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その②「そこからあれよあれよと話が弾んで喫茶店行きたいコト」

・登場人物紹介

黒川響くろかわ ひびき 性別:男 年齢:21歳 誕生日:6/25 職業:大学生

本作の主人公。抜群の歌唱力を持つが、機械を通した瞬間に不協和音に早変わりする不幸な歌い手。歌手としての道はすっかり諦めているものの、集ったメンバーたちとの心躍る日々を守る為、宇宙人のカメラ役をこなす。本人にいまいち自覚はないが、一応リーダー。

☆好きなポケモンはクチート。正直性的に見てる。


星畑恒輝ほしはた こうき 性別:男 年齢:21歳 誕生日:4/4 職業:お笑い芸人

黒川の高校からの友達。高卒でお笑い芸人の道を選びめでたく地下芸人へ。見る人が見れば割と悲惨な生活を送っているが、本人は至って楽しげ。ルックスがよく、よく気が利く上に、根明のためよくモテそうなものだが、とにかく絡みにくい本人の性格が仇になり全くモテない。

☆好きなポケモンはドータクン。どう考えても有機物には見えないところが好き。


須田凛すだ りん 性別:女 年齢:20歳 誕生日:5/25 職業:大学生

男受けしそうな見た目と性格を併せ持った少女。黒川の歌(動画越し)に感動し、星畑のライブを出待ちし、姫月に憧れながら、天知に焦がれるちょっと変わった趣向を持つ。派手なファッションとは裏腹に人見知りで気が弱いが、推しの事となると見境が無くなり暴走気味になる。

☆好きなポケモンはミミッキュ。ミミッキュに似てると言われたと嘘をついたことがある。


姫月恵美子ひめづき えみこ 性別:女 年齢:20歳 誕生日:10/3 職業:無職

スラリとしてスレンダーな見た目に長い足、艶の良い黒髪とまさに絶世の美女。性格は非常に難があるが、悪いというより思ったことをすぐ口に出すタイプ。一言で言うなら唯我独尊。自信たっぷりで自分大好き人間だが、イケメンも好き。ただしどんなイケメンよりも自分の方が好き。

☆好きなポケモンはデオキシス。見た目で適当に選んだ。


天知九あまち きゅう 性別:男 年齢:42歳 誕生日:3/3 職業:無職

元、スーツアクター兼スタントマン。家を追い出され新たな仲間たちに重宝されながらスローライフを送るおっさん。高身長で、物腰柔らかく、頼りになり、清潔感も教養も併せ持つまさに理想の紳士。黒川への恩義だけで入ったが、正直42歳がやっていけるのか不安でしょうがない。

☆好きなポケモンはサメハダー。何となくカッコいいじゃない。


岩下陽菜いわした ひな 性別:女 年齢:9歳 誕生日:3/20 職業:小学生

女優一家の次女で子役。年齢を感じさせない演技とその可愛らしさから天才子役と称されていたが、家族や友人と遊ぶことを優先する為、子役業から一時手を引いている。年齢の割に落ち着きがあって肝も据わっているが、子どもらしい無邪気さも併せ持つ。怪談やオカルトが好き。

☆好きなポケモンはヨマワル。ぎゅっとしながら寝たい。


 後半です。作品中若干性行為っぽいシーンが出てきますがあまりにもあほらしい内容なのでR-指定は一切なしで行きたいと思います。

                   1



 陽菜の授業参観を翌日に控えた日の早朝、フラフラとした足取りで須田凛がシェアハウスに帰ってきた。早々にレポートやらテストやらを終え、早くも夏休みに入っている黒川と万年ホリデーの星畑が歯磨きしながら出迎える。


「…………おかえり…遅かったじゃん。何してたの?」


「~~~~~~~~~~~~~~~ッ」ボソボソ


「え?……何!?」


「声どうしたんだよ」


「~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ」ボソボソ


 か細いながらも澄んでいた凛の声が何とも弱弱しい、絞り出すかのようなかすれた声になっている。それでも懸命に何か言葉を伝えようとしているので、耳を貸してやる。以前、飲みの席で大好評だった凛のささやきボイスプレイを意図せずリトライすることになったわけだが、声が声、状況が状況だけに一切興奮しない。


「え~……何何……『遅くなってすいません。昨日は眼前さんと遊んでいて、オールカラオケをしてまして』……って別にもう成人なんだから遅くなっても謝る必要なんてないけどさ」


「カラオケって………あの人喋らねえんじゃなかったっけ?」


「……『はい、ですので私が8時間ぶっ通しで歌い続けてこのざまです。やっぱりomoide in my headからの予襲復讐のコンボははっちゃけすぎましたね。いやそれにつけても眼前さんが盛り上げ上手なんですよ!眼前さんがタンバリンでキャンディハウスのチバのハーモニカ部分を完璧に再現した時はこの人っパねえなって思いました。いやー…欲を言えば、眼前さんが愛してるって言うXのラストライブをフルセット再現したかったんですけど…先に日の出が来ちゃって仕方がないから、フジロックでG.W.Dを中断した時のTMGEをやったんですけどね。ふへへへへ……スタンドマイク叩きつけるフリのつもりが、思いっきりマイクを床にたたきつけちゃって……私の力がカスじゃなかったら危うく弁償でした』って何してんのよアンタ……」


「声帯ダメにしてる奴のセリフ量じゃねえだろうがよ」


「………っていうかさ、まあ、用事があったんだししゃあないっちゃしゃあないかもだけど、陽菜ちゃんの参観はもういいわけ?……もうメンバー決まっちゃったよ?」


 罰ゲームが決まってしまっているも同然な凛の現状を指摘してやると、彼女はなぜか嬉しそうに何度も指をさしてくる。同時に、得意げに何かを喚くが何を言っているのかてんで分からない。


「ぞれ!じょれでっぜなおdjhh」


「…………まあ、声が戻ったら教えてよ」


「……こいつは日に日に会ったころの感じがなくなってきてるよな。悪い意味で」


 星畑が苦笑する。どうやら軽く引っかけてきているらしい凛が赤くなった顔を近づけて、星畑の前髪を触ろうとする。よけられ、そのまま体勢を崩し、丸まるように床に寝転んだ。服がめくれ、痩せて背骨が浮かんだ背中が丸見えになり、黒川が目をそらす。その間も、何が楽しいのか彼女はニヤニヤ笑っている。


「……ぼずぐっぶえぎゃぼばビビアン・スー」(空耳)


「……寝るならベッドで寝なさいって…あ、歯磨きもしなきゃだめだよ」


 黒川の忠告むなしく、二人が二階からスイッチを持ち出し、リビングでゲームを始める間に彼女はくぴゅお~という独特ないびきをかいて眠りこんでいた。



                      2



 そんな凛が目を覚まして、いつもの調子に戻ったのは夕方に差し掛かろうとしているタイミングだった。一階のリビングでは、傾いてきた日に本を照らさせて、黒川一人がソファに座ってくつろいでいた。


「あ、おはよ」


「ふぁい……おはようございます……えっとぉ……」


「ヒヒヒ……凛ちゃん今日の朝、めちゃくちゃテンション高い状態で帰ってきてたよ。んで、そのままそこで寝ちゃってたぜ」


「あ……やっぱり…うええ……もう一日が終わろうとしてるんですかぁ」


「そういえば今朝は何を言おうとしてたの?」


「え?……あ、何でしょう?……確か、星くんの笑顔は癒されますって言おうとした気がしたんですけど……それ以外覚えてないですね…」


「……あのビビアン・スーだなんだゴニョゴニョ言ってたのってもしかしてそれ?…そうじゃなくってさ。ホラ、陽菜ちゃんの参観日だよ。もう定員割れちゃったけど…どうすんの?このままじゃ姫月と仲良く罰ゲームだよ?」


「ええ!?……え、エミ様が選ばれなかったなんてことあるんですかぁ!?」


「いや…真っ先に誘われたんだけど、アイツ寝ぼけてて、いつもの調子で断っちゃったんだよ」


「そ、それはそれは……え?じゃあ、黒川さんと星君と…天知さんですか!?……でも、行かないって言ってらしたような……あれ?…ていうかエミ様も、別に訂正すればよかったんじゃ」


「……まあ、向こうから誘われるならともかく、自分から参観日に行きたいなんて言えるような弾じゃねえだろアイツは……っていうかさ、随分冷静に分析してるけど、凛ちゃんもあぶれちゃってるんだよ?」


「あ…ふっふっふっふっふ……それがどっこい違うんですよ!!」


(どっこいって言うZ世代初めて見た)「というと?」


「私、実は昨日…眼前さんとこんな会話をしてまして!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「……………………」(授業参観……という顔)


「え!?……眼前さん授業参観に行かれるんですか!?……えっと、正人君の授業を見に行くってことですよね……な、仲が良いんですね?」


「……………………」(尋常一様……という顔)


「ああ……そうなんですか…え?でも、普通の仲なのにどうしてわざわざ参観に行くんです?」


「……………………」(過去因果……という顔)

ホワンホワンガンゼ~ン


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ちょ、ちょっと待って!回想の中で回想に行こうとしてない!?」


