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その①「だけど犬にはとっても弱いコト」

・登場人物紹介

黒川響くろかわ ひびき 性別:男 年齢:20歳 誕生日:6/25 職業:大学生

本作の主人公。抜群の歌唱力を持つが、機械を通した瞬間に不協和音に早変わりする不幸な歌い手。歌手としての道はすっかり諦めているものの、集ったメンバーたちとの心躍る日々を守る為、宇宙人のカメラ役をこなす。本人にいまいち自覚はないが、一応リーダー。

☆イメージソングは岡村靖幸の「どおなっちゃってんだよ」


星畑恒輝ほしはた こうき 性別:男 年齢:21歳 誕生日:4/4 職業:お笑い芸人

黒川の高校からの友達。高卒でお笑い芸人の道を選びめでたく地下芸人へ。見る人が見れば割と悲惨な生活を送っているが、本人は至って楽しげ。ルックスがよく、よく気が利く上に、根明のためよくモテそうなものだが、とにかく絡みにくい本人の性格が仇になり全くモテない。

☆イメージソングは西城秀樹の「走れ!正直者」


須田凛すだ りん 性別:女 年齢:19歳 誕生日:5/25 職業:大学生

男受けしそうな見た目と性格を併せ持った少女。黒川の歌(動画越し)に感動し、星畑のライブを出待ちし、姫月に憧れながら、天知に焦がれるちょっと変わった趣向を持つ。派手なファッションとは裏腹に人見知りで気が弱いが、推しの事となると見境が無くなり暴走気味になる。

☆イメージソングはBABY METALの「ギミチョコ!!」


姫月恵美子ひめづき えみこ 性別:女 年齢:20歳 誕生日:10/3 職業:無職

スラリとしてスレンダーな見た目に長い足、艶の良い黒髪とまさに絶世の美女。性格は非常に難があるが、悪いというより思ったことをすぐ口に出すタイプ。一言で言うなら唯我独尊。自信たっぷりで自分大好き人間だが、イケメンも好き。ただしどんなイケメンよりも自分の方が好き。

☆イメージソングは桑田佳祐の「エロスで殺して(ROCK ON)」


天知九あまち きゅう 性別:男 年齢:42歳 誕生日:3/3 職業:無職

元、スーツアクター兼スタントマン。家を追い出され新たな仲間たちに重宝されながらスローライフを送るおっさん。高身長で、物腰柔らかく、頼りになり、清潔感も教養も併せ持つまさに理想の紳士。黒川への恩義だけで入ったが、正直42歳がやっていけるのか不安でしょうがない。

☆イメージソングはコープランドの「Coffee」


⑥????(???? ??) 性別:? 年齢:? 誕生日:? 職業:?

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☆イメージソングはZABADAKの「CHRISTOPHER ROBIN」


こんにちは。というわけで言った通り人物紹介を付けました。これは今後のテンプレートとなるわけですが、☆の部分は毎話ごとに項目をころころ変えようかと思っているのでよかったら覗いてみてください。











俳優にとって役やセリフは嘘っぱちだが、それを使いながら自分自身を取り戻すことで本物の演技となるのだ。 ー香川照之




                     1



西洋モダンなわれらの根城とあとおまけの流星群にすっかり感動ムードのメンバーだったが、屋敷を跨げるのは最後のメンバーを集めることができてからである。「引っ越しの準備もあるだろうし、5日間以内には片を付けたいね」という天知の言葉でお開きとなった会の余韻は、黒川がたった一人の部屋で横になっても易々と消えるものではなかった。


興奮じみた余韻は、おそらく明日、早速最後のメンバーについて考えるミーティングまで続くことだろう。どうせ寝られないんなら…と、卒業アルバムやら連絡網やらZ世代の平均と比べ明らかに数が劣っているSNSのフォロワーやらから、少しでも相応しそうな人間を探すことにした。が、人脈の薄さも祟って全く見つからない。そんな中、黒川のアカウントに何やら動画が届いていた。黒川個人に向けてならまたとない珍事だが、恐らく黒川が通う大学の生徒に無差別にばらまかれているものらしかった。


「なんじゃい………こりゃ」


動画の内容は凄惨の一言……というか騒々しい汚らしい黒川の嫌いなタイプの騒動系動画だった。おそらく黒川の通う東阿大学の学生とみられる生徒たちが飲みの席で暴れている。騒々しいのはもれなく全員だったが、中でも秀でて騒がしかったのは、彼らが騒いでいる原因でもあるであろう女性によるものだった。女は奇声を上げながら、会場内の酒や料理や調味料やらを一人の男にぶっかけている。勿論会場というのは大学ともこのグループとも何一つ関係がない一居酒屋である。


この動画は要するに猛烈に拡散されているのだ。文字通り本校のブランドを穢した女を本校生徒総出で吊るし上げている。動画に対するコメントもほとんどが女を非難したり、嘲笑したりするような内容だった。女の学部や名前、アカウントまでさらしている者もいる。勿論、黒川はこのサバトには参加せず、何だか興がそがれた気分でそのまま床に就いた。



                     2


翌日、集合が13時からにもかかわらず、須田と姫月は10時前には集合場所である黒川の家にやって来た。確か、家のない姫月は近いからという理由で凛の家に止まっていたはずである。


