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その①「グッとくるセリフ探して黙り込んだコト」

・登場人物紹介

黒川響くろかわ ひびき 性別:男 年齢:21歳 誕生日:6/25 職業:大学生

本作の主人公。抜群の歌唱力を持つが、機械を通した瞬間に不協和音に早変わりする不幸な歌い手。歌手としての道はすっかり諦めているものの、集ったメンバーたちとの心躍る日々を守る為、宇宙人のカメラ役をこなす。本人にいまいち自覚はないが、一応リーダー。

☆好きな俳優は緒形拳 好きになった映画は『鬼畜』


星畑恒輝ほしはた こうき 性別:男 年齢:21歳 誕生日:4/4 職業:お笑い芸人

黒川の高校からの友達。高卒でお笑い芸人の道を選びめでたく地下芸人へ。見る人が見れば割と悲惨な生活を送っているが、本人は至って楽しげ。ルックスがよく、よく気が利く上に、根明のためよくモテそうなものだが、とにかく絡みにくい本人の性格が仇になり全くモテない。

☆好きな俳優は岸部一徳 好きになった映画は『ゲロッパ』


須田凛すだ りん 性別:女 年齢:20歳 誕生日:5/25 職業:大学生

男受けしそうな見た目と性格を併せ持った少女。黒川の歌(動画越し)に感動し、星畑のライブを出待ちし、姫月に憧れながら、天知に焦がれるちょっと変わった趣向を持つ。派手なファッションとは裏腹に人見知りで気が弱いが、推しの事となると見境が無くなり暴走気味になる。

☆好きな俳優は國村隼 好きになった映画は『哭声』


姫月恵美子ひめづき えみこ 性別:女 年齢:20歳 誕生日:10/3 職業:無職

スラリとしてスレンダーな見た目に長い足、艶の良い黒髪とまさに絶世の美女。性格は非常に難があるが、悪いというより思ったことをすぐ口に出すタイプ。一言で言うなら唯我独尊。自信たっぷりで自分大好き人間だが、イケメンも好き。ただしどんなイケメンよりも自分の方が好き。

☆好きな俳優は佐藤健 好きになった映画は『いぬやしき』


天知九あまち きゅう 性別:男 年齢:42歳 誕生日:3/3 職業:無職

元、スーツアクター兼スタントマン。家を追い出され新たな仲間たちに重宝されながらスローライフを送るおっさん。高身長で、物腰柔らかく、頼りになり、清潔感も教養も併せ持つまさに理想の紳士。黒川への恩義だけで入ったが、正直42歳がやっていけるのか不安でしょうがない。

☆好きな俳優は志村喬 好きになった映画は『ゴジラ』


岩下陽菜いわした ひな 性別:女 年齢:9歳 誕生日:3/20 職業:小学生

女優一家の次女で子役。年齢を感じさせない演技とその可愛らしさから天才子役と称されていたが、家族や友人と遊ぶことを優先する為、子役業から一時手を引いている。年齢の割に落ち着きがあって肝も据わっているが、子どもらしい無邪気さも併せ持つ。怪談やオカルトが好き。

☆好きな俳優は神木隆之介 好きになった映画は『妖怪大戦争』


一か月以内に更新できて嬉しいです。姫月はセリフがすらすら出てくるので、メイン回は有難いですね。

                      1




「黒川さん!黒川さん!!……見てください!これ!!」


「うん?……なに?動画?」


 7月も終盤に差し掛かろうとしているある日、凛が上機嫌で黒川にタブレットの画面を見せてくる。画面内には自動音声と紙芝居のように目まぐるしく移り変わる資料で構成された動画が再生されていた。いわゆる解説系の動画だろうか。動画の中では音楽のアルバムに関して色々と解説されていたが、そのアルバムは黒川でさえ聞いてことがないほどマニアックなものだった。


「………どうしたの?このアルバムがおすすめなの?」


「いえ!……あ、いえ…このアルバムは超々おすすめですけど!そうではなくて、この動画自体なんですけど」


「……普通の解説系動画じゃない?…前々から思ってたけどこういうのって編集とか色々、凝ってるよね」


「ふへへへ……実は、これ……私が作った動画なんです」


「え!?……そうなの!?」


 今まで流し見だった画面をマジマジと覗き込んで「へえ~」と唸る。先ほどの「凝ってる」のセリフの後に「そんじょそこらのとーしろの解説なんぞ大した価値もねえのにご苦労だよな」と続けようとしていたのは内緒である。


「へへへへ……実は私たちのバンド…私以外全員動画をアップされているんです!…そこで、私も…流石に演奏系はまだ無理ですけど……こういう動画ならいけるかと思って!」


「こういうのって……作れるもんなんだねえ……この背景とかどうしてるの?」


「フリーで配られてる素材です!……実は結構前からこっそり作ってたんですけど…内容はいいはずなのに再生数が伸び悩んでるんですよね」


「ハハハ!凛ちゃんの好きな音楽は相当マニアックだから」


「マニアックなのがいいんじゃないですか!!……誰も知らない隠れた名盤やコアな漫画映画を発掘する世界に一つのチャンネルですよ!!」


「ダメダメ……あのね、そういうディープなものに関心がある人ってのは動画なんかで調べたりしないの!こういう解説系で伸びてるやつはね。誰でも当たり前みたいに触れてる有名サブカルのちょっとググれば誰でもわかるような情報を小出しでやってくのが正解なんだよ!……視聴者は別に情報欲しがってないからね。コメント欄でその作品について語りたいだけだからね。音楽系だったら隠れた名盤なんて言わずに「ロンドン・コーリング」とか「無罪モラトリアム」とかご存じの奴で攻めないと……」


「な、なるほど………流石黒川さん……」


 くどいサブカル解説であの凛すらドン引かせている横で、珍しくいつの間にか来ていた姫月が動画をのぞき込んでいる。凛のしていることに興味を抱くなど、会って以来初めてレベルでの珍事である。


「それ……自分で作ったって?……アンタが?」


「え……あ、はい!そ、そうですよ!!」


「結構しっかりできてるよな」


「………私、最近テレビで見たんだけど。そういうのって動画投稿したら金貰えるんでしょ?アンタ、それで稼げたの?」


「え!?……そ、そりゃ……行く行くはこれをサイドワークにしていきたいとは思ってますけど…今はすんとも」


「なんだ」


 凛の動画に何かしら金のにおいを感じていたのか、儲けがないと分かるや否や彼女は速攻で踵を返した。その背中に、黒川が声をかける。


「そういえば、天知さんから聞いたけど……お前、また部屋にでっかい棚おいたらしいな…しかも何かオーダーメイドって言うじゃん…ちゃんと金残せてるか?」


「うっさいわね……アンタには関係ないでしょ」


「エ、エミ様!…もし有事の際は何なりと私におっしゃってください!!」


「んな、金融機関じゃあるまいし……」


「えへへ……エミ様個人契約…金利はゼロです!」


「契約は勝手だけど……そもそもアンタ、元金はあるのかよ?」




                       2



「お兄ちゃん、これ見て」


 同日の午後、今度は画用紙を持った陽菜に声をかけられる黒川。画用紙には所狭しと文字や絵が書かれていた。絵が不明瞭なところを除けば、見やすくてよくできた資料である。読む前から何となく分かってはいたが、そこには妖怪のことが目一杯書かれている。