「は、はい……まずいですか?」


「いや……ややこしいんじゃないかと思って……ま、まあいいや…それで?」


「は、はい…まあ、こんなことがあったみたいで」


※黒川の言う通り回想の回想はややこしいので地の文を交えてお届けします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 正人の母(眼前の姉)がうううと呻く、仕事の都合上、授業参観にどうしてもいけないのである。というか、同じ理由で彼が小学校に通ってきた3年間、一度も授業参観やらのイベントに参加したことは無い。一人の母親としてそのことを常々心苦しく思っていた正人の母だったが、今回はものすごく個人的な事情で、いけない事実を呻いているのである。


「うううう……見たい…あのヒナちゃんとまあちゃんの絡み…どのくらいの関係なのか現状を知りたい…参観日にようやく見れると思ったのに…なんでこのタイミングで辞めるかなあのアホバイト~」


 この母親は、あのバカで女子嫌いだったドラ息子が、漫画絵本の世界からこんにちはしてきたかのような美少女と、そこまで悪い関係ではない…むしろ何だかお互いに快く思ってそうな関係であることに猛烈に気ぶっているのである。

 彼女の独特の距離感に参っている正人はともかく、陽菜の方はおそらく現状単なる友達程度の認識だろうが、それでも同じ班で発表するというなら、ぜひとも視界に入れておきたいではないか。


「それに…聞いた話によると、ヒナちゃんのお母様は基本家にいるらしいし、多分来るんだろうし。お近づきになりて~!あわよくばホームパーティーとか、BBQとかに一緒に行きて~!そしてその様子をインスタにアップしてめっちゃいいねもらいて~!」


 しかし、それが叶わないためにうんうん頭を抱えているのだが、その時、高身長以外驚くほど似なかった己の妹が何をしとるんだとでも言いたげにこちらをチラチラ見てきているのに気づいた。その瞬間、彼女の脳内にパッと光が差し、気が付けば眼前に縋りついていた。


「善子!!アンタ今週の土曜日暇でしょ!?暇よね!?」


「???」


「まあちゃんの授業参観があるから!私の代わりに見に行って!!絶対ね!!」


「!!!!???」


「はいコレ!!ビデオカメラ!!これで四六時中!!正人とヒナちゃんを撮っててね!!くれぐれも他の子の発表とか撮っちゃダメだよ!!あと、時々こそっとヒナちゃんのお母さんも抜いといてね!!」


「!!???!!!????」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ということがあり、半ば強制的に授業参観に向かわされることになった眼前。凛はそんな彼女に付き添いを頼まれたのである。多くのノンシュガーズメンバーが抱いていたように、小学生の参観日に親でもない自分が行くのはこっぱずかしかったのだろう。


「え~っと……てことは、凛ちゃんは眼前さんの、正人って子の枠を使っていくからヒナちゃんに誘ってもらう必要が無かったわけだ」


「はい!!このことは決まった瞬間に、ヒナちゃんにもご報告済みです!!」


「なるほどね。それで陽菜ちゃん、突然電話で星畑と天知さんを誘ったのか。姫月がダメで、凛ちゃん誘う必要なしなら、もう残りのメンバー全員揃うしな」


「えへへへへ……でもヒナちゃんってば皆さんの事大好きなんですね!!わざわざ枠分全員を誘っちゃうなんて」


「…………そういえば、それやたら星畑も気にしてたな。仮に枠が余ってもそれを埋めるとは限らないって……杞憂だったってことだな」


「えへへへ、ノンシュガーズのチームワークは本物ですね」


「……俺らはまあ、訳ありだけどな」


「そうだね。まあ、行くってなったら腹をくくらなくっちゃだけど」


 突然、会話に天知が混ざる。昨日の夜、徐々に冷静になり、自分が明日しようとしている行為を激烈に憂鬱に感じているようなのである。その目はいつにもまして黒い。


「えへへへ……確かに私も最初は参観日に行きたくなんて無かったですけど…何かあまりにも行く人が多すぎてむしろ楽しみになってきちゃいました!…それにやっぱり学校でのヒナちゃんも見ときたいですし!!」


「あ~……それはそうかもな。ていうか、俺、誘ってくれた時の陽菜ちゃんのあの顔見ちゃったら、もう野暮なこといいっこ抜きで存分に参観しに行こうと思ったね」


「さっき星畑君も同じようなことを言ってたね。やっぱりみんないいお兄さんお姉さんだね。それに引き換え、僕は利己的でいけないな。やっぱり行くのは恥ずかしいもの」


「それって行かないで済むなら行きたくないってこと?」


「ん…まあ、極論言っちゃうと、そうかもね………って………え?」


 苦笑しながら自虐的に本音をぶっちゃける天知だったが、最後に質問してきた声の主を見て固まる。ついでにその場にいた黒川と凛も固まる。何を隠そう、今回の主役である陽菜その人が立っていたのだ。


「うええ!?……ヒ、ヒナちゃん!?い、いつからそこに?」


「ちょっと前………フーン……みんなそう言うことだったんですねえ」


 いつもはため口な陽菜が取ってつけたように敬語になる。これは大抵の場合、不機嫌の合図である。その原因は言うまでもない。その背後からしたり顔の姫月が出てくる。


「ね?言ったとおりでしょ?」


「……………うん。まあ、別にいいんだけど…」


「ま、心配しないでいいわよ。その分、私が行ってあげるから」


「そうだね。その方がいいかもね」


 陽菜の肩に手を当てながら、芝居っぽく何かほのめかすように告げる姫月。ここでピーンと来た黒川が糾弾する。


「おい!!姫月お前!!……まさか自分が選ばれなかったからってやけになって全部教えたんじゃねえだろうな!!ルール違反だぞ!!」


「は?何のことよ。それに私は誰よりも先に選ばれるはずだったのよ。ちょ~っとヒナのタイミングが悪かっただけでうっかり流れで断っちゃったけど、別に参観日くらいフツーに参加するし」


「エミちゃんも嘘ばっかり……番組だからでしょ」


「あら……お見通しかしら。うふふ」


「ヒ、ヒナちゃん……ち、違うんですこれは……ほんとに」


 ものすごくぎこちなく言い訳をしようとする凛に、陽菜はおなじくぎこちない笑顔を見せる。


「気にしないでいいよ。本当に怒ってなんかいないから……ちょっと悲しいだけ、ほんとはみんな行きたいわけじゃなかったんだなぁって」


「うぐ!」(←天知)

「ぐはっ!」(←黒川)

「ひぎぃ!」(←凛)


「かわいそうよね~……普段あれだけ一緒に演技してるってのに」


 白々しく笑う姫月に、階段の方から星畑が顔をのぞかせて睨む。


「姫月、お前……今回のはまあまあな妨害行為だぞ。倫理的にも、番組的にも」


「何のことよ。適当な言いがかり付けないで」


「そうだよ。星ちゃん。エミちゃんは何にも悪くないよ。だって、これが番組の企画だってヒナ、自分で気づいたんだもん」


「「「「え!?」」」」


 陽菜からの衝撃の事実に固まる一同。恐る恐る黒川が口を開く。


「あの~……そ、それはどのタイミングで?」


「確信したのはついさっきだよ。でも、あれれ?へんだな?って思ったのは昨日……お兄ちゃんと話してる時」


「黒川、お前またボロ出したのかよ」


「え?……なんかバレるようなこと言ったっけ?」


「うん……お兄ちゃん、私の参観日のことなんて何にも知らないはずなのに、『参加できるのはあと2人』って学校のルールを知ってたから、私が誘う前から参観日のコト知ってたのかなって思って」


(……めちゃくちゃボロ出してた)


「それに……天知さんはしっかりしてるから約束事するときに絶対日にちとか時間を聞いてくるのに、この前の電話では参観日って言っただけなのに、すぐに『行く』って言ってたから…それもおかしいなって」


「…………そうか……しまった」


「ていうか名探偵かよ陽菜……それだけで番組の企画まで丸裸にしたんか?探りまで入れてくるなんて」


「んー……というより、昨日凛ちゃんが電話で……」


『私、眼前さんの付き添いで授業参観に行くことになったので、大地さんのほかの3人は私抜きで決めていただいて大丈夫です!!クリアーする人は一人でも多い方がいいですからね!!』


「……って言ってたから…何か『私に先に誘われた人が勝ち』みたいなゲームしてるのかなって思って」


「あ……しまった」


(口を滑らせるってもんじゃねえぞ)

(お役に立ちたいって言っとけばそれでメンツは保てるとでも思ってるのかね?)

