は学生。特別な武器がなければ何も出来ない学生。対面してもいい存在とは、とても思えない。


「いや。もう、ただの学生ではないか。肉体は不死身だし、そもそも日本にいた頃の俺の体ではないんだよな」


 様々なアイテムを探っていく。


「てか、本当に運ないなあ。俺」



 それは偶然なのか。それとも必然だったのか。

 偶然手にした透明な水晶の中で紫色の光が泳いでいる。


 先ほど自分で呟いた言葉を訂正したい気分だった。


 勇者に与えられたオーパーツの中の一つにこれと同等のものがあった。名は『転移石』。自分で行ったことがあるところなら転移出来るものだ。


「……マジか。本当に。転移石だ……!」


 沈んだアイテム群の中で孤立するように輝く石。

 色羽には天上から垂らされた糸に見え、その確かな希望に縋り付いた。水晶に秘められた光に懇願するように言った。細かいことは考えられなかった。


「最高だ。ご都合主義は自分に回るとこんなにいいものか。……転移、バルキス王国地上」


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