「………これは、宿題か何か?」


「あたり……夏休みの自由研究……」


「えらいじゃんもう終わらせるなんて……こんなもんお盆過ぎてからやるもんだろ」


「ホタルの川に行った前の日に、あみんちゃんと図書館に行って仕上げたんだけど……」


「うんうん………」(肉フェスがおまけになってる……あんなに食ったくせに)


「これ持ったまま、あみんちゃんのうちに遊びに行ったときに、正人君と会って、これ見せたらでっかい声で『お前、妖怪しか引き出しねえのかよ!!興味ねえー!』ってバカにされて」


「う、うん……」(同じようなことほんのり思っちゃったぜ)


「………悔しいから、別な発表にしようと思うんだけど…何がいいかな?」


「ええ………いいんじゃない?まさボンは単に陽菜ちゃんにいちゃもんつけたいだけだろうし、この資料せっかく丁寧に作ってあるのに、もったいないよ」


「………でも、さっき凛ちゃんに聞いたら『こういうのはマニアックな情報じゃなくってみんなが興味ある無難な事の方がいい』って言ってたから……なんかよく分からなかったけど、コメント欄で語り合いたいらしいし」


「……そ、それは…あくまで動画投稿に限った話で合って……自由研究は文字通り自由な研究って相対性理論も言ってたし、そもそもコメント欄なんてないでしょ」


「あるよ……夏休み明けに発表会……そこで全然盛り上がらないのはやだな」


「ちなみにその正人くんは何をテーマにするって?」


「男子の過半数はみんな今流行ってるカードゲームの自由研究作ってるんだって」


「………陽菜ちゃんがバカにされる筋合い一ミリも無いからそのまんまでいいよ」


「そっか……ありがとう…念のため、エミちゃんにも見せてくる!!」


「え?……そ、それはやめといたほうが……」


 さて数分後、案の定ションボリした陽菜が降りてきて、黒川の説得むなしく作り直す方針で固めたようである。


「『妖怪の不思議』って…実在しないモノに不思議もくそもないでしょうがって言われた…アンタそれしか引き出し無いの?興味ないわよ誰も…とも言われた」


「………そっか」


「………妖怪は陽菜だけが愛していくことにするよ……今回は宿題なんだし、みんなが興味あることを研究する」


「というと?」


「さっき本人にあって思ったんだけど……エミちゃんとかいいんじゃないかと思って」


「悪いこと言わないからやめときなさい」


「え…でも、実在してるのに不思議だし、私もみんなも知りたがってるし、すごく丁度いいって思うんだけど」


「あのねえ……例えば俺とか凛ちゃん調べて『大学生について』とか書くのは研究になるかもしれないし、星畑捕まえて『お笑い芸人について』とかでも良いと思うよ?でも、アイツは無職じゃん。学歴も無ければモラルもないじゃん。教育現場に見せていい顔じゃないんだよアイツは」


「別にお仕事について調べたいわけじゃないよ?私はエミちゃんについて調べたいだけ」


「いやいや……一個人について調べる研究なんて宿題として認められないんじゃない?」


「大丈夫、山川先生は生徒の主体性を尊重する方針だから」


「創作内だけのワードだと思ってたぜ……こういう学校が文化祭でメイド喫茶とかするんだろうな」


「と、言うわけでそれとなくエミちゃんに色々質問してきます」


「行動が早い!!」


 色々ツッコミどころというか、このままではまずいのではと思う黒川だったが、そもそも姫月が許さないかと思いたち無理に止めず流れに任せることにした。あの女に質問したところでろくな結果にならないだろうという黒川の予想は見事にハマり、数分後にはまたションボリした陽菜が降りてきた。


「おかえり……どうだった?」


「うん……一応質疑応答を書き出したんだけど……」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


Q:姫月さんは普段何をして過ごしてますか?

A:アンタそこにいるんだったら、奥の果肉に水やりしなさい


Q:姫月さんのマイブームは何ですか?

A:は?マイブームって何よ?趣味とはどう違うのよそれ


Q:姫月さんの今年の抱負を教えてください

A:そういえば、アンタさっきの妖怪おかしいわよ。何で誰に気づかれることなく家でくつろいでるって妖怪のくせにその生態が明らかになってんのよ。矛盾してるじゃない。


Q:姫月さんが今一番欲しいモノは何ですか?

A:何?いえば買ってくれるわけ?…違うの?じゃあ言わない


Q:じゃあ私にあげれる範囲のモノだったらあげるので教えてください

A:今早急に欲しいのは一人の時間ね



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「………というわけで出てきました……」


「………よく書き起こす気になれたね……あと、思ったよりさっきの妖怪研究読み込んでたんだな」


「ということで、私よりエミちゃん歴が長い凛ちゃんとお兄ちゃんに色々インタビューしたいと思います」


「えへへ……よろしくお願いします!エミ様のことでしたらなんでもどうぞ!」


「俺は当てにしないで……長いって言ってもせいぜい1週間くらいだから」


「では簡単に……エミちゃんの血液型は?」


「知らん」


「えっと………多分、ご本人も知らないんじゃないですかね?」


「じゃあ、どこに住んでたの?」


「門司港って言ってなかった?じゃあ福岡の北部でしょ」


「でも、各地を転々とされてるはずですから……どれだけ住んでたかは分からないですね」


「んー……親はどんな人?」


「それも知らん………ってか知らないほうがよさそう」


「………うう~ん……確かに、あんまり深堀してはいけない感じありますよね」


「ええっと……それじゃ、恋愛経験」


「そ、それも分からん……男を侍らせたことはあっても付き合ったりしたことはないんじゃない?」


「色事の話は聞いたことないですね……」


「……………結局、何にもわからないじゃん」


「あんまディープなところは語りたがらないじゃんアイツ」


「それはつまり、知られたくないってことでもあると思うので……もっとフランクなことを調べた方がいいないですか?ファッションとか…趣味とか」


「エミちゃんの趣味……難しくってあんまり分からないんだ……お母さんと話が合いそうっていっつも思ってるんだけど」


「見た目に反して、質素なんが好きだよな」


「質素って言うより、シンプルなデザインのものがお好きなのですよ!」


(……つまり質素なんじゃん)


「そうかな?……結構派手なものも好きだと思うよ。凛ちゃんが買ったお兄ちゃんのえっと……なんだっけオレンジ色の…かわいいって言ってたもんね」


「あ~うん……オレンジアンプな。明るい色のモノも好きなのかな?」



                      3


                      

 その後もウダウダと姫月の趣味について喋ったあと、その後は夕飯を食べて特に何をするでもなく一日が終わった。そして、翌日…午前三時までくだらないネットサーフィンで過ごした睡眠不足を10時までの二度寝で補っていた時、黒川は何だか懐かしいUのテレパシーで叩き起こされた。


