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その③「お金なんかはちょっとでいいコト」

こんにちは。 第3話時点で誰一人の目にも止まっていない本作ですが、見られているという意識は常に持って挑みたいと思います。「見られている」というのは本作の裏テーマでもありますが、それは正直、意識しなくても良いところです。そういうテーマ的な部分こそ、自己満足の域に留めていられるよう自分をセーブしなくてはいけませんね。


                      1



契約という名の単なる口約束を結んですぐ、星畑と黒川はしばらく談笑していたが、すぐに眠気から口数が減り、どちらからとも知らず眠りについた。かなり深い眠りだったが、妙なくすぐったさを感じて先に起きたのは黒川の方だった。すっかり日が上がっていたが、意外にもそこまで時間は経っていなかった。凛が背中をつついて彼を起こしたのである。


「おはようございます……あの……………眠ってしまって……すいません。 あっ……毛布ありがとうございます………」


「…………はい、お、おはようございます」


朝起きたら、目の前に気まずそうな美少女がいるというシチュレーションに思わず敬語になってしまう黒川。はやくも響く二日酔いに頭を抱えながら、ちゃぶ台の上の空き缶を片付ける。凛もそれを手伝う。終わるまで終始無言だった二人には、未だ爆睡中の星畑のいびきがやけに遠くから響いているような気がした。


「あの………ホント……ありがとうございました……お、お暇させていただきます」


「では」と叫ぶや否やそそくさと立ち去ろうとする凛を呼び止める。


「あの、L〇NE!L〇NE交換しよ。10万円見つけたら連絡する用に!」


「イエ、あれは本当に、差し上げたものですから! 私の気持ちですから!!受け取ってください!」


「……ていうかさ、その、あんまその、ファンとか10万とか関係なしにまた、どっかで飲みたいと思って………ダメ?」


今まで散々日和って来た黒川だが、ここで初めて欲、というかアクティブさをだした。しかし相手はバツが悪そうにもじもじしているだけで、なかなか返事をくれない。そんなに嫌だったのか?


「…………ごめん、困らせるつもりは無かったんだ」


「いえ! 違います。困ってなんか、いや、困ってるか……でもでも全然嫌とかじゃなくて!~~ッ」

「来てください!!」


叫ぶや否や泣きそうな顔を大振りで後ろに向け、そのまま振り返らず早足で去っていく。慌てて後を追うとブロック塀を曲がったところで、立ち止まっていた。そして卑屈な笑顔と照れ顔がごちゃ混ぜになった不思議な顔で一層オドオドと語りだした。


「えと………あの~、、私、その、近々、福岡の実家に帰らなくては行けなくなりまして………。 実家の工場が倒産しまして……へへっへへへへへ」


「ええ!!」


「あ、でも、まだ大学辞める手続きとかは済んでなくて、しなくちゃいけないんですけど……そもそも、奨学金で通ってたのに卒業させないとは何事だ~って思って………思った…ん……です。はい。大学行くって言った時も親から大反対されて喧嘩別れみたいに……飛び出して…来たんですけど……。もう駄目だと……子供じゃないんだぞ、と。言われて………私が何ができるのかは…へへへ…分からないですけど……何かしなくちゃ……というか何かやらされると思うんで……家が、もう、借金まみれらしくて……ああ~、あ、話めちゃくちゃ……何言ってるんだろ私?……へへへ、とにかく、家が、大変で、あ、大変なんです……はい。すいません」


「要するに、ご実家が倒産して借金負って、凛ちゃんは大学辞めて戻って働かなきゃいけないってこと?……だよね。………やばいじゃん。何で20万円も人にあげようとするの?お金大事にしないと!」


「だ、大事にしたいから!使いたいように使ったんですぅ!どうせ、持ったまま戻っても!全部親にとられちゃうし!それなら、私が使いたい方法で使います。だ、だから、10万円返してくれなくて大丈夫です。ホント、こんなへんてこな女との手切れ金とでも思ってください」


「………ごめん」


「ホントは早く、今にでも家に帰らなきゃなんですけど………ちょっと、今、家出っていうか、反抗期中で………でも、本当にそろそろ、というかこんな家出が、いつまでもできるわけないし……。だから、やりたいこと、思い残したことしようと思ってたら、黒川さんに気づいたんです」


「それで…………」あんな思い切った出会い方だったのかと黒川は気づく。


「ホントは………会ってすぐに、これだけ伝えようと思ってたんですけど………」

「私………丁度、一か月前くらいに………親から……帰って来いって…連絡来て……めちゃくちゃ泣いて……大学に友達がいるわけでも……やりたいことがあるわけでもなかったんですけど………なんか悔しくて……泣いちゃって………そんな時に、黒川さんの動画見つけたんです」


