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この甘くない世界でこれからやっていくわけなんだけど  作者: 破廉恥
ガキのパクリやあらへんで!
42/60

その②「大きな力で空に浮かべたコト」

・登場人物紹介

黒川響くろかわ ひびき 性別:男 年齢:20歳 誕生日:6/25 職業:大学生

本作の主人公。抜群の歌唱力を持つが、機械を通した瞬間に不協和音に早変わりする不幸な歌い手。歌手としての道はすっかり諦めているものの、集ったメンバーたちとの心躍る日々を守る為、宇宙人のカメラ役をこなす。本人にいまいち自覚はないが、一応リーダー。

☆最強だと思うのはヴァレンタイン大統領。絶対殺すマンとか知らねえ。


星畑恒輝ほしはた こうき 性別:男 年齢:21歳 誕生日:4/4 職業:お笑い芸人

黒川の高校からの友達。高卒でお笑い芸人の道を選びめでたく地下芸人へ。見る人が見れば割と悲惨な生活を送っているが、本人は至って楽しげ。ルックスがよく、よく気が利く上に、根明のためよくモテそうなものだが、とにかく絡みにくい本人の性格が仇になり全くモテない。

☆最強だと思うのはトムブラウン。みちおになら頭を割られても怒らない自信がある。


須田凛すだ りん 性別:女 年齢:19歳 誕生日:5/25 職業:大学生

男受けしそうな見た目と性格を併せ持った少女。黒川の歌(動画越し)に感動し、星畑のライブを出待ちし、姫月に憧れながら、天知に焦がれるちょっと変わった趣向を持つ。派手なファッションとは裏腹に人見知りで気が弱いが、推しの事となると見境が無くなり暴走気味になる。

☆最強だと思うのはアーカード。「お嬢ちゃん、処女か?」と聞かれたい。


姫月恵美子ひめづき えみこ 性別:女 年齢:20歳 誕生日:10/3 職業:無職

スラリとしてスレンダーな見た目に長い足、艶の良い黒髪とまさに絶世の美女。性格は非常に難があるが、悪いというより思ったことをすぐ口に出すタイプ。一言で言うなら唯我独尊。自信たっぷりで自分大好き人間だが、イケメンも好き。ただしどんなイケメンよりも自分の方が好き。

☆最強だと思うのは私。もろもろの総合力で私。


天知九あまち きゅう 性別:男 年齢:42歳 誕生日:3/3 職業:無職

元、スーツアクター兼スタントマン。家を追い出され新たな仲間たちに重宝されながらスローライフを送るおっさん。高身長で、物腰柔らかく、頼りになり、清潔感も教養も併せ持つまさに理想の紳士。黒川への恩義だけで入ったが、正直42歳がやっていけるのか不安でしょうがない。

☆最強だと思うのはブルース・リー。一番好きな中国人俳優はラウ・カーリョン


岩下陽菜いわした ひな 性別:女 年齢:9歳 誕生日:3/20 職業:小学生

女優一家の次女で子役。年齢を感じさせない演技とその可愛らしさから天才子役と称されていたが、家族や友人と遊ぶことを優先する為、子役業から一時手を引いている。年齢の割に落ち着きがあって肝も据わっているが、子どもらしい無邪気さも併せ持つ。怪談やオカルトが好き。

☆最強だと思うのはぬらりひょん。だって妖怪の総大将なんだよ?


ゲスト

加賀正人かがまさと 性別:男 年齢:9歳 誕生日10/25 職業:小学生

陽菜と同じクラスのガキ大将。陽菜を目の敵にし、ちょっかいをかけていたが色々あって和解。わんぱくで腕っぷしも強い反面、マイペースな陽菜にドギマギさせられる初心な一面も。



 こんにちは。今回もまあ長丁場になってしまいました。予定していたよりも設定を増して、継ぎ足し継ぎ足しでやっているためこうなりました。アドリブが過ぎてそろそろ前後でつじつまが合わなくなってそうです。怖い。

1




 鎌倉あみんが学校に来なくなってしまった。クラスメートからすれば唐突なイメチェンからの流れるような不登校なので、単に彼女がグレただけだと受け取られていたが、その実際はもっと複雑である。そしてそのわけを、一部分のみではあるが、陽菜だけが握っている。少し気まずい間柄になってしまったものの2人は元々クラス一の親友通しなのだから、訳も分からず慌てている担任と共に陽菜も不登校問題に尽力すべきなのかもしれない。しかし複雑なだけに彼女も中々事に踏み切れない日々を過ごしていた。あみんがクラスに来なくなって5日後、「姫月恵美子クイズ」の一週間後になってようやく陽菜はひどく緊張した面持ちで、仁丹団地にある彼女の部屋を訪問した。


「………はい」


「あ………あの……ヒナは……その……い、岩下陽菜っていいます。えと…あみんちゃんのお友達です」


 扉を半分開けて出てきた中年の女性に慌てて挨拶をする陽菜。あみんの母親らしきその女は訝し気な表情を解いて彼女に笑顔を向けた。


「あらあらあら……あら~…貴方が陽菜ちゃん?よく娘が言ってたわよ。まあまあ、あの子の言う通り……お人形さんみたいねぇ!」


「あ……う……ありがと……ございます」


 クルクル髪の毛をいじくる陽菜。母親はリビングまで陽菜を入れ、一度だけふすまに向かった娘の名前を呼んだ。しかし返事はなく、大地よりも数段老けていそうなあみん母は「やれやれ」という手振りを陽菜に見せて自身もリビングで紅茶に口をつける。そして遠慮がちな割にさっさと紅茶を飲み終わった陽菜にすぐさまおかわりを注いでやる。


「………どうしちゃったんだろうねぇあの子……多少のことじゃへこたれない強い子だと思ってたんだけど……ごめんなさいねえ…せっかく様子を見に来てくれたのに」


「い、いえ……平気……です」


「………まあ、予兆みたいなのはあったけどねぇ……突然こんな服嫌だってごねてイヤに大人びた服着たがるようになったし……口調も荒くなったし」


「あ………それは……」


 「それはエミちゃんのマネっこしたからだよ」と言いかけるが、すぐにやめる。そんなこと今は問題ではない。


「こーいう服……うちの子もう着ないのかもねぇ……ヒナちゃん着る?」


 花柄のフリルが付いたお洋服をつまんで陽菜に見せる。陽菜はフルフルと首を横に振り、本題を切り出す。


「あの……あみんちゃん……先週の金曜日……家に帰ってきた時…落ち込んだりしてなかったですか?」


「え?……ああ~……そう言えばそのくらいから部屋に引きこもるようになっちゃったわねぇ……何か心当たりがあるの?」


「………………(コクン)」


「………分かったわ。子どもの間(あなたたち)だけのいざこざってわけね?……じゃあおばちゃんは買い物に行ってくるから……悪いけどあの子を元気づけてやってくれる?」


「うん………ありがとう……あみんちゃんのお母さん」


 気を使って家を後にしてくれたあみんの母。陽菜は意を決した顔でふすまに向かって縋り付きたくなるほど優しい声をかける。


「あみんちゃん。プリント届けてくれたから…私もあみんちゃんがお休みしてる分の持って来たよ?」

「あと……正人君がまた勝手に食べようとしてたから、私、守ったよミカンゼリー」

「あとあと…おすすめの本も持ってきたの。男の子が牡蠣を食べるだけなんだけど何か不気味な話」


「………………ごめんね………ヒナちゃん」


「!!………あみんちゃん!」


 ランドセルから次々に物を引っ張り出しながら声をかけ続けていると、か細い声がふすまの奥から返って来た。彼女にヒナちゃんと呼ばれるのが久しぶり過ぎて、若干感極まりそうになる気持ちを抑えて陽菜が引き続き声をかけ続ける。


「ヒナもごめんね?……エミちゃんのこと……偉そうに色々言って……あのあとエミちゃんに怒られちゃった。『私のこと知った気になるのなんて100年早いって』……」


「………おね…姫月さんに謝っておいて欲しいな。ずっとずっとへばりついて迷惑かけちゃったって。凛さんや、黒川さんにも私…失礼なことばっかり言って…姫月さんの言う通り、私、ただの不良娘だったよね」


「うん…そうだね。でも……みんな大人だからあみんちゃんに言われたことなんて気にしてないよ。だから大丈夫。それより学校に行かなかったら……それこそ不良になっちゃうよ?」


「…………学校」


「クラスのみんなもきっと気にしてないよ。もしクラスのみんなが変なこと言ったら私が言い返してあげる。だから一緒に行こ?……あみんちゃんいないと私、学校つまんないよ」


「……違うの」


「え?」


「………確かにクラスのみんなに会うのは恥ずかしいし、ヒナちゃんのお兄さんたちにももう顔向けできないと思うけど………そんなことじゃないの……」


「じゃあどうして?エミちゃんにひどいこと言われたから?」


「………ううん。姫月さんは当たり前のことを言っただけだよ。悪いのは全部私……」


「……じゃあなんで学校来ないの?もうすぐある参観日の発表会が嫌なの?」


「それも違う………ごめん。明日からはちゃんと学校行くよ。だからもう大丈夫」


「そっか………じゃあもう帰るね。声が聞けて良かったよ。また明日」


 彼女を学校に行かせるという第一の目標を達成できたというのに、陽菜の心はあまり晴れやかな気持ちになれなかった。最後まであみんの顔は見ることができなかったし、唯一の接触点である彼女の声もひどく覇気がないものだったからである。あみん宅を出ると、団地の廊下で正人がスマホを弄って待っていた。陽菜をあみん宅まで案内したのは他でもない正人である。