『黒川。突然だが、簡単な企画をしてくれないか?』


「んん?……企画?」


『ああ……とりあえず説明する。そのまま寝ていてくれ』


 言われた通り、ベッドで横になったままボーっとする黒川。当然、まだ眠いためそのまま二度寝に入る……と、次の瞬間。黒川は東川原駅前の繁華街に立っていた。


「ん?なにこれ…夢?」


『夢ではない。これはキミが脳内で見ている映像だ。空気感やにおいも伝わるだろう?忠実に再現しているからな』


「おお………すげえな…初めて会った時のライブ以来じゃん……でも何でここ?ていうか何でバーチャル?」


『前方を見てくれ。見知った人間がいるだろう』


「あ、姫月」


『これは数日前録画した、街に繰り出す彼女の本物のカットだ。キミにはこれから企画の説明もかねて、彼女の買い物の一部始終を見てもらおうと思う』


「え!?……いいのかよ、そんな……盗み見なんて」


『バレなきゃいいんだ。それにキミみたいなみっともない買い物でもない。見られても恥じゃないさ』


「みっともないってなんだよコラ」


『中古ショップで商品の相場をネット検索してから買う行為のことを言ってるんだが?』


「………俺が悪かったよ」


『さあ、見ていくぞ……と言っても、ここはただ街を歩いているだけだからな。店に入るまでスキップ…』


「うお!アイツ…横にチェ〇オの自販機があるのに、何かよく分からんオレンジ潰す自販機でジュース買ってる!富豪かよ!!」


『そんなので一々驚いてたらもたないぞこの先』


「うお……ワープしたすげえ…ハイテク。陽菜ちゃんとかにも体験させたかったな。丁度、姫月のこと知りたがってたし」


『残念ながら脳内で映像を見れるのはキミだけだ』


「え~っと……ここは?」


『高〇屋一階……某イタリアの有名ブランド店だ』


「うっへええ……入ったこともねえよ」


 ここぞとばかりにディスプレイされているバックやら財布やらをあれこれいじる黒川の前に、スーツをビシッと着こなしたスタッフが通る。


「うわ…かっこええ。あのネクタイピンとか、ベルトとか……細かいものも自社ブランドの高い奴なんだろうな」


 そんな全身おブランドで身を包んだスーツ男がピシッと全身ユ〇クロの姫月の前で立ち止まり、深々とお辞儀をする。


「お待ちしておりました。姫月様……ご予約いただいていてモノのご用意ができております。どうぞこちらへ」


「ん」


「おいおい……個室入ってるよ…VIPな待遇じゃん…何買ったの?」


『限定で出るとかいうバックだ』


「へえ~……高級店だと買い物しただけで個室通されるんだな」


『全てがそういうわけではない。80万もするバッグを買ってれば当然のことだ』


「はちじゅ……」


「お買い上げありがとうございました。本日これからのお買い物でご利用されますか?」


「今日は使わないわよ。見ての通り、ラフな格好で来てるもの。家に送っといて、この前の住所と一緒でいいから」


「かしこまりました」


 その場のスタッフ大勢に見送られながら、姫月が店を後にする。なんだかむず痒くなるほど完璧に決めている。そんな黒川のリアクションに応えるように、対応していたスタッフの横にいる女性スタッフがほうッと息を吐く。


「かっこいいですね。豪快な買い物に、それを誇示しない使い分けの良さ。全身高級品で身を包めばいいと思ってる売れっ子芸人とかとは大違い」


(アンタがそれ言ったらダメだろ)


「ああ……ハリウッドレベルのスター女優か、トップモデルか……はたまたどこかの財閥御曹司の恋人か。我々とは違う本物のセレブ……上級国民だよ」


(……あなたたちのがよっぽど上級ですよ)


『よし次だ。彼女の次なる目的地は少し遠いからな……またワープするぞ』


「ワープと言うより録画の早飛ばしだよな……って随分、落ち着いた場所だな…ここどこ?町家?」


『…を改造した骨董品屋だ。古物愛好家や壺コレクターなどから穴場として知られている。先日、雑誌で紹介され話題になり、予約制となった。一日100人も入れないそうだ』


「えええ……じゃあアイツ、わざわざ予約したってこと?」


『いや…まあ、見てみろ』


「……………」


「あ、姫月さん……いらっしゃい」


 仏頂面で悠々と店に入る姫月に、店主であろう女性が笑顔で接客する。


「………また静かになったわね。前来た時、やたら人多くてうざかったのよね」


「ごめんなさいね……伝統のある雑誌だからと思って取材を受けたんだけど……やっぱり駄目ねミーハー客ってのは……物色するだけして何も買いやしない」


「店員の分際で客選り好みしてんじゃないわよ……まあ、確かに鬱陶しくなくていいわ。人払いでもしたわけ?」


「ええ……予約制にしたの」


「予約?……私、何にもしてないけど」


「いいのよ。姫月さんは、立ち上げた段階から贔屓にしてくれたお得意様だから…顔パス顔パス。今誰もいないし」


(……知り合いが店主と何か嫌な会話してる……)


 そのままあちこち見て回る姫月。せっかくなので、何も買えないが黒川も見て回る。


「あ……安い。これとか、俺でも買えるな。高級店ってわけでもないんだ」


『店自体の年季は浅い。開業からの上客と言っても姫月がここを知ったのはシェアハウスに越してからだ』


「へえ~………これとかいいじゃん、レトロチックなランプ……こういうのかざしながら本とか読んだらかっこいいんじゃない?………9500円だったら…まあまあ」


『ケタ一つ間違えてるぞ』


「げげ………ってうおい」


 黒川をぬっと貫通する形で、姫月が現れる。


『………どうした?顔を赤くして』


「いや………アイツっていいにおいするんだなって思って」


『くくく…どうせなら体も触ってみたらどうだ?再現してあるぞ?』


「………やめとく……っていうかそれ考えたらやべえなこの体験」


 気持ち悪い会話をしている間に、気がつけば姫月が黒川も見ていたランプを物色している。ひっくり返したり、実際に電気をつけてみたりして、特に悩むそぶりも見せず店主を呼ぶ。