(……………………………)


「う、うううう……み、皆さんの負のオーラが……私に……い、命を捨てれば断罪に足りるでしょうか?」


「アンタの命がなんぼのもんだってのよ」


「………でも、それだとエミちゃんが断ったのが辻褄会わなくて、思い切ってエミちゃんに聞いたの?これって何かの企画なんじゃないのって」


「そこで頷いちゃダメだろうがよお前」


「そこまでバレてたらはぐらかしたところで無意味でしょ?私に当たらないでよ」


 姫月は悪びれもせずこう言うが、企画だから仕方なく行くのか、本当に陽菜の発表が見たくて行くのか、こっそり会話を聞いて判断するよう彼女に促したのはこの女である。しかも、優しい陽菜が色々と気を揉まないように自身が選ばなかったメンバーには罰が待っていると言うことも伏せるという気の張りようである。


「…………星ちゃんも、お兄ちゃんも、凛ちゃんも……行きたいって言ってくれたけど…天知さんは行きたくないってことでいいんだよね?昨日の夜、行くって言ったのは…番組の為に仕方なく行くってことでいいんだよね?」


「……………………い、いや…その」


「違うの?……さっき天知さんが自分で言ってたことだけど」


「…………………はい…おっしゃる通りです……すいませんでした」


 陽菜の鬼詰めに逃げ場がなくなった天知が、うなだれるように頭を下げる。結果的に、優勝台から引きずり降ろされる形で天知のみのお留守番が確定したわけである。反対に、姫月は逆転勝利。凛が眼前からのおこぼれで内定したことを除けば、悲しいほど予想通りの出来レースになってしまった。


「………天知さん、責めるようなこと言ってごめんね?…ほんとに怒ってないから、気にしないでね?」


「いや…うん……申し訳ないよ。本当に……申し訳ない」


 天知は憔悴しきった顔で何度も謝りながら、自分の部屋へと向かった。




                       3



 その夜、陽菜が帰った後、姫月以外の全員で天知を励ましたのは言うまでもない。そして、陽菜から、天知ではなく姫月が来ることになったと聞かされた大地が泡を吹きかねない程仰天したことも言うまでもない。

 そんな各々の悲喜を交々させて迎えた参観日当日。正午に学校について、大地と合流するまでの道中で、黒川らが今回の一連の流れを振り返る。


「……しっかし……残酷なゲームというか……ドッキリが途中でばれたらああも恐ろしいことになるって分かったよ今回」


「でも、天知さん……どうして突然、参加されることにしたんです?」


「そうよ。観戦者気取ってたくせに急にしゃしゃり出るから余計な火傷を負うのよ」


「それはまあ……黒川がそそのかしたから」


「おいコラ……むしろあの人をやる気にさせろって躍起になってたのお前だろ?芸人だなんだ言いやがって」


「で、でも……結果的に天知さんだけが罰を受けちゃうことになるんですよね?ううう…ケツバットとかの軽いのだったらいいんですけど」


「ハハハ……あの人ならバッドの方が折れちゃいそうだもんな」


「昔の割りばし使った一発芸みたいにか?」


「挟んで折る方じゃねえよ。天知さんがそんなチェリー吉武みたいな芸をするわけないだろうが」


「………そっちの方が天知さんにとっては罰ゲームでしょうね」


「いずれにしろ……今晩に発表らしいよ。Uの良識に賭けようぜ」


 そんなことを話しているうちに、ポツポツと身綺麗な格好をした保護者と思しき人や、明らかに東風小学校の悪しき部分を担って来たかのような、ゴリゴリの革ジャンファッションに身を包んだ中年などが見え始めた。小学校が近いのだろう。

 そんな中、電信柱の影からふらりと大地が現れて何事も無いように黒川らの群れに混ざる。


「あ………おはようございます」


「………おはようございます。天知さんは何処ですか?」


「……えっと……来れなくなっちゃって……ハハハ」


「ハア~(でかい溜息)」


 陽菜から話は聞いてはいたものの、まだ現実を呑み込めていなかったらしく、大地は合流するや否や、凛の肩に絡まりながら、ここぞとばかりに不服そうな態度を出す。情けない姿だが、そこまで派手に着飾っていないはずなのに、周囲の父母たちと比べ明らかに品のあるたたずまいは流石の風格である。そんなところも気に食わないのか、姫月は面白くなさそうに舌打ちをする。


「登場早々鬱陶しい女ね。相変わらず」


「おや?あなたは?……どこのヤンキー少年の母親ですか?」


「アンタん所のガキ見に来てあげたのよ。わざわざ忙しい中」


「それはそれは……岩下家の沽券にかかわるので恥知らずな行動は控えるようにしてくださいね?」


「ううう……ケンカはやめてください…あと、沽券を気にするなら私に抱き着くのもやめてください」


 早くもバチバチと火花を飛ばし合う大地と姫月。そんな中、いよいよ校門も見え始めてきたタイミングで、突然電信柱が近づいてくる。思わず、ケンカを止めてひゅっと息をのむ大地と姫月だったが、凛はさっさと大地の手をどけて、電信柱のような眼前に飛びつく。


「眼前さん!!お待たせしちゃってすいません!!」


「………………」(今北渡航!!…という顔)


「な、何あれ……どこの番長よ?」


「も、もしかしてアレがヒナさんがおっしゃっていた口裂け女さんですか?こんな白昼堂々出現するとは」


「須田の友達っすよ。今回、アイツはあの眼前って子の付き添いって体で参加したんです」


「でしたら…今からでも天知さんも誘っていただくよう頼んでみましょう」


「岩下家の沽券にかかわるんであんま怠い絡み方すんのやめてもらっていいですかね?」


「アイツ友達いたのね……ねえ、ほんとに友達?生贄じゃなくて?」


「……いいから早く学校入ろうぜ……さっきからめっちゃ周囲の人に見られてるから…」


 


                       4



 一方、陽菜の所属している4年3組の教室では、生徒たちが窓から校庭を眺め、ぞろぞろ入ってくる保護者達について盛り上がっていた。正人も同様に、校庭を眺めていると級友が声をかけてくる。


「まあちゃんの母ちゃん来んの?……珍しいじゃん」


「いや……来ねえよ。むしろ来てほしくないし……そうじゃなくてさ…岩下ん所のやべえメンツが来るらしくて……それを探してんだけど」


「やべえメンツ?……アイツの母ちゃんって女優なんだろ?そんな変な人なの?」


「いや、アイツの家族じゃなくってさ……なんか岩下の芸能関係の何かしらな人らが…こぞって見に来るって……言う……話なんだけど」


 どうもノンシュガーズメンバーについて色々と誤解しているらしい正人。グネグネと体を曲げて視点を変えながら、父兄の顔を観察するが、それらしき人影は見つからない。また、口ぶり的にどうも叔母が見に来ていることも知らないようである。


「マジで!?……てことは芸能人が来るってこと!?」


「ああ……まあ、そういうこったな」


「マジか……岩下ってマジでタレントだったんだな……まあ、可愛いもんな」


「………別に可愛くねえだろ……ていうか女子の事かわいいなんて言ったら的にされるぞ。特に透に聞かれた日には……一生スケベの烙印押されるぜ」


「いやいや……岩下は別だって…言っとくけど、未だに岩下を可愛くないって言ってんのまあちゃんくらいだぜ?…透だって、普段はまあちゃんと一緒になってバカにしてるけど、裏では『今日もいい匂いした』とか言って真っ赤になってんだから」


「………マジかよ……知りたくなかった」


「んなことより!!芸能人誰来るんだよ!?」


「バーカ!岩下レベルだぞ?知ってるようなのが来るわけないじゃん……」チラッ


 正人が辛辣なようで実際はただの真実をぶっきらぼうに吐き捨てる。が、横目で陽菜に聞かれていないかだけはしっかり確認する。陽菜自身ならともかく、他のお仲間の悪口など聞こえようものなら、彼女は本気でぶち切れかねない。


「だからその岩下が十分可愛いんだからさ……あ!おい!辯治!!今日、芸能人来るらしいぜ!マジ!マジで!!」


 なおも興奮した様子のアホを放って、またもチラリと陽菜を見ようとする正人。普段あれだけ好きだとアピールしているエミちゃんたちその他が来るというのに、彼女がそこまで浮足立ってないのが気になるのである。しかし、向けた視線の先に陽菜がいない。「あれ?」と思って辺りを見回すと、すぐ真横に、真顔の陽菜が立っていた。慌てて乗っていた机からずり落ちそうになる。


「な、何だよ!!お前!!急に近づいてくんなよな!!」


「あ、ごめん。今日の発表の打ち合わせしようと思って」


「あ?……俺と透で拡大コピーした町の地図を支えて、その前でお前が鎌倉と何かするんだろ?分かってるって」


「そうだったんだけど……別に地図は黒板に貼ったらいいだけなんじゃないかなって思って……正人君たちにももっとやって欲しいことがあるの」


(……気づかれたか)


「何か言った?」


「いや…別に……何かってなんだよ?言っとくけど俺、お前のしょうもなさそうなお芝居には付き合わねえぞ?」


「ええー……そんなんじゃ正人君たち何にもすることなくなっちゃうよ?」


「いいんだよ。俺別に親も誰も見に来ねえし。むしろお前は大勢来るんだろ?見せ場増やしてやってんだから感謝しろよな」


「え……そうなの?がんぜんさんってお姉ちゃんが来るんじゃないの?」


「は?……善子姉ちゃん?何で来るんだよ。母ちゃんよりありえねえわ」


「え……でも」


「「「ヒナちゃ~ん!!」」」


 「凛ちゃんと一緒に来るって言ってたよ?」の言葉が出る前に、クラスの女子に囲まれる陽菜。その目は彼女が初めてクラスにやってきた日を彷彿とさせるほど、どれもキラキラしている。


「ねえねえねえ!!…ヒナちゃんの知り合いのタレントが来るってホント!?」

「J.Yパークのオーディションを勝ち抜いて、秋元康にプロデュースされて、佐久間信行にハマりまくったアイドルとか俳優がわんさか来るって聞いたんだけど!本当!?」

「ヒナちゃんの授業参観に来るついでにダイヤの原石を探しに来てるってマジ!?」


「え?え?え?」


「………この一瞬でどこまで話が膨らんでんだよ。賞味期限切れた牛乳か」


「………えっと…悪魔とかダイヤとかよくわかんないけど…まあ、私の知り合いはいっぱい来てくれるって言ってたよ?」


「タレントなの!?」


「んー……まあ、うん……それはそうかな」


「「「「わあああああああああ!!」」」


 佐久間を悪魔と聞き間違えるくらい質問を呑み込めていない陽菜の回答に猛烈に盛り上がるクラスメート一同。きょとんとしながらも、すぐに正人の方を向きなおし、念押しする。


