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この甘くない世界でこれからやっていくわけなんだけど  作者: 破廉恥
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ
29/60

その②「烏龍ハイ烏龍ハイ爽やかに酔えコト」

・登場人物紹介

黒川響くろかわ ひびき 性別:男 年齢:20歳 誕生日:6/25 職業:大学生

本作の主人公。抜群の歌唱力を持つが、機械を通した瞬間に不協和音に早変わりする不幸な歌い手。歌手としての道はすっかり諦めているものの、集ったメンバーたちとの心躍る日々を守る為、宇宙人のカメラ役をこなす。本人にいまいち自覚はないが、一応リーダー。

☆おつまみと言えばスルメ。ただし本当はご飯で食べるのが一番好き。


星畑恒輝ほしはた こうき 性別:男 年齢:21歳 誕生日:4/4 職業:お笑い芸人

黒川の高校からの友達。高卒でお笑い芸人の道を選びめでたく地下芸人へ。見る人が見れば割と悲惨な生活を送っているが、本人は至って楽しげ。ルックスがよく、よく気が利く上に、根明のためよくモテそうなものだが、とにかく絡みにくい本人の性格が仇になり全くモテない。

☆おつまみと言えば板わさ。ただし本当はジュースみたいな甘い酒を当て抜きで飲みたい。


須田凛すだ りん 性別:女 年齢:19歳 誕生日:5/25 職業:大学生

男受けしそうな見た目と性格を併せ持った少女。黒川の歌(動画越し)に感動し、星畑のライブを出待ちし、姫月に憧れながら、天知に焦がれるちょっと変わった趣向を持つ。派手なファッションとは裏腹に人見知りで気が弱いが、推しの事となると見境が無くなり暴走気味になる。

☆おつまみと言えばフライドポテト。ただし本当はハンバーガーにはさんで食べるのが至高。


姫月恵美子ひめづき えみこ 性別:女 年齢:20歳 誕生日:10/3 職業:無職

スラリとしてスレンダーな見た目に長い足、艶の良い黒髪とまさに絶世の美女。性格は非常に難があるが、悪いというより思ったことをすぐ口に出すタイプ。一言で言うなら唯我独尊。自信たっぷりで自分大好き人間だが、イケメンも好き。ただしどんなイケメンよりも自分の方が好き。

☆おつまみと言えばキャビア。ただし見栄で言ってるだけで本当は明太子の方が好き。


天知九あまち きゅう 性別:男 年齢:42歳 誕生日:3/3 職業:無職

元、スーツアクター兼スタントマン。家を追い出され新たな仲間たちに重宝されながらスローライフを送るおっさん。高身長で、物腰柔らかく、頼りになり、清潔感も教養も併せ持つまさに理想の紳士。黒川への恩義だけで入ったが、正直42歳がやっていけるのか不安でしょうがない。

☆おつまみと言えば焼き鳥。ただし串から抜いて食べる派。


岩下陽菜いわした ひな 性別:女 年齢:9歳 誕生日:3/20 職業:小学生

女優一家の次女で子役。年齢を感じさせない演技とその可愛らしさから天才子役と称されていたが、家族や友人と遊ぶことを優先する為、子役業から一時手を引いている。年齢の割に落ち着きがあって肝も据わっているが、子どもらしい無邪気さも併せ持つ。怪談やオカルトが好き。

☆おつまみと言えば枝豆。ただし将来、これだけで満足できるとは到底思えない。


こんにちは。今回は登場人物(しかも新顔)が多く、結果的にセリフパートの大半が名前付きです。見やすい、見にくいいくらでもご意見ください。あと、今回は結構早足で書いたので、内容も分かりにくいかもしれません。不備あれば教えてくれると嬉しいです。