ポロリと涙がこぼれる。ずっと潤んでいた視線が遂に乱れる。それでも凛は口を震わせて自分の思いを黒川に伝えた。


「私……それを見で……感動したんです。 自分のやりたいことをひたすらやってる………黒川さんに……我が道を貫いてるお姿に……歌が素晴らしかったのは勿論ですけど、何よりその姿に感動したんです」

「ずっと………ずっと……星畑さんにもですけど……この気持ちを伝えたかったんです」


「………ありがとう」


言うべきか?と黒川は自分に問いかける。彼女は一つ大きな勘違いをしている。自分の歌は別に何も攻めたものではなく、単なるトラブルでああなってしまっていることに。真実を伝えても伝えなくても彼女の何かしらを裏切るような気がする。


「あの、俺、実は、その~歌なんだけどさ…………」


「その、機械のトラブルかなにかでああなっちゃってる………だけなんですよね?」


「………知ってたの?」


「星畑さんが、その、ライブの時によく言ってたんです……歌がうまいけど機械に通した瞬間駄目になる奴がいるって……お二人が友人だって知ってすぐに分かりました」


「そう……そうなんだよ。 俺は別に自分のやりたいことを攻めてるわけじゃないんだ……ごめん」


「でも、でも、歌をよくしようって思って……動画を投稿されるってことがまず、凄いことじゃないですか! 現に、あの、ひどいこといっぱい言われた後も動画……出されてましたし……」


実はそれも勘違いで、黒川が動画の現状に気づいたのがつい先日というだけなのだが、流石にそれは言えなかった。


「いいんです。きっかけは勘違いでも、あの声で歌う黒川さんが素敵だったのも、動画を見て勇気をいただいたのも本当なんですから………………どんな形でも、私が好きになったものは私の中では永遠に正義!なんです!」

「だから………その~……お二人の、その……宇宙人の……頑張ってください!お二人なら絶対に面白くなります!」


「聞いてたの!?」


「はい、あ、はい、すいません。 聞いてました」


「いつから起きてたの?」


「誰かが手をたたきながら爆笑されてたので、それで………」


「けっこう序盤から起きてたんだな!」


「へへへ、えへへへっへへへへへ」


卑屈に、でも楽しそうに笑う。


「………今回の事は本当にいい思い出になりました。 思い残すことは……あるかもしれないけど……少なくとも…………かけがえのない時間になりました。これだけで反発した甲斐があった……です!」


「………寂しくなるから、連絡手段は断っておこうって…思ってましたけど……やっぱり、交換させてください……。 またいつか、借金なんかすぐに返しちゃって……自由になって……その時は、また、まだ、まだ、………会っでくだざい……」


一度は引っ込んだ涙がまた、零れる。何だか黒川まで泣きそうになってしまう。とりあえず連絡先を交換し、凛を見送った。最後は笑顔で、控えめに手を振る凛は、やっぱり大人には見えなくて、それが余計に黒川の胸を痛めた。


そんな淡いというか、せつない気持ちは、部屋に戻って第一に聞こえてくる爆音のいびきによってあっという間に台無しになる。結局10万円を返し忘れている間抜けな酔っぱらいを尻目に、黒川はとりあえずコーヒーを淹れるためのお湯を沸かす。



                       2



「話を聞かれていたみたいだな」


「ああ、でもまあ宇宙人なんてコントかなんかだと思ってるだろ」


「そうかな、だが、聞かれてしまったからには……彼女もチームに入れるっきゃないんじゃないか?」


「幼気な女子一人が宇宙人だなんだ言ったところで、不思議ちゃん認定もされねえよ」


「それはそれ、これはこれだ。 契約の内容までばっちり聞かれてるんだぜ。キミらに興味津々みたいだし、案外優良物件じゃないか?」


「あのなあ、お前話聞いてたのかよ?」


「当たり前だ、キミの耳に入る声とこの部屋の声は全て聞こえている」


「だったら、分かるだろ? あの娘はこんなショーやってる暇なんかないの」


「無意味な家出をやる暇はあるのにか?」


「それはそれ、これはこれだ」


「キミこそ分かってるのか? なんの工場だったかは知らないが、高卒のパッとしない女が何をして働くって言うんだ?借金を返す当てなんぞ無いも同然だろ」


「向こうの都合にそこまで考えても仕方ねえよ」


「いや、強いて言うなら、いいものがあるな……水商売だ。 女の落ちる先はどの星も同じだな」


「……………………………………………………………………」


「何だ……怒らないのか? 焚きつけているのに」


「バレバレすぎるだろ……いくら何でも急に下品になりすぎだ」


ハーッと溜息を吐きながらコーヒーを淹れる。


「そんなに良かったのか?凛ちゃん。 業界人ではないぞ?」


「関係ないさ。私の星でも、胸のでかい女は需要がある。それに………」

「あの娘がいると、キミが露骨に浮かれるのが面白い」


黒川は何も返さず、バツの悪そうな顔でコーヒーを啜る。すると突然「チェーンジ!!」と叫んで、星畑が跳ね起きる。あやうくコーヒーをこぼすところだった。


「なんだよ。星畑」


「須田の奴が帰ってるのに俺を起こさなかったのがワンアウト、俺のいないときに宇宙人と会話で盛り上がってるのがツーアウト、んで俺の分のコーヒーがないで、スリーアウトだ。おら、バッター変われ、俺にも宇宙人と交信させろ」