「そういうわけだから……正人君は良くても、私は失敗したくないの。だから…できるだけしっかりやってね」


「やなこった」


 どうも浮足立ってないように見えただけで本人は相当、燃えているようである。だからと言って自分までその熱に浮かされたやる必要はない、となおもやる気を見せない正人。そんな彼のそっけない態度にムッとしながらも、休み時間は終わり、いよいよ授業参観が始まってしまう。と言っても授業開始5分間ほどはまだ保護者を入室させず、廊下で待機させている。代わりに入ってきた担任の山川が、若干緊張した面持ちで生徒たちに檄を飛ばす。


「ええ~……みんな土曜なのに学校があってめんどくさいかもしれんけど!この山場を越えたらすぐ夏休みだからな!気合い入れて!みんなのご家族にいいとこ見せろよ!?今回、何でか来てくださっている方多いから!」


「ヤマセンスーツ似合ってねえ~!!」


「やかましい正人!保護者の方がご多忙で来れなかったからって軽口をたたくんじゃない!先生からすれば全員が自分のお母さんみたいな状態なんだよ!」


「意味わかんねーww」


 と、ケラケラ笑う正人だったが、チラッと廊下を見た瞬間に青くなる。陽菜の言う通り、眼前こと善子姉ちゃんがカメラを抱えて立っているのである。しかも、既に構えている姿から察するにもうカメラは回っている。すぐに正面を向きなおし、机の下で横の席の陽菜を小突く。


(おい…岩下……さっきの俺らにやって欲しいことってなんだ)


(え……どうしたの急に)


(……姉ちゃんが来てんだよ。しかもカメラ回してる。授業サボったことが母ちゃんにバレたらマジで殺される)


(……フフ…分かった、じゃあ、やって欲しい役を教えるから……一緒にがんばろうね)


(い、いいから……早く教えろって)


 やる気になった正人を見て、微笑む陽菜。その反応にぎくしゃくしながらも二人はこっそりメモを交換して、情報を共有するのだった。



                        

                         5



「お……いたぜ…ホレ、あそこの席……あの正人って坊主も一緒だわ。席隣り同士なんだな」


 ところ変わって、と言ってもドア一枚隔てただけの廊下にて、ノンシュガーズ他が窓越しに見える陽菜のクラスをまじまじと見ていた。星畑がいち早く陽菜を見つけて、指を刺すと慌てて眼前がカメラの電源を入れ構える。


「おおう……いくら何でも撮影するの早くない?眼前さん」


「おお~……うふふふ……当たり前ですけど、ヒナちゃんってちゃんと小学生だったんですね」


「お隣の正人さんとこっそり文通をしているようですね」


「ありゃりゃ……案外不真面目なんすかね?」


「まあ、天知さんがいないの別にどう授業を受けてもかまいませんけど」


「……そこは流石に気にしといた方が良く!?」


 相も変わらず天知ファーストな大地の意見に呆れながら、いつものように突っ込む黒川だったが、突如シュバッと彼女がピースサインを掲げ、思わず中断する。


「………ど、どうしたんですか?……何かのハンドサインです?」


「いえ、そこのカルロゼンさんがカメラを向けられましたので」


「……眼前さんです……あと、多分ただフレームインしただけだと思いますよ」


 このおばさんホンマに見境ねえなと黒川が冷や汗を流すも、大地のことを定期的に抜かねばいけないのでその推測は間違えている。眼前がなぜ子の参観日に来るはめになり、なぜカメラを構えているのか、凛からある程度聞いていたはずの黒川だが、興味が薄かったからか、綺麗さっぱり忘れていた。


「………………」(被写対象……という顔)


「え、あ……本当に大地さんを撮影したかったの?……なんで?」


「私は別に構いませんよ。どのタイミングでも完璧にポージングを決めて見せましょう。元とはいえ、プロですからね」


「……………」(不羈奔放……という顔)


「ム……自然体でいいと?それはそれで難しいですね。職業柄カメラには思わず反応してしまうのですが」


「………舞台メインの活動って聞いてましたけど」


「ちょっとそこの小学校でコロン付けてきてる激痛オヤジ!!私の事盗撮したでしょ!!バレないとでも思ってんの!?」


「ひぃいいぃい!!しぃましぇ~~ん!!」


(大地さんと姫月って変なとこ似てる時あるよな)


「おい!お前ら!!もう扉空いたぞ!さっさと来いよ!」


 姫月が大柄のちょい悪そうな親父に絡んでいるのを先程の倍の冷や汗で眺めていると、星畑がでかい声をかけてくる。こんなところで目立つようなことをしないでくれと恥ずかしがる黒川である。

 恥ずかしい。そう、恥ずかしい。赤信号みんなで渡れば怖くない的なニュアンスで構えていた黒川だが、教室に入って小学生全員と目があった時、思わず「きちんと目を合わせて挨拶!!」と書かれた黒板上の標語に、目線を非難させていた。

 流石に気のせいだと思いたいが、(かっこいい)(アレってヒナちゃんの言ってたプロの俳優?)という耳を疑うヒソヒソ話が入ってくる。そんな黒川を星畑が茶化す。


(よぉ……思ったより小学生にモテてるじゃんお前。来てよかったな)


(バカ。お前に言ってんだろ)


(じぇみょじゅじゅちゅきゅろきゃわしゃんにゃきょちょみちぃえましぇたにょ)


(え!?なんて!?……ごめん凛ちゃんコソコソ過ぎて何言ってるか全く分かんない!)


 ちなみに凛は黒川以上に委縮し、教室に入る時も初期状態のマリオのように縮こまってそそくさと人波に紛れていた。また、先程のセリフは「でも事実、黒川さんのこと見てましたよ」と言っていた。別に無理して伝えるような内容ではない。

 いっそ掃除用のロッカーに潜んでいようかなどとボケなのかマジなのか分からないことを言う凛に苦笑で返していると、前の生徒たちからどよめいたような声がする。つられて彼ら彼女らの視線の先を見てみると、大地と姫月が堂々たる態度でスラリと教室に入ってきていた。まあまあな狭さでなおかつ人もそこそこ溢れているのだが、そんなことを微塵も感じさせない程、二人は優雅に進んで真ん中あたりでシャンと立ち止まった。その後ろを眼前がカメラマンのように捉えたまま入ってくる。


(え、何あれ!?……本当に何あれ!?)

(さっきのモデルさんもカッコよかったけど……この人は本物だよ!)

(ヤバ!!平常にしとかないと……途中退室させられる)

(もう……戦いは始まっているんだ!!)


 小学生特有の謎の飛躍しすぎた発想で、何かを勘違いし、シンとするクラスメートたちに紛れて、陽菜が呑気な声を出す。


「あ、お母さんだ」


「……善子姉ちゃん……なんでお前の母ちゃん撮ってんだ?」


「あ、お姉さま!……凛さんもいる!ほんとに来たんだ!」


 陽菜のほか、面識のある正人やあみんも当然だが別に動揺することはない。あみんが久方ぶりの姫月に、嬉しそうに小さく手を振ると、姫月が黙って腕を組んだまま人差し指を黒板の方に向ける。あみんや陽菜に「こっちみんな。前を向け」と伝えるサイン以外の何物でもなかったが。その外面の良さ(物理)に圧倒されているクラスメートは一斉にザっと前を向く。


(うへ~~~い……流石エミ様)


(思ったより生徒まともそうじゃん)


(父兄見ろよ父兄。明らかに堅気じゃなさそうなん混じってるじゃん)


(星畑お前、そういうのは思っても言うなって)


(さっきエミ様の怒りを買って縮み上がってましたよ。ザマミロです)


(凛ちゃんも!どこで誰に因縁つけられるか分かんないんだから!)


(……相対的にお前が一番失礼なこと言ってるぞ)


 反面、あっという間に注目の的から外された三人組は隅の方でこちょこちょと雑談を繰り返していた。とにもかくにも、授業参観はスタートする。


「はい!では、えー……保護者の皆様、本日はご足労いただきましてありがとうございます!今回は生徒たち、えーお子様たちが準備したこの街、我らが仁丹市の歴史や風土をまとめた発表を見ていただきますので、感想やリアクションなど…求めた際には応えていただきますようお願いします!」


「何それ……だるいわね」


「全く持って同感です」


 背筋が凍りそうなリアクションや感想を平然と漏らす恐ろしき美女二人。隅にいる三人は震えあがるがるが、幸い、生徒や担任には聞こえていない。


(おい!あの二人一緒にさせたらダメだ!誰か止めに行けよ!)


(………あの人、天知さんがドタキャンになったストレスで今日いつもより荒れてんだよな)


(それが分かってるなら止めろよ!ツッコめホラ!)


(……やだ…凛ちゃん頼むよ。母親と先輩でしょ?)