1




「コンパに行く前にお前らに頼みたいことがあるんだけどさ………」


 東河原駅前の公園にて、黒川ら3人が今回のコンパの主催者である佐田真一を待っていると、唐突に星畑が口を開く。


「………行く前にって言うか、もう行ってんだけど………何だよ?」


「ど、どうかしたんですか?星君?」


「………俺が3杯目のレモンサワーを飲み始めたら、どんな方法でもいいから止めて欲しい」


「ええ?お前ってそんな酒弱かったっけ?まあ、すぐに酔うタイプなのは知ってるけど」


「………俺は酒以上に場の雰囲気に酔うタイプなんだよ。知らねえ奴がいて、なおかつ居酒屋だとタガが外れて暴走しかねん。俺が今までの経験から推測した……許容できるアルコール摂取量は2杯までだ」


「一昨日、散々酒の注意を促してたあたりから何となく察してたけど………お前、何かやらかした覚えでもあんの?」


「…………俺は全く記憶にねえんだけど………何でも暴露して、何でもあげて、何でも奢るタイプになるらしい」


「お、お酒でよく聞くやらかしの全てじゃないですか!?」


「………うん。マジで冨井副部長の二の舞を踏みかねんくらいの酒乱……かもしれないからな俺…悪いけど……ある程度、気をやってくれ」


「まあ、そんな注文しなかったら良いんだろ?何だったらお前は下戸ってことにしたら……」


「アホ!……せっかくのタダ飲みのチャンスを棒に振ってたまるか!!」


「そういうけち臭いこと言ってるから悪酔いするんじゃねえの?」


 珍しく弱みを見せた星畑をからかっていると、黒川のスマホに佐田からメッセージが届く。どうも近くについて、黒川らを見つけたが、何やら盛り上がっているので輪に入りにくいようである。本当にすぐ近くの柱の陰に居た佐田をエスコートしてやりにいく。


「黒ちゃん!お前、どういう人脈だよ!」


「何だよ。出会いがしら早々……」


「何で、あんな朴念仁ぶってるくせに……あんな顔の良い知人がいるんだって聞いてんだよ!?」


「………朴念仁ぶってるわけじゃねえけど……男の方は高校からの友達で、女子の方は……え~っと…何て言ったらいいんだろ?………SNSで知り合った友達で、共通の趣味だから仲良くなれたって感じかな……あ!そうそう、彼女、今日成人ほやほやだから!無理にお酒進めたりしないでよ!?」


「え?今日誕生日ってこと?ホント、何で来てくれたんだよ………そっか、共通の趣味ねえ……俺も何かマッチングアプリした方がいいのかなぁ」


「………少なくとも今日、気になる女子とマッチングするんだろうが……まあ、いいや。行こうよ。店知ってんのお前だけなんだからさ」


 とにかく、佐田と面の良い男女を対面させる。佐田に言われたことで余計に意識してしまい、黒川にもどえらいイケメンとべっぴんに見えてくるから困る。二人に自己紹介をしている佐田に関しても、星畑以上に背が高かったことを初めて知り、いつもよりスタイリッシュに見える。


(もしかしなくても………この中で一番パッとしないのは俺だな……)


「………それで、黒ちゃんに頼んで飲み会に誘ってもらったんだけど……まさかこんな急に来てくれるなんて思わなくってさぁ……しかも須田さんに関しては今日バースデイガールなんでしょ?」


「……………あい」


 自己紹介の結果、心配していたほど相手が陽の者でないことに気付いた佐田がフレンドリーに喋りかける。が、反面、そんな佐田を圧倒的陽の者認定してしまった凛は、真っ黒なポシェットに縋り付きながら、か細い声で応対している。そんな彼女がいつもより一回りほど小さく見え、失礼ながら親近感を覚えてしまう黒川である。


「ンフフ……お前、友達に黒ちゃんって呼ばれてんのかよ」


「呼んでるのこいつだけだよ」


「そもそも、黒ちゃん。そのこいつ以外に友達って呼べる奴大学内に居ないじゃん」


「…………いいんだよ。大学なんてそもそも、全然通わないんだし」


「………大学云々以前に意識が低すぎるんだよ!何、そのどこにでも売ってそうな白Tは!?髪の毛も何もセットしてないでしょ?」


「うるせえなあ……お前だって雑誌の受け売りみたいなモン着てるじゃねえか。何だそのハリーポッターみたいな上着は!量産型め!」


「いいんだよ。俺は身長あるもん!そこらへんの全く似合ってないのにやってる奴とは違うからな!」


 悔し紛れに毒を吐いてみた黒川だが、確かに様になっている。というか、若干縦に長い顔以外は、まさにモデルのような着こなしっぷりである。


「ク、クロカワサンハコレデイインデシュヨ」


「……え?……何、どうしたの?須田さん?」


「アッ、ナンデモ、ヒヒヒ」


(多分、俺を庇おうと思ってくれたんだろうなあ……いいのに、事実なんだから)