「はいはい……お買い上げ?」


「ん……家に送っといて……あとこれも」


「お、相変わらず目利きね。それ魯山人の湯呑ですよ?」


「誰よそれ」


「き、北大路魯山人……いくらだよ一体」


『ランプの方が高いぞ?』


「現金で払ってるよ……いや、そりゃそうか。アイツ、カード持ってないもんな。てことはさっきの80万もキャッシュ!?……危機感とかないのかよ!?」


『よし次だ。昼食を摂るようだな』


「………おお……どうせ、何か有名店なんだろうけど」


『某大手カレーチェーンだ』


 続いてのワープ先にガクッと崩れる黒川。


「………まあ、そーいうところがカッコいいってさっきの店員さんも行ってたしな」


『この店はファミレスだけあって広いのだが、平日のこの時間帯は空いていることが多い。彼女は静かなところを好むようだな』


「なるほどなあ……あれ?もう食い終わってる………カツカレー揚げナストッピングか」


『大したアクションもなかったからな。ちなみに食べている間はスマートフォンでゲームをしていた』


「ケッ……どっちかに集中できねえのかね?マルチタスクってやつかぁ?」


『キミがよくやってる音楽かけながら本を読む行為と何が違うんだ?』


「……………………………まあ」


 その後も、店外店内共に草木が生い茂っているお洒落なフラワーショップで店員に囲まれ、次々におすすめをプレゼンされたり……


『リトルエンジェル……エスカロニア・ゴールデンカーペット…エアプランツお買い上げだな』


「なんじゃあのクソデカエアプランツ……え!?7500円もすんの?ただのツタじゃん…」


 ちなみに店員さんのおすすめは興味こそ引かれていたが買いはしなかった。てっきりこの手のお節介は嫌がるタイプかと思っていた黒川は少し意外に感じた。


 その後も、ホテルのアフタヌーンティーを満喫……


「う、美味そう……これじゃ生殺しだぜ」


『キミもすればいい。できない額ではないだろう?』


「こういうことしてこなかったからできない額を持ててんだよ!」


 その後も、カフェと本屋が一緒になったお洒落な店をプラプラ……


「アート主体の本屋か……こういうの都心にしかないと思ってたぜ」


『草間彌生の絵を購入したのはこの店だな』


「……ああ~…ん?なんか話してるよ。アイツよく店員に声かけられるやっちゃな」


『いや、アレはナンパだな』


「ええ!?……でもアイツ、オーラがありすぎてナンパされないって豪語してたぜ?」


『相手の男をよく見ろ。黒光りするほどかっちり固めた前髪、ツーブロック、整えられすぎてバターナイフのような眉毛、ほんのり色黒、今の錦戸亮みたいな口ひげ、MAISONdesのジャケットみたいなデザインのTシャツ、半ズボン、リンゴのマークのスマートフォン……自分への自信にあふれている、まだ若いが、相当儲けている社長だな』


「…………お前、だいぶ人間じみたこと言うようになったな」


『時計はタグ〇イヤーだな』


「空条承太郎のやつな……」


『近づいてみろ。会話を聞くんだ』


「ええ~……やだよ俺、いくら調子乗ってそうないけ好かない成功者でもさ。同じ男として、ミソッカス扱いされてるところなんて見たくねえよ~」


 などと言いながら、何かを期待したいやらしい笑みを浮かべ、姫月のもとに近づく黒川。しかし、予想に反しと言うか、期待を裏切りと言うか、姫月は思った通りいけ好かない殺し文句で誘ってくる男の言葉に真剣に耳を傾けているのである。


「それで?……結局何の用?」


「ああ…ごめんね急に話しかけちゃって……さっき永井博の絵を見てたじゃん。この良さが分かる人間には思わず話しかけちゃうんだよね。ほら、ここはそういう人多いからさ。趣味で繋がるなら書店のカフェってね。俺のバイブル『うんにゃらだほにゃおのぴーちく学入門』にも書いてあったからさ」


「これ好きな奴なんてわんさかいるんじゃないの?この絵とか、黒川も持ってたわよ」


(………絵じゃなくてレコードな……たっつあんの『FOR YOU』)


「いやあ……中々ねえ…特に女の子なんてどれだけすかしてても頭の中はファッションと、バスりばっかさ。こーいうセンス持ってるのは…」


「黒川みたいなこと言う奴ね」


「一緒にすんじゃねえよ!!」


『一緒だぞ』


「それで、私と何かしたくて声かけたんでしょ?」


「おいおい……姫月の奴、何か切れ味悪くねえ?凛ちゃんが見たらショック受けるぞ」


「何かっていうか、もう少し…君の好きな絵とか本とか教えてくれたらって思っただけだよ。一緒にお茶でもしながらさ。奢るよ?」


「く……こいつキザでうざいけどなんか慣れてるな。女癖悪くなった天知さんみたいだぜ」


「フーン……いいわよ。奢りなら付き合うわ」


「よし!決まり!!」


『よし…飛ばすぞ』


「え!?……姫月のデート?……を見るんじゃねえの!?」


『別にみてもいいんだが、基本的に男がくっちゃべっているだけで何も起こらないぞ』


「飛ばしてください」


 パッと、場所こそ変わらないが、周囲の景色が変わる。時計を見ると、あれから30分ほどが経っていた。姫月は変わらず社長(仮)と一緒にいたが、相手側の顔は心なしか曇って見えた。饒舌だったトークもすっかり形を潜めている。


「なんか……元気なくなってない?」


「まあ、それはそうだろう。合計45万近くの絵画を貢いだのだから」


「奢るってコーヒーのことだったろ……絶対」


「ハハハ……いやあ……いい買い物したね!…今度部屋に飾ったものを俺にも見せてよ!」


「は?複製画なんだから自分でも買って勝手に好きなとこ飾ったらいいじゃない」


「あはは……じゃ、じゃあ…今ちょうど、さっき言ってた画家の映画がやってるから見に…」


「私、別に作者に興味なんか無いわよ。あと、美容院の予約あるから、悪いけどこれ以上付き合えないわ。じゃ」


「…………………………れ、連絡先」


「ん?……電話番号?いいわよ……ハイ」


「お!あ、ありがとう!!」


「また、欲しい絵があったら連絡するわ。あ、アンタから連絡してくんの禁止ね」


「………………………はは」


『宇宙人の私が言うのもなんだが末恐ろしい女だな』


「……最後までキレなかったアンタは偉いよ……見た目で偏見持ってごめんな」


 どうも美容院の予約と言うのは本当だったようで、今度の場所は繁華街から少し外れた場所にある落ち着いた雰囲気の美容室だった。昔ながらの散髪屋と言っても信じてしまいそうな、何となくイメージしていた場所とは違い、黒川が辺りを興味深そうに見回す。


「おわ~……このタオルみたいなのって剃刀研ぐための奴だよな。昔の方がでしか見たことねえ」


『黒川……この店主見憶えないか?』


「え?」


 神妙な手つきで唯一の客である姫月の髪をいじくっている店主を見る。ベテランそうな、少し強面で話しかけづらそうではあるが、鏡の姫月を覗く目は穏やかそうでもある。いずれにしても、黒川は全く見覚えがない。


「誰?」


『陽菜の参観日で姫月を盗撮してキレられてた父兄だ』


「………そういえばいた気がしたけど…だから何だってくらい赤の他人じゃねえか」


『そうでもないぞ?この男は鎌倉あみんの父親だからな』


「ええ!?」


「…………はい、いつも通り、毛先は整えましたよ……シャンプーしますね」


「その前にマッサージ」


「はい………相変わらず全く凝ってないですね…軽くしときますよ」


「うっさいわね……」


「………なんでまた…もしかして弱み握って無料でやらせてんのか?」


『無料なのはその通りだが、ずっと無料でいいからカットモデルになってくれと頼んでいるのはあみん父の方だ。あの盗撮も、あまりの髪の美しさに気がつけば撮っていたものらしい』