(ふへへへへ……ちょ~っと…勘弁してください)


 第一の発表が始まる。と言っても、特にこれと言って何があるわけでもなく、最初の3班ほどは真面目な資料の前で真面目に研究成果を発表するモノだった。その内容こそ、県のポケモンとして選ばれたポケモンに関するうんちくという飛躍しすぎて仁丹市に関係あるのか怪しい代物だったりしたが、担任が緩い体制で、保護者側もそれを知っているのか、和やかに会は続いていた。発表後のまばらな拍手のあと、担任が一番前の男子生徒を軽く小突く。


「優斗お前~…ポケモンの話したかっただけじゃねえか!」


「へへへへ」


「え~……というわけで第3班の発表…ご感想をいただきますね~っと……じゃあ、左から3列目の方!お願いしてもよろしいでしょうか?」


 選ばれたのはニアミスで、凛の隣の保護者だった。保護者はフフフと微笑をこぼしながら当たり障りのないコメントをする。


「ええ~……ちゃんとどういう縁でそのポケモンが選ばれたのかも調べてて、ちゃんと研究になってて、すごいと思いましたよ」


「ありがとうございます!……じゃあ、もう一人くらい……じゃ、隣の…お願いします」


 ニアミスかと思いきや、絨毯爆撃だったようで…ばっちり被弾してしまう凛。「え、あ…う」と少しあたふたした後、サッと黒川を引っ張って身代わりにする。


「ええ!?」


「あ、じゃあお兄さんお願いします(笑)」


「………ええ~…そうだな…発表の中でポケモンの製作元を任〇堂って言ってたけど、厳密にはフ〇ークの田尻智さんだし………あと、ワニノコを初期のポケモンって言ってたけど、それはあくまでアニメでサトシのポケモンとして出てきたってだけでゲームとしては金・銀からだから初代ではないんですよね。まあ、今回はポケモンが主体じゃないし、どうでもいいことではあるんですけど……着眼点とかは良かったですし、その資料のポケモンのイラストも上手だし、発表はすごい良かったと思います」


「…………あ、はい……保護者の皆様にもご好評…ということで…ありがとうございます!」


 小学生含む全員から何やこいつみたいな目で見られる黒川。直後、星畑からは直接「なんだお前?」と言われてしまう。


(何って……感想だよ)


(……お前ってやっぱちょくちょく痛いよな)


(……急に振られたから推敲する暇なかったんだよ)


(ふへへ……すいません……)


(あと同じセリフの中に二回もサトシって言葉を使うなよ。ややこしくて混乱したじゃねえか)


(……製作者の名前から付けられたんだからしょうがねえだろ…分かってて言ってんだろうけど)


 黒川が若干、会場をしらけさせてしまう中、姫月は直立のまま寝るという高度なテクニックを人知れず発動していた。眼前はひたすら言われた通り、真面目に発表を聞いている正人と陽菜の後姿を撮影していて、時折大地の方へカメラを向けていた。のだが、その度に被写体が真顔ピースを決めてくるので、途中から大地を写すことは無くなった。

 滞りなく発表は続くのだが、次の5班は何と何とのコント形式での発表だった。クラスのお調子者っぽい連中がワイワイふざけて、それを女子が棒読みで突っ込んでいる。黒川たちからすれば地獄のような光景だったが、身内受けはいいらしく、クラスメートにはどかんどかん受けていた。そんな中、爆笑する正人の横で不思議そうな顔をしている陽菜を見て、黒川はなぜかほっと安心した。そして、その横でどう考えても笑いをこらえている星畑を見て絶句する。


(………こいつもしかしてツボに入ってる?……いや、違うか。いわゆるシケ笑いって言うか、シュール過ぎて笑えて来てんだろ)


 と思っていたが、クラスメートの中でもひと際アホそうな男子が「バナナうんこにゅ~るにゅる!!」と言いながらクネクネする度に天を仰いでいる彼を見て、どうも本当にネタで受けていることが分かった。


(…………こいつのお笑い感性って小学生レベルなんだな)


 ずっと見ていたからか、星畑と目が合う。黒川の心中を察したらしい星畑が、にやついた顔で黒川の肩を叩く。


(………星畑お前、これがツボとか言うなよ?)


(ンフフ……だってよ。発表内容とバナナうんこのどこに関連性があるんだよ)


(町の水道について調べてるんだから、下水の中をバナナうんこが流れて行っても不思議じゃねえだろうが)


(いや……何回流れるんだよとか、この街の奴らの腸内環境が良すぎることとか…思ってたら何かやたらおもろくなってきて)


(…………いやいやいや)


(………それより黒川お前…そこの壁に貼ってる陽菜の習字見たか?)


(え?)


 言われるままに横の壁から彼女の作品を探すと、突然野太い文字で「一反木綿」と書かれた習字が目に飛び込み、思わず吹き出してしまう。結果、悲しいかな、この下らないコントで笑った唯一の保護者になってしまった。またも保護者連中から冷たい視線を受けてしまい委縮する。


(………てめえ…謀りやがったな)


(吹き出すほどじゃねえだろ……俺まで恥ずいわ)


 黒川の吹き出しから間もなく発表が終わり、例によって感想が求められるのだが、内容が内容だけに保護者には当てにくいようで、担任はクラスメート数人に聞いて回った。あみんが当てられ、この街のインフラは優秀だと分かったと、適当なコメントを残していた。

 この班だけ保護者に何も聞かないというアンバランスさを気にしてか、担任がチラッと真面目な顔の親たちを見ている。その時、ゆっくりと白い腕が保護者の列から上がり、反射的にそれにコメントを求める。しかし、その腕の正体は単に起きて伸びをしただけの姫月だったのだから大変である。


「はい!……では手を上げてくれたお姉さんお願いします!」


 営業の司会をする芸人みたいな妙なテンションで姫月に手を突き出すが、彼女はどうでもよさそうに明後日の方角を見ている。


「エミちゃんさん。あてられていますよ」


「ん?……当たられてるって何によ」


「コメントです」


「あ~……」


「今の発表を見てどうでしたか?」


「……………ねえ、ヒナって奴の発表っていつくらい?」


(おいおいおいおいおい)←※黒川


「え!?……え~……岩下ですか?…岩下は7班なので…あと3班の発表が終わってからですね」


「……それって何分くらい?」


「一班5分なので…15分くらいです」


「ん…ありがと」


「あ、ああはい……へへへへ」


 珍しく担任の山川に向かってお礼と微笑を向ける姫月。そんな彼女の雰囲気に押され思わず照れ笑いを返してしまう山川。そのまま「トイレ」と言って姫月は教室を出て行ってしまった。


「え!?…あ、あの………感想」


(………あ、あいつ…ふけやがった)


(ほ、ほんとに…おトイレに行かれたのかもしれないですよ?)


(……バナナうんこにゅ~るにゅる)


(黙ってろ星畑お前)


 その後は特にこれと言って何も起きることなく発表が終わっていった。そしてきっちり15分後に姫月は帰ってきた。今度は奥までズンズン進み、黒川らの近くに来る。


(……お前、真面目に参観しろよな)


(逆に聞くけどアンタら何でそんなバカ真面目にガキの発表聞いてるわけ)


(……角が立つようなこと言うなよ。聞こえたらどうすんだ)


(アンタが長々とポケモン講義してる時間が一番角が立ってたわよ)


(…………………)


(あ……エミシャマ……ヒナちゃんの発表が始まりますよ)


(劇だっけ?……なんか微妙に共感性羞恥が…さっきのコントみたいな雰囲気じゃ無けりゃいいけど)


(お前、そんなこと言ってると陽菜に嫌われるぜ?)


(多分こいつが知らないだけでもう嫌われてるわよ)


(………………)


 待ちに待った陽菜の班の発表なわけだが、なぜか教壇の上に陽菜がいない。他の3人、黒川らかすれば顔見知り2人と知らない男子一人が磁石で黒板に資料を貼り付けている。


(………資料手抜きじゃねえ?)


(ネットで拾ってきた画像添付したって感じだな……あみんちゃんとかしっかり作りそうなイメージあるけど)


(てゆーかヒナはどこよヒナは)


(直前に教室出て行っちゃったんですよね……トイレでしょうか?)


(どうでもいいけどここのトイレ、落書きが多すぎるわよ)


(本当にトイレ行ってたのかよ)


 大地も、そして画角に陽菜を入れておかねばいけない眼前のカメラもキョロキョロと教室を見渡している。陽菜を探しているのである。結局、彼女もいないままに発表が始まる。あみんが仁丹市に出現するという妖怪や、それにまつわる言い伝えをアナウンサーのように淡々と語る。この題材考えたの間違いなく陽菜ちゃんだろうなあと黒川がほっこりしていると、突然、教室の扉がピシャーンとすさまじい勢いで開き、ヒナと同じ身長のお面をつけた化け物が入ってくる。

 いやまあ、十中八九陽菜本人なのだが、先程のちょこんと席に座りお行儀よく発表を聞いていた少女とは、似ても似つかないほど邪悪なオーラに包まれているのである。生徒も、保護者も、思わずビクッと肩を震わせる。


「ば、化け物だー!!(迫真)」


 一瞬の静寂の後、正人じゃない方の男子が真に迫った演技で絶叫する。それに反応するように、陽菜が「ぐおおおおおおおおおおおおお!!」と地底から響いているとしか思えない声を上げ、教団という名のステージを走り回る。