「俺も、先輩にもらったやつ適当に着てるだけだぜ?」


「いいのいいの。星ちゃんは顔が良いんだから」


「何じゃそりゃ……基準ガバガバかよ」


「………ホシチャン」


 そんなこんな言っているうちに居酒屋につく。予約していたらしく、するすると座席まで案内される。どうも女子側の2人はまだ来ていないようで、佐田が慌ただしく、スマホを耳に当てながら場所の確認のため、一旦居酒屋を出る。予期せずして、身内だけの時間が訪れた。


「………だ、大丈夫そう?凛ちゃん?」


「……う、うへええへへええ……へ、平気です……黒川さんのご友人って聞いてましたから…もっと、こう、寡黙な雰囲気の方をイメージしていたので……ギャップに少々やられてしまいました」


「……俺のイメージどうなってるの?」


「…………一発目に鯖の胡麻和えって有りか無しかどっちだと思う?」


「さ、さあ?」


「ああ~~……ごめんごめん!今、みんな来たから!ゴメン……ちょっと詰めて詰めて!」


「あ、はい!……すいません、あ、どうも……今日はよろしく……」


 謝ったり挨拶をしたり、忙しなく席を移動する。役者がそろった。ギラギラに着飾ったのが登場するかと思ったが、出てきた女子は2人とも、いたって大人しい服装である。一人は涙袋の大きな、太っているわけではないが、どことなく丸みを帯びた印象の女性である。いきなり注目するところではないかもしれないが、凛以上に見事なモノを二つ、胸に装備している。巨乳好きの佐田が狙っているという女子と見てまず間違いない。確かに人懐っこそうというよりは、温かみのある笑顔で、人となりの良さが滲み出ているようである。そしてもう一人。若干忘れていたが、今回の主題であるトラブルメイカー、殿川純名である。成程、そのご尊顔は、確かに動画でちらりと見た横顔と一致する。しかし、動画の中の険しい顔とは反対に、知的なというかクールな、大人な雰囲気で、姫月の面影を感じる。顔立ちは姫月の方が整っているが、性格のキツさが顔に出ている彼女よりも、柔らかみがあった。


 狙ったのか否かは分からないが、席は丁度、男子と女子が3人ずつ対面する形になった。黒川は星畑と、佐田に挟まれ、正面には同じく、2人の初対面女子に挟まれ縮こまっている凛がいる。何で詰めていたのに真ん中に来ているのかは謎である。


「勝美麗到着で~す!(^^)遅れてごめんなさ~い!(><)」


「もう何か注文してる?まだ?」


「いんにゃ、まだ」


「………えっと、まず飲み物からだよな?」


「俺レモンサワー……あ、星ちゃんも?女性陣は?須田さんはお酒じゃない方がいい?」


「ア、ダイジョブデス」


 見た目通りふにゃふにゃした喋り方の佐田が狙っている女子、勝美と、早くも周囲を気遣うできる女っぽい殿川。そしてこれまた想定通り、初対面の女性相手に全く動じない星畑と、事務的な会話に逃げて事なきを得ようとする黒川。佐田の回しの元、アルコールの注文が済み、とにもかくにも、コンパが遂に開戦してしまう。


                      2


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


席順

佐田 黒川 星畑


勝美 須田 殿川


※以下、ほとんどセリフです。曖昧さ回避のため、セリフの前に名前をつけます。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