「あの……どしたの? 随分、早いけど」


「す、すいません……。ご迷惑ならすぐに帰りますけど………」


「別に迷惑じゃないよ」と黒川が言う前に、明らかに不機嫌そうな姫月が「どこに!?」と叫ぶ。


「何がゴミ屋敷って程じゃないよ!! 空き巣にでもあったのかってくらいゴミまみれじゃない!?」


「ううう……ご、ゴミじゃないですよぅ。どれも、大事な……」


「床に落ちてるのはゴミって言うのよ!! 私にケガさせるってアンタ時代が時代なら死刑よ!!」


「どの時代の法律だよそりゃ……。ていうか怪我したの?」


「はい。その……CDを踏んづけられてしまって……うう……AC/DCが……中まで粉々に……」


「私の心配しなさいよ!!」


「そりゃ、床にCDおいてたらそうなるって……それで、家飛び出してこっち来たのか」


「はい、すいません。急に押しかけて………」


「いや、それは全然いいんだけど……あ、ホントだ、連絡来てた。 ごめんね俺今起きてさ……こっちこそ寝起きだから何のお構いもできなくて」


「全部、棚に入ってる分まだいいけど……アンタの部屋も大概ものだらけね…。そんなに何を集めることがあるのかしら?」


「まあ、それは完全に価値観の違いだわな……凛ちゃん、壊れたCDって何?『地獄のハイウェイ』?」


「イエ、『ボール・ブレイカー』の方で…………あ!はい!それですそれです!!」


「良かったら貸すけど……何ならコピーしてもいいし」


「フッ…アンタ、ここにある奴全部コピーすればいいじゃない」


「そ、それは流石に!! あ、あと、お気持ちは嬉しいんですけど……コピーはしない派で……」


「あ~!分かるよ……コピーCDって結局、サブスクと変わらない気がするもんな!!」


「そ、そうなんですよ!サブスクでいいじゃんってなっちゃうっていうか……」


「サブスクでいいじゃない」


「本当にそこは価値観の違いなんだよ……」


「そういえばエミ様って……普段、何をされてるんですか?」


「何よ? 別に何しててもいいでしょ?」


「そうだよな。音楽とか映画とか漫画とか……そういうのあんま見てるイメージないわ」


「アンタらねぇ……人間の趣味がそういうサブカル方面ばっかりだと思ってるんじゃないでしょうね?」


「じゃあ、グルメとか?」


「別に~? まあ、基本的に奢りでしか外食しないって決めてるし……」


「じゃあ……自炊……とか、されるんですか?」


「あんなの、誰かに貢ぎたいと思ってる下っ端気質の奴か、暇人しかやってないわよ」


(お前暇人じゃん)


「え~っと………じゃあ、えっとぉ、旅行とか?」


「私、遊園地とか寺社仏閣とか全くテンション上がらないのよね……あと絶景も……」


「動物飼うとか?」


「私、動物も動物好きって露骨にアピールする奴も大っ嫌い!!」


「運動って………柄でもなさそうだけど」


「私、金になるでもないのにする努力って一番しょうもないと思うの」


「分かりましたか? 黒川さん。エミ様は自分以外に興味がないんですよ!」


「何で凛ちゃんが得意げなの? 一緒に質問してたくせに……」


「そうよ……アンタ、私の何を知ってるってのよ。普段私が何読んでるかとか分かるの?」


「え?………え~っと……う、えっと…ファッション雑誌とか?」


「ブ~……何が悲しくて自分よりもブスばっかりが映ってる本なんて読まなきゃいけないのよ」


「え、ええ、えっと、んえ~………手相の本とか?」


「占いなんて当てにするわけないでしょ?」


「う~………ん。あ、『ちいかわ』とか?」


「何それ?」


「イケメン俳優の写真集とかじゃないの?」


「バカね。写真見てたら私のものにでもなるっていうの?」


「じゃあ、何読んでんだよ……」(ぶっちゃけどうでもいいけど)


「………はい、お手上げです」


「正解は何も読んでない、よ」


「……………時間無駄にした気がするぜ」


「いいじゃない………どうせ、することなんてないんだから」


「ま、漫画も面白いですよ? ホラ、これとか!」


「ん~………何これ?そもそも作者の名前がなんて読むか分かんないんだけど…望月…ホウタロー?」


(漫画初心者一発目に『座敷女』薦めるスタンスすげえな)


そこから数時間、各々漫画を読んだり、スマホをいじったり自由に時間を潰していると、11時半ごろに星畑がやってくる。実は、間を持たせるために黒川が密かに呼んでいたのである。