「よぉ……えらく早かったな。追い払われたか?」


「あみんちゃんはもうそんなことしないよ……でも元気はなさそうだった……わけも教えてくれなかった……」


「フーン……めんどくせぇなぁ女子ってのは」


「……………団地って初めて来た……なんかすごい」


 近からず遠からずの微妙な距離で2人が歩く。あたりをキョロキョロ見渡しながら、陽菜が呟く。


「そうか?……無駄にでけぇだけだよ」


「秘密の基地みたい」


「はっ!お前の住んでる屋敷の方がよっぽど基地っぽいつうの。事実、俺らの基地だったわけだし」


「ほら………あそこの屋根が並んでるところ……パカッて割れてロボットとか出て来そう」


「ありゃただの駐輪場だ。お前って意外とガキ臭いのな」


「………なんかあそこの広場?……男子たちがわちゃわちゃしてる……何してるんだろ?」


「あ~?……ポケカでもやってんじゃね?」


 正人の言葉通り、何棟も重なった仁丹団地は異常にでかい。あみん宅のある3棟から正人の住む6棟に移動するだけでもかなりの距離を歩くことになる。6棟の3階と4階の間、つまりは踊り場に来た段階で正人が振り返り大声で突っ込む。


「ていうか!!お前、いつまでついてくんだよ!!」


「え?………出口まで案内してくれてるんじゃないの?」


「アホか!テーマパークじゃねえんだから出口くらいいくらでもあるわ!勝手に下降りて勝手に帰れ!!」


「そうだったんだ。ごめんね?……あ、じゃあもしかして…ここが正人君の家?」


「まあこの近くが……関係ないだろ?ホレ、めんどくさいのに絡まれる前に帰れよ」


「あら?正人!?……珍しいね。この時間帯に帰ってくるなんて…いつものクソガキ集団はどうしたのよ?」


 4階からライダージャケットを着崩した金髪の女性が降りてきて、正人に声をかける。まだ20代後半程だろうか。詰め寄られた正人は露骨に嫌そうな顔をする。


「ゲ……母ちゃん」


「お母さん?」


「!?………何この子?………ちょぉっとぉ!!まーちゃん!!女の子の友達なんていたのぉ!?言いなさいよもう!!」


「………まーちゃん」


「その呼び方すんなって言ってんだろ!!ていうか別に友達じゃねえし」


 陽菜を見るや否や、正人の母親らしい女性はパアッと顔を輝かせる。息子の悪態にかまわず、早速息子が連れている少女に質問攻めを開始する。


「え~……待ってヤバ!!ちょ~かわいいじゃん!!こんな子いたっけ?……え、うっわ!このサンダルかわい!!……ラ〇ステ?……え、団地住み?まーちゃんとは同じ学年?……てかお名前は?……ひゃあ~……お目目クリクリ……え、え、え……ひょっとしてうちに遊びに来たの?」


「え?………え?……えと」


「たかんなって!!………鎌倉のうちが分かんねぇっつーから案内してやっただけだよ。ただのクラスメート!!岩下っての!!」


「へぇ~!!まーちゃん……アンタ意外と女の子に親切なのねぇ!!お母さん嬉しいぞ!!こいつめ!」


「だああああああ!!頼むからやめてくれ!!」


 頭をワシワシとされ真っ赤になりながら暴れる正人。身長が170後半は余裕で越えていそうな母親が小学四年生にして150後半を迎えている息子をなでている光景を陽菜がジーっと見つめている。うららかな団地の午後である。


「んで……岩下ちゃん?……下のお名前なんてーの?」


「陽菜です。岩下陽菜。正人君とはお友達でも何でもない単なるクラスメート……だそうです」


「………何膨れてんだよ?事実だろうが」


「うへぇ~……うっわテンション上がるわ~!!妹の彼氏があまりにもざんなかっただけに……これは上がるわ~!!息子いいわ~!!ナイスだわ~!!」


「…………何バカみたいに舞い上がってんだよ…こっぱずかしいからさっさとどっか行けよな。ていうかその格好してるってことは今からバイトなんだろ?早くいけよ」


「うわうわそうだやっべ!!………ちょい…ちょいちょい…まーちゃん……こっちに来なさい」


「な、何だよ引っ張んなよ!!てかまーちゃんって呼ぶなってば!!」


「?」


 テンションストップ高の母親とそれに振り回されっぱなしの息子…によって完全に置いてけぼりを食らっている陽菜。イマイチ二人が何に騒いでいるかが分からず小首をかしげている彼女を置いて、階段を上った先の隅で正人の母が財布から英世を二枚抜き取る。


「………ほれ、やるわ……うまく使いなさいよ!くれぐれもくっだらない玩具に使わないコト!」


「うえっ!?に、二千円!!くれんの!?……な、何で?」


「遊ぶんでしょ?今から!あのヒナちゃんと!!……キチンと挨拶できるし、お上品だし、何より超超カワイイし!!……お母さんあの子なら文句ないから!!むしろ欲しいわ!盃交わしたいわ!!」


「………いや……色々誤解してるってばさっきから…まず別にこの後、遊ばねえし」


「はぁ~?……じゃあ二千円(これ)やんない」


「ええ!?」


 瞬間、今までの人生、カードバトルくらいでしかフルスロットルで動いた事のない彼の脳みそが素早く回転する。と言っても考えていること自体は単純で、早い話が女子と二人きりで遊ぶという危険行為を行うか、二千円という、クッパ城だって築けそうな巨万の富を得るかの二択を天秤にかけているのである。結果的に勝ったのはお金。正人はウハウハ気分で母親から二千円をもらい、団地を飛び出す…フリだけして、団地のふもとにある小さな公園の小さなトンネル型の遊具に潜り込む。


「ほれ!!……岩下……さっさとここに入れ!!誰にも見られんなよ!!」


「………こんなとこで遊ぶの?正人君のお母さん、正人君からお菓子でもごちそうしてもらえって言ってたけど」


「いいから!何事もまずは準備ってもんがあるんだよ!!」


 無論、ここで言う準備とは如何にして金を使わず、人目を避けて陽菜との時間を潰すかを練ることを指している。トンネル遊具の中に陽菜を押し込んで、自分は遊具の上から近くに知り合いがいないか確認をする。すると、知り合いというほどではないが顔見知りである数人の悪ガキ集団が公園に入って来た。慌てて遊具の上でスマホゲームをするふりをする。


「ねえ正人君……ごちそう」


(ちょっと黙ってろ!!)


「へへへへへ………マジで金なるんだなぁこんなもんが……」

「おっさんの考えることはよく分からねえぜ」

「神庭も馬鹿だよなぁ団地に住んでないガキにせまるなんざ」


 容量は掴めないが何やら金儲け絡みの話をしているらしい。連中のトップらしき男が口にした名前に聞き覚え、どころか嫌な思い出すらある正人はできる限り気配を消しながらジッと聞き耳を立てていた。


「そ、それで………その、小岩里くん、その金だけど」


「ん?……あー心配すんなよ。ホレ、半分な。その代わり次回もよろしく頼むぜ?あのガキはもっともっと稼げるからよ」


「へへ………う、うん!」


「んお?………おい!お前、加賀正人だろ!?神庭を神社でボコったっていう!!」


 小岩里と呼ばれたガタイのいい大男が正人を見つけ、声をかけてくる。オマケに過去先輩に働いた狼藉までバレている始末、正人はできる限り弱気な顔で頭を下げる。


「………あ、ウス………オハヨマス」


「んな緊張すんなって!!先輩に手ぇ出したのは知ってるが、何があったかはしらねぇし、興味ねえからよ!むしろ中学にまでなって小4のお前にやられてる神庭のほうがミソッカスよ」


「はあ………」


「ククク……しかも相手は4人がかりだったんだろ?いいねえそういうの!!俺はガッツのある奴が何より好きなんだよ!」


「ど、どうも」


 腕っぷしを褒められて喜ばない男子はいない。正人は照れながら頭を下げる。


「正人……お前、俺達とつるまねぇか?俺は神庭とは違うぜ?ダチには絶対に手を出さねえし、何か儲けがあったときはキチンと折半する。……俺の名前出せばここでは自由に生きられるぜ?どうだ?」


「……………いや……えっと………」


「何だよ?連れねえな?」


「……………すいません」


「んだよ……二千円なんてはした金…俺らとつるめばいくらでも稼げるぜ?……そうだ!!」



 見に見えてつるみたく無さそうな正人。その手に握りしめられた二千円を見て何を思ったか、小岩里はポケットから2万円を取り出し、正人の顔の前にちらつかせる。


「これやるよ。別に金で釣ろうってわけじゃねえが、ま、お近づきの印って奴だ!」


「え!?……い、いや……いいッス!いいッスよ!!」


「おいおい……この俺に一度出した金を引っ込ませようってのか?」


「いや…………そういうわけじゃ……でも、その金は受けとれないッス……すんません」


「……………ガールフレンドの前で見栄でも張ってんのか?」


「!?」


「出てこいよおい……別にガキじゃねぇんだから誰とつるんててもからかわねぇっつーの」


 そう言ってトンネルを覗き込む小岩里の目に、子兎のようにきゅっと身を丸めている愛らしい少女の顔が映る。観念して、正人が陽菜にトンネルから出るよう促す。

 トンネルからヒョコヒョコ出てきた陽菜は、パンパンとスカートに付いた砂を払い、大きく伸びをした。その一挙手一投足を小岩里がマジマジと見つめる。


「…………………へえ」


「…………………正人くん……行こ…私、あっちで遊びたい」


「あ……お、おお!…………すんません小岩里さん!お話はまた!!」


 何か声をかけようとする小岩里を見ようともせず、陽菜が正人の手を引いて、足早に公園を去った。小岩里の連れが「なんだあのガキ」と悪態を付いたのも無視して、小岩里はジィっと不気味な視線を陽菜に向け続けていた。