佐田「ええ~っと………とりま自己紹介からする?初対面多いし……」


黒川「あ……うん……誰から行く?」


星畑「星畑恒輝!21歳!好きなものはチョコレート!言われてみたい言葉は『やってそう』」


黒川「………どういう観点で言われてみたいんだよそれ」


殿川「コンパの自己紹介で好きなものチョコレートって言う男子初めて見たかも……」


勝美「ねえねえ……星畑くんって佐田くんとおんなじ大学なの?(・o・)」


星畑「違うぜ!俺、売れてねえ地下芸人!」


勝美「やってそ~!( ´∀` )」


殿川「いや、そこで言うのは失礼でしょ………」


佐田「え!?大学行かずに芸人やってんの!?マジで!?」


黒川「売れてねえ地下芸人って負けた敗北者みたいな言い回しだよな」


凛「ウヘヘヘヘ」


佐田「すっげえ~……初めて会ったよそんな奴……おもしろ……」


星畑「そうか?なるだけなら大学入るより簡単だぜ?」


殿川「言い得て妙…」


勝美「モノマネとかできるの?(・ω・)」


星畑「あんま上手くねえけど、婦女暴行罪で捕まってたまことが帰って来た時の『クッキングパパ』の荒岩くらいなら」


黒川「さも原作にそんなエピソードがあったような言い方すんな!」


星畑「…………まこと………飯、できてるぜ」


凛「クヒヒッ」


黒川「情感出すんじゃねえよ」


佐田「ばあちゃんちで再放送見てた俺の思い出壊すなって!」


殿川「ていうか……元ネタが分かんないんだけど」


勝美「今まで刑務所の冷たい飯ばっかり食べてきたまことに何を出してあげたの?(;△;)」


殿川「……広げるんだこのネタ。絶対元ネタ知らないでしょアンタも」


星畑「イタリアン鍋」


黒川「ヒヒヒヒ……第一話の料理じゃん。無駄に熱い展開にすんなよ」


星畑「だって大好物だもん」


佐田「大体好きじゃん!アイツ!主任の作った料理!」


勝美「イタリアン鍋ってどんな料理?(〃゜σ¬゜)」


星畑「何か……鍋にグラタン詰めてた」


黒川「違うだろ?たしかジャガイモやら玉ねぎやら薄く切って層にして、それをチーズと一緒に鍋に入れて火にかけるんだったろ」


佐田「今にして思えば一話飾ったとは思えないくらい簡素な料理だったよな」


黒川「手間暇かからない料理を作るのが売りだろ?あれ」


星畑「ていうか初期は主任も、虹子も忙しすぎだぜ」


黒川「ブラック企業上等みたいな感じだったしな。俺、あれ見て育ったせいで残業って普通にやるもんだと思ってたよ」


殿川「ちょっと……ドラマかアニメか知らないけど、勝手に盛り上がらないでよ!女性陣、置いてけぼりだよ?」


星畑「ドラマにもアニメにもなってるんだよな」


黒川「ぐっさん意外とハマってたよな」


殿川「まだ言うか!誰もついてけないって!」


凛「………………」(←「私は分かりますけど?」みたいな顔をしている)


佐田「ごめんごめん!……次は席順的に黒ちゃんが自己紹介だよな?」


黒川「あ、そっか…えっと、黒川響です。好きなものは音楽と漫画で~……言われてみたい言葉は…」


殿川「え!?その形式固定なの!?」


星畑「好きなモノざっくりしすぎだろ」


黒川「別にいいだろ?ホントなんだから」


勝美「私も漫画ちょ~読むよ!(*´▽`)ノ」


凛「!!」(←ピクンと反応する)


勝美「『ワンピース』とかぁ『ハンターハンター』とかぁ(*≧∇≦)ノ」


凛「………………」(←スン…みたいなリアクションを取る)