「あ、あんな野太い声出せたんだな」


「てゆーか発表って言っていいのか?これ」


「………来るんじゃなかったわ…この時間の方がよっぽど罰ゲームよ」


「うわうわうわうわ…こ、こっち来ますよ!?」


 思わず脇目も振らず逃げ出したいほど、おっかない顔と勢いで陽菜が迫ってくる。というか凛は後ずさりしてロッカーに後頭部を強打する。こちらに飛びついてくると思った瞬間に彼女は右折し、そのまま保護者の前をサーっと通り、また席の合間を縫うように教壇に戻る。


「化け物が何だってんだ!!こんなのただの車輪じゃねえか!」


 突然、若干棒読みの正人が突進する陽菜の前に立ちふさがる。思ったより彼女が怖かったのかその足は若干すくんでいるが、とにかく立ちふさがる。そして、一同が(あれ車輪だったんだ)と思う前に陽菜が正人に飛びつき、正人は思いっきり押し倒される。保護者席から「おー!」という歓声が飛ぶ。


「きゃあ!!お、押し倒しましたよ!」


「何あれ?求愛行動?」


「あの妖怪って…確か、陽菜が輪入道って言ってたけど……どんな妖怪だよ」


 その星畑の独り言を受け、ようやく合点がいく黒川。これは実演だったのだ。


「そういうことか……輪入道ね」


「どういうことです?」


「輪入道だよ。妖怪の……アレ、街中を転がりまわって目についた人間轢き殺して食べたりする凶暴な妖怪だから…それをやってんじゃない?」


「デモンストレーションってことか……」


「ぐおおおおおおおおおおおおお!!」


「うぎゃああああああタ、タチケテー」


 正人に馬乗りになった陽菜が凄まじい勢いで彼に暴行を働いている。もちろん単なるポーズだが、正人の演技がもう少し迫真だと、本当に食われてやしないかと心配しかねない恐ろしい勢いである。ちなみに終始吠えている陽菜のせいで全く聞こえないが、この間、あみんは淡々と輪入道に関する解説を行っている。一応、発表の体は守っているのである。


「あんなのに殺されるなんて不憫なやつね」


(結構真剣に観劇してるじゃん)


「…………!!」(有頂天外!!……という顔)


 こういうの大好きそうな眼前が嬉々としてカメラを回している一方、そんな彼女の裾を握り締めながら、大地がクールに微笑む。


「………母であるこの私を本気で怖がらせてしまうなんて…流石ですヒナさん」


 発表が終わり、当然の流れとして感想は陽菜の母親である大地に向けられる。大地はコホンと咳払いをして穏やかに語りだした。


「今回の発表、推測するにヒナが一方的に題材や方針を取り決めたのだと思います。資料に関しましても、直前になって作り替えたと本人から聞いています。そんな急ごしらえな状況にもかかわらず、皆さんヒナに付き合っていただき、結果的に素晴らしいクオリティになっていました。全く持って驚くばかりです。きっとヒナもこの結果に大いに満足しているはずです。ありがとうございます。お疲れさまでした」


 きちっと頭を下げる大地に誘われるように、保護者席から陽菜たちに向けて大きな拍手が寄せられる。輪入道から仮面をかぶった少女に戻った陽菜が、くるくると髪の毛をいじり、保護者達を和ませた。


(大地さん綺麗なコメントするな……PPAPしてた人とは思えねえ)


(母親としてのメンツもあるんじゃねえ?……知らんけど)


(いずれにしろ優雅な姿だぜ……完璧な母子って言うか…トイレに籠った美人なだけの女も見習ってほしいもんだな)


 黒川が毒を吐きつつ、姫月を見るが、彼女はどうでもよさそうにスマホをいじっている。


「もう陽菜が終わったんだから帰っていいわよね?」


「あと一班なんだから付き合ってくれよ」


「チッ……まあ、いいわ。トイレよりここの方がまだマシだし」


 姫月をとどめることに成功した黒川だったが、数分後にこの行動はマイナスだったことがすぐに発覚する。次の発表はまたも調子ノリの男子が考案したコント発表だったのだが、その内容に問題があったのである。


「え~……僕たち、第8班は…駅前にある有名店の『惨殺えみこ』について調べました。大将の大黒さんに取材して、変わった店名を調べて…なんでそんな名前にしたのか聞きました。ほんで、その内容を劇にしました。見てください」


(さ、惨殺えみこ!?)


(ンフフ……)


(ま、マズいですよ……その題材はマズいですよ!)


 忘れられない…黒川も何度か大学帰りに訪れているラーメン屋の因縁が数か月ぶりにぶり返されてしまった。恐る恐る姫月を見る3人と、前の席の陽菜だがすぐにサッと顔を戻す。目を合わせていられない程に、怒気を放っていたのである。そのくせ顔は平然としているのだから恐ろしい。


「ラーメン屋の名前は…もともとラーメン大黒って言う普通の名前だったんですが…大学生の集団と一人の小学生が……名前を考えてくれたそうです。そしてその3人は……」


 というと、教壇にボケ~っとした顔の3人の男女が座る。ひょっとしなくても開かないラーメン屋のシャッターが開くのを今か今かと待っていた在りし日の己らである。


(………どれが俺なんだろう)


(……ヒナちゃんが来たって言ってないってことは…匿名にはしてくれたんですね…大黒さん)


(これ…姫月もだけど…陽菜もどんな顔してみればいいか分からんよな)


「すんませ~ん……まだラーメン屋あかないっすかねぇ~~」オライオライ


 なぜか妙にオラつきながらシャッターに向かって嘗めた口を利く黒川役と思われる少年。


「お腹減ったんだけど!!お腹減ったんだけど!!…向こうのラーメン屋開いてるんだけど!!お腹減ったんだけど!!」


 瞬間、思わず吹き出してしまう姫月以外のノンシュガーズ一同。まさかとは思ったが、頭に黒い短冊状に切った画用紙を貼り付けた少年が姫月役をしているらしい。


(ヒヒヒ…アカン、これはアカン)


(ンフフフフ……ヤバいこの5分間地獄だぜ)


(不敬ですよ…これは不敬です…許されませんよ……ふひゅひゅひゅひゅ」


(ヒヒヒ…凛ちゃんだって笑ってるじゃん)


 声を押し殺して笑っているせいでいつもより特に特徴的になっている凛の笑い声。その後の5分間は星畑の言う通り真っ赤な地獄で、黒川は自分が発案したことが全部陽菜が言ったことにされている事態にすら突っ込む暇もないほどに、笑ってはいけない授業参観を耐える羽目になった。

 何とか発表が終わり、今まで司会進行に徹していた山川先生が珍しく直々に辯治の班を褒める。


「お前ら凄いな!店にきちんと取材して、この街のどの本にも載ってないようなこと調べちまうなんて、その3人組が一体何考えてそこまでおせっかい焼いたのかがイマイチ分からんけど!とにかくよく調べたな!」


(………番組の為だよ)


「じゃあ、保護者の方にも…お話を……そこのお兄さん…どうですかね?」


 ニヤニヤしていたのが仇になったのか、星畑が当てられる。


「いや~……現実は小説よりも奇なりってね…よく言うよなって思いましたよ。なっ!!姫月!!」


 無難なコメントで終わるかと思ったが、最後に爆弾を放り投げてきた。黒川と凛に緊張が走る中、ぎこちない笑顔の姫月が明らかに怒りを押し殺しているであろう声を出す。


「………………そうね。前々からふざけた名前のラーメン屋だと思ってたけど…店主じゃなくってちゃんとふざけた性格の奴らが考えてたってことを()()()分かったわ。あと、女子がいるんだから女の役はちゃんと女でやった方がいいわよ。そんな手の抜いた女装じゃなくって」


 姫月にしてはまともなコメントのようで、きっちり怒りの矛先を…星畑、凛、陽菜にずいっと向けてきている。惨殺えみこはこの3人の行動が混ざってできたバスタードなのだ。


(わ……わたし、この後天知さんより恐ろしい目に遭ったりしないですよね?)


(さ、さあ?……姫月の良識に賭けようぜ)





                    6




 授業参観が終わり休憩時間になった。生徒たちがバラバラと親の元へばらけていく。例外なく、陽菜も大地やノンシュガーズの元へ駆けてくる。なぜか未だにお面はつけたままである。


「みんな!来てくれてありがとう!!」


「えへへ……こちらこそ来て良かったです!…迫真の演技でしたね!流石ヒナちゃん!」


「演技は大変すばらしかったですが、怖いお話をされるときは事前に一言お願いしますね」


「何よアンタ…あんなのにビビってたの?」


「あ…エミちゃんさん、戻ってたんですね。随分長いお手洗いでしたがお便秘ですか?」


「……………………」ピキピキ


(大地さん大地さん……今は煽らない方がいいっす。ちょっと訳アリでキレてますから)


「?」


「ま、まあ……いずれにしろ、陽菜ちゃんおめでとう!最優秀発表に選ばれたじゃん」


「当然ですよ。ヒナさんが本気でお芝居をしたんですから」


「そ、そんなことないよ。アレは正人君たちがしっかりしてくれたから…」


「大地さんも感想で似たようなこと言ってたじゃないですか」


「ヒナさんに付き合ってくれてセンキュウ…というのは事実ですが、劇の功労者はヒナさんを置いて他に居ませんよ」


(子煩悩)