黒川は再び、溜息を吐きながら醤油さしに手を伸ばす。


「もしかしてそれが宇宙人とか言わねえよな?」


「どこの高野文子作品の話だそりゃ………こりゃ、宇宙人の声を通すスピーカーだよ」


「初期のコナンみたいな話だな………」


その後、宇宙人と星畑の会話をBGMに、黒川は夜のバイトに備え眠った。


目を覚ましても、星畑は醤油さしに向かって忙しなく口を動かしていた。何がそんなに楽しいのか。U星人と喋ることなんて事務的なことだけだと思っていた黒川には分からなかった。のっそりと体を起こし、星畑を見つめる。


「…………何をそんなに話してんの?」


「そっちの星のこと、聞いてたんだよ。 何が流行ってるかとか、どんな観光地があるとか」


成程。U星人、我々のプロデューサーとしてではなく、一宇宙人との会話を楽しんでいたのか。確かに興味なんて尽きることが無いはずである。黒川は再度、ホーキング博士に謝罪する。


「で、何が流行ってるって?」


「知ってるのもありゃ、知らねえのも多い。お前なら分かるかもな。 Uのオリジナル文化はてんで理解できねえ……ていうか俺らには理解できねえの一点張りだ」


「何でそれで、俺たちの文化が流行ったりするんだよ」


「キミたちの中にもやたらクラシックなものや学術的なものを好んでエンタメにしている層がいるだろう? 地球の文化に夢中になっているのは我が星でのそういう類だ」


星畑の代わりにU星人が疑問に答える。脳内ではなくスピーカーの声だ。


「なるほどね……じゃあそっちで流行ってるオリジナルってのはこっちで言うリア充文化みたいなもんか……サーフィンとかキャンプとかラウンド〇ンとか」


「大体、その通りだ」


「俺もやってみて―なあ……そっちのそういう文化。 ホントにもう地球には来ないわけ?」


星畑がぼやく。 俺はごめんだな……と考えながら、キッチンからインスタントラーメンを取り出す。危うく3つ手に取りそうになり、苦笑する。


「あれ? 俺の分もあんの?」


「別に…………カップ麺くらいやるよ……どれがいい?」


「チリトマトって誰が喰うんだって思ってたけど、お前か」


「おめぇこれ喰ったことないんか!?食ってみろよ!俺初めてトマトスープで白飯煽れたぜ?」


「煽るって………酒とかに使う言葉じゃねえのか?」


何のかんの言いながら準備をしているとスピーカーから声がする。


「キミたち、須田凛は、本当にこのままでいいのか?ここで見送るとして、他にメンバーの当てはあるんだろうな?」


「まだ言ってんのかよ………………」


「須田がどうしたんだよ? あいつ素人だろ?…って言ったらお前も素人か」


お湯が沸くまでの間、星畑に凛のことを伝える。


「ありゃりゃ。いい飲み友ができたと思ったのに………」


「…………まだ未成年だろうが」


「星畑はどう思う? 須田凛は需要があるし、画的にも華があった方がいいと思うんだが……」


「個人的には……歓迎だぜ。 見栄えのいい聞き手はバラエティー番組にも付き物だからな」

「ただ、あいつにも色々と事情があるだろ? 正直、この企画は……仮に成功しても俺たちにそこまでギャラが回るとも思えねえし………こんな博打性の高いもんに一生乗っけるのはいくら何でもリスキーだろうがよ」


「………俺もお前と同意見だよ」


「ただ、やりたくもねえことで金を稼いでその金すら巻き上げられて自由に使えねえなんざ……いくら生活とはいえ、糞過ぎるけどな。……まあ、流石にそこまで劣悪ではないだろうけど」

「それなら、俺はこうして自由を選ぶ。不真面目でも貧乏でも、自分でかじを切れるんなら俺はそっちの方が向いてるタイプだ。その分、人に迷惑かけねえようにはしてるけど」


「…………………………………」


「まあ、俺は須田がどんなタイプかなんてわからねえし………責任も持てねえし、Uも諦めな」


「それなら、当てはあるんだろうな? 男だけのムサイ番組にするつもりはないぞ?」


「そんなものないけど凛ちゃんはいい加減諦め……「ある!!」


「ええ、あんの!?」 「あるのか!?」


U星人と黒川がシンクロする。自信満々に言い放った星畑はチリソースにお湯を入れながら、醤油さしに向かってうんうん頷いている。そこにカメラはついてねえんだけどな……。