黒川「ああ!俺も大体そこらへんかな~読むの!」


星畑「嘘つけお前の好きな漫画『必殺するめ固め』だろうが」


凛「ふへへ」


黒川「いいんだよ!ワンピも好きだし!……ドレスローザの途中まではコミックスだって持ってるし」


勝美「私はチョッパーが仲間になるとこ~Ψ(・ω・ )Ψ」


殿川「よくもまあ、それで読んでるなんて言えたねアンタ………」


店員「お待たせしました~!生2つとレモンサワー2つ!烏龍ハイとカルピスハイで~す!」


佐田「来た来た!これが無いとやっぱやってる感じでねえわ!」


殿川「ありがとうございます。……はい、須田さんがカルピスハイだよね?」


凛「ひゃい……アザマス」


黒川「あ、すんません…烏龍ハイ、俺…」


星畑「佐田。ジャン負け、次、メシ受け取った時のお礼、井上陽水の物まねな」


佐田「うえ~……何でよりにもよって井上陽水なんだよ」


黒川「奥田民生と『ありがとう』って歌うたってるからだろ」


星畑「あんなに感謝する唄っつったら他にねえよ。なあ、須田?」


凛「!!」コクコク


殿川「変な催し開く前に乾杯しようよ」


勝美「じゃあ、星ちゃんが乾杯の音頭とってく~ださい!(・ω・)ノノ”」


星畑「え~……みなさん春先で色々あったでしょうが~……毎日元気に溌剌と、日々を生き抜いて無事!アースマラソン完走を目指しましょう!」


黒川「………それ乾杯じゃなくて寛平じゃねえか?」


「「「「かんぱ~い!!」」」」


勝美「ぶひゃああ!うめえええ!!q(≧ڡ≦*)」


殿川「じゃあ次は佐田くんの自己紹介だよね」


佐田「あ、そっかまだ途中だっけ?」


黒川(俺、まだ言われてみたい言葉いってねえけど……)


佐田「佐田真一…年は20で~……好きなものは海かな~。言われたみたい言葉は『待った?』かなぁ」


勝美「私、勝美麗で~す!21歳!好きなものは音楽を聴くことで~……言われてみたい言葉は『本田翼に似てる』で~す!o(≧ω≦)o」


佐田「あれ?この娘……本田翼に似てない?」


星畑「似てる!似てる!ばっさー8の巨泉2!!」


勝美「ありあと~!o(≧~≦)o」


殿川「今の広い目で見たら割とディスじゃない?」


凛「あにょ………」


勝美「お!ようやく声かけてくれた!(・ω・)ナニナニ!?」


凛「お、音楽って……何聞いてるんですか?」


勝美「ため語でいいよ!(´^ω^`)」


凛「しょ、しょれは……しぇんぱいですし………ふえへへ」


勝美「そっか!敬ってくれてんだ~!ありがと!(*´艸`)」


黒川「それで……何聞いてるの?」


勝美「え~っと……スコット・ジョップリンって知ってる?それ聞いてるの!(*∩∀∩*)」


黒川「ま、まさかのクラシック!」


凛「ア、ソウデスカ………えっと……す、すごいですね?」


勝美「ごめんごめん!知らないよね!?(-.-;)フツーに髭男とかも聞くから!」


殿川「元、吹奏楽部だもんね」


凛「ああう……すいませ」


黒川「凛ちゃん前口ずさんでたよ?ホラ、『エンターテイナー』だよ」


凛「!!……あ!それなら!知ってます!てれててんててんてれててんててん!!」


勝美「そうそう!ヾ(。>v<。)ノ゛*。」


星畑「『スティング』の奴だよな」


佐田「今の須田ちゃんの聞いたら分かったわ!あと、俺も髭男めっちゃ好き!」


黒川「俺も俺も」


星畑「嘘つけ。お前の好きなバンド耳鼻咽喉科だろうがよ」


黒川「好きは好きだけど!別に嘘ではねえってば!」


佐田「次は須田ちゃんだよ!自己紹介!」


凛「は、はい!えっと……須田凛です……20歳ですけど…後輩なので……えと、好きなものは…んと、ホラーとか……です。言われてみたい言葉は『何で殺したんだ!?』……です」