「よう、須田のCDに足斬られたんだって?」


「そうよ……傷口から馬鹿が感染しそう……」


「根も葉もないこと言うなよな……」


「えへへ……私の馬鹿成分が、エミ様を汚染……へっへへへへ」


「………まんざらでもないのかよ……」


「まあ、でも、床にCDが落ちてくるくらいで悲鳴上げるようじゃ………俺の部屋にはとても入れねえな。つっても、どうせお前もいざ部屋持ったら汚くするタイプだろ?」


「高校の時、エミ様の机の中は何にも入ってなくてすっごい綺麗でしたよ!!」


「フン……机の中どころかロッカーにも何にも入れてないからね(ドヤァ)」


「何しに学校行ってんだよ……と、思ったけど行く意味見いだせなかったからやめたんだっけか」


「家持っても帰らねえタイプだなこりゃ……」


「まあ、星畑も教科書の写真とか全部無理やり消してたけどな……」


「ああ!消しゴムですっごい時間かけてこすったら消えますよね!!」


「そう……こいつ、梶井基次郎の写真、キン肉スグルに貼替えてたからな」


「昔の話ぶり返すなよ……恥ずっちい」


「今も大してやってること変わらねえよ」


「ねえ~…………あの人はまだ来ないの?」


「天知さんか? そりゃ、1時までは来ねえだろ」


「呼びなさいよ。もう集まってんだから」


「まあ、確かに。呼ぶ呼ばないは別にしても、全員揃ったことくらいは言っとくべきじゃねえ? なんか若者ばっかり集まって、年長者を蚊帳の外にしてるみたいだし」


「そうかな? 時間にルーズな連中だと思われたくないなあ……」


「思われんだろ。理由だってあるんだし」


「は!! ちょ、ちょっ、ちょっと待ってください!あの、私の部屋が、その、ゴミ屋敷だったことは、その、ご内密に………」


(ゴミ屋敷って認めた……)


「駄目よ。それ言わないと私が早くこいつに会いたくて仕方がない女みたいになるじゃない」


「ううう…………ガサツな女だと思われたくない………」


(手遅れだと思う)「ま、まあそんくらいで人を嫌うようなタイプじゃないって!絶対!」


「俺も神経質なタイプよか、ガサツな方がいいぜ。俺がガサツ魔人だし」


「で、でも…………星君はお料理作れるし……ガサツな人はきっと餡掛けなんて作れませんよ」


「ありゃ単なるバイトしてた居酒屋のランチメニューだぜ?ガサツってのはそういうんじゃなくてさ…もっと……こう……例えば……俺だったら例えば、そう!……俺は時々パンツを2日同じ奴はく!!」


「うっげぇ……お前よくそれを目の前の女子に言えんな……俺ん家では履き替えろよ?」


「ガサツだろ?」


「ア、アハハ……そ、それは確かに……」


「姫月とかそういうの信じられないんじゃねえ?流石のイケメンでもダメだろ?」


「……………………………………別に、どうでもいいわよ」


「? 何か反応薄いな……。ドン引きしたのか」


「何かだんだんとんでもないこと言った気がしてきたぜ…芸人間じゃザラなんだけどなあ」


「あ、でも……そう言えば、エミ様って、あんまり荷物を持ち歩かれてないですけど……いつもどこに、着替えは入れてるんですか?」


「は!まさかお前も!」


「そんなわけないでしょ!! この前まで泊ってた男の家にそっくり置いてきてるだけよ!! 今日だってホラ!アンタの服着てるでしょ?」


「え、あ……………ホントだ……き、気が付かなかった……比較的地味な奴だから」


「ていうか、勝手に他人の服着るなよ……」


「盗人猛々しいにもほどがあるぜ」


ちなみに凛が地味だと言った服には頭がもげたテディベアのイラストがでかでかと描かれている。


「そ、それはもう全然! むしろ着ていただいて有難いというか…へへへっへへ……あ、あれ?ていうことは……あ、下着も、私のですか? あ、でも、ブラのサイz」


「アンタそれ以上何か言ったら殺すわよ」


「ブラジャー使いまわしって、女的には不潔の部類に入んのかな?」


「死ね!!」


「星畑お前、もうちょい恐れってもんを知れよ」


「あ、あの~………エミ様、今泊めてもらってるっていう……その、方とはどのような関係で?」


「ん? ATM」


「あっ!そうか………そうですよね! ああ、よかったぁ」


(いいのか?)


「もう手の切り時ね……家も手に入ったし……」


「あと一人、増やさねえとその話もおじゃんだろ? 言っとくけど俺もう何のあてもねえからな」


「何よ それでも芸能人なの?」


「自称とはいえ、お前だって芸能人だろうがよ……あんま言いたくないけど、俺の友達にイケメンいねえんだよ」


「ホストで働いてたやつのセリフかよ」←友達A


「こいつの店、酷かったわよ? 一人ウルトラマンみたいな顔の奴いたし」


「お前、シュガー満田さん馬鹿にすんなよ? あの人、アブラゼミのモノマネ世界一上手いからな?」


「世界一ホストにいらねえ技能だ………」


「ウフフフフ……皆さん!もう、そんなことは心配しなくていいんですよ!!」


「え?」


「だって私たちには正真正銘のベテラン業界人! 天知九様が付いてくださってるじゃないですか!」


「まあ、確かにそうなんだけどさ………あんまりそっち方面では当てにしないでくれって言ってたぜ? 天知さん……過度に期待しすぎちゃかえって迷惑かも……」



                    3


「芸能界の知り合い? 一人もいないよ……スタント仲間なら数人連絡先を知ってるけど……引退後も顔を合わせるような間柄じゃないし………」


結局、呼ぶに呼び出せず13時ちょうどに訪ねてきた天知は、暗い顔でそう言った。黒川が「だから言ったでしょ」と言わんばかりの顔を凛に向ける。申し訳なさ全開の天知の態度に凛は顔を真っ青にして意味不明な身振りで謝罪の意を表現している。さながら神の怒りを買った哀れな小坊主のようである。