「ホントに!?言っとくけどある程度業界人で美形だぞ?んでもって知名度ゼロ!んな矛盾した存在がよりにもよって女性でいるわけないだろ?」


「んだ。俺も知り合いって程親しくね!!でもいる!」


「マジか…イケメンパワーすげえな」


「で、どんな人間だ? 写真はあるのか?」


「ない!」


「じゃあ連絡先は?」


「ない!」


「………………名前」


「知らん!」


「当ては…………?」


「ある!」


「……………駄目だこいつ」


「この男はいつもこうなのか?」


「………あっしももっとわきまえる奴だと思ってましたよ……根はいい子なんですけどねえ」


「最後まで聞けやお前ら。そいつはうち(ホスト)に最近きた客なんだよ」

「俺を指名してたっぷり3時間飲んで、また来るって言ってたから近いうちまた会えるだろ。連絡先はそん時聞けばいいだろうがよ」


「ホストに来る美人な業界人なんていんのか?」


「単純にストレスの発散ていうか、異性にしか話せないことみたいなのをぶちまけに来るみたいな客もいるにはいるんだよ。そん中には美人つーか整ってるのもちらほらいるぜ? まあ、その客はちやほやされに来てたって感じだけど」


「ちやほや?」


「ああ、自分はトップモデルだっていって俺たちに崇め讃えろ風なことを言ってた」


「お前のとこの店、嘘つきしか来ねえのかよ」


「イヤ、でもすんげえ美人だったぜ!見た目というか雰囲気だけで全員信じちまったレベルで!」

「黒髪ロングで猫みたいな目のTHEモデルって感じでスタイルも良かった。その分、口と態度が最悪だったけど…」


「キツイ感じなの?」


「一番古株のレオンタール=ファランドックスⅢ世先輩(45)に躊躇なく『アンタいつまで王子名乗ってんのよ!はやく王権握りなさいよ!』って言い放つレベルでキツイ」


ちなみに星畑のホストはホストと名乗っているが、どちらかと言えば男版のメイド喫茶というか、コンセプトバーといった風体である。「現代という乱世を懸命に生き抜く姫様たちに一時のシンデレラナイトを」というコンセプトのもと、王子に扮した野郎どもが女性客をもてなすのである。ちなみに星畑の源氏名はギャラクシア・星城・カインである。


「それは先輩傷ついただろ………」


「………先輩がロシナンテ(白馬のロデオ)中に振り落とされるところ初めて見たよ」


「動揺してたんだろうな………」


「イヤ、例のモデルが振り落としたんだけど……」


「肉体にまでダメージ与えられてる!!」


ちなみにロシナンテ中というのは、白馬に二人乗りしてツーショットを撮るサービスの事である。酒が入っている状態でのロデオは非常に危険で、落馬するお姫様が続出している危険な遊具だ。黒川は一度でいいからその落馬を一目見たいと思っているのだが、男性客は入店できないルールである。


「でもまあ、俺はそんな客に結構気に入られたみたいで……また来るって言ってたから、だから大丈夫だ!」


「……まあ、当てがあるのは分かったけど……そんな魔性の女で大丈夫かよ?」


「聞いている中に本当にモデルであるという確信がなかったが?」


「そこはいいだろ別に……そんなこと言ったら全員もどきだぜ? 美人なのはマジだからさ」

「性格いいかどうかはともかく、辛口ツッコミかなんかだと思ったらいけるだろ?」


「いや、ていうか……そんなんが俺らと仕事する気になるとは思えないんだけど?」


「うわごとの様に金が欲しい金が欲しいって言ってたからな。儲け話装えばいいんじゃねえの?」


「金か………俺みたいな適当人間は生活できて多少漫画とかCDとか買えりゃあ、それで十分だけどな」

「幾らでもあって困るものじゃないし、ぶっちゃけ一生遊んで暮らせるぐらい欲しいって思わなくもないけど……それほどやることやってるわけでもないし……」


「まあ、順当にいけばいい値にはなるさ、それはあくまでキミら次第だ」


「俺はおまけだろ? 過度な期待は宇宙的スター黒川様だけにしといてくれ」


「…………確かに、美人な女性は必須条件だな……」



                      3



話もそこそこに星畑が帰宅する。今日は両人ともアルバイトである。体調は最悪の黒川だったが、気分は未だ高揚している。今まではなんだかんだ不安も大きかったが、やっぱり味方が一人でもできると気の持ちようも大きく変わってくる。バイト先のスタッフルームのドアもいつもと比べて数段軽い。


「お疲れまでーす!」


「お疲れ~っす! 黒川さん、今日は元気そーっすね」


「元気じゃねえよ~。 二日酔いに睡眠不足で今にも倒れそうだっつーの」


「お互い連勤はつらいっすね~」


例の後輩上司と何だかんだ言い合いながら、仕事に就く。本来なら先輩から指示をもらわなければいけない所だが、今日の黒川には第一に優先すべき使命がある。


(サザンの『HAPPY』だよな……えーっと、あれ、ねえな? 誰かもう売り場だしちまったか?)