「ほへ~」


 黒川が唸ったところで、画面がブラックアウトする。というより、自分が寝室で目を閉じている状態に戻ったのである。


『どうだった?これで今日一日の彼女の買い物は終わりだが』


「……何というか、色んな角度でアイツの凄さを見せつけられた気がするよ…なんかこれから今まで通り接することできなそう…」


『それは困るな。いつも通りでなければ』


「んで?……結局今回の放送と何の関係があるってんだよ」


『ああ、ズバリ言うと、彼女のポケットマネーが件の買い物で底を尽きたのだ』


「………凄さなんてないなやっぱり…うん」


『勿論姫月自身、そのことは問題視している。今現在、彼女は手早く金を得る方法を探しているわけだ』


「凛ちゃんの動画投稿に興味持ってたのはそれでか」


『そこで本題だが、今から姫月に何らかのバウンティハントをしてもらいたい』


「バ、バウンティハント?」


『ああ、私が何個かリストアップしたすぐに金を稼ぐことができるモノ…まあ、平たく言えば賞金や大口の仕事が入るオーディションなのだが…に姫月を参加させてほしい』


「ほうほう」


『アイツは今回の流れを見ても分かるが、ただの押しの強い無職にしておいていい人材じゃない。大きな成果でなくてもいいからそろそろあの特殊すぎる個性を育む時だ』


「珍しく、けっこうでかい企画持ってきたじゃん……それならいいぜ…俺、特にすることもないし」


『事実、そうだが……ある程度フォローして主張はしろよ?キミが主役なんだからな』





                     4




「………というわけで今からこの中のどれかのオーディションやコンクールに姫月が参加することになりました」


 食卓に久しぶりのフルメンツで揃った面々が黒川の説明をチラチラ姫月を見ながら聞いている。ちなみに姫月の金欠には並外れた豪遊があったからであることは、半ば周知の事実とは言え伏せてある。決して姫月の為ではなく、それを言及すれば女性の私生活を盗み見たことがバレかねないから故の黙秘である。


「余計なお世話よ……」


「そうとも言ってられねえだろうがよ。お前、俺に5000円借りてること忘れんなよ?」


「あら?美人に金を取り立てたら死刑ってしらないのかしらこの金髪バカは」


「……私も300円貸してるよね。エミちゃん私が言わなきゃ返さないつもりだったでしょ」


「失礼ね。言っても返さないわよ」


「おいこら、金銭面でのトラブルはやめよーってこの前言ったよな?」


「いいじゃない、アンタには借りてないんだから」


「そういう問題じゃねえよ!」


「姫ちゃん、人のお金にまでルーズなのはちょっといただけないよ?」


「チッ……分かったわよ、300なんてはした金別にいつでも返せるっての」


 ブツブツ言いながら、ポケットから財布を取りだす姫月。


(当たり前のように財布にもGの文字……)


「なら返してよ。私、お肉で奮発しすぎちゃって貯金すっからかんなのに」


「…………………………」


「エミちゃん?」


「…………それで、オーディションってどんなのよ?」


「お前、300円もねえの!?」


「失礼ね、あるわよ……3千万くらい……全部お札だから払えないだけ」


「………四次元グ〇チ?」


「大丈夫ですよ!エミ様はお金が無くても生きていけるだけのお人ですから!!」

↑シェアハウス開始時から総額20万ほどを貢いでいる女


「……あーもう!話が進まない!!で!?…宇宙人の選んだオーディションってどんなのよ!」


「えー………っと……色々あるけど……」


①突撃!!モデル道!!

 街でスカウトされた一般女性を対象に、即興で自前勝負服モデルウォークにチャレンジする大会。優秀者は東京ガールズコレクションに参加するための切符を手にすることができる。


「おお……いいじゃない。姫ちゃん、モデル目指してたんだよね?」


「目指してるんじゃなくてれっきとしたモデルよ」


「これなら優勝間違いなしですよ!!」


「でも、東京ガールズコレクションに参加するための切符って…割と気の遠くなる道のりじゃねえ?」


「そりゃお前、TCGなめたらいかんだろうがよ」


「どういう立場で言ってんだよ星畑。お前が詳しいのはTCGじゃなくてTKGだろうが」


「そもそもこれ、スカウトされる街が軒並み東京じゃない。移動遠いのはだるいわ」


②JINTAN COLLING

 仁丹市で開催されるアマチュアバンド限定の音楽コンクール。見事最優秀賞に輝いたバンドには賞金50万円と、主催者であるロックバンド、残暑のオープニングアクト出場を得ることができる。


「これ近いぜ?ていうか地元」


「へへへ…こ、これ!私、去年お客で参加しました。アンケート協力すれば無料なんですよ!!」


「主催者のバンド知らねえな~」


「ざ、残暑はいいですよ!今度CD貸しますね」


「エミちゃん楽器弾けるの?」


「無理」


「じゃあダメだな」


「そもそも開催、二週間もあるじゃない。気長すぎよ」


③目指せ!ショートの達人!!

 ショート動画を投稿し、秀作を目指す。様々な部門があり、多彩なジャンルで挑めて、選ばれる確率も高い。賞金総額100万円!


「これいいじゃん。手軽だし、技能も特にいらんし」


「ダメよ。総額って書いてあるでしょ!……よく見なさい大賞とっても賞金10万よ」


「……10万円って大金じゃないの?」


「ま、お姫様計算ではダメなんでしょ……」


④化粧品CM撮影用、女優オーディション

 「令和の女は百面相」というキャッチコピーの化粧品のコマーシャル。とにかく美人なことと、表情での感情表現を重要視される。一次試験は動画審査。


「これ」


「え?即決!?」


「でも、僕もいいと思うな。一番、可能性高いし」


「演技ならプロもいますもんね!監修もばっちりです!」


「うん……コマーシャル出たことも、モデルになったこともあるから、力になれるかも」


「は!……いらないわよ!こんなもん顔さえよければテキトーに泣いたり笑ったりしとけばいいんでしょ?」





                       5




「………というわけで、姫月はんの百面相チャレンジ~!!」


 若干机と椅子の配置を変えて、再び席に座り、黒川に代わり星畑がコールする。男性陣女性陣、それぞれ3名同氏が向かい合う形で座っている。


「今から、オーディションに向けて姫月の演技力を調査します。お題の表情を出すんで、陽菜と凛、姫月は指示の通り表情を作ってください。判定は我々がやります」


「………なぜ私まで……ヒナちゃんはともかく」


「いいでしょ?一緒にお芝居しようよ」


「……そもそもこんな催し要らないわよ。ぶっつけ本番で問題ないわ。ていうか試験も要らないわよ。私の写真見ただけで、審査員ども全員失禁しながら逆オファーよ」


「そんじゃ、さっそく第一のお題を…………黒川君」


「え!?……俺?……えっと、じゃあ、照れてる顔とか?」


「無視すんじゃないわよ!クソ星!」


「はい、じゃあ…陽菜から」


「はーい」


 上機嫌そうに、手を挙げて応える陽菜だったが、一瞬にしていつも通りの真顔から、紅潮して目元も潤んだ照れ顔に変わる。照れ顔と言うだけのお題のはずなのに、目を開いて上目遣いの姿から、夕焼けの校舎やら、きらめき高校の大樹やら…存在しないはずの背景すら浮かんでくるほどである。