そんな2人をお構いなしで、天知の手土産であるケーキを頬張りながら、姫月が口をはさむ。


「別に親しくなくっていいじゃない。 そのスタント仲間とかアポが取れそうな人で連絡先持ってる人はいないの?」


「いるには、いるよ。 戦隊ヒーローをやってた時の仲間は今もグループに入ってるし……」


「あ! 航空戦隊エアプレンジャーですね!!」


「大して親しくもなかった同僚がいきなり若いのと怪しいことやり始めて勧誘までしてきたら、いよいよ縁切られるだろうがよ」


姫月の横で、ガトーショコラのサランラップをべろべろ舐めていた星畑が姫月の意見を斬る。


「別に、ただ連絡先を聞くだけよ。 勧誘くらい私がちゃちゃっとやってあげるから」


「その、根拠のない自信はどこから湧いてくるんだ………」


天知の好感度を稼ぎたいのかいつになく協力的な姫月。思わず苦笑する黒川と星畑だったが、天知は大真面目な顔でスマホをいじりだす。


「いや、私もキミらと活動を共にするんなら、多少好奇の目で見られることは覚悟の上さ。私なんぞの薄い交友で助かるのなら、いくらでも使ってくれ」


「話が早くて助かるわ。 ちょっと写真とか見せてみて」


交友① エアプレッド  特技:チームをまとめること


「エアプレッドは飛行機の羽に見立てた双剣、デュアルウイング=スラッシュを用いて戦うエアプレンジャーのリーダーなんです。何事にも全力の熱血漢なんですけど、学生時代はその性格が災いして周囲から鬱陶しがられてしまって……。本当は集団を束ねた経験なんてないんですけど、チームに自分は昔ガキ大将だったと嘘をついて、統率力がある体で頑張ってるところが何ともけなげで………」


「地球守ってる場合じゃないんじゃない?」


「皮はどうでもいいから、さっさと中身見せなさいよ!!」


中の人 河原行人(39) 特技:バタフライ


「うわ!! 黒!!」


「水泳が趣味だったみたいだからね………日焼けサロンにも熱心に通ってたみたいだよ」


「見苦しそうね………こいつはパス」


交友② エアプブルー  特技:ナンパ


「エアプブルーは飛行機のエンジンに見立てたマシンガンで相手を蜂の巣にするんです。事あるごとに女性にちょっかいをかけるプレイボーイキャラで、今まで付き合った女性は100を超えるって自称してるんですけど………。実はキスもしたことが無いチェリーボーイで………。密かに壁ドンの練習をしてるところなんかホントけなげで………」


「女のハートは打ち抜けなかったんだな…………」


「そういえば、天知さんは何役やってたんすか?」


「私はイエローだよ。辛いのに強いふりしてカレーを食べてるんだけど……ホントは全部甘口なんだ」


「設定の作りまで甘いっすね………」


中の人  奥村原由紀(36) 特技:フットサル


「あら………けっこうマシな顔じゃない」


「見せといてなんだけど、奥村君はやめといたほうがいい。共演する女性に対して手癖が悪いことで有名なんだ」


「下の方がスタンドマンってことですね!?」


「え、あ、ああ。そうだね」


「星畑の言う事は無視してもいいんですよ………。天知さん」


交友③ エアプピンク  特技:テイスティング


「エアプピンクは…………」


「もういいってんのよ!! あんたしつこい!!」


「へぁ!! す、すいません!!」


「いいじゃん別に、好きなものぐらい語らせてあげたら………」


「もういいわよ。どうせピンクはピアノ弾けるふりして弾けないとかでしょ?」


「いえ、社長令嬢ぶってるんですけど実は、ホームレスでして………」


「なんだ同類じゃん。姫月」


「ホームレスじゃないって言ってんでしょうが!!」


(社長令嬢を偽ってたことはあるんだな……)


中の人  垣田正義(56)   特技:ちくわリコーダー


「おっさんじゃない!!」


「この禿げた親父がピンクやってると思うとめっちゃ面白いな!」


「こら!! 50過ぎても本職を続けている大ベテランなんだぞ!!僕の憧れさ!」


「禿げてちゃ、終わりよ」


「スーツアクターさんって、確かに頭皮に悪そうですよね…………」


「禿げる前に、辞めて正解よ」


「べ、別に禿げたくないからやめたわけじゃないよ!?」



この調子で、動物好きを装い蕁麻疹まみれになっていたブラックも、敵組織に恋人を殺された過去を偽っていたエセ復讐者のシルバーも、候補になりえる人材ではなかった。


「全滅ね………」


「すまない……全く力になれなかったみたいだね」


「も、もともと顔とか人柄で売るような職業じゃないんだし……天知さんのせいじゃないですよ!!」


「ンフフフフ……この全員が集合してる写真だと、一層ピンクの面白さが際立つな!」


「あんま、禿げをいじんなよ。 お前だって将来的に禿げるかもしれねえぞ?」


「いいんだよ。別に禿げたって……そんときゃ眉毛もまつ毛も全部抜いて穴だらけになってやるぜ」


「ホラーフラッシュの恐怖画像みたいになるつもりかよ……」


「ていうか………これ、天知さんだよな? やっぱスタイルえぐいな」


「!! ちょ、ちょっと! それ私にも!!私にもぉ、見せてください! 見せてぇ!!」


「うわ!! 見せる見せるから!! 引っ張んないで!!」


「天知」の言葉に過剰反応を示した凛が血相を変えて、星畑にたかる。


「ひぇ~~~~~~!! わ、若い!!凛々しい!! カッコイイ~~~!!」


「………それ4年前の写真なんだけど……そんなに老けたかな? 僕」


「この娘はちょっと変なんです……」


「目の前に本物がいるのになんだって写真なんかに興味を引くのかが分かんないわ」


と言いながらも、姫月も首を伸ばして写真を見る。


「ん? ちょっと、ああ、これが天知? タオル頭に巻いてるのが余計ね。目の前にいる本物のがよっぽどいいじゃない。 んん~……ちょっと、ちょっと!! 凛!! 邪魔! ちょっとその指どけなさい!ていうか! それ、渡しなさいってば……!!」