             2



 団地から抜け出した正人と陽菜。正人はコンビニで2本がくっついた形のアイスキャンディーを買い、その片割れを陽菜に手渡す。


「わ……アイス…ありがと正人君」


「………ありがとよ。正直助かったぜ……神庭と違ってあの人はマジでヤバいからな」


「そうなの?正人君強いんだからやっつけちゃえばいいのに」


「つ、強かねえよ別に……ていうか無理だって…小岩里さんは…あの人、空手やってて鬼のように強いらしいし……何よりあの人、団地での人望半端ねえから…変にたてついたらどうなるか」


「ふうん……そんなに凄い人なんだ。じゃあ友達になったらよかったんじゃないの?」


「まあ、そうかもだけどさ……前に言ったろ?俺はそもそも団地内の派閥っていうか不良チームみたいなのに属したくないんだよ。いくら強くてカリスマがあるって言ったって…中学生が小学生束ねて喜んでるようじゃなあ……そこんとこ言ったら小岩里さんも神庭と何も変わんねえよ」


「そっか……男子って大変だね」


「男子って言うか………あの団地だな。はっきり言って異常だよ。例の事件で神庭がどっか飛ばされたからまだマシになったけど……」


「あみんちゃんもここに住んでるんだよね。大丈夫なのかな?」


「……う~ん……まあ、平気だろ。鎌倉みたいな優等生タイプは基本狙われねえし……何か神庭が低中学年の女子からカツアゲしてるって黒い噂もあったけど……まあ、消えたし」


「消えたってどこに?神庭ってあのエッチな怖い人だよね」


 今更の解説だが、神庭は正人の暮らしている6棟の悪ガキ軍団のトップだった男である。陽菜に性犯罪を吹っ掛け、大地の本気の怒りとやらを買ってしまった結果、どこぞに流されてしまったようである。その末路は正人もあずかり知らない所ではあるが、少なくともおかげで団地はかなり平和になったのだ。


「いや、どことかは分からねえけど……まあ、とにかく鎌倉は大丈夫だろ。コルトとか…取り巻き共はまだいるけど、姫月さんとかにビビって…もう手出しはしてこないだろ」


「そっか……良かった…………良かった?」


 あみんとのふすま越しの会話。トンネル越しに聞いた小岩里たちの会話。そして今の正人との会話。それらが陽菜の中をぐるぐると周り、何か腑に落ちない感覚に囚われる。あみんのあの歯がゆい弁解。姫月や陽菜たち、そしてクラスのみんなには非が無いことを伝えたい反面、では何故自分が不登校になるほどショックを受けていたのかという真相については口を紡ぎっぱなしだった。言いたくないのではなく、言えないのかもしれない。

 そして、あの小岩里が言っていた「神庭は馬鹿だよな。団地以外の奴を……」という発言、パッとポケットから2万円を放り出せるほどの財力。儲け話。確か、神庭が陽菜を被写体にポルノ写真を撮ろうとしていたのも、その写真をどこかに売り飛ばすためだったはずだ。団地以外の奴とは、陽菜のことを指しているのかもしれない。となると、もし小岩里が同じような性犯罪的金の工面をしているなら狙うのは団地内の少女たちだ。

 あみんはひょっとすると、小岩里では無いにしても、誰か団地内の不良によっていやらしい仕打ちを受けているのかもしれない。神庭はいなくなっても、彼が残した悪しき伝統は団地内に呪いのように蔓延っているのかもしれない。

 あみんは姫月のような強い女になることで、自分一人で不良共を突っぱねようとしたのではなかろうか。確かに、陽菜はあみんたちに、姫月がコルトやまぼを蹴散らした話をした覚えがある。

 全てが推測に過ぎないが、そう思った拍子に陽菜はいても立ってもいられなくなった。アイスの棒を喉の奥まで突っ込んで綺麗に舐めとり、走り出す。


「ごめん!正人君!私、ちょっと用事を思い出したからもう行くね!アイスごちそうさま!」


「え!?……お、おい!どこ行くんだよ!?」


 正人を置いて、ピューっと走り去る陽菜。向かう先は仁丹団地である。コンビニの駐車場では取り残された正人がアイスをパキッと奥歯で折り、ポツリと呟く。


「…………遊ぶんじゃねえのかよ」




                     3




 ところ大いに変わって、シェアハウス内では黒川が姫月をうちわで扇ぎながら、飲食物を用意し、命じられるまま動いていた。別に召使いとしてこき使われることは良いのだが、珍しく凛が留守にしているので2倍の労力が必要になる。


「ちょっと!!手が止まってるわよ!」


「逆に聞くけどジュース注ぎながらどうやってうちわを煽げばいいんですかね!?」


「……………ったく。それくらい一人でこなしてみせなさいよ」


「凛ちゃんいないんだからしょうがないじゃん……」


「アイツが家に居ないなんてことあるのね」


「ちょっとホッとしたよ。凛ちゃん全然大学行ってない気がするから……まあ、おかげ様でしんどい思いしてはいるけど」


「アイツ呼びなさいよ……ホラ、えっと……ダミン?」


「惰眠はお前だろ……あの子はあみん!」


「そうそれ…もう学校終わってるでしょ?」


「いや……お前知らねえの?あの子、もうお前の追っかけ卒業したんだぞ?しかもそれっきり学校にも来なくなっちまったって………」


「はあ?なんで?」


「お前が性格悪いとか言うからじゃねえの?」


「はあ~!?私のせいだっての!?」


「冗談だよ。仮にそうでも……流石に今回は俺らどこも非がねえだろ」


「当たり前よ。ていうか強い女になりたいとか抜かしてた奴があれっぽっちで……脆弱なこと限りないわね」


「まあ…小学生だし……すぐに立ち直って学校に通うようになるだろ。ていうか唐突なキャラチェンジの手前、クラスに顔出ししづらいだけだろ?」


「それよりも……あのクイズであみんが勝ってたことの方が私的にはよっぽど大問題よ。全然算段通りに言ってないじゃない。アンタ何のためにクイズに参加してたのよ」


「いや………それがUから何も連絡なかったんだって……大方、どっかで修正できるといつまでもタカをくくってたら、気が付けばあみんが勝ち越してたってオチだろ」


「宇宙人の奴グズね!……ま、いいけど……私は大金ゲットできるんだし」


「そういや500万ももらうんだっけ?……一体何に使うんだよ?」


「色々」


「あ、そう……そう言えばさ……星畑の仕事がようやく一段落着いたみたいだぜ。もう今日にでもこっち戻ってこれるって連絡来てたんだ」


「…………星畑?」


「………忘れんなよ。確かにここ最近の空気の薄さはえぐかったけど……ヨーク・シンから先のレオリオくらい薄かったけど」


「ハア……もうじきまた宇宙人の考えた怠いシナリオを消費する日々が来るわけね」


「ハハハ……そうだな。でも、正直、アイツのシナリオよりもフツーの日常の方がエキセントリックだったじゃん。むしろ楽かもよ?」


「どーだか」


 首を竦めながら、再度読書の世界に身を映す姫月。黒川の部屋から適当にかっぱらってきたらしい小川洋子の文庫本。最近になって彼女は急激に本を読むようになってきた。出会った当初、「自分は何も本は読まない」と断言していたが、今ではスマホのゲームよりも読書の時間が多くなっている気がする。


(……俺に対する態度や口調も…若干だけど優しくなってるし、こいつも少しずつ変わって来てるのかもな)


 そんなことをボケっと考えながら、本のページをたなびかせない程度に団扇を扇ぐ。うららかなシェアハウスの午後である。



                        4



 仁丹団地の近くにある公園のベンチで、目を引く格好の女が若干そわそわしながら座っている。須田凛その人である。黒川の安心は悲しい勘違いで、彼女は案の定大学をさぼっていた。しかし、いつものサボりと違うのは、たんなる怠慢ではなく、明確な理由があっての犯行であることだ。しばらくして同じくコソコソソワソワした雰囲気のあみんが凛の元に現れる。彼女に電話をかけてアポを取っていたのである。


「………あみんさん!来てくださったんですね!!」


「こ、こんにちは。あの………どうしてうちの電話番号……」


「エミ様を助けて下さったときにあみんさんがメモに書いて手渡してくださってたものを拝借しまして……」


「ああ……そっかそう言えば……」


 ちなみに本当はクシャクシャの状態でゴミ箱に捨ててあったのをたまたま凛が拾ったのであるが、そこは別に大した問題ではない。少しの沈黙の後、何とも気まずそうにあみんが凛に謝罪する。


「あの………ホントは誰にも顔を合わせないつもりだったんですけど…凛さんには…本当に、信じられないくらいの無礼な態度を取っちゃったし……キチンと謝ろうと思って……本当にすいませんでした」