「うおお……わかってたけどすげえな」⑩※点数


「流石、天才子役……ドラマで子供扱いされてた時の顔ともまた違う…素晴らしい演じ分けだね」⑩


「えっと………お友達……からなら」⑩


「満点だしときながらフッてんじゃねえよクソ星」


 全員満点の30点である。照れ顔を解いた陽菜がニコッと微笑む。


「フフフ……必殺上目遣い…お姉ちゃん直伝」


 顔真似禁止の観点から遮られている隣りからヤジが飛ぶ。


「ちょっと……満点って。アンタらこいつの肩書に踊らされてるんじゃないの?」


「ううげえええ……私も見たいぃぃ……何で誰もカメラ向けてないんですかぁ!」


「言ってる場合か、次お前だぞ」


「うええ!?」


 指名された凛が慌てて、コロコロと表情を変えた後、覚悟を決めたように腕を頭の後ろに回して、思いっきり両目を閉じる。短い舌をぺろりと出して、どことなくおまぬけで、コミカルなテヘペロポーズである。天然物の照れのおかげで、顔は真っ赤である。


(………個人的には12点です。自分の気持ちにうそをつくいけない黒川をお許しください)⑧


「あはっはははははは!!かわいい、かわいい!!」⑨


「ひっじょーにキビシー!!……にしか見えねえ」⑥


「だ、誰が財津一郎ですか!?」


「ともかく合計23点、陽菜ちゃんほどじゃないけど、いい成績だよ?」


「じゃあ本題だな。姫月やれよ」


「……………………………」


 姫月は返事する様子もなく、しばらく考え込んでから、むにゅっとぎこちない笑顔を作る。ひくひくと頬が引きつっており、今まで見たことがない類の表情である。斬新だし、それでも変わらず整っているが少なくとも照れ顔には見えない。


「……………………それは…何?」


「えっと……もう採点していいのかい?それともまだ途中?」


「お前、真剣にやれよ。ここまでやってすかすのつまんねえぞ」


「…………わ、分かってるわよ!」


 むきになったことで照れているような顔にはなったが、意図していないモノだったようですぐにまた、今度は口をすぼめたような顔になっている。


「………………………」


「………………………」


「………………………」


 審査員三人とも、反応に困り、低得点すら出しかねているところ、仕切りを超えて陽菜がやって来た。


「私にも見せて。もう私の審査は終わったからいいでしょ?」


「えあ!?わ、私も見たいです!!」


「見るもくそも、まだ何もかましてないも同然だぜ……ここまで大根だったとは」


「まあ、ねこっかぶりの演技もひどかったしねえ」


「まあ、表情作るのって難しそうじゃん」


「うるっさいわね!黒川の分際で!!」


 苦笑する星畑と天知にフォローを入れる黒川だが、なぜか彼だけ姫月にキレられる。


「エミちゃん、もっかい照れてみて?アドバイスしたげる」


「要らないって言ってるでしょ!」


「そんなんじゃ受からないよ?」


「………………だから私だったら顔パスで」


「確かにビジュアルが一番だけど、最低限の演技力は必要だよ。エミちゃん、そもそもエミちゃん以外演じたことないでしょ」


「確かに、顔はいいけどあまりにも演技がお粗末なアイドルとか、それだけで作品の雰囲気ぶっ壊すもんな……誰とは言わんけど」


「お前、岸部一徳の悪口言うなよ」


「言ってるわけねえだろ!!あんな表現力のバケモンを!!お前の一番好きな俳優だろうが!!」


「バカ、アイドルだろうがよ」


「……ザ・タイガース時代の話してる?」


「…………アンタ、試しにちょっと照れてみなさいよ」


「わかった」


 言い負かされた姫月が、陽菜にお手本を要求し、彼女がそれに応える。先ほどと同じく顔を赤くして目も潤んでいるが、どこか不満げで目線も合ってない。というより、意図的に逸らしているようだ。


「おお……さっきとはまた違ったニュアンス」


「ふへえへへ……激写激写ぁ!!」パシャパシャ


「どうかな?エミちゃんのやりやすいような感じにしてみたんだけど」


「私、あんなに目線泳がさないわよ………その顔赤くするやつってどうやってるの?」


「う~ん……どうするって言われてもなあ。恥ずかしいって気持ちになって顔を熱くする感じ?」


「訳わかんないわよ」


「別に顔を赤くする必要もないよ?本番はきっとそういう風にメイクもしてくれるだろうし。大事なのは自分の見せたい姿にお題の方を合わせること!……今のエミちゃんは「照れる」っていうお題に吞まれちゃってるの」


「呑まれる?」


「うん。照れなきゃって思っちゃって、普段しないような顔をしようとしたでしょ?それじゃダメ。今まで自分がしてきたような顔で、理想に近いものを見つけれたらだいぶ変わると思うよ?さっきの凛ちゃんの評価が高かったのはきっと照れながら全力でやってたのが、普段の凛ちゃんのキャラクターにすごく合ってたから。お題が怒るとかだったらきっと、評価は変わってたかも」


(見てもない演技でここまで推測できるのすげえな)


「………要するに、過去の体験を思い出せってこと?無理よ。私、照れたことないもの」


「本当に照れる必要も、ただ照れる顔を思い出す必要もないよ。自分が思う、自分の可愛い照れ顔を見つければオッケー!」


「……………私、照れた顔を可愛いって思ったことないけど」


「陽菜ちゃんが思う、お前の可愛い照れ顔がさっきのだったんだろ?とりあえずそれ真似してみたら?」


「そうね。凛、さっきの写真見せて……あと、アンタももう一回照れ顔作ってみなさい」


「は、はい……えっと……///」


「あははは!!ホントにかわいい!!ねえ、写真撮っていい?レーちゃんやお母さんに送るから」


「だ、ダメです!は、恥ずかしい……」


「…………………………」


 自分から要求しておきながら、凛のリバイバル財津には目もくれず黙々と陽菜の写真を凝視する姫月。陽菜の言葉によって焚きつけられたのかどうかは分からないが、少なくともやる気にはなったようである。


「…………あの……ヒナちゃん」


「?……どうしたの凛ちゃん」


「えっと……エミ様とは別に……私たちも何かのオーディションにチャレンジしませんか!?」


「いいよ。面白そう」


「えへへっへへ……そ、そうと決まれば早速動画投稿しましょう……ぐへへへへ」


「ショート動画の奴やるの?……エミちゃんの演技はもういいのかな?」


「う~ん……いいんじゃないでしょうか……さっきからお一人で凄い集中されてますし」


 姫月がゾーンに入ってしまったことで、自然に他のメンバーもばらけてしまった。姫月のサポートを率先して目立てと言われていた黒川だが、こうあっては自分一人しゃしゃり出ても邪険にされるだけだろうと思い、同じようにその場を後にした。いつも通り、撮影は難航を示そうとしている。