「うぇええ!な、何ですか!? どうしたんですか?エミ様!?」


液晶を舐めそうな勢いで見入っていた凛からスマホをぶんどる。そろそろ端末にどこか傷が入ってそうで不安になる黒川。そんな心配をよそにグイグイと一部分を拡大して、姫月が天知の眼前にスマホを掲げる。


「これ!! これ誰よ? まあまあマシな顔してるじゃない!!」


「ああ~~………これは~…………岩下さんだね。そうか、彼女………」


「どれ~?………あ~………確かにすっげえ美人。 大人な女性って感じ」


「エミ様が、女の人の顔を誉めるって中々無いことですよ?」


写真には静かにほほ笑む女性がいた。自分たちとは明らかに年上だがテレビに出てくるような常人離れしたオーラがあった。黒川も他のメンバー同様舌を巻くが、天知の顔は渋い。


「申し訳ないが、岩下さんは……役者でもなければ、芸能人でもないんだ。無論、テレビ局の人間でもない」


「関係ないわよ。顔さえよけりゃいいんだから」


「で、でも……それだったら何でこの……岩下さん? は、ここに写っているんですか?」


「ああ、確か………この時のロケに子役の娘が参加してたんだ。岩下さんはその娘の母親さ」


「岩下…………子役…………?……!! あ、ああ!も、もしかして!岩下陽菜!ヒナちゃんですか!!」


「流石。よく知ってるね」


「何で当たり前みたいに知ってんのよ…………」


「ヒナちゃんはエアプファンの間では、超有名人なんです!!」


「そうなの? 確か一話限定の脇役だったと思うが………」


(エアプファンとかいうパワーワードが気になってそれどころじゃねえぜ………)


「はい!! ただでさえ泣けるシーンの多いドラマパートに定評があるエアプでも、随一の名シーン!!第83話の『痒みを越えた真実の愛!! ブラックと少女とワンコの約束』に出てきたゲストキャラの島春香役を務めたのがそのヒナちゃんなんですが……子役とは思えない程の名演技でして………もう涙が止まらない名シーンなんですよ!!  ああ、もう思い出すだけで涙が………!!」


「それで、まあ、マニアには有名人ってことか」


「ああ、僕もみんなもアクションにいつも以上の力が入ったよ。だからまあ、今でも名前をはっきり覚えてるんだがね」


「で、盛り上がるのはいいけど……そのガキンチョはどこにいんのよ?写真の中に子どもいないけど」


「ああ、これでねえの? ほら、ブルーの足んとこ、心霊写真みたいになってるじゃん」


「ホントだ………ヒーローの癖に子どもより目立とうとするなよな……」


「何よ、子役の顔分かんないじゃない」


「どうせなら、その神回っての見たいんだけど……動画とかねえの?」


「あ、今ならサブスクでやってますよ? でもボックス家にあるんで持ってきますね!!」


「え!何で!?」


「…………だ、だって……サブスクなんかじゃ良さが分かんないですよ?やっぱり円盤通さないと…」


「レコード信者みたいなこと言ってる…………」


「アンタ、そこまで来たらバカの押し売りよ」


「ンフフフフ……須田、お前ウドちゃんと同じ仇名付けられてるじゃん」


「ま、まあ、今日はサブスクでいいんじゃないかな?」


                     4


というわけで、黒川の小さいテレビに5人の大人が密着して特撮ヒーローを鑑賞することになった。


「このお話を楽しむためには、まず、23話でブラックのこ狡さと葛藤の伏線を………」


「いいからさっさと83話流しなさい!」


「はい………(シュン)」


(姫月の奴、よく話数覚えてたな………)


・上映中~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ブラック「あ~、ちきしょ~………かい~な~……ちきしょ~、犬なんか大っ嫌いだぜ~、たくぅ」