「い、いいんですよ!!私も……ていうか私の方が……あの時は無礼というか大人げなかったというか……エミ様はああいってくださいましたが、私なんて逆工藤新一みたいな存在ですから!ホント!!敬ってくださる必要なんてゼロですよ!ホント……二次創作の光彦みたいな扱いでも全然…」


 人から謝られるという経験があまりにも無い凛が大いに慌てる。あみんは少しだけクスっと笑って、頭を上げる。


「……ありがとうございます……でも、私……ホントに痛い奴で……ううう~」


「へへへっへへへ……初々しいですねえ……若者は黒歴史を築いてなんぼですからね……」

「あっ……でもヒナちゃんとはしっかりお話された方がいいと思いますよ?あみんさんが学校に来なくなってすごく気にされられてましたし」


「あ……はい。今日、家まで来てくれました……今日はちょっと…顔を合わせられなかったけど、でも明日は学校行って……キチンと謝りたいと思います。あと……お礼も言わなきゃ…」


 素のあみんが想像以上にお利口さんだったことを知り、思わず微笑む凛。事前に買っておいた缶ジュースをあみんに手渡し、ベンチに座るよう促す。


「それで……あのお伝えしたい事、というのは……」


「あ!……えっと………その、心配だったんです。余計なお世話かもしれませんけど……エミ様にああ言われて落ち込んでるんじゃないかと思って……」


「………………………………」


「す、すいませんホント………偉そうなこと言って…会ったばかりのこんな雑魚に……」


「いえ……確かに…ショックでしたから……でも、そのことは良いんです。事実、私性格最悪でしたし……気にしてません」


「………エミ様は性格が悪いとは一言も言ってないんじゃないですか?私は覚えてないですけど…多分そんなことは仰らないと思いますよ?」


「あ…はい。そうだったかも……あ、でも、そもそもショックだったのは……」


「どれだけ変わろうと思っても強くなれないこと…………ですか?」


「!!………え!…どうして……」


「えへへへ……わ、私がそうでしたから……ていうか現在進行系で……今だって…必死に見た目だけは尖らせてますからね」


「え……それ趣味じゃないんですか?」


「フフ…今となっては趣味ですが…最初は自分を大きく見せるためですよ。ていうか………あみんさんと同じで憧れですね。パンクで逞しいバンドの方々にあやかりたかったんです」


「………そうだったんですね」


「でも………変われませんでした。実はキックボクシングとかもやってみたりしたんですが……無料体験一日目でキツくてギブしました……へへへ」


「……………どうして強くなろうとしたんですか?」


「えへへ……そりゃあ強いほうがカッコイイじゃないですか。あんな風になれるとは思ってないだけで私だってエミ様には並々ならぬ憧れを抱いてるんですよ?」


「………カッコイイですよね………あんなに怖い男子たちにあんなに堂々と……」


 成人済みの女性が男子小学生たちを相手に強気で接せられるのは当たり前な気がしないでもないが、姫月に関しては拘束された状態で自身に殺意を抱いている男相手と接している時でも強気だったので、問題は無いだろう。それに今、あみんと話している女は完封と言っても過言でない程、小学生男子に良いようにやられていた。本人もそのことを思い出し、苦い顔で相槌を打つ。


「………そうですね……しかも東風小学校の凶悪児童ですから……並大抵の小学生とはわけが違いますからね」(←必死に己を正当化)


「…………私も………アイツらをボコボコにしたい……そうでなくてもせめてヒナちゃんみたいに、嘗められないタイプでありたい」


「…………あのう……ひょっとしてですけど……あみんさんが強くなりたいわけって……」


「……………はい。凛さんにだけ打ち明けますけど……私、今、同じ団地に住んでる男子にたかられてるんです」


「ええ!?……た、たかられてるっていうのは、その………えっと…よ、妖怪メダルとかですか?」


「………ハハ。だったらいいんですけどね……お金……です」


「カ、カツアゲ………だ、だ、大問題じゃないですか!!あみんさんが強くなる云々の前に、親御さんとか教師とかに相談した方が………」


「………私以外で……被害に遭ってた子が…そうしたことがあったんです。当然、問題になってやってた男子はこっぴどく怒られたみたいですけど……それ以降お金を返すくらいしかお咎めはなしで、団地には居続けて……被害者の子はその後もコソコソ嫌がらせとかされて……結局、被害者家族が折れて、団地を出て行ったんです……早い話が…誰かに言ったところで無駄ってことです」


「………………何て悪循環な環境……国際情勢のようですね……」(←軽はずみな発言)


「それに……私は……例え結果的に自分の首を絞めることになっても!…お母さんやお父さんにいらない心配をかけたくないんです!!」


「……だから……ご自身一人で………解決しようとしたん……ですね」


「………はい……バカですよね……それでやることが姫月さんのマネだなんて」


「ううう………バガなんがじゃないでずよ……グス」


「え?……泣いてるんですか?」


「ズビッ……う~……すいません……お母さんの下りあたりで急に……わ、分かりました!!そういうことなら……私たちだけで何とかしましょう!!」


「え!?……な、何とか?」


「はい!お一人ならできないことも……二人なら何とかなるはずです!!ここまでお話を聞いて黙って見過ごすわけにはいきません!!私も全力でお力になりますよ!!」


「…そんな…いいんですか?」


「勿論です!!……私ではあまりにも微力ではありますが……実はこう見えて、最近はじわじわと私も成長してきているのです!!……以前はガチ泣きしなきゃ引きはがせなかったナンパ男の群れを機転一つで退け、熱にうなされながらもエミ様に暴行を働く激ヤバ男の指をぶった切り……今の私なら小学生くらいちょちょいのちょいです!!」


「す、すごい!!滅茶苦茶逞しいじゃないですか!!」


「女の子相手に恐喝するような悪童たちなんて!この私が痛めつけてやります!!」


「ありがとうございます!!ありがとうございます!!」


「……………確認ですけど……その相手って…せいぜい小4くらいの子ども二人くらいですよね?」


「あ、はい……大丈夫です。年上だけど小学生の男子たちです」




                        5



 凛とあみんが躍起になっている公園の斜め上方、あみんの家の前では、慌てて団地まで引き返してきた陽菜が肩で息をしながら、インターフォンを鳴らしていた。あみんの母親は未だ買い物から帰って来ていないので、当然、家の中には誰もいない。


「………あみんちゃんいないのかな?どこ行ったんだろ」


 陽菜がここまで戻ってきた理由は、彼女の不登校の原因が同じ団地に住む悪ガキどもの悪行にあるのではと勘付いたからである。ズバリ的中していた推理だが、肝心のあみんとは入れ違いになってしまった。取りあえず団地から出ようとする陽菜だが、階段を降りきったところで太い棒に行く手を遮られる。つい先程、正人にフラレた番長男、小岩里が立ちふさがったのである。


「……………な、何?」


「よお……お前、岩下陽菜……だろ?神庭に絡まれてトラブったっていう。正人とは別れたのか?」


「ヒナは私だけど……何か用?」


「ああ……ちょっとな……ビジネスの話をしたくてよ」


「ビジネス?………やらないよ。どうせ変なことさせようとするんでしょ?」


 少しだけ後退りしながら身構える陽菜。つい先程の正人からの評価も相まって目の前の男がやけにでかく見える。


「まあまあ…そう思われちまうのも仕方ねぇけどよ。俺は神庭とは違うぜ?お前にもきっちり報酬はくれてやる。弱みを握ることも、恫喝するようなこともしねえ…」


「………そ、それでもやだ……今は用事だってあるし…………」


「よーじぃ?……正人と遊ぶとか抜かしてたじゃねえかよ?……俺は嘘つきが一番(いっちゃん)嫌いなんだけどなぁ」


「………わ、私だって……年下を相手に強がってるような人……嫌い……大嫌い」


「言うねぇ……まあ、確かにこうやって口で説明するだけじゃまどろっこしいだけだわな。来い」


 今まで踏切のように行く手を遮っていた男の腕が陽菜の手首を掴む。慌てて身じろぐ陽菜だが、すぐに小岩里の手元へ引っ張り込まれ、がっしりと拘束されてしまう。じたばたと暴れたいところだが、残念ながら足と手をブンブン振り回すだけで意味が無かった。


「や……は、離して!!……だ、誰かぁ!!」


「無駄だ。この団地の大人共は子どもの悲鳴如き何とも思わねえよ。いつもみてえにバカガキどもがふざけているだけ……そう思うだけさ」






                     6



 陽菜が絶体絶命のピンチになっている2棟先の人気のない広場では、もともと花壇だった場所に少年たちがたむろして駄菓子を貪り食いながら、談笑していた。品の無い笑い声が近くにある駐輪場まで響いている。そしてその駐輪場の影に隠れながら、凛とあみんがその集団を観察していた。軍団の中にあみんにたかっている不届き者がいるのである。



「あ、あれです……あそこにいる男子たちです」


「フムフム…思ってたより多いな(ボソッ)…………!!……あ、あの子たちは!!」


 集団の中に2人ほど、見覚えのあるガキンチョが紛れている。他でもない凛にとってにっくき小悪魔たち。まぼとコルトである。神庭がいなくなって自由になった分、余計に悪行の性質が悪くなったわけだ。