「あ、正人君だ。おーい!正人くーん!今日はありがとー」


 正人を見つけて手を振る陽菜。正人は若干赤くなりながらも、こっちに近づいてくる。


「……お前、いつまでお面付けてんだよ。あと、マジで飛びつきすぎな。誰も話題にしてないからいいけど、アレ下手したら一生からかわれる黒歴史になるぜ」


「大丈夫だよ。お芝居なんだし」


「関係ねえって……」


 ボリボリと頭を搔きながら嬉しそうな陽菜の相手をしていた正人だが、ぬうっと眼前が近づいてきたので、そちらに詰め寄る。


「ていうか!!姉ちゃん何で来てんだよ!?……おかげで真面目に劇やらなきゃいけなくなっちゃっただろ!?」


「……………」bグッ


「い、いや…グッ…じゃなくてさ…マジで何で来たんだよ」


 その質問に眼前が答える前に、あみんが「眼前さ~ん!」と飛びついてきたので、会話は中断される。


「あ、あみんちゃんだ。あみんちゃんもありがと」


「いいよ別に~…音読しただけだし~……それよりお姉さまだけじゃなくって眼前さんまで連れてくるなんて~…この場に目の保養が多すぎるって!!」


「あみんちゃんがふわふわしてる」


「………そう、良かったわね。じゃあ、私帰るから」


 まだ大勢のクラスメートと保護者が戯れている中、姫月がそそくさと教室から出ようとするが、ノンシュガーズ全員まとめて児童たちに囲まれ、質問攻めを喰らってしまい、休憩時間が終わるいっぱいまで帰ることはかなわなかった。

 凛を待たず先に帰ることにした眼前が、正人の前にカメラの画面を出す。そこには机を並べて、楽しそうに手紙を投げ合う陽菜と彼が映っていた。


「な!?……な、何撮ってんだよ!?」


「………………」b グッ!!


「だから何だよ!何のグッだよ!?マジでそんなんじゃねえーつーの!!」


 半分追い出すように叔母を追い出す。そして、ポケットの中でくしゃくしゃになっているノートの切れ端を握ってゴミ箱に放り投げる。そこにはお芝居に関する陽菜の細かな指示が書いてあったのである。


『そこで正人君が突撃してくる私を受け止めて、そのまま食べられて欲しいの。しがみつくからできるだけ自然に倒れてね』


『しがみつくって、いいのかよ?』


『?』


『だってお前、俺に抱き着くみたいなもんだぞ』


 いくら劇とはいえ、女子が男子にしがみつくなんて相当の接触行為である。そこを気にする正人に対し、陽菜は次の紙を放ってきた。丁度その紙だけ、ゴミ箱からそれ、床に不時着する。慌ててそれを拾い、周囲に誰もいなことを確認して、こそっと開く。


『うん。正人君だったらいいかなって思ったんだけど』


「…………いいかなって……俺だったらいいって……どういう意味だよ…アイツ」





                       7



 大地と別れ、ノンシュガーズが天知の待つシェアハウスに戻る。そう、参観日が終わっても陽菜の授業がまだ終わっていないのと同じで、こちらもまだ収録は終わっていないのである。苦々しい顔でソファに座っていた天知に黒川が小声で声をかける。


(ダメって言ってもどうしようもない話ではありますけど……大丈夫そうですか?天知さん)


(フフフ……なーに……)


 苦々しい顔から一転、取ってつけたようなクール微笑で颯爽と立ち上がり、大仰に手を広げて見せた。


「買うさ!!買いなおすさ!!すべて残らずね!!」


「あ、はい……そうっすね」(カー〇ンサーのCMかよ)


「そうだよ。別に売り払われたって買いなおせば済むことじゃないか!決して手放すと言うことじゃない!…売って、その場で全て買いなおす。それだけのこと!」


(シャウアプフみたいになっちゃったよ……別に罰の内容、アニメグッズ売れって内容とは決まってないんだけど)


「何叫んでんのよ。こっちは終わったからさっさとアンタも罰なりなんなり受けなさいよ」


 二階からのしのしと姫月が降りてくる。


「終わったって何が?」


 と聞くと同時に、二階からムスッとした顔の星畑と半泣きの凛が降りてくる。二人とも顔に何か線が入っている。近づいてみると、星畑には「馬鹿」凛には「雑魚」の落書きが施されている。ラーメンの件でお冠だった姫月による報復である。


「…………小学生みたいなことすんなお前」


「うっさいわね。こういうのはケジメが大切なの。星畑がごねなきゃ現金で解決してたのよ」


「チッ…どうせ書くならデコに愛って書いてくれって言ったのにな」


「我愛羅になりたい願望あったのかよお前……それ油性?」


「油性でも洗えば落ちるんですけど…ううう、三日以内に勝手に落としたらもう絶交って言われて、もう大学行けない……」


「俺は速攻で落とすけどな…ていうか今落とすわ。黒川…エッケルザクスくれ」


「誰がザクロちゃんだ」


「ううう……雑魚はひでえですよ……雑魚は…」


「姫月からのサインって思っとけよ」


「思えるわけないだろ」


「星君!天才ですか!?………あ、天才でした」


「思えるのかよ」


『あー……そろそろいいかな?』


 3人でわちゃわちゃしているところにしびれを切らしたUが割って入る。


『ノンシュガーズ諸君、今回の一連の行動ご苦労だった。今回は全員積極的で非常に良かったよ。これはこれからもムチを強めの方針で行った方がよさそうだな』


「何か調子に乗ってるわね。アイツ。まあ、私は罰なんて受けないしいいけど」


「それで罰って何なんだよ?」


「覚悟はできているから、さっさと済ませて欲しいな」


『まあ、待て。まず伝えておかねばいけないんだが、須田凛、今回はキミも罰を受けてもらうぞ』


「「「え?」」」


「え…私、行きましたよ?参観日?」


『私はヒナから誘われたうえで行けと言ったんだ。別枠を使うことなど認めていない』


「ええええええええええええええええ!?」


「アッハハハハハハ!!バッカね~凛!!アハハ!因果応報よ!!」


「まあ、確かにそうかもな」


「どんまい凛ちゃん」


「ひいいいい……あ、あの…私、痛いのと精神的につらいのとエッチなのは勘弁したいんですけど」


『心配するな。岩下陽菜が帰ってくる時間もあるから、そこまで大それたことはしない。まあ、ある程度は苦痛を受けてもらうがな』


「何か準備するものあるわけ?竹串とか?」


「……それをどうする気だよ姫月お前」


『まあ、せっかく陽菜がいないんだし、少し破廉恥な内容にしておくか』


「え…そ、それって」


「罰どころか俺らにはご褒美じゃねえの!?」


「な、何考えてるんですか!星君!」


「逆バニー」


「ど、どあほ!!」


 ぺちょー!!と凛が星畑をはたいた次の瞬間、スピーカーからUの声ではなく凛の声が聞こえてくる。


「え?わ、私?」


『合成音声だ…本物にしか聞こえないだろう?』


「すげえな……確かに凛ちゃんの声だぜ」


「これが宇宙の技術力なのか」


 黒川と天知が素直に感心したところで、再度凛の声が聞こえてくる。


『傷跡を嘗める悪魔』


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」


「うわ!びっくりした!」


 何やらタイトルのようなものが流れた瞬間、おっかながっていた彼女の顔が一瞬で真っ赤になり、聞いたことも無いような声で叫ぶ。


『作、☆Rin』


「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「うっさいわね!何よ一体」


「作ってことは…凛ちゃんの作品か何か?」


『私は公安デビルハンターの須藤リンネ、メスの悪魔と契約しているデビルハンターだ。岸部隊長の元で日夜、悪魔を殺して毎日を過ごしている。岸部隊長は私をリンと呼ぶ』


「ひぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


「あっ(察し)」


「何これ?……こんなのが罰なの?」


「いやー…これはとんでもない罰かもな」


「もしかしなくてもこれは『チェンソーマン』だね。へえ、須田さん好きだったんだ」


「ふへへへへへへへへへっへっへへへぇええ……そうですよぉ!!好きですよぉ!思わず夢小説書いちゃうくらいねえ!!み、みみみみみい耳!耳閉じてください!さもなくば私はのどぶえかっきって死にます!!」


「メスの悪魔でか?」


「きえええうぇええええええええええ!!」


『分かってると思うが、耳を閉じるなよ?誰か一人でも聞いていないと分かれば再生はストップするからな。大声でかき消しても同じことだ』


「う、ううううう恨んでやる…一生恨んでやるぅうう」


『どうぞお好きに。それじゃあ再生するぞ』


~以下ダイジェスト~


『私がまとも?……岸部さん、あなたは悪魔狩りを楽しむ血に飢えた女がまともに見るんですねぇ』


「ずっと聞けずにいたんだけど岸部って誰?岸部一徳?」


「岸部一徳の夢小説書く奴がいるわけねえだろ」


「そもそも岸部ってジジイじゃなかった?アンタあんなのがいいわけ?フツー吉田かアキ選ぶでしょ?」


「え!?姫ちゃんも『チェンソーマン』見てたの!?」


「………さっきから皆さん私の小説の方に関心向けてなくないですか?」


「………良かったじゃん」




『………酒のせいにすればいいじゃないですか?……私は冷たい殺戮人形。酔っ払いに抱かれたくらいで…靡いたりはしません』


「………なんかシームレスに濡れ場入ろうとしてない?」


「え!?……そんなことってあるのかい!?」


「二次創作じゃ割とありますよ」


「いくら凛でも架空の男とやったりしないでしょ?」


「……………………」(←白目)