春香「お兄ちゃん……ワンちゃん………嫌いなの?」


ブラック「どえええ!!じょ、嬢ちゃん。なんだって、まだ、いんだよ~~。聞いてたんかあ、今の~」


春香「ヒッ……ごめんなさい」


ブラック「ああ~………怒ってねえってぇ!謝んなよ~……ちぇ~……」


春香「…………嫌いなの? ワンちゃん」


ブラック「…………す、好きだぜ~~。小学校ん時もぉ~飼育係だったしぃ~」


春香「嘘。だってつらそうだもん。春香、お家薬屋さんだから知ってるよ?それ、アレルギーって言うんでしょ? さっきだってポリポリしてたもん」


ブラック「……………そうだよぉ。痒いし、つれえよ……。でもな、俺みたいなヒーローは動物に優しくするもんなんだよぉ~」


春香「……………………………………」


ブラック「…………そんな目でみんなよぉ………幻滅したんかぁ俺のことぉ」


春香「そんな、そんなことない………ないもん」


ブラック「あっそ、お前も十分……嘘つきだなあ……(オーバーに首を振る演技)」


春香「嘘じゃ、嘘じゃないもん! だってワンちゃん!お兄ちゃんの事大好きって言ってたもん」


ブラック「なんぢょぉ(黒川にはそう聞こえた)お前ぇ…犬の言う事分かんのかぁ~」


春香「分かんないけど………でも、いっつもお兄ちゃんが来る5分前には広場に来て待ってるもん。お兄ちゃんの事!」


ブラック「餌が欲しいだけだろぉ」


春香「そうかも、だけど……それでも!!お兄ちゃんの事信じてるから、好きだから、待ってたんだよ」


ブラック「……………………………………」


春香「あの、これ、お兄ちゃんに渡そうと思ってたの……」


ブラック「んだこれぇ……軟膏かぁ~?」


軟膏「にゅ~~~~」


ブラック「持ってきてくれたのかあ……アレルギーで肌が荒れてる俺に気づいてぇ」


春香「うん!! 私、お薬屋さんだもん………!」


ブラック「へっ!! ちっちぇえdoctor(発音がネイティブ)なこったぁ」


春香「ム~~!! ちっちゃくないもん!!」


ブラック「へへへへへへへっへへぇぇぇぇ!!(高笑い)」


春香「(クスッ)アハハハハハハハハ!!」


ブラック「…………………………あんがとよ(頭ワシワシ)」


春香「! うん!! 私が……お薬持ってくるから……だから、また、ワンちゃんに会いに来てね!!」


ブラック「おう!!」


一時停止~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「どうです!! 春香ちゃん……じゃなかったヒナちゃん!滅茶苦茶可愛くないですか!!」


「う、うん」(ブラックの棒読みに気をとられてそっち注目してなかった……)

「あ、でも、あのさっきの母親そっくりだったよ。将来美人になるんじゃないって感じ」


「なあ、なんで軟膏差し出されたシーンのブラックはあんなに説明口調だったんだ?」


「このブラックさっきの写真で見たやつと違うじゃない」


「姫ちゃん…………スーツアクターの意味わかってるかい?」


「…………皆さん………ちゃんと春香ちゃんの演技見てました?」


「え、ああ、うん。すっごい上手かったね……ブラック酷かったけど」


「高笑いのシーン音量調節間違ってるだろうがよ」


「分かる分かる!! あと、軟膏ひねり出す時のSEもやたらでかかったよな!!」


「ンフフフフ……軟膏が喋ってるみたいだったよな!!」


「もう!! 揚げ足ばっかりとって!! そんな細かいところ見るドラマじゃないですよ!!」


「マニアって細かいとこ見るもんじゃないのかよ」


「違うぜ星畑。マニアは見たいとこだけ細かく見るもんなんだよ」


「……………再生しますからね。あと、別に私の一時停止は『ちょっと待ていボタン』じゃないので。いちいちチャチャを入れないように………」


「まだ見るの? 私もういいけど」


「見るんです!! 今からがヒナちゃんの本領発揮なんですから!!」


再生~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ブラック「へへへへ……………なかなか効くぜ~…この軟膏ぉ」


レッド「ムムム……どうした!!ブラック!!ケガをしたのかぁ!!ちょっと見せてみろぉ!!!」


ブラック「リーダーうっせぇ!! ちょっと犬にかまれただけ~だ~よぉ~」(レッドと追いかけっこ)


ブルー「動物好きのブラックが犬にかまれるなんて珍しいな。犬の歯にはカマレテイテーナー菌が入ってるかもだから、キチンと消毒しろよ」


黒川のチャチャ「ブルー、エアプというよりただの嘘つきじゃん」


凛「黒川さん!上映中は静かに!」


レッド「何!! それは大変だ!! こい!リーダーの俺がばっちり消毒してやるぜ!!俺は小学校の時ハチに刺された子分にション便かけて救ったことがあるんだ」


ブラック「だあああ!! レッドぉ……うぜぇえなあ~…リーダーってよりお袋みたいだぜぇ」


シルバー「フッ………マリが犬を飼ってた時のことを思い出すな……」


ピンク「あたくしも小学校の時は犬を飼っていたわ……ヨークシャテリアのハッチちゃん」


凛の副音声「本当は雑種のハチっていう野良犬です。よくパンを取り合ってました」


姫月「上映中は静かにしなさいよ」


イエロー「ハフハフ……くぅ~……辛い辛いぜぇ……燃える~!!」


天知の呻き「うう……仮の姿とはいえ、あんまり映さないで欲しいなあ…恥ずかしい」


星畑「これで食ってるの甘口って、一番無意味で面白いっすねイエロー」



ナレーション(千葉茂風)「悪の空軍基地 ダーク・ハーバード!」


大提督ダーク・ホークハンバーグ「ふぬ~……何故毎度毎度わが軍は彼奴らに負けるのだ~!」


参謀長ダーク・ツルミ―シュン「提督、お困りですな」


大提督ダーク・ホークハンバーグ「82回も敗れとるんだ。困って当然だろう!!」


参謀長ダーク・ツルミーシュン「そんなボスに耳寄りな情報がありますぞ。おい!入れ!!」


惡の科学者ダーク・マッドデーモズ「へへ~」


大提督ダーク・ホークハンバーグ「なんだなんだ、耳よりの情報というのは……」


惡の科学者ダーク・マッドデーモズ「へへ!提督は以前のパックンポックルの作戦を覚えてますでしょうか?」


大提督ダーク・ホークハンバーグ「うむ!奴らが一人になった時を狙う作戦じゃな。あれはよく練られていた…惜しいやつを失くしたもんじゃ」


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「この度はその改良版として絶対に破られない作戦をば、考えてまいりました」