 が、意外にも姫月の手によって、ノンシュガーズ一同は再びリビングに集められる。得意げな姫月の顔から察するに、演技をモノにすることができたのだろうか。


「フフフ……確かにさっきの私の顔はみっともなかったわ。成長した今の私ならそう言い切れる」


 したり顔で握りこぶしを掲げるエミ様。これが無邪気とか腕白とかの演技だったら百点満点である。これに何故か白衣を着ている陽菜が嬉しそうに頷く。


「フフフ……エミちゃんも演技の楽しさに気づけたんだね」


「黙りなさい。いつまでも先輩面して偉そうに教鞭取ろうとすんじゃないわよ。その若さでセミリタイアしたくせに」


「…………………あっちで続きの動画撮ろ。凛ちゃん」


「待ちなさい!私の成長を拝んで、ビビりあがるまで出ていくことは許さないわ!!」


「……はいはい」


 陽菜が呆れるほど、大言を喚き散らす姫月だったが、事実彼女の演技はグッと良くなっていた。目を伏せて気まずそうにしているだけで、顔自体は大して変わっていないが、どことなくぎこちなさげな雰囲気が伝わって、照れているように見える。


「おお………ホントに良くなってるじゃんか。さっきまでの牛山君レベルの大根っぷりがウソのようだぜ」


「……お前、ただでさえマイナーな漫画のモブキャラを例えで使うなよ」


「黒川君……『こじらせ百鬼ドマイナー』はいいよ」


「あ、はい」


「『こじらせ百鬼ドマイナー』はいいよ!!」


「はい……ていうか天知さんに貸したの俺じゃないですか」


 天知が姫月の演技もなあなあに「大事なことなのでry」をしている間にも、姫月はドヤ顔で演技をモノにした万能感に自惚れていた。


「んじゃ……次は別なお題でやってみろよ。照れるって喜怒哀楽のどれでもないじゃん。バリエーション増やさないと」


「もーいいわよ。めんどくさい。大方のコツは掴んだんだから、もうぶっつけ本番で行くわ」


「えええ……それは流石に無茶じゃない?」


「いいから!……凛!さっさとそのオーディション用の動画撮るわよ!準備しなさい!!」


「は、はい!!……えっと、第一次審査は自己紹介を30秒やった後に、フリーシチュレーションで恋する乙女を演じるみたいです!!」


「ん……楽勝ね。ホラ、さっさと撮るわよ」


「おいおい……そこまで分かってんだから、急ぎすぎずにさ。どんな演技するかとか事前に決めないと」


「もう私の中では決まってるわよ。私が良いって言ってんだから外野は黙ってなさい」


 頑なにぶっつけ本番に入ろうとする姫月を止めることもできず、凛もカメラを構えて動画撮影の準備が整ってしまう。固唾をのんで見守るメンバーだが、姫月はアクションの前に、その視線が気にかかった様子である。先ほどの演技よりも数段恥ずかしそうに、メンバーを人払いする。


「…………見てんじゃないわよ。カメラ役残して散りなさい」


 気まずそうな姫月の様子から、つい「ああ、ごめん」と各々が自室に引っ込んでしまう。これがよくなかった。数分後、待ちかねた陽菜がソロソロ降りて行ってすぐに、彼女の声で「え!?もう送っちゃったの!?」と、悲鳴に近い声が聞こえてくる。慌てて、男どもも一階に降りる。


「そりゃ送るわよ。送らなきゃ審査されないじゃない」


「いや、そうじゃなくて……色々中身を練ったり、添削しないとさ」


 開いた口が広がらない陽菜に代わって、黒川が事の深刻さを説明しようとするが、そんなこと姫月には知ったことではないようで、フンと再度得意げに鼻を鳴らす。


「だ~か~ら!!完璧なんだから大丈夫だってば!!……そもそもこんなのただの顔見せでしょ?だったら私がダントツで選ばれるわよ」


「…………まあ、そうかもだけど……やっぱすげえわお前」


「ていうかこういう時、お前がストッパーになれよ須田」


「す、すいません……あまりにも自信満々でいらっしゃられたので……あ!で、でも!すっごく素敵な映像ですよ!?」


「とりあえず僕らも見てみようよ。送っちゃったものは仕方がないさ。何より、他でもない姫ちゃんが納得してるんだから僕らも野暮なこと言いっ子抜きだよ」


 納得いっていない陽菜や星畑を天知がなだめる形で、とりあえず一次審査の動画を全員で確認する。凛のスマホの中の姫月が腕を組んで、いつも通りの高飛車見下しアングルでこちら側を見ている。不覚にもドキッとする黒川だが、冷静に考えて、今から審査されようという女の態度ではない。


「ず、随分…強気なポーズでスタートするんだね」


「当然。こーいうのは相手に嘗められたら終わりなのよ」


「化粧品のコマーシャル出ようって女がほぼノーメイクでいいのかよ」


「うるさいわね。いいから中身見なさいよ中身!!凛!さっさと再生しなさい!」


「ふえあ!?……は、はい!!」


『……あー……はじまってる?』


『ヒャイ、アジュミャッミャメム』


「ちょっとカタツムリ!!思いっきりアンタの声が入ってるじゃない!!」


「えええ!?……だ、だってぇ!めちゃくちゃ私に聞いてきたじゃないですかぁ!?…私だって気を使って一応小声で……」


(………頷くとか、もっと方法あったのでは…)


「チッ……ここちょっとノイズね。まあ、こんな序盤誰も覚えてないでしょうけど」


『姫月レミナ……女優兼モデル……ちょっと退屈してたから、オーディションに参加してあげることにしたわ。今、この動画を再生して私を見た時点で、大慌てでオーディションを打ち止めにして、コマーシャル撮影なんかにとどまらないビックプロジェクトの準備に取り掛かってるとこでしょうけど。まあ、私は今のとこフリーだから。一先ず安心して、落ち着いて動画を見なさい。……もう30?…え、まだ15秒?まあ、もういいわ。本来だったらこの後の演技も割愛していいくらいでしょうし』


「落ちた」


「落ちたな」


「落ちたね」


「もう終わりか……つまんないの」


「はあ!?………今のどこに落ちる要素があったのよ!」


「落ちる要素しかねえわ!!アメリカの災害映画でゴールデンゲート・ブリッジの上を通ってる場面くらい落ちる要素しか無かったわ!!」


「動画の中のお前の髪が常に逆立って見えたわ!!重力で!!」


「ヒナの中のエミちゃん株も大暴落中です」


「おお……うまいね」


「………絶対落ちてないから……仮にアンタらみたいなひねくれものが審査員でここまで悪印象でも、このあとのフリー演技で魅了されるはずよ」


「おお……演技はしたんだね」


「当然。目に物見なさい」


『えー……恋愛の演技するのよね?……こほん、いくわよ?』


「レジェンド松下」ボソッ


「ンフフフ……黒川笑わせんなって」


『…………今日のデート、まあまあ楽しかったわよ?』


「「「!?」」」


 突如、先ほど身に着けたばかりの照れ顔演技でツンデレなセリフを吐く画面の中の高飛車自称モデル。今までのバカみたいな高慢チキな態度もすべてフリだったのではと思えるほど、その破壊力はすさまじく、すっかり馬鹿にした気分で見ていた黒川や星畑のハートを撃ち抜いていった。