黒川「………殺人衝動でもあるの?」


凛「えっへへへへ」


勝美「私、ホラーダメなんだぁ((+_+))」


殿川「ホラー好きな人に聞いてみたかったんだけど……あれってお化けが好きなの?人が死ぬのが好きなの?」


佐田「単純にストーリーじゃねえの?」


凛「ひ、人が……死ぬって言うか……自分では考えもつかないこととかを平気でやっちゃってるのとかが好き……なんです」


星畑「須田の部屋グロくて入れねえんだよな」


佐田「え!?……部屋入ったことあんの?」


星畑「単なるピザパーチィ。黒川も、他に女子もいたぜ?」


勝美「仲いいんだぁ!3人とも!( *¯ ꒳¯*)」


凛「へへへへ」


殿川「タイプ全く違うのにね……どういう関係なの?」


星畑「俺と黒川は高校からの同級生。須田は俺のファン」


殿川「へえ~……星畑くんのこと好きなんだぁ」


凛「ひゃ、ひゃい!」


殿川「そろそろ何か注文しようよ……何頼む?」


佐田「俺、唐揚げ食いたいな…あと、ポテトとか頼むか!」


勝美「鯖の胡麻和え食べた~い( ^∀^)」


星畑「偉い!俺もバチクソ食いたかった!!」


勝美「マジ~?……結婚する~?(*´艸`)」


黒川(殿川さんの自己紹介できてねえよな?まあ、いいけど)


~数十分後


凛「うへへっへえへへ……それでぇ私ぃ……高校のころ脈ありだった男の人にフラれちゃってぇ」


黒川「学校でマカオとジョマって仇名付けられたんだよな」


勝美「でもさぁ勝手に買ったならともかく、一緒に選んだんでしょ? それって男がひどくない!?(๑`н´๑)」


佐田「服装にこだわりがない奴に限って人の評価を著しく気にするもんなんだよな!」


黒川(何故かドキ……)


殿川「ていうか、笑いものにする方もだよね。学生時代のイジリ文化ってホント寒いよね」


凛「………へっへへへへ……私、もともと学校で変人扱いされてましたし……」


星畑「変人なのは間違いないもんな!」


佐田「あ!ひっでぇの!」


勝美「私はそういう人、大好物だからいいけどさ~。凛ちゃん超個性派だもんね~(*>ω<)」


殿川「始めて見たとき若干警戒したもんね。まあすぐにシャイで大人しい子だって分かったけど」


凛「うえ?……そ、そんな威圧感を与えてしまっていたなんて……」


殿川「いいって!いいって!警戒した方が悪いんだからさ!」


星畑「俺、服装の方じゃなくって性格の方のつもりだったんだけどな」


佐田「え?そんな変わってるか?」


凛「か、変わってねえですよ!どこにでもいる糞雑魚モブカタツムリです!」


佐田「変わってたわ」


黒川「凛ちゃん、落ち着いて……ビークールビークール」


星畑「須田の本領は熱くなってからだからな」


勝美「え~!それめっちゃ気になる~!熱くなってよ凛ちゃん!(っ'ヮ'c)」


凛「え、ええ~?………黒川さんどうしましょう?」


黒川「な、何で俺に聞くの?」


勝美「あ、でも…てことはさ……凛ちゃんって一回も付き合ったことないの?」


凛「……あ、は、はい。えへへへへ………女やもめ売れ残りです」


黒川「いや、今が一番の大売り出し時だろ」(←セクハラじみた発言)


勝美「どんまいん!私もめっちゃ処女でい!(´ω` )/」


佐田「ぶほっ!」(←むせた)


星畑「めっちゃホリディみたいに言うなよ」


殿川「………でっかい声で言う事かな男子もいるってのに」


凛「いえ~いめっちゃ処女でい……えへっへへへ」


殿川「こらこら……こいつのペースに乗るなってば」


星畑「酔ってんな須田。良い酔い方だぜ」


黒川「……………………」(←ごっつい気まずそうな顔)


勝美「いいじゃん!別に~!この際、みんなもカミングアウトしようぜい!ヽ(*゜∀゜)ノ」


星畑「第一回性経験白状グランプリ開催!」


凛「あっはははは!!」


勝美「ドンドンパフパフゥ!!♪((o(^∇^)o))♪」


殿川「や~めろっての!」


佐田「え?それ、参加は任意?」


星畑「ンフフフ……それもうゲロってるも同然だぜ?」


佐田(し、素人の場合ってここで言うのは逆に不味いかな?)


星畑(いいんじゃね?……殿川さんも顔は笑ってるし、下ネタNGではないだろ?)