「うう~……反省するどころか、カツアゲするほどまでに落ちぶれていたなんて…今度という今度は許しませんよ!」


「え!?………面識あるんですか?」


「はい………何を隠そう……エミ様が痛めつけた東風生というのがあの子たちなんです!………わ、私にとっても因縁の相手です!」


「………あの……本当に大丈夫そうですか?今からでも引き返した方が」


「いえ!彼らを倒してようやく私が成長したことへの証明になるってものです!!いわばこれは……そう!!私個人の戦いでもあります!!……KISSの16枚目です!!」


 黒川もまみるもいないので補足しておくが、凛は「リベンジ」と言いたいわけである。


「……震えてますけど」


「む、む、む、武者震いです!!」


「…………おい!そこに要る奴出てこいや!!さっきからチラチラ見てんの分かってんだぞ!!」


 全然コソコソ話していなかったので当たり前かもしれないが、見つかってしまった。相も変わらず嵐山モンキーパークの猿のようにやかましいコルトが、こちらに近づいてきながら喚き散らす。


「ひゃわあ!!み、見っかっちゃいましたぁ!!ど、どどどどどうしましょう!」


「落ち着いてください!まず私がアイツらにお金を渡すふりをして、いざという時の為にこのビニール袋の中に溜めておいたムラサキイラガの幼虫(毛虫)をばら撒きますんで…凛さんは奴らがひるんだ隙にこの高枝切りばさみで滅多打ちにしてください!」


(い、いつの間に用意したんですかそんな物騒な物!)←今更小声で話している


「え?……だって相手は男の集団ですし……このくらいリーチが無いと不利じゃ……」


(流石にギリギリ私の方が大きいですよ!……ていうかそんなの武器にするの黒執事の死神くらいなもんです!!)


「凛さん黒執事読んでるんですか!?……え?え?…誰推しです!?」


(いや、そんなこと言ってる場合じゃ……)


「おいこらぁぁあぁ!!(こぶし)出てこいや!!ビビっとんのかワレぇ!!」


(あわわわ……もう行くしかありません!せっかくの作戦ですがここは正々堂々ステゴロでいきましょう!……あみんさんがわざわざ出て行く必要もありません!!)


 今もビビったままの凛だが、ビビりながらも覚悟だけは固めたようでプルプルと震える親指を立て、あみんに向かって微笑む。


「……そ、そんなお一人じゃ危険です!!」


「………大丈夫です!二十歳の威厳を見せてやります!……あ、あと私はスネーク推しです」


「ほぅ…できる!……じゃない!!凛さん危険です!!凛さぁん!!」


「あいるびぃぃぃぃぃばああああああああっくねばあああ!!」(直訳:もう二度と戻りません)


 絶叫しながらコルトの元に走り出す凛。例の如く満タンまで水を入れた水槽でも担いでるのかというほどノロいが、その迫力は本物である。コルトも思わずビクッと身を固める。しかし、それ以上に向かってきているのがいつぞやのイカレ女の片割れということが分かり、より驚愕する。


「……うわ!!お、お前……あの秘密基地の!!」


「貴方達……私の家で狼藉を働いて、エミ様に痛い目に合わされておきながら、まだ懲りずに悪事を働いているようですね!……今度という今度は許しませんよ!!」


「………う、うう……」


 ビシィ!!と指を指され、思わずたじろぐコルトだが、その背後でまぼが知恵を貸す。


「落ち着けよ。よく見ろ……あのイカレ女はいねえ…雑魚女だけだ。ビビることねえ。最も、何で俺らのことでこんなにいきり立ってるのかは分からねえけど」


「で、でもよ!……アイツに手を出したらまた姫月(アイツ)が来ちまうんじゃ……」


「大丈夫だ……あの時のあの女の様子を思い出してみろ。自分の家が荒らされたからキレただけであの雑魚ピンクが手ぇ出されたことでは何にも関心すら示してなかったじゃん……その程度の女なんだよ」


「そ、そうか!そうだな!!よ、よーし!!」


 まぼの色々失礼ではあるがそこそこ的が当たっている助言により、覇気を取り戻したコルトが凛の前につかつかと歩み寄る。いつもの凛ならビビって半泣きになるところだろうが、今回は自分一人だけでなく幼気な少女の想いも背負っている。負けるわけにはいかない。凛が強気なタックルを試みたところで、遂に戦いの火ぶたが切られる。

※以下、真面目に描写するのも馬鹿馬鹿しい攻防が始まります。セリフとオノマトペで大方の状況を察して、流し読みでお楽しみください。   ネタバレ:凛が負けます


「でやあああああああ!!」ドドドドドドドドド  

「お?来るか?こら」

「うにゃ!!」ポス

「ほれ」サッ

「うぎゃ」ドテッ

「おらおら」ボカボカ

「ひぃ~~~~~~~!!」

「おらおら」ボカボカ

「うわ~~~~~~~ん!!」

「おらおら」ゲシゲシ

「やめて~~~~~~~!!」


「や、やめなさい!!」


「おん?」


 袋にされている凛に見かねたあみんが飛び出す。決して本気には見えないパンチキックの応酬からようやく解放された凛はゴロゴロと緊急脱出し、半泣きであみんに詰め寄る。


「もっどばやぐぎでぐだざいよぉ!!……ううう……血がぁ……足から血が出てるぅ」


「す、すいません…いくら何でもこんなに早く決着はつかないだろうと思って……そ、その擦り傷…今さっき転がってできた奴ですよね?」


「へへへ……何だよお前だったのか……相談する大人間違えたんじゃねえのか?」(←正論)


「ヒヒヒ……おら、頼みの綱がぷっつり音もなく切れたのは見ただろ?さっさと金出せよ……あ、もう出せるもん無いんだっけ?……親チョンする気概もねえならもう…お前の地味な染みパンでも売るしかねえんじゃねえのか?」


 小学生とは思えない下衆な言葉。思わず身震いする凛。


「ひ、ひどすぎます……何ておぞましい」


「……わ、私は……アンタたちなんかに何も渡さないんだから!!」


「うるせえなぁ……聞いたぜ?お前、何か全く様になってないキャラ変したんだってな?そんで今度はこっぱずかしくなって不登校中って!!……そんなカスはな……どうせ金なんか持っててもロクなことに使わねえだろうが!ディア〇スティーニの週刊誌初回号くらいにしか金使わねえだろ」


「う、うるさい!!いいんだもん!!どうせほとんど途中で廃刊になっちゃうんだし!」


「……身に憶えがあるんですね」


「あ~あ……年下の女子にはあんまり手ぇ出したくないんだけどなぁ」


 ポキポキと格好つけて骨を鳴らしながら、あみんへと滲みよる性悪コンビ。


「ムキィー!!あ、あみんさん!私が責任を取りますから!そのバックの中のブツをお見舞いしておやりなさい!!」


「………さっきはダメって言ってたくせに」


「ああ!?……何隠し持ってやがるんだテメェ!?……オラ寄越せ!」


「………あ」


 意外な素早さであみんへと近づいたまぼがレジ袋をひったくる。しかし、これが彼の命運を分けることになった。勢い余り、大きくたなびいたレジ袋から数匹のムラサキイラガの幼虫が零れ出て、まぼの二の腕と首筋に不時着したのである。大の男でもまず間違いなく悲鳴を上げるほど痛いことで知られている日本最凶の毛虫の針が忍法・如雨露千本もかくやと言うほど四方八方にくまなく刺され、まぼは絶叫の果てに失神してしまう。


「ひ、ひえ~………こ、これ……私責任とれるんでしょうか?」


 あまりの事態に思わず毛虫以外のポイントで慄いてしまう凛。レジ袋の中の仕込み武器の正体について何も知らないコルトは尚更の恐怖である。


「ま、まぼ!?……お、お前ら何をしやがった!」


「私は虫をこの袋に集めてただけ。アンタたちが勝手にひったくったんじゃない」


「そ、そうだそうだ!!」


「嘘つけ!!さっきお前、『お見舞いしてやりなさい!』とか言ってたじゃねえか!絶対仕込みだっただろ!!……クソ!!もう許さねえ!!」


 相棒の死を前に本気になったコルトが掴みかかってくる。流石にあみんも素手で小学六年生の男子には勝てない。あっという間に不利になり、抑え込まれてしまう。ここで、初めて凛が生きる。「やめなさい!」とコルトを剥がすべく横槍を入れる。その結果、コルトの肘が顎に入りちょっと泣いちゃうがそれでも、おかげであみんは窮地を脱することができた。


「あの変態おデブはほぼ自滅とはいえ、あみんさんが仕留めました!……この子は私に任せてください!」


「え!?ダメですよ!さっき……え~っと……押されてたじゃないですか!!」(←オブラートに包んだ表現)


「いいんです!この邪気まみれな子たちはともかく!万が一つにもあみんさんにお怪我はさせられません!………お母さんに……ご心配おかけしたくはないんでしょう!?」


「!!」


「エ、エミ様は……とてもお強いお方ですが!万能ではありません!!何でもお一人でこなそうとされますが……結構失敗もされますし……場合によっては信頼されているお方の力を借りることだってあります!…………だから!仮にエミ様がご自身ではどうにもならない問題に直面されたときにはきっと!!誰か身代わりを立ててでも勝ち戦をされるはずです!負けると分かってる戦いはしない方ですから!!」


「おね……姫月さんが?」


「それでもあの御方の凄いのは……そんな他人の力を使っても……自分の手柄というか…自分に手を貸すなんて当たり前だと信じて疑わない所ですが……そんな強さはエミ様くらいにしか通用しません!私たちがやればただの自己中になることでしょう!!……だから私たちは使うんじゃなくって!頼ったり!支えたり!雑魚なりにわきまえなければいけません!!」