「エミちゃん凄い!!セリフのチョイスもバックを読み取れて良い感じだよ!!」


「フン!!……決めつけんのが早すぎんのよ!見る目のない雑魚どもが!!」


「最初がひでえのは変わらねえよ……変わらねぇけど……まあ、その……」


 言葉を濁す黒川だったが、まんまと魅了されてしまったのは事実。すっかり画面の中の姫月に夢中になってしまった。しかし、その彼女はと言うと、照れ顔を解除し、一瞬真顔になったもつかの間、再び全く同じ照れ顔になり


『…………今日のデート、まあまあ楽しかったわよ?』


「「「???」」」


『…………今日のデート、まあまあ楽しかったわよ?』


『…………今日のデート、まあまあ楽しかったわよ?』


『…………今日のデート、まあまあ楽しかったわよ?』


 何故か繰り返す。


「バ、バグった………姫月がバグった……」


「ひゃはははっはははははははは!!」


 目の前で起きている不可解な事態に目を丸くする一同。星畑にいたっては光景がシュールすぎてツボに入ってしまう。


「えっと………これは何?ほんとに何?」


「エ、エミちゃん?…バ、バックが全然分かんないよ!?エミちゃん!?」


「ンフフフフ……す、須田お前……アピールボタン連打すんなよ…ンフフフ」


「うえ!?……わ、私は何も!」


「ち、違……これはアレよ!!色んなデートで同じこと言ってるっていう……場面転換してんのよ!!分かるでしょ!?」


「分かんねえよ!!………え?ていうか……何で場面転換?…色んなデートでって」


「お前、シンプルに表現力がねえな」


『フッ……男なんて、デート終わりにこれ言っとくだけでたんまり絞れるわね』


「……ストーリーテリングもクソだな」


「ええ……い、嫌なオチ」


「しかも、これで動画終わっちゃったよ!?……こ、これ…単なる悪ふざけとしか思われないんじゃ」


「…………ホントに何やってるのエミちゃん」


「い、いいじゃない!!……こういう恋愛劇だってあるわよ!」


「いやそれにしたってさ……コントだよこれじゃ」


「ンフフ……ちょっとさっきの連呼するとこ巻き戻そうぜ……ひゃひゃひゃひゃ!!」


「ヒヒヒヒヒ……永久保存だなこりゃ」


「ちょ!……いい加減、返しなさいよクソども!!」


「…………ええ~っとぉ…これ企画的にはどうオチつけるんです?」


「そりゃトホホエンド以外ねえだろ」


「姫ちゃんが真面目にやったってのは認めるけど、正直受からないだろうしね」


「もっと……やり方次第で絶対受かったのに……」


「結論!悪いのは須田!!」


「うえええ!?わ、私ですかぁ!?」


「そもそも元の企画は私がお金を稼ぐことでしょうが!!どうすんのよお金は!」


「ンフフ……この動画をショートの方で回せばなんかに引っかかるんじゃねえ?」


 グダグダな結果とはいえ、ひとしきり盛り上がって企画を終えようとしたところでピンポーンと呼び鈴が鳴る。姫月が頼んだのであろう宅配が届いたのである。しかも、着払い。


「チッ……空気の読めない宅配ね。星畑、払っときなさい。私をコケにした罰よ」


「おう!お前の3千万から払っとくぜ!」


 姫月に会計を押し付けられた星畑が、ふざけて姫月の財布を手にする。


「ちょっと!!人の財布に触んじゃないわよ!!汚い手で!!」


 しばらく二人でわちゃわちゃしたのちに、姫月がぶんどって何とか財布を取り戻す。しかし、その拍子に口が開き、中から一枚の紙きれがひらりと地面に不時着する。


「ん?……なんか落ちたぞ?」


「だから触んなっての!!………!!…これ……」


 落ちた紙に手を伸ばす星畑を蹴り飛ばし、紙切れを奪取した姫月。すると突然、その紙切れを掲げて「これよ!これがあったわ!」と叫ぶ。


「何?どうしたの?……宅配は建て替えといたからね……全く」


 天知が呆れながら近づくと、姫月は「これよ!」とまた叫んで、天知の目の前にカードを突き付ける。


「んん?……カード?これはトレーディングカードだね」


「正人君たちがやってるやつだ。それ流行ってるんだよ」


「………ていうか、お前それ、めっちゃ前に掴まされたバッタもんじゃねえかよ。まだ持ってたのか」


「ええ……あんときはただのゴミだと思ってたけど、今思えば私が直々にこれを売りさばけばかなりの大金になるわ!!えっと……たしか一枚20万近くするから…15万で売って…フフ、バカ騙すだけで15万よ」


(……他でもないお前も騙されたバカなんだけどな)


「待った。よく分からないけど、偽物を騙して売るんじゃサギじゃないか。流石に看過できないよ?」


 天知がストップをかけるが、姫月は子どもみたいに「関係ないでしょ?」と聞く耳を持たない。仕方ないので黒川から別角度で止めに入る。


「ていうか……そのカード。本物も大暴落して相場下がってるし…売っても意味ねえよ」


「は?そんなわけないでしょ。ほんの数か月前じゃない」


「それがトレカバブルってもんなの」


「チッ……じゃあ、いよいよただの紙屑じゃない!」


「このカード……正人君の友達もニセモノ掴まされたって騒いでたやつかな?」


「そうじゃない?……このガイア・コロシアムが廃れた一番の原因はその、偽物の横行にあるって言われてるから。被害も並大抵じゃないだろ」


「小学生が万を超える額を騙し取られてるのか……すごいご時世だね」


「うん……犯人〆てお金を巻き上げるって男子たち張り切ってるんだ」


「流石東風小……ガラ悪」


「……………それいいわね」


「へ?」


「そうよ!何で気づかなかったのかしら!……私にパチモン売りつけたカスに…何の落とし前も与えてなかったなんて!!…そいつ〆て全財産奪えばいいじゃない!!」


「ほへえ……流石エミ様……アグレッシブな思考回路です!」


「………天知さん、今度は止めないんですか?」


「………うん。いくら何でもそんなこと上手く行きっこないしね」


 やれやれと笑う天知だったが、黒川はこの時点で、何かしらの波乱を感じ取り、若干の身震いをするのであった。







 


 





















もともと今回の話は岩下家とノンシュガーズが仁丹団地の催しにお呼ばれして、親同士が一堂に会する…という趣旨にするつもりだったのですが、いくら何でも陽菜周りの回が多すぎるだろうと変更しました。その兼ね合いでもう少し派手に登場する予定だったあみん父がぬるっと出てきちゃって気の毒です。それはそうと、お察しの通り、次回は正人君たちが登場して活躍します。


それでは、またお会いできることを楽しみにしております。

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