大提督ダーク・ホークハンバーグ「何と! してその作戦とは!?」


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「件の作戦の問題点は奴らがレーダーで常に互いの場所を把握している事でした」


大提督ダーク・ホークハンバーグ「うむ、サーチ・ツール・デラックスじゃな。忌々しい」


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「しかし!この度!理由は分かりませんが、エアプブラックの奴が決まって毎日16時20分から5分ほど、レーダーをオフにしていることが分かったのです!」


参謀長ダーク・ツルミーシュン(二ヤリ)


大提督ダーク・ホークハンバーグ「何と!!」


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「しかも! おい!!アレを持ってこい!!」


下っ端軍団イントリーズ「「キキー!!」」


大提督ダーク・ホークハンバーグ「!? これは、人間の子どもと、犬か!?」


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「ええ、ブラックの奴はその5分で……」


一時停止~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ええ!? え、エミ様!! 何故一時停止を!?」


「なっがいわよ!! キモい着ぐるみがわちゃわちゃ喋ってるだけで肝心のガキンチョは写真でしか出てこないじゃない!!」


「で、でも、物語を楽しむための大事な場面ですから…………」


「大方分かるわよ! どうせガキと犬人質に取られてうわ~でしょ!?」


「ヒーロー側が飛行機だから、敵は鳥なんだな」


「そうなんですよ!!黒川さん!しかも、全員ハーバード大学の………」


「変な相槌入れないでよ!またこいつが喋るじゃない!!も~、早送りでいいわよね?」


「せっかくなんですからちゃんとみてくださいよう」


その後、大方姫月が言った通りの展開が無情な1.5倍速で流れていく。変身することすらままならずボコボコにされるブラックとそれを見て泣き叫ぶ陽菜扮する春香。ここでリモコンを抱えるように占領した凛が早送りを解除する。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


春香「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!! もう、やめて!!ひどいことしないで!!」


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「ほほほほ、やめません、やめませんとも!!みなさんも~っときつ~くやっておしまい!!」


下っ端軍団イントリーズ「「「「キキー!!」」」」


ブラック「ぐ、ぐわぁ~~~!!」


春香「お兄ちゃん!!わ~~~~ん!!」


ブラック「ぐえぇぇっぇぇ!!」(ドサッ! ポロッ)


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「ん? 何か落ちましたよ? これはアレルギー軟膏?」


ブラック「くっ!! 返せ!!」


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「まさか……ブラックお前!動物アレルギーなのかぁ!?」


春香「!!」


ブラック「!!」


犬「!!」


下っ端軍団イントリーズ「!!」


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「にやり」


黒川の心(口で言った!!)


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「どうやら図星のようですねえ~…アレルギー持ちの癖に見栄を張って動物と戯れようとは…何と愚かな」


ブラック「グゥ!!」


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「そんな無駄なことなんてしなければこんなピンチも迎えなかったというのに……フフフ」


星畑の心(ここでこそ高笑いするべきだろうがよ)


春香「無駄なんかじゃない!!」


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「!?」


ブラック「!?」


春香「無駄なんかじゃないよ!無駄なんかじゃないもん!! お兄ちゃんはどれだけ肌が荒れても、体が痒くなっても、ワンちゃんの為に、約束を守るために………毎日来てくれたんだよ!?」


ブラック「………………………………………」


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「しかし、それが何だというのだ。無駄じゃないか。何の意味がある」


春香「例え他の人から見て変なことでもおかしいことでも嘘っぱちでも、毎日来てくれたおかげでこの子も、私も凄く嬉しかったんだもん!私たちはお兄ちゃんの無茶や嘘に救われたんだもん!もうそれはきっと!本当に動物が好きってことなんかよりもずっと凄いことなんだよ!!」


犬「きゃいいーん!!」


ブラック「…………はるかぁ………」


惡の科学者ダーク・マッドデーモス「ええい!黙りなさい!!お前たちあのうるさいガキを黙らせなさい!!」


下っ端軍団イントリーズ「「「キキー!!」」」キキーキキーキキーキキー(エコー)


春香「きゃあ!」キャアキャアキャアキャアキャア(エコー)


ブラック「はるかぁ!!」カァカァカァカァカァ(エコー)


犬「わおーん」ワオーンワオーンワオーンワオーン(エコー)


星畑の失笑「ンフフフフ!!」


一時停止~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ちょ!ちょっと!!星くん!! ここ笑うとこじゃないですよ!!」


「すんません!すんません!ワテ、エコー駄目なんです!体が勝手にワロてまうんです!!」


「で、でも……エコーはともかく……春香、じゃないヒナちゃんの演技は凄かったよ。俺ちょっと響いちゃったもん!!」


「ですよね!! 私なんか見てくださいこの涙!!」


「あんまり感涙って見せびらかすもんじゃないと思うけど………」


「現場でも大反響だったよ。天才じゃないかってね!なんせ当時5歳でこの演技力なんだから」


「「5歳!!」」


陽菜の年齢を聞いて驚愕の声を上げる黒川と星畑。咄嗟に黒川は自分は5歳の時、どんなだったかを思い出す。確か祖父母の家に入り浸って……そうだ、確か絵本の中のアンパンマンを切り取って口に突っ込んでたっけ……。