「……………………………」


「いや……逆に何であのイカレ女なら通用することになってるんだよその理論」(←正論)


「それなのに!!力が及ばないコトなのに!!……あみんさんは!!ご自身一人で何とかされることを決めました!!……辛いのに!怖いのに!!ホントは友達と普通にお話したいのに!!真っ先にお母さんに相談したいのに!!」


「ハハハ………んなもんつまらねえプライドだろ?弱いくせに見栄はるから」


「優しいからですよ!!」


 そう叫んで嘲笑うコルトに再度掴みかかる凛。全ウェイトをかけてのめり込むがそれでも押し負けそうになり、身体を支えるため、コルトに掴みかかる手が何度もつるつると滑り倒れそうになる。しかしそれでも踏ん張り、何とかこらえる。


「心配かけたくないから!!健やかで……平穏で……本とか学校のこととか……当たり障りのない普通の話をしていたいから!!……だから頑張ったんです!!……私は…そんなあみんさんのお姿に感動しました!!…エミ様に匹敵する程のカッコイイ強さを感じました!!だから…お手伝いしたくなったんです!!…ほっとんど!!推測ですけどぉ!!」


「あんだけ熱く語っといて推測なのかよ!!……うお!!」


 ポロ、ポロとあみんの頬に涙が流れる。凛は推測だと言ったが、的を得たものだったのかもしれない。それとも、何度も地面やコルトの突き出した手にぶつかりながらも挑み続ける凛のひたむきさに胸を打たれたのかもしれない。凛とコルトにドン引きする程の年齢差が無ければもっと良かったのだが、胸を熱くする情熱的なドラマがあみんの涙腺を刺激したのである。そしてそんな熱い思いが力に変わったのか、ツッコミのし過ぎでコルトのペースが狂ったのか、ここで初めてコルトの方がバランスを崩し転倒しかける。しかし、すかさず足に力を籠め、凛に頭突きをかまして牽制する。凛も負けじと、一度引き、頭突きの反動でよろめくコルトに全力のタックルをお見舞い……しようとするが足が滑って転び、もつれるようにぶつかってしまう。そして、わちゃわちゃした結果、コルトの顔が凛の胸部にうずもる。


「うぶ……」〇〇〇※

(※各々お好みで最も間抜けだと思うボインハプニングのSEを当てはめてください)


「きゃ……ど、どこに顔を押し付けてるんですか!この変態!!」


「……………………………」ぽけー


 顔を赤くしてバシバシとコルトをはたく凛だが、例のよってダメージはない。しかし、初めてまともに味わった女性の神秘にコルトは硬直してしまう。そして、しばらくして我に返り、真っ赤になりながら何か喚くように退散しようとしたところで横たわるまぼにつまずき、二、三歩よろめいて地面に勢いよく転倒する。ただの地面なら良かったのだが、誰が置いたのか地面に高枝切りばさみがあり、丁度そこの金具に激しく頭をぶつけたことで例によって気絶してしまう。


「「……………………………」」


「「……………………………」」ツンツンツンツン


 静まり返った夕方の団地の中で、あみんと凛は顔を見合わせ唖然とする。そして各々がそれぞれまぼとコルトを突っつき、意識が無いことを再度確認する。そして…


「「か、勝った?」」


「え?…………これ、勝ったって言っていいんでしょうか!?二人ともほぼ自滅ですけど!!」


「いいでしょ!?大丈夫ですよ!原因はどっちも私が持ってきたものにあるんですから!!やったぁ!!私たち二人だけで……何とかなったぁ!!」


「ひゃっほおう!!やりました!!私たちのパワーが勝ちましたぁ!!」


 そうしてキャイキャイと、しばらく少女二人は互いを激励しながらはしゃぎ合うのだった。




                   7


 凛とあみんコンビが巨悪をくじいた裏では、怪しいプレハブ小屋で男女が撮影を行っていた。つい先ほど、陽菜を担いだ小岩里がこの小屋に入っていた。駐車場の隅にダイナミックに建てられたこの小屋は小岩里の秘密の撮影所なのである。


「ほれ、さっさと覚悟決めろよ……日が暮れちまうぜ」


「や……やだ……そんなこと…やっぱりできないよ」


「ここまで下準備したんだ……うだうだ言ってねえでさっさとイッちまえよ」


「あ、ああ……も、もうやめてよ!……うう、おっきい……こんなの……ヒナには無理だよ」


「ホラ……こっちの方は『早く一思いにして』ってせがんでるぜ?」


「そ、そんなこと言ってないよ!も、もうやだ!!……やめる!ヒナやっぱりやめるからぁ!!」


 扉の奥では陽菜の悲痛な叫び声と何かを強要する小岩里の声が交互に聞こえてくる。創作物においてこういう回りくどい表現が成されて本当にイヤらしいことをされているケースは万に一つも無いのだが、果たして陽菜の純潔は無事なのだろうか。

 その時、プレハブ小屋の窓ガラスが勢いよく割れる。「誰だ!」という小岩里の怒声から大体30秒くらいの時間をじっくりかけて、正人が窓のカギを開けてプレハブ小屋に何とか侵入する。小岩里の迫力に負けじと正人も声を張り上げる。


「てめぇ!!うちのクラスの女子に何やってんだコラァー!!」


「ま、正人君!?」


 部屋の中では小悪魔のようなコスプレで小さい三叉槍(トライデント)を持った陽菜が随分と高く積まれたトランプタワーの前に立っていた。そして小岩里がカメラを構えながらその塔を増築させている。

 理解できなかった人の為にもう一度言うが、部屋の中では小悪魔のようなコスプレで小さい三叉槍(トライデント)を持った陽菜が随分と高く積まれたトランプタワーの前に立っていた。そして小岩里がカメラを構えながらその塔を増築させている。


「おいこら!!……急に入ってくんな!タワーが潰れちまうだろうが!!」


「うちのクラスの女子に何やってんだ!?」」


「あ、あの……正人君……これは……」


 怒るというよりは焦りながら、トランプタワーを風から守る小岩里。その背後では陽菜が何とも気まずそうにごにょごにょと何か口ごもっている。


「何って………必死かけて積んだトランプタワーを小悪魔姿の美少女が無情にもぶっ壊す……という趣旨のビデオ取ってんだよ。見りゃあ分かるだろ」


「うちのクラスの女子と何やってんだよ!?」


「てめえこそ何でここが分かったんだよ!!いいとこだったのに邪魔しやがって!……窓ガラス何か割りやがって、近くに人がいて破片が刺さったらどうするつもりだコラ!」


「……す、すっげえ真っ当な指摘された……いや、岩下の悲鳴が聞こえてきて……探してたんだよ。こんなとこに土地的な事情ガン無視でプレハブ小屋が出来てるとは思わなくって……手間取っちまったけど……ってそうだ!!岩下の悲鳴がこん中でも聞こえたんだよ!内容はどうあれ無理やり撮ってんのは違いねえだろ!?」


「そりゃ、内容説明するのが怠くて多少強引になっちまったけどよ。撮影自体は合意だぜ?」


「はあ?こんなバカげたこと岩下がやるわけ……」


「……ごめん正人君……その人の言ってること………本当」


「ええ!?……お前、気でも触れたのか!?」


「お、女の子は一回くらい悪魔になりたいものなの!!」


「………そう言えばお前は電波キャラ入ってるんだったな………ていうかこんな撮影に何の意味があるんだよ?」


「俺も何が良いのかよく分かんねえけど……おっさんにしこたま売れるんだよこれ」


「……日本ってもう駄目なのかもしれないな……俺ら世代がしっかりしねえと……」


「え………これ売るの?……じゃあお仕事だ」


 今まで気まずそうに髪…ではなくプラスチック製の安っぽい三叉槍の先っちょをいじくっていた陽菜だが、映像が売り物になると知り、コロッと冷静になる。そしてふわりとほほ笑んで正人に駆け寄る。


「……正人君……来てくれてありがと、嬉しい……すぐ終わらせるからちょっとだけ待っててね?」


「え?………あ、ああ、うん」


「小岩里さん………カメラ回して」


「お、おお!」


 そこからは凄かった(コナミ感)。陽菜は人が変わったかのように、冷徹になり、クスクスと嘲りながら大胆に、しかし簡単に塔を崩さぬよう慎重に、トランプやそれを積もうとする小岩里の腕にちょっかいをかける。その不思議な迫力と魅力と言えば、全くその類の癖がない小岩里と正人を少し赤面させるほどであった。そしてポスッと唐突にトランプタワーに槍をかけ、あっけなく崩してしまう。さんざんじらされた小岩里と正人は思わず「あっ!」と素で声を出してしまう。そして、陽菜が心底どうでもよさそうな顔で「あーあ」と言って撮影は終わった。


「はあ……終わった。じゃ、いこっか」


「え?……お、おお!」


「サンキュー!岩下!!これは売れるぜ!!間違いねえ!!………分け前も楽しみにしとけよ!?」


「いらないよ。そんな気持ちの悪いお金。何かお礼って言うならこの服ちょうだい」


「え!?……あ、ああ……やるやる。マジであんがとよ!!」


「あの……小岩里さん……一つだけ質問イイっすか?」


「あ?……何だよ……お前は、撮影所の窓叩き割りやがって……もう俺のダチにはしてやらねえ」


「あ、はい……それはもうこっちから願い下げっすけど……その……何か公園で『あのガキはもっと稼げる』とか言ってましたけど…アレって……」


「ん?……ああ……似たようなモン撮ってたんだよ。今までは態度も素行も捻くれた生意気な女ばっかりだったけど……俺はこの岩下を見てピーンと来たね!『この子は何か持ってる』ってな!」


