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第3話 生き地獄は祝福から

時が飛んだりと少々ややこしい導入ですみません…!


①異世界転移

②クラスメイト&国家&国教の裏切り

③『落とし穴』と呼ばれる地獄に落とされる←いまここ


という感じです!


「……あー、しんどい……指痛い」


 今いる所は、リューイが「跡形もなく消し去る手段」といっていた『グローリー・グループ』本部にある落とし穴だ。


 落とし穴とは、

 曰く、『教会が独占している、悪しきモノが無限に仕舞える巾着袋』。



 とある聖者が美しい世界のために、汚いものに限り無限に仕舞える空間魔法を作りそれを実態とさせた『オーパーツ』だそうだ。


 過去の延長に有る現代にて、そのおとぎ話は真実で、「世界の異物」たるイロハは悪しきモノに該当された。


 ……らしい。


 それは、あの後意識が薄れる中運び込まれた教会本部にて、投薬と人体研究を繰り返される際の会話で得た情報だ。


 穴に落とされたのは、空間に放り出された感覚から理解した。だが、薬のせいか意識がずっと朧気だ。夢と現の境がわからなくなっている。


 そもそも、いまどこにいるんだよ。


「落とし穴って……なんだよ。……どこなんだ一体……まじで」



 きらきらと輝く少女が足元で座っている。

 投薬で未だに狂っている頭が見せる幻覚だ。分かっている。


「……聖女見習いのあの子が見える」


 幻想が目の前で美しく笑みを浮かべる。


「美味しいお菓子が焼けたので勇者様に是非食べてほしいです!」

 そう言っていた聖女見習いは、イロハに毒物を寄越した。


 金髪が太陽にキラキラと輝く美しい少女だった。 




 目の焦点はあっていない。

 意識は雲を泳がすように、ままならない思考の波に揺られる。


 

 頭には成功と栄光への道があった。

 苦労や苦痛はあっても、きっとどうにかなると思っていた。



 だから。絶望してしまう。




「きゃはは。才能とセンスって生まれ変わってもついていくんだ。うける」


 クラスメイトの女は悪意を振りかざし笑う。



 頭に甲高い声とさすれた映像が回っていく。場面も、時も、声も変わっていく。

 夢の中の幻のように、消えては現れる。




「王……。勇者といえど彼は集団の異分子。無能でも脅威にならないとは言い切れない。処分するべきです」


 貴族が王に進言をしている。端では教会幹部が笑みを浮かべていた。



「やあ。色羽。寝れたか?」


 友人は笑いかけてくれている。



「弱いな。弱い。弱すぎるんだ。あなた様は他の勇者様とははっきりと違います」


 優しいはずの騎士様は弱者に哀れみの笑みを浮かべる。



「雑魚が」


 酷いクラスメイトだ。正論だ……。彼はあざ笑う。




「弱い」

「頑張れよ」

「なんで出来ないの?」

「あー……うん。休んでなよ」

「いらない」

「使えない」

 彼は、彼女は、騎士は、クラスメイトは、貴族は、メイドは、神父は、王子様は、お姫様は、聖職者は、王は、世界は、色羽を笑った。




「色羽様。お疲れ様でした。ゆっくりとお休みください」


 俺を慕ってくれているメイドは暖かい微笑みを浮かべながら布団を掛けてくれた。



 ああ。ロイズ。確かに俺は良くやったよ。もう眠りたい。頑張ったんだ。

 本当だよ。もっと頑張れる。だから。だから―――。



 夢は、覚める。





 遠く、遠く、ただただ世界から遠くにと、存在することを拒絶された廃材達の寝室。そこには色羽とひとつの化け物が存在していた。


 今まで生きてきて感じたことのない絶望を感じる。

 絶望を分解してみると、痛みや虚無感、悲しみや怪我の程度、全てが理不尽にツメを立ててくる。


 そうだった。落とし穴って……地獄だ。

 さっきまで「出して出して」って泣きわめいていたのは誰だ


「俺だ……っう……あぁ……痛」


 その()()はずっと遊んでいた。この空間に訪れた俺を歓迎するかのように、ずっと、様々な手段で、あらゆる行為を、遊んでいた。


 ()()が魔法を唱える。


「……カナカナ悲しき聖なるあくなる奇なる悲しきききき、敵仲間に楽で瞬なる救いをををを──『スパイラルカッター』」



 乱雑な風魔法が襲う。揺られた思考も急激に肉体に向けられる。物理的に吹き飛ばされる俺の四肢。肉体は痛みを離してはくれない。



 あし、が捻じれて焼かれて砕かれて切られてどこかへ、ひゅんって飛んでいった。


 うで、が刺されて熱されて焼かれて爛れてかわをむかれてまっかに。あ、いま片方どったかに冒険しにいった。かえってこないんだろなあ。


 おなか、が凹んで凸んで飛び出て赤くてふとい、いとがいっぽんでろーんって垂れ下がってた。にくじるが垂れる。


 あたま、が痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くていたくていたくてもうやになる。



 ()()が魔法を唱える。



「逃げは悪。けれども、救いしは我にありぃぃい!──『全回復 』! 嗚呼くるしいのだろうかかわうそ、あかうそ、かわいそう‼ 1日限定の、獄! ……極楽体験をう!!!──『 自然治癒能力+600%』」


 自分のものだと思えない真赤な体に紫色の魔法がかかる。

 体は再び正常に戻った。


「あ、……最悪だ。なんでまたまともな神経にする。もう、殺せよぉ……」


 全快した脳が感じたくもない、枯れた現実を見せてくる。


 血だらけの身体。

 目の前には金属で出来た化け物。

 化け物はストーキングし続ける。

 俺は逃げるだけの獲物。


「あー、あ。後悔しかねぇ。もう、何なんだろ。世界はさあ、何故こんなにも俺に厳しいのか。ただ生きたいだけなんだよ。なんでそれが許されないんだ」


「へーき? へい? き? 兵器、兵器ィィ! 具現化、リリース──『 自己延長の堕器(アンチペルソナ )』!」


 狂った様に不規則な動きを続ける能面の黒い物体。機械だろうか。その動きは不規則だが、それ故に殺しに徹していた。腕が伸びたり、変な魔法を使ったり、武器を虚無から生み出したり、敵に回復を掛けたりとその行動は全く意味が分からない。



「異世界の文明がこんなにも発展しているのなら、『勇者』なんて必要ないだろう」


 否、それは有り得ない事。可能な限りこの世界の文化や文明を調べたが、このような殺戮マシーンを生み出せる技術は存在していなかった。


「流石は『グローリー・グループ』の裏顔だ。こんな素敵な会場を用意してくれた」


「ふしち、神神神神、怨ん怨ん怨ん、ひが様は?――『痛覚無効』」


「……分かんねぇよ。人の手には到底扱いきれないと判断された呪具、防具、武器、アイテム、呪い……そして人間。人の手によって作り出された、ゴミ溜めに放り捨てられたお前らが何を言っているかなんてな」


 俺がいる所はこの世界の汚点。


 『グローリー・グループ』本部地下にある、世界に生み出されたオーパーツ(祝福)


 『グローリー・グループ』が活動の一環として行っている呪いのアイテムの回収で呪いを解除できなかった物、また秘密裏に行っていた違法実験の手に負えない産物を捨てるゴミ箱だ。


 そこに遺棄された。


 仕組みは不明だが、そういった「手に負えないモノ」が何かしらの偶然で生み出されてしまったモノが目の前の化け物だった。


 地獄は続く。朝日はまだ見えない。

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