「俺ぁ5歳なんてマジで鼻垂れ坊だったぜ。煮干し味噌汁に浸して水族館ごっこしてたもん」


どうやら星畑も同じことを考えていたようである。


「いいじゃない……ガキは嫌いだけど。子役ならある程度礼儀もわきまえてそうだし。こいつスカウトしたら?」


「俺もいいと思う。Uの奴も確か年齢にバリエーション欲しいって言ってたしな」


「今、Uに聞いたけど大分アリだってさ。でも、Uも気にしてたけど、何で天才なのに全然無名なの?」


「そこなんだよ。風の噂で凄い量のスカウトが来てたって聞いたこともあるし、陽菜ちゃんと実際にあった時も楽しそうに演技をしてたのに…何故やめたんだろう」


「そんなの会えば分かる事でしょ? ほらアポ取ってアポ」


「しかし、子どもなんだし家庭の事情ってことも………まあ、それとなく連絡取ってみるよ…」


「え、あの、ちょっと……何でもう話がまとまった感じになってるんですか!? こ、ここからみんなが登場して敵をやっつけるのに……巨大化してロボも出るのに!!」


「もういいわよ。めんどくさい」


「そ、そんなぁ。『立つ鳥跡を濁さず~!』って言いながら博士が巨大化するんですよ?」


「後で、また一話から見るからさ、凛ちゃんも、一旦はお開きにしようよ……」


「あ~!黒川お前、んなこと言ってぇ!ホントに見るんだろうなあ!?」



                     5


そして翌日、アポが取れたという天知の連絡を受けて、今度は公園や黒川の家とは少し離れた大きな駅に集合となった。しかし集まったメンバーの中に高慢お化けとオタクお化けがいない。


「2人して音信不通って……うちの女子はどうなってんだい!」


「まあ、昨日夜なべしてでも部屋を掃除させるって息巻いてたし、凛ちゃんもお姫様もまだ寝てるんだろ」


「昨日の今日だしね………急だったからしょうがないさ。あんまり大勢で押しかけても悪いしね」


「それで、駅でどこまで行くんスか? ひょっとして関西出るとか?」


「ん?いや、それがね……フフフ…驚くことに、ここが最寄りなんだよ」


「え!? 近!!」


「何でこんな都合がいいんだ!? すでにヤラセが始まってんのか?」


「天知さん………知ってたんですか?相手さんの家」


「ん? ああ、まあね」


「え~~!! じゃあ行ってくださいよぉ! ひょっとしてやたらスムーズに会えたんも既に知り合いだったからとか?」


「ん……というより向こうからよく連絡が来てたんだよ………引っ越したから会わないかって」


「ええ~……じゃあ、何で知らない体みたいなんを貫いてたんですか。仲良かったんじゃないですか」


「んん~………仲は、良くない……かな?」


「んん?」


質問攻めていた星畑が言いよどむ。そう言えば姫月が岩下母親を見つけたとき、天知はどこか渋い顔をしていたのを思い出した。何かあったのだろうか。


「…………………彼女、実は元々、舞台オンリーだったけど名の売れた女優でね…今はそのまま人気子役スクールのオーナーだ」


「はいはい」


「それで娘があの演技力なら鼻高いだろうなぁ」


「いよいよ何で売れてないんか分からんね」


「…………最近、私が妻と別れて……独り身になってここに移ったとどこかで聞いたらしくて……」


「……はい」


「ここまで、越してきた……らしい。連絡も、そこから急に来た」


「「…………………………………………………………」」


「分かってくれたかな?」


「いや、でも、既婚者でしょ?」


「彼女の旦那さんは陽菜ちゃんが生まれて間もないころ亡くなったよ………未亡人だ」


「天知さんに、その気は………………」


「あんまり………………いや、全然ない……かな」


「何で、言わなかったんスか?」


「ん?………う~ん……何か言いづらくって………」


「はっきり断ったらどうですか?」


「いや、まだそんな直接的なことは言われてないんだよ……会えませんか~…を流してるだけで」


「案外、全部偶然で、仲良くしたいだけかも………」


「そうなら………いいんだけどね……」


「そうですって! も、もう~……イケメンだからって拗らせちゃ駄目ですよ~」


「ア、アハハハ……そ、そうだね!そうだよね! イヤ~、まいったね」


「「ははははははははは」」(乾いた笑い×2)


「今回会うついでに………そっちの方の真相も確かめたいって言うのが正直な気持ちさ。ここまで話が進んじゃあね」


「万が一、ちゃんヒナのスカウト成功した時、事じゃないっスか?」


「う~ん……正直、うまくいくとも思えないんだよなあ……」


「まあ、まともな親なら子どもをこんな胡散臭い連中に預かったりしないですよね~……」


「違いないね!」


「「「ははははははははははははは」」」(乾いた笑い×3)





                       























と、いうわけで最後のメンバーを獲得しに向かう一行ですが、何というか…今回いつも以上に読んでて違和感というか読みにくい話だったなあと反省しています。どうしようもなさそうなのでどうもしませんが、ご意見あればまたどうぞよろしくお願いいたします。それではまた次回お会いできるのを楽しみにしております。

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