冷静に考えれば今日の開店した瞬間に電話すればよかったのかもしれない。ひょっとしてもう凛が回収したんだろうか? それなら連絡が来てるはずだろ。など色々考えながら黒川はこっそりスマホを確認する。もちろん業務中にスマホを見るなんてご法度だ。こそこそと黒川はトイレに行く。


スマホを見ると丁度、凛から連絡が来ていた。どうも入れ違いだったのか?と確認する。


「黒川さん! 今日家に帰って荷ほどきをしてようやく思い出したのですが、私CD全部返してもらってたんでした!! 本当にアホですいません!! 10万円近いうちにお届けするのでご都合のあう日を教えてください!」


(忘れてた…………そうだった。 ホントにアホだ俺ら……………二人とも)


しかしその一分後、再びメッセージが来ていた。


「黒川さん大変です お金がどこにもありません! 見つかりません! そちらに落とし物とかで届いてませんか?」


(うっそ!!)


無論届いてない。CD本体がある以上、これはもう、非常に考えたくないことだが………


(誰か……いや、あんときヘルプに入った……あいつ…盗ったな!)


つい先ほどまで談笑していた相手が10万円もの金を盗んでいたとはあまり考えたくない。しかし、もし自分が同じ立場だったら、盗むかも……いや、やっぱ盗まないな……客がトレイから取り忘れてた10円玉めんどくさくてネコババしたことはあったけど、10万円はいくら何でも桁が違いすぎる。


黒川は速やかに「言いにくいけどうちのスタッフに盗まれたと思う」と送る。幸いすぐに既読が付いた。続けて打ち込む。


「1分後に俺の店の電話番号調べて電話かけてきて!」


そのメッセージにも既読が付いたのを確認すると、黒川はトイレから飛び出て計画に移る。幸い、ホシと思しき人物は今日出勤しているのだ。後は証拠さえ洗えれば。


気分は完璧に刑事の黒川。まずは先輩に大便をしていて遅れたと指示を受け取りに行き、ついでに電話の子機も受け取る。ほどなくして凛から電話がかかってくる。電話口で分かりやすいほど動揺している凛を制するように、早口でまくし立てる。


「お電話ありがとうございます! こちら古本大国〇市店の黒川と申します。 はい、はいはい。落とし物ですか? かしこまりました。お探ししますので少々お待ちくださいませ!」


もちろん電話口の凛は何も言っていない。黒川が欲しいのは監視カメラをチェックする許可だ。これで奴の犯行をあぶりだしてやる。完璧な計画だぜ。


ノリノリで監視カメラの映像をさかのぼる黒川。果たしてそこには、ばっちり映っていた。……白い封筒を見るやあからさまに取り乱し、ポケットに突っ込んでどこかに駆けていく、黒川の姿が。


そして黒川が犯人だと断定している後輩にはそこまで怪しいそぶりは見れない。これは詰んだかもしれない、と黒川は思う。この映像を見て、黒川が犯人だと思わない輩はいないだろう。かといってあの手紙を見せるわけにはいかない。というか手元にない。凛にここまで一方的に指示を出しておきながらもたつくのは男のプライドが許さない。


(かくなる上は……もう、これしかないな)


(自腹で10万円切ろう。それでいいじゃないか。ちょっと………いや、かなり痛い出費だが、ひょっとすると梃子(てこ)でも受け取らないかもしれないし、そうなったら実際プラマイゼロだ。誰も悪くないさ。それに盗んでない可能性だって今思えば十分にあるじゃないか。10万円はCDボックスに普通に入っていたのではないだろうか、再度俺に渡すのが惜しくて無いふりをしているのかもしれない。)


(………………最低だな、俺)


(そんなわけないことぐらい俺は知っている。だから何だ。そもそも仮に犯行現場が映ってたとして俺はなんていうつもりだったんだ? それこそ金田一や江戸川区のコナン君みたいに糾弾するつもりだったのか? 馬鹿げてる。そんな甲斐性があれば、俺はもっと大物になってる)



                    4



「……黒川さん、話ってなんスか?」


「よお、悪いな業務中に……今、売り場大丈夫そうか?」


「大丈夫とは言いにくい状況ですけど…まあ、お客様対応も大切な業務のうちですからね」


「うん、そんでな。 この前お前が先輩と話してたCD売りに来てたマブい娘(死語)……いたろ?」


「はい、あのへんな客っすよね。 監視カメラなんて見てるってことはなんか万引きしてたんですか?あの客」


見事なまでの白々しい反応。もしかすると本当にやっていないとすら黒川は思えた。しかし黒川は止まらない。ここで、何が何でも押しきらなくてはいけない。


(俺が仮に10万円自腹で出すとして。こんなもんと凛ちゃんがCDに詰めた10万円が同じ価値なわけがねえ。 俺が取り返さないでどうするんだ……他でもない俺の唯一のファンの、熱い気持ちなんだろうが! 少なくとも俺は、凛ちゃんの前でだけは……大物でなくちゃダメなんだ!根性だせ!)