「………嬉しくない」


「だろうな……もう行こうぜ。お前ももう二度と団地に近づかない方がいいよ。何でまたここまで戻って来たのか知らねえけど」


「あ!しまった!!そうだ!あみんちゃん!……あみんちゃん探さなきゃ!」


「………鎌倉?……別に平気だろ?言ったじゃん……ああいう優等生タイプは何もされねえって」


 慌てる陽菜をなだめる正人だが、小岩里がそれを否定する。


「いや……そういやぁ……何か3棟の番長ぶってる馬鹿が小坊あつめてカツアゲさせてそこから何割かかっぱらってるって聞いたな。どうでもいいから無視してたけど……金集められなくて切羽詰まった馬鹿ガキなら……そんな団地の暗黙の了解くらい簡単に破っちまうかもな」


「何だってこの団地の不良共はそんなに金ばっか集めたがるんだよ」


「俺はかっちょいい古着買う為だけど?」


「た、大変だ!じゃあ、やっぱりあみんちゃんもやられてるんじゃ!?」


「……そもそも何でそういう発想に至ったか接点ない俺にはわけわかんねえけど……何か本当にそんな気がしてきたな」


「何だったら、犯人教えてくれればシメとくけど?岩下には世話になったからな」


「いいの?……あ、ありがとう」


「ていうか……その金集めてるっていう奴をどうにかしてくださいよ。諸悪の根源じゃないっスか」


「そうしたいところだけどな~……棟のトップ通しは互いに干渉しあわねえって鉄則があるらしいんだよ。それに…そいつ高校生にもなってンなことしてるマジでヤバい奴だからな……何かボクシング習ってるらしいし……俺も殴り合いで勝てるか分からん」


「……そんな奴がいたとは……マジで魔窟だな仁丹団地」


「引っ越した方がいいよ。正人君」


「まあ、取り合えず鎌倉探そうぜ!……ていうかお前、それ着替えねえの?」


「うん……急ごう……」


「じゃ~なぁ!ビデオ出来たら見せてやるよ!」


「「結構です」」





                     8



 二人ではしゃぎ合っていた凛とあみんだが、途中であみんがあることに気付き顔を曇らせる。


「……待ってください……確か、初め隠れて様子を窺っていた時…この二人以外にも何人かいませんでした?……どこ行ったんだろ?」


「ふへ?……あ、そう言えば……フフフ……私の迫力にやられて逃げちゃったんじゃないですか?」


 絶賛自惚れ中の凛がドヤ顔をしていると、丁度、あの時コルトたちとつるんでいた少年たちが戻って来た。ただし、いかにも腕っぷしの強さ意外に取り柄のなさそうな、ジャガイモのような頭の形をした大男を連れている。凛とあみんは顔から見る見る血の気が引いていくのを感じながら、男と向かい合う。というより、蛇に睨まれた蛙のように固まっている。


「……お前ら……何だ?何があった?」


 ドスの利いた声で凛を震わせつつ、男は周囲を見渡して倒れている己のコマを見る。そして今度は舐るような視線で震える凛を観察する。


「お前らがやったのか?まあ、どうでもいいが……それよりお前?…高校生か?」


「だ、だ、だいがくせい……でしゅ……」


「り、凛さん……」


「ガキの方……ああ、お前らも……あそこの雑魚2人持って消えていいぞ」


「あ……は、はい!!」


 男を連れてきたガキンチョどもがまぼとコルトを持ち上げ去っていく。あみんもこの場を去るよう言われたが、横で虐待された過去を持つチワワのように震えている凛を置いてはいけない。


「おい、消えろ……痛い目見たいのか?うん?」


「先に手を出したのは向こうですから……り、凛さんは悪くありません!」


「勘違いするな……別にケンカなんてどうでもいい。目の前に顔が良くて胸のでかい女がいる。ここは団地……近くに俺の家がある。周りに誰もいない……言ってることが分かるか?お前が消えりゃあ二人きりになれるんだよ。まだ…言葉が必要か?」


「ヒ……」


「り、凛さんに手を出さないで」


「痛い目見たいみてえだな」


「待て待てーい!!」


 本当に高校生かというほどどす黒いことを言いながら近づいてくる男。凛はいよいよ絶望的な顔で涙を浮かべる。その時、どこからか声が聴こえる。一斉に声の方を見ると、団地の奥から一人の黄色い影が走ってくる。


「あ?……誰だお前?」


「玉裏も舐めてが言えない男!!スパイダーマッ!!……星畑(小声)」


「ほ、星君!!」


「え、誰?」


 3人中2人には知られていない星畑だが、雰囲気で助けに入ったことは察してもらえた。仕事帰りに偶然団地の前を通り、凛の声が聴こえたので馳せ参じたのである。と言っても聞こえたのははしゃぎ声だったのに、いざ行ってみればまあまあな修羅場だったので、星畑自身も多少テンパってはいる。登場早々ボケまくっているのも、テンパっていることを悟らせないため、というか自身を鼓舞するためである。


「……何だお前、この女の知り合いか?」


「セーラーマーズとセーラーマーキュリーくらいには知り合いだ!!」


「………失せろ。女の前だからっていいカッコするんじゃねえ」


「黙りな。リアルヘイポーと呼ばれるくらいか弱いウチの子ウサギちゃんを恐がらせやがって……良い歳の男がズボンにアイスをつけられたくらいで怒るんじゃねえ」


「……いや、トラブルの原因そんなのじゃないですけど」


「……ヘイポーもリアルに存在してるんですけど」


「……こいつ俺より年上らしいけど」


 3人に漏れなく突っ込まれ、心なしか満足そうな星畑が凛を迎えに行く。何だかんだで助けに来てくれて心底ほっとしている凛も星畑の腕に磁石のようにくっつく。そのまま星畑が団地を出ようとする。


「帰ろうぜ。もうじき『雨上がりのフォトブラ♪』が始まっちまう」


「いや……あれタイトル変わった上に終わりましたけど」


「待てこら!無事で帰れると思ってんじゃねえ!」


「ああ?……何だよ?Ub〇rタクシーでも呼んでくれんのか?」


「フン………ふざけた野郎だ……たま~にいるんだよな。こうやって度胸だけ見せたら何とかなると思ってるアホが……そしてそう言うバカはケンカでも『自分は何とかなる』なんて能天気なことを考えて後先考えず無謀に突っ込んでくる」


「自己紹介はそれくらいでいいだろ?……やるんだったらかかって来いよ」


「!!……テ、テメェ!!」


「星君……カッコイイ」


「……ホントにかっこいい……私の推しのエドワード・ミッドフォードみたい……」


「ほう……できますね」


「舐めた口聞きやがって!!……吠え面かかせてやる!!」


「……あんまり人を殴りたくはねえって……師匠にもいつも言ってんだけどなあ!!」(←漫才中のツッコミの話)





「 」←吠え面で横たわる星畑


「ほ、星くううううううん!!」


「……こ、ここまで口ほどにもなかったとは……ちょっと本気になって損したぜ」


「星君のモンローウォークからのソバットをあっさりかわしてボディブローとアッパーの二段構えを決めるなんて……この人でなし!!」


「改めて聞いてみても敗因しか見えてこない……」


「…………さて邪魔者は消えたな……来い。大人しくしとけばちゃんと可愛がってやる」


「ひぃぃっぃぃ!!だ、誰か!!誰か助けてぇ!!」


「!!…………り、凛さん!ごめんなさい!!」


 そう言ってピャッと逃げ去ってしまうあみん。もちろん逃げるのはポーズで助けを呼びに行ったのだが、それは凛のみならず、男にまで容易に察せられてしまった。


「邪魔者が来る前に誰にも邪魔されない場所に行こうぜ?俺の愛単車、殺里朕世之介號に乗りな」


「ヒイィィィ!!何て絶望的なネーミング!!どっかの誰かさんみたい!!」


 危うし凛。その時、もう何度目かという「待て!」の声がかかる。もう助けを連れてきたのかと、一瞬ギクリとする男だが、少年が一人いるのみで、あみんの姿はない。ただの通りすがりの命知らずな正義漢だと分かりすぐにほくそ笑む。その命知らずが何故かDEATH NOTEの夜神月のように背後に悪魔っ娘を連れているのはさて置き、睨みを効かせて凄む。


「邪魔すんな!ぶっ殺すぞ!」


「う、うるせぇ!まだ陽もあるうちから何やってんだ!!」


「凛ちゃんを離して!」


「うええ…………ヒ、ヒナちゃぁぁぁぁん!お気持ちは嬉しいですが逃げてくださぁぁぁい!!あと、もし私が無事に帰れたらお写真撮らせてくださぁぁぁぁぁい!!」


「く、くそ!もう破れかぶれだ!!」


 負けると分かっていても男に向かう勇者正人。しかし、あえなくボカリと一発喰らわされ、地面に突伏す。


「正人君!!」


「こ、こんな子どもに手を出すなんて………ヒ、ヒナちゃんは逃げてください!!」


「に、逃げらんないよ!こんなの!あ、悪魔!悪魔の槍で突くよ!痛いよ!嫌なら凛ちゃんを離せ!」


「うざってえな」


 これまた怖がりながらも果敢に立ち向かう陽菜。しかし、気絶から目覚めた星畑に止められる。


「陽菜、下がってな……俺が時間稼ぐから……人を呼んでこい……できれば日々野晴矢くらいタフなやつを…」


「え、ええ!?何で星ちゃん!?………ひ、久しぶり」


「クソ…まさか秒で気絶させられるとは……『まぁーまぁー強かった』って言われる位には粘るつもりだったのに…」


「あ…それ、ななまがりだよね。ヒナも好き」


「…………勝つ見込みは端から無かったんですね」


「だってお前らの逃げる時間稼ごうと思っただけだもん。何でチンタラ観戦してるかなぁ」


「う………すいません。何か見とかなくっちゃいけない気がして」


「たまたまテレビつけたらやってたサザエさんじゃねえんだよ。俺の喧嘩は」


「チッ……外野が増えてきたな。うざってえ」


 本格的に連れて行こうとしているのか凛を掴む男の力が強まる。


「あ、いや……どこ触って」


「やべーぞ!レ○プだ!!」


「レイク?」


「あ、しまった……陽菜がいること忘れてた。今の言葉は汚い言葉だから忘れなさい」


「うん分かった」


 緊張感こそ無いが、星畑は全力で男のもとに向かう。しかし、凛を手放すこともなくいなされてしまう。正人も起き上がって向かうが、軽く投げ飛ばされてしまう。そして男どもを払い除けながら男は駐輪場へと歩を進めてしまう。絶望的な状況ではあったが、ここでようやくあみんが到着する。


「あ、アレです!助けてください!!」


「チッ………来たか……って女かよ」


「え、ええ!?」


 助っ人を見て嘲笑する男と驚愕する凛。あみんが連れてきたのはこの場で一番ノッポである星畑よりも背の高い大女である。黒い髪に黒いゴスロリ調のセーラー服、そして黒色の×印が書かれたマスク、凛の友人兼いつまでも結成に漕ぎ着けないバンドのメンバーである眼前がそこに立っていた。惨状を確認し、マスク越しでも分かるほど怒りに満ちた顔をしている。凛がその名前(偽名)を呼ぶ前に、片膝をついた状態の正人が叫ぶ。


「ね、姉さん!!」


「姉さん!?」


「……………………………」(悪逆非道……という顔) 


「フン……何だよその格好は?暑くないのか?お?」


「…………………………」(不倶戴天!!……という顔)


 並々ならぬ怒りのオーラを発する眼前にヘラヘラと近づく男。それだけ腕っぷしには自信があるのだ。しかし、眼前の服に手を伸ばしかけた瞬間、蛇のように絡みついた彼女の長い腕に、手の平を夕空の方角に変えられる。メキョリという嫌な音が聞こえた刹那、凛の耳をつんざく程の悲鳴が団地にこだまする。


「ひええ………助かったぁ」


「やった!凛ちゃん!!」


 ようやく男の腕から解放された凛に陽菜が飛びつく。男は手首を抑えながら、脂汗まみれの顔で眼前を睨む。視線の先に居ない凛でも小便をちびりそうなほどおっかない顔だったが、眼前は全くひるむことなく逆に中指を立てて挑発する。


「……………………………」(喧嘩上等……という顔)


「凛ちゃん……あのお姉さん知り合い?」


「は、はい……大学のご友人の眼前さんです……こんなにお強かったなんて」


「がんぜん?……あの人は俺の叔母ですよ?善子姉さんです。確か合気道で全国出てたんじゃなかったっけな……あとレスリングも齧ってたような」


「ひぇ~……まさかこんなところで相関図がつながるなんて……この世界狭すぎません?右も左も私の知ってる人しかいないんですけど」


「須田お前、大学でちゃんと友達いたんだな。俺は嬉しいぜ」


「へへっへへへへ……」


 平和な会話の奥では左手のハンデを意に介さず男が眼前に襲い掛かっていた。が、またもするりと関節を取られ、捻られ、絶叫する。そして腕を抑えながら「おうおう」とオットセイのような声でのたうち回る男に眼前がマウントポジションを取る。


「……………………………」(究極奥義!!……という顔)


「あ、あれは……必殺スルメ固め!!」


「知っているのか!?星君!!……です」


「あの技にかかった者はするめいかが火の上で反りかえるように巻かれてしまうのだ!!」


「ほえ~……なんでも知っとるわぁ~この人ぉ~……です」


「いや……普通にチョークスリーパーしてますけど……アンタらさっきから緊張感無さすぎるでしょ」


「これが大人の余裕だよ……正人君」


「………違うと思うなぁ」


 恥ずかしいほどボケるノンシュガーズ一同に呆れる正人とあみん。いずれにしろ、もう危機は去ったも同然である。男は涙を流しながら謝罪に謝罪を重ねるが、一切緩まることのない関節技にすっかり骨抜きにされ、冬眠中のナマズのように大人しくなってしまった。


「眼前さん!!ありがとうございます!!超超超かっこよかったです!!」


「……………………………」(疾痛惨憺……という顔)


「い、いえ……平気です!あまりお気になさらないでください!!…けっこうこういう修羅場にはなれてますので!」


「……お前ってメンタル面脆いけどあんまり引きずることは無いよな……いやでもマジで助かったぜ。セクシーサンキューセクシーサンキュー」


「…………………………」(中島健人?……という顔)


「………ねえねえ正人君……何であのお姉さん全然喋らないの?」


「何か呪いだって……すげえぜ?タンスの角に小指ぶつけても声一つ上げないもん」


「へ~……何かすごい」


「か、カッコいい……超超カッコいい……」


 児童たちに囲まれる眼前。照れているような嬉しそうな反応を見せ、先程の鬼神のようなオーラは消えていた。児童の中でも特にあみんは恍惚とした反応を見せている。


「あ、それと………星君も正人君もあみんさんも…ヒナちゃんも…ありがとうございました!!」


「あ……いえ……無事?で良かったっす」


「正人君照れてる」


「う、うるせえ!」


「………ずっと思ってたんだけど何でちゃん陽菜は虫歯菌みたいな格好してるの?」


「だはははは!!虫歯菌!!」


「あ、悪魔だよ!!……もらったの…いきさつはあんまり聞かないで」


「でも……上手いこと眼前さんが居て下さったんですね」


「そりゃあ……姉さんここ………ってか俺ん家に住んでますから」


「ええ!?……そ、そうだったんですね」


「ね、ねえ……正人君……今度お家に遊びに行っていいかな?」


「はあ?ヤダよ!……女子家に上げたなんてバレたらどうなるか」


「大丈夫!正人君には一切関わらないようにするから!」


「それはそれで何かやだな……」


(……何となくデジャブを感じますねえ)


(うん……今度は喋らなくなっちゃいそうだね……あみんちゃん)




                    8



 翌日、宣言通りきちんと学校に来たあみん。危惧していた眼前への影響は全く出ていない。周囲のクラスメートは少しだけあみんの復帰(二重の意味で)にざわついたが、すぐにその他の日常の話題に流されていった。放課後になり、あみんと陽菜は久しぶりに二人で仲良く下校する。


「………こうなってくると……黒川さんにもキチンと謝っといた方がいいよね」


「お兄ちゃん?……大丈夫だよ。すっごい優しいから……気にしてないよ」


「いや……それでも」


「そう言えば……何であの時、凛ちゃんはあみんちゃんと居たの?」


「……色々気にかけてくれて……私に連絡くれたの。色々話を聞いてくれただけじゃなくって、不良たちとの喧嘩にまで協力してくれて」


「そうなんだ……凛ちゃんには事情を話したんだね」


「あ、ち、違うよ?私が話したというより……ほとんどバレてたの」


「そうなんだ……すごいな凛ちゃん」


「うん………ヒナちゃんはすごい人たちと一緒に住んでるんだね。ちょっと羨ましいな」


「またいつでも遊びに来たらいいよ」


「うん……ありがとう」


「フフフ……それより今は……正人君のお姉ちゃんかな?」


「あ、い、いや……流石にもう入り浸ったり真似したりはしないよ……それに……確かに眼前さんカッコよかったけど……あんなのどれだけ憧れても私にはできないよ……それに」


 自虐をしつつも、朗らかな顔でまだ真っ青な6月の空を見上げるあみん。彼女の視界には、あみんの小さな影が何倍にも大きくなって、空に広がっている。意図せず影送りに成功したのである。


「私の……憧れるカッコいい人は………もう他にできたんだ!」


 そう言って微笑むあみん。陽菜が不思議そうな顔で「かっこいい?誰?星ちゃん?」と返す。あみんはそれを否定も肯定もせず、声を出して笑いながら走り出す。陽菜も笑ってそれを追いかける。あみんが守りたかった平穏な光景がそこにはキラキラと広がっていた。







本編ではサブキャラクターである正人の他に、眼前さんも出てきたのですが、ネタバレになってしまうのでゲスト欄には書けませんでした。歯がゆいです。というか正人の叔母なんて設定無かったんですけどね。サブをポッと出にしないためにはとにかく相関図を濃くすることだと団地ともおと波よ聞いてくれに教わったのでやってみましたが、実力不足で滅茶苦茶になりそうな予感しかしません。

それはそうと、また次回お会いできることを心から楽しみにしています。次章は3話構成です。

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