『あ……はあ……はあ……ふ、ふふ……私の血が飲みたい?…ああっ!…』

『噛みつく力が強くなるにつれ、私は強い衝動にかられた。それはこの人に支配したいという欲望のような衝動的なものだった。岸部が私を突けば突くほど、私はこの人のことが深く深く深いところまで沈んでいくような気がした』


「……………………」


「……………………」


「……………………」


「………だ、誰か何か言ってくださいよ」


「とんだメスの悪魔やでぇ」


「……すいませんやっぱり黙っててください」




『私はこの人の傷をなめるだろう。悪魔を殺し、悪魔に殺されるその日まで……』

~Fin.~


「…………何か…セックスしてたこと以外驚くほど何も分かんなかったわ」


「文脈が少し乱れてるかな。一つの文中に二回同じ言葉使ってるし、接続詞おかしいし」


「衝動とか欲望とか同じフレーズ多用し過ぎ、ZAZEN BOYSの歌詞かよ」


「お前、絶頂すること『出し切る』って表現するタイプなんだな」


「シ、シンプルに小説にダメだしされたぁ!!」



『というわけで次は天知の罰だ。これは今日今ここで行われるものではない。今日の夜か、はたまた後日か、自分で段取りを組んで行ってもらおう』


「ええ?……それで何をすれば?」


『それは……………』





                     8



「なっつやすみだ~~~~!!」


 同日の夕方、大荷物をもって陽菜がシェアハウスにやってくる。今から約一か月間、陽菜は今までとは正反対に、ここを軸に生活するのである。ズダダダダとリビングに入ってくる彼女を笑顔で凛が迎え入れる。


「えへへへへ!!今日からずっと一緒ですね!」


「うん!改めてよろしくね!りんちゃ…って何で顔に雑魚って書いてあるの?」


「ふへへへへ……私が雑魚だからですよ」


「ふ、ふーん……あ、星ちゃんもやっほー。今日からよろしくね」


「おう。ンフフ…正人に突進した時くらい速かったな今」


「そういえば陽菜ちゃん、よくまあ、男子にあんなに勢いよく飛びつけたね」


「?」


「いや、ほら、ほとんど抱き着いてたみたいなもんだったし、それにその後馬乗りだったしさ」


「うんまあ、正人君だし…平気かなって思って」


「!?」


「え!?…ヒナちゃん…そんなに正人君に心を…っていうか体を許してるんですか!?」


「言い方が破廉恥だぜ?流石妖怪キズナメ娘」


 茶化す星畑をキッと睨む凛。その横で陽菜はシレッとした顔で「強くて頑丈そうだし」ときっぱり言い切る。


「そ、そういう問題じゃないでしょ?」


「じゃあどういう問題なの?」


「いや、ほら恥ずかしくないのかなって思って……」


「お芝居だから恥ずかしくありません。はずがしがってちゃいけません」


「あ、なるほど……御見逸れしました」


「ねえ、エミちゃんと天知さんは?」


「姫月は寝てる。天知さんは多分、入れ違いで陽菜んとこの家だろうな」


「え?…どうして?」


「………まあ、色々あってな……お前の母ちゃんとディナーだよ」





                  9



 Uから科せられた天知の罰は、大地をディナーに誘う事だった。他のメンバーは「うわぁ」と思った罰だったが、当の天知はそこまで深刻でもなさそうに、「なら早い方がいい」とさっさと連絡して、動揺しまくりの向こうからの提案により当日付で、Uが予め指定していたレストランへ出かけて行った。

 そしてレストラン内部、厳かな内装にそれに相応しい佇まいの人々が食事を楽しむ中、天知と大地のコンビは一際、品が良く見える。その内心の動揺っぷりとは裏腹に、大地は装いもテーブルマナーも至って完璧にこなして見せている。あまり高級感漂う店には慣れていない天知の方が少し緊張しているくらいである。


「この魚のフライ…すごく美味しいですね」


 会話が一切ないのを気にしてか、天知が微笑みながら、目の前の鰆のフライに緑色のソースがかかった何ともそれっぽい料理を褒める。


「はい……流石、天知さんの選んだお店です」


「い、いやいや……僕は別にそんな。普段はもっと」


 普段はもっと安いお店で食べてますよ。と言いかけ止める。それでは大地を特別視しているようではないかと判断したためである。ちなみにここの会計は後にUが清算する。


「ところで、本日は…どうしてご夕食のお誘いをくださったのですか?」


 大地が少しぎこちなく真に迫った質問をする。しかし、ここでは反対に天知の方が綽々と真っ当な返事を繕う。


「以前から色々とお世話をかけていただいてますし、そのお礼をと思って…陽菜ちゃんも瑠奈ちゃんも良い子ですが、それでも二児の育児は大変でしょうし、たまには息抜きでも……なんて…少し、おせっかい過ぎましたかね?」


「い、いえ。とんでもございません。ごっつあんです」


 普段から自分のことを考えてくれていた、自分の生活を気遣ってくれていた、娘を褒めてくれた、照れた、はにかんだ…と秒刻みで積まれていく天知ポイントのカンストに耐え切れなくなり調子を崩し気味になる大地。慌てて己を律するが、そうなると自然と口数が減ってしまう。結果、天知の話にも「ええ」とか「はい」しか返事を出せなくなる。

 その実は単なる第三者が仕組んだが故の食事なのだが、天知の繕った動機もあながち嘘ではない。陽菜がお利口にするたびに、まともに娘と触れ合ってこなかった己と比べ、大したものだと感心していたのだ。教育すること、家庭を円満に保つことの難しさは彼には痛いほど分かる。

 そこからも2、3の料理とコーヒーが出て、食事が終わる。特に目立った会話も無いままに、天知が席を立とうとすると、大地が座ったまま上目遣いに目を合わせてくる。


「どうしました?」


「いえ……あの、もうおしまいですよね?お料理もこの席にいるのも」


 見るからに名残惜しそうなことを言う大地だが、その顔は相も変わらず仏頂面だ。反対にいつも通りニコニコとした天知が和やかな声を出す。


「そうですね。ただ、頼めばコーヒーのお代わりはできると思いますよ」


「そうですか。そうなんですね」


「……………」


「……………」


「………やっぱり、僕はもう一杯いただこうかな。大地さんはどうします」

 

「え、あ……お願いします」


 コーヒーをお代わりして、また一息つく。天知が大地のおかしな様子に特に言及することもせず、前と何ら変わりなく和やかに細かな話題を提供し、そっけない返事でそれが終わる。十分ほどして、またもコーヒーが空になる。しかし、今度は天知は席を立とうとせずに、チラリと店の壁を見る。長居は禁止されている。ここにいてコーヒーが飲めるのもあと5分ほどなのだが、それでも彼は座って大地の反応をうかがった。大地は一切、注がれたコーヒーに手を付けていなかったが、突然、ぐいっと飲み干し、まっすぐに天知の方を見た。目が合った瞬間、天知はなぜか昨日の夜に陽菜に詰められた時のことを思い出した。


「天知さん。本日はありがとうございました」


 頭を下げずにそのままの顔と視線で淡々とお礼を述べる大地。天知がそれを返す前に続ける。


「私は、昔から口下手です。特に、緊張したりすると何も話せなくなります。一緒にいてもつまらないと思います」


 天知は否定しかけたが、またも遮るようにスピーディーに大地が続けた。


「それでも貴方とお話がしたいです。いつか、緊張せずお話ができるようになるまで、お話したいです」


「………………」


「理由は聞かないで頂きたいのですが、私は貴方のことが知りたいのです。だから、また、こうして会って、貴方のことを教えて欲しいです。何にも話せない私の代わりに、私にいっぱいお話をしてほしいのです。聞きますから、何一つ聞き漏らしませんから…私とっ」


 ひゅっと息が詰まり、のどから声がつっかえる。目線を落とすように頭を下げ消え入りそうな声で「お願いします」と告げる。天知の「一先ず時間ですし、行きましょうか」という声が聞こえ、ようやく重い腰を上げることができた。


 ここに来るときは絶対に自分でお金を出そうと決めていた大地だが、声を出すことも天知の顔を見ることもできず、気が付けばお会計が終わって、店の外に出ていた。


「夜の9時か……」


 天知がぽつりと呟く。そんなに長いこと店にいたのかと大地は少し驚く。


「大地さん……その…この近くに僕が学生時代よく行っていた喫茶店があるんです。そこは日を跨いでもやってるんですが」


 その声にガバリと顔を上げる大地。後光でも指しているのではと思うほどまぶしい天知の笑顔が目に入る。


「とりあえず…コーヒー……まだ飲めますか?……言っておきますが、僕は日陰者ですから、自分のことを話すと止まらない質ですよ?」


「は、はい…二人で決めましょう……うれしはずかし朝帰り」


「さ、流石にそこまでは開いてないですよ!?」



 何となくいつもの調子を取り戻しつつある大地と、天知はそう言って夜の街に消えた。二人がいい大人の独り者同氏とは思えないほどの健全な夜を過ごしたのは、言うまでもない。






陽菜が夏休みに入ったと言うことで、ここから結構な確率で彼女がエピソードに加わります。もともと出番の多いキャラではありましたが、書いていて安定感のあるキャラなのでここぞとばかりに使い回していこうと思います。

あと、やっぱりネタバレになる要素しかないのでサブキャラを前書きに載せることはやめました。変更ばっかで申し訳ありません。


それではまた次回お会いできるのを楽しみにしております。

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