「………ちげえよ。売る予定だったCDの中に入ってた金がなくなったんだってよ。それを盗ったやつを炙り出してんの」


「………盗んだって、そんなことスタッフにしかできないじゃないですか……」


「あの時、買取してたのお前だろ? なんか心当たりとかある?」


「…………疑ってんすか?」


「そうじゃねえよ。 でもそう考えるしかねえだろ? 少なくともそう思われてんだよ」


意図的にぼかしているが、ここで疑っているのは黒川が後輩を、である。たとえ10万円を取り返すためでも凛についてあることないこと言いたくはない。


「いや、いやいや! 明らかにあん時、怪しい動きしてたのは黒川さんの方じゃないですか。 CDで指切ったって明らかに無理があるでしょ」


「不審だったのは認めるけど俺はやってねえんだからしょうがねえだろ? 仮に俺が犯人だとすれば電話を受けても、こうやってまともに対応するわけねえだろ」


「……ていうか、こんなこともっと大事にしなくちゃでしょ!……店長呼ぶから待っててください」


「めんどくさいから単刀直入に言うけどさ……店長呼んで困るのはお互い様じゃねえか? こうやって内内で解決しようぜ?」


お互い様というのは、監視カメラを見る限り明らかに怪しいのは、というか何か物をパチクっているのは黒川の方であることだ。映像なんて本当に当てにならないな、と黒川は苦笑する。


「めんどくさいって……いや、もしかして黒川さん、なんか担がれてるんじゃないですか?冷静に考えてCDの中に10万円なんか入れるわけないでしょ!」


「………俺、盗まれてる金額言ってないんだけど……何で10万円って知ってんだ?」


「え、言ってたでしょ?」


「あれ、言ってたっけ?」


黒川が切り札のつもりで放った一撃があっさり破れる。実際、黒川は金額までは話してないのだが、あまりにも一瞬で返されたため普通に流されてしまった。つくづく探偵には向いていない。ただ少なくともこの後輩が犯人であることは間違いないようだ。


「……言ってねえと思うけどな…。 まあ、ぶっちゃけ俺も大事にはしたくない。けど正直、一番に疑われるのは俺だし、話はつけて10万円落ちてた体で返して終わりにしようや」


「!! そうか、あ~そっか! ようやく何が言いたいかわかりましたよ! 口止めっすね!俺の!でも、それだと話が逆じゃないですか!…今の黒川さんの言い方、真に受けるちゃうとゆすりみたいになっちゃいますよ! 10万円は黒川さんが払わないと! 盗んだことは言いませんから!」


「………あんま舐めてんじゃねえぞ」


「…………………………………………………………………………」


「ゆすってんじゃねえよ………情けかけてやってんだよ? 分かってんのか?それとも新しいバイト先探すか?」


「………さっきから俺が盗んだって言いますけど、証拠はあるんスか? 『俺はやってないから』は無しっすよ?」


「スマホ持ってるか? 出せ」


「は? まあ、持ってますけど」


「お前、キャッシュカード何使ってる? まあなんでもいいや。 お前の使ってる銀行のサイトから入出金確認しろ」


「え?」


「お前普段、ダイエットとか言って休憩中もコンビニになんか行かねえじゃねえか。 それを何で昨日は行ってんだよ。10万円入金するためだろ? 違うか?」


昨日後輩がコンビニに行っていたのは凛を目撃していることで分かる。他でもないこの男自身が言ったことだ。


「もし、お前の口座に昨日のお前が休憩してた時間で10万円の入金があったら、今度は白切らせねえからな?」


「………………本当に誰にも言わないでくれるんですか?」


(勝った)と黒川は安堵する。もし、現金のまま持っていたり、既にパーッと使われでもしてたら詰んでいた。いや、他にもスマートな暴き方があるかもしれないが少なくとも黒川には思いつかなかった。


「さっきも言ったけど、別にお前をどうこうしたいわけじゃねえよ。ただ10万円は返してもらうぞ」


「内密にはできないでしょ……。店長経由せずにどうやって客に金を返すんですか?」


「それは問題ねえよ」


「?」


「あれは俺の金だからな」




                     5



バイトが終わり、黒川は何となくコンビニに寄ってみた。イートインコーナーには凛はおろか、のんべえのおっさんの姿すらなかったが、取り合えずから揚げを買って座る。そしてスマホを耳にあてる。電話は来ていない。怪しまれずU星人と話すためのフェイクである。


「お見事、途中かなり怪しいところもあったが、何とか10万円を奪還できたようだな」


「白を切るのがうますぎるんだよ……まあ、俺が怪しすぎたってのもあると思うけど」


「金を返せば終わりみたいな顔してたのも大した肝っ玉だったな」


「あいつ……多分、盗癖があるんだろうな……今まで5000円とか3000円とかレジの金が合わなくて探してたことが何回かあったけど、あれもあいつが盗んでたのかも」


「店長か警察に突き出した方がいいんじゃないか?」


「そうかもだけど、めんどくせえからいいよ。 どっちみちもうバイトはやめるだろ」


「キミが? それともあいつが?」


「どっちも! でもあいつの方が先だろうな」


「何だやめるのか、まあいつもあんな面白い事件が起きるわけではなさそうだしな……」


「まあ、民度低いから割と事件は起きるけどな」


「それはそうと『俺の金』なんて言ってたが、ひょっとして返さないつもりか?」


「返すに決まってんだろ」


凛にはもう明日にアポを取っているが、金を渡すことは伝えていない。


「金を返すのはいいが、それはキミらの星で言うところの告白を振るって奴じゃないのか?」


「告白じゃねえだろ、別に」


「気持ちを返すんだろ? それは十分彼女を裏切っていると考えるのは私だけかな?」


「………金に困ってんだろ? ていうかこれから先少しでも金は必要なんだ! だったら俺なんかに使うんじゃなくてもっと、こう、親から隠して、服とかCDとか漫画とか、もっとなんか、あるだろ!」


「私は何ともいわないさ…。撮りたいのはキミの物語さ」

「でも、キミは少し自分に正直じゃなさすぎるように見える。 番組の制作者ではなく一人のビジネスパートナーとしてキミにもっと、自信を持って行動してほしいのさ」


「言いたいことは分かるよ……でも、星畑が言ってた通り、無責任なことは言えねえさ」


「星畑は彼女がどんなタイプか分からないとも言っていた……キミはどうだ?」

「彼女と会って、彼女と別れて、そのどちらでもキミは彼女と対面していたじゃないか。 彼女の気持ちは掴めなさそうか? キミと彼女はとても波長が合ってるように見えたぞ、キミも須田にただのファン以上の関係を抱いたんじゃないのか?」


「………………………………………………」


『思い残すことはあったかもしれないけど………少なくとも、かけがえのない時間にはなりました」

『またいつか、借金なんかすぐに返しちゃって……自由になって……その時は、また、まだ、まだ、………会っでくだざい……』


「そうだよな。なんも…意味も解らねえ理由で、自分の人生ぶった切られるなんて…たまったもんじゃねえよな」


「何か決心はしたのか?」


「決心じゃねえよ。 期待だ。 俺にできるのはあくまで………………交渉だけだ」




                       6



黒川が家に帰ってすぐに、当たり前のように星畑が泊りに来た。身一つでバイト終わりにやって来たのだ。お目当てのモデルは来なかったが、相当酒をいただいたようでえらく陽気だった。黒川が明日凛に会うことを伝えると、金の入った封筒を渡して俺の分も頼むと言う。自分で渡せと突っ返すが星畑は俺が行ったら邪魔だろと聞かない。おそらく色々と察せられているようである。


(そういう特別な気があるわけじゃないんだけどな……いや、無いんだろうか?…よく分からん)


色々と複雑な心境の黒川だったが、とりあえず金を受け取った。その後、ふざけて渡してきた例のコンドームを突っぱねたところ「ンフフ」と笑ってとりあえず星畑は眠りについた。


(凛ちゃんをチームに誘う事言えなかったな…。 まあ歓迎はするって言ってたしいいか)


妙に興奮して寝付けないかとも思ったが、バイト中の疲れがどっと出たのかあっさり眠りに就くことができた。


翌日、約束の時間の実に3時間も前に黒川は待ち合わせ場所に到着する。上手く言えないが自分も彼女を待ってみたかったのである。ところが、既に凛は持ち場についていた。一昨日と同じようなラフな格好だが、網のようなジャケットを羽織っている。相変わらず派手な髪の上には同じく派手な刺繍が付いた紺色のキャップをかぶっている。ズボンは少しダボついたダメージジーンズだ。やっぱりどことなく攻めたファッションに苦笑しながら、黒川も彼女と同じベントに座る。


「え!? あ! ああ、あ、は、早いですね。 び、びっくりした………」


「こっちのセリフだよ」と言いながら笑う。予定の、実に3時間も前に待ち合わせてしまった。


「え………えと、その、お話と、いうのは…………?」


「うん、あの、質問を質問で返して悪いんだけどさ……凛ちゃんは将来の夢とかってあるの?」


「………夢、夢は……へへへ、ないっ!ですね!えへへ……すいません」


相も変わらず卑屈っぽく笑う。


「ごめんなさい……この前は、愚痴っぽくなっちゃって………でも、私、こんな感じの…薄っぺらい女ですから、へへへ。 だから……いいんです。気にしないでください」


「……俺は気にするよ。 ていうか気にしたいよ」


「でも、でも、私、何にもないんで……それなら……さっさと、働いたらいいんです。思った通りいつまでも…のんべんだらりん……生きていけるわけでも……ないですし」


「夢持ってる奴が偉いとか、何にもポリシーない奴はさっさと働いた方がいいってのは違うだろ。 凛ちゃんだってそう思ったから、親御さんの反対押し切ってまで大学行って、ブランク作ろうとしたんじゃないの?」


「……………すいません」


「あ! あ~駄目だな、分かってる面だけはしねえって決めてたのに、説教じみたこと言っちゃった」


「いえ…………おっしゃる通りです。 今だって連絡先……断ってまで……」


「いや、違うんだよ! 今回は俺の希望だけを持って来たんだ。凛ちゃんの事情を無理に汲もうなんて生意気なことはしないつもりだったんだよ!」


「黒川さんの………希望……ですか?」


「そう! 希望! 俺の! したいこと! 単純に!」


言いながら黒川は封筒を渡す。市販の茶封筒に「契約金」と書いてある。


「契約金……?」


「20万入ってる! 一つは俺にくれた10万円! もう一つは、俺のポケットマネー! これで、今朝話してた番組の演者になってくれない……でしょうか!」


「……………?……え………え、え、ええええええええ!」

「う、受け取れません!返します!そもそも、これは返さなくていいって言ったじゃないですかぁ!」


「俺の金なら別に俺がどう使ったっていいだろ! じゃあやっぱどっちも俺のポケットマネーだ!」


「でも、でも、家帰らないと……番組、できない………」


「俺は帰らないで一緒に番組やって欲しい!」


「ええ! でもぉ でもぉ………私、素人だし」


「俺もド素人だ! だから大丈夫!!」


「宇宙の人気者なんですよね? 私、宇宙なんてスケール大きすぎて…………」


「大きすぎて逆に大丈夫だろ!? 絶対に俺が損させないから……損させないように頑張るから……」


「何でそんなに私に………私……何にもできませんよ? アホだし……芸もないし…」


「俺もアホだし、芸なんて誰も必要としてねえよ!」


「借金……私もいくらかどうかなんて分かりませんけど………簡単に返せるような額じゃないですよ?」


「凛ちゃんが返す必要ないだろ? 金の事はとりあえず置いとけ、は無責任すぎるか。じゃあ俺!……じゃない宇宙人に任せとけ!」


「…………えへへ、へへっへへへへへへへフフフフ……アハハハハハハハハハハ!!」

「なんで……なんでそんなに……自信満々なんですかぁ? もうッ…ウフフフフ」


何かが吹っ切れたように凛が笑う。押し付け合いでくちゃくちゃになった封筒をぎゅっと抱きしめ、また含み笑い。その様子を見て、黒川も自然と笑いがこぼれる。


「自信なんて……どこにもないよ。でもさ、どこにも、何にもなくても、自暴自棄でも、無責任でも、ちょっとくらい自分勝手に生きても、大真面目にやってさえいりゃバチは当たんねえじゃねえかな?」


「……………大真面目に……宇宙人とテレビ……」


「そう! だって俺らが初だぜ!こんなこと!正真正銘!初めての偉業だ!こんなすげえことを地球にも宇宙にも秘密でやるんだぜ!失敗するリスクだって大いにある!だから、全然、断ってくれてもいいんだぜ?そん時は友達として相談役くらいにはなるよ。 お金は返してもらうけど……」


だんだんクールダウンしてきてしまうも何とか言い切り、凛の目を見る。オドオドした様子は変わらずだが、心なしかはにかんでいるような気がする。


「返しません………このお金はもう私のです!」


言いながら封筒からお札を抜き出す。ひい、ふう、みいと取り出したお金を黒川に突き出す。


「これ、じゅ,10万円! 私からの……えっと、違うな……そうだ!私のかけ金!……です!」


「かけ金?」


「私、やるなら精一杯、お二人のフォローに入ります! 私だけお金をもらって、借金も肩代わりしてもらうなんて絶対に嫌です!! ちゃんと自分で稼いで、自分でお金を送ります!お母さんにもお父さんにも何にも口出しはさせません!………だから、だから~その……」

「………私なんかで本当に良ければ……ご一緒させてください……あの、よろしくお願いします!」


「はい………はい!こちらこそ喜んで、よろしくお願いします!!」


「一緒に大山当てましょうね!えへへへへへへへへへ」


しばらく二人は互いに10万円を握ったまま、へへへへと笑い合う。通勤中のサラリーマンの視線を集めていることにも気づかず、ただ、10万円を取り返した時の比ではない程の達成感を感じていた。




























 





あれだけ放り込むことに自分本位な充足感を感じていた「分かる人には分かる細かいネタ」が今回はほとんどゼロに等しいです。ですが、その分、初めて物語らしい展開を書けたような気がします。引き続き女性キャラクターにスポットライトがあたる次回も是非読んでいただけたら幸いです。

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