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第29話 大月真矢

「異世界人……って珍しいはずですよね?」


「珍しいよ。だいたい魔法や武技を覚えていることが多いし、何より『超能力』持ちが多い。伝説上の偉人にも名前が乗るくらいだ」


 俺は自分の『不死』を伏せたまま会話を続ける。


「この世界に異世界人がどれほどいるかご存知ですか?」


「純血は200人とかだっけな? 一年におおよそ20人発見されて、なんやかんやそのくらいだったと思う」


 その数字はイロハがシュガーズ傭兵団で学んだ座学と同じであった。


「ええ、どうやら死体で発見されるパターンもあるらしいですけど」


 200人というのは無事に生存が確認できている人数である。


「まあ、突然知らない土地に飛ばされるんだ。そりゃ死人もでるし、去年はたしか、まれに見る不作の年じゃなかったっけな。一年間通して()()()()()()()()()()()()()()()()()


 俺はわずかに思考する。

 その年は俺たちクラスメイト24人が同時に異世界転生した年だ。


 俺を裏切った王家傘下の騎士リューイはそれを「()()()()()()()」と言っていた。つまり、一年間で異世界転移するはずのストックを強制的に消費するようなオーパーツを用いて異世界に勇者として召喚したのだ。


 いまだ勇者はバルキス国から世界に公式に発表されていない。

 公然の秘密として存在は語られているもののバルキス王国は大々的に広告していないのだ。


「大月さんは、お母様が異世界人と言っていましたよね」


「うん、だから私の氏名は地球の日本風でしょ? それにお母さん譲りのこの髪と瞳も」


「……凄く似合っています。結構、懐かしいです」


 異世界で黒目黒髪は本当に珍しいのだ。クラスメイトさえ各々髪色と瞳が変わっており、日本人特有の黒目黒髪のままだったものは二割程度であった。


「あははっありがとう! 大体異世界人は各機関で重宝されるから純血の人はめったにお目にかかれないんだ。混血の子はたまに見かけるけどね」


「冒険者や職員が多いと聞きました」


 異世界に転移したら人は、夢に生きるか、卒なく生きるかの二択になるようだ。勿論ほかの道を選ぶ者も多いが冒険者が圧倒的に多く、職員として知識と能力を振るうものが次いで多い。


「それで、イロハくんは純血だね」


「……んー、まあ、はい。今はC級冒険者として活動しています。訳があってあまり目立ちたくないので、そこはよろしくお願いします」


 念の為、大月に釘を打つ。冒険者の登録名を馬鹿正直に『イロハ』で登録したこともあり、情報流出は比較的ありえるリスクだ。


「勿論! 私はあくまでA級冒険者の大月真矢! イロハくん達と、オーディンさん達のB級昇格試験監督として責務を全うすることを誓うよ」


 サラたちも交えながら会話を繰り広げた。


 サラやエンマは初めて明かされる俺の事情について根掘り葉掘り聞き、大月も俺に日本のことを質問詰めにした。


 やや疲労を感じながらすべての質問に答えていると馬車は目的についた。





 ファイヤーバードの住処である山だ。


 各々、馬車から降りて準備を行う。

 装備のチェックと荷物の棚卸しを兼ねて準備は万端。


 馬車の御者に待機のお願いと簡単な討伐スケジュールを知らせる。基本的に各パーティで事前に固めた骨組みにそって合同クエストは行われる。


 今回は主に俺とオーディンが中心となって企画した。その内容を御者に伝える際にも大月は帯同する。



「うん。上々。オーディンさんはさすが男爵の騎士だね。言うところなし。それにイロハくんも所作振る舞いや気遣いもできている。優秀な二人だ」


「俺も正直驚いている。君は一介の冒険者にもかかわらず貴族のような振る舞い、礼儀、そして強さを持っている。このあとのクエスト楽しみになってきたよ」


 オーディンからイロハに忌憚のない称賛が贈られる。


「ありがとうございます。私も騎士の戦いなど色々オーディンさんから学ばせてもらいます」


「ドルマの件があり、やや杞憂していたがなんてことなさそうだ」


 オーディンのあまりにもぬけぬけとした笑顔に舌打ちが零れそうになり、すんでで止めた。


「はは。ドルマさんは苦手ですよ。しかし、我々もB級冒険者に足る貢献をします。どうぞ気になさらず、上手い具合に協力しましょう」


 笑顔で手を出す。


 俺の言葉に含められた小さな毒に気づかず、オーディンは握手を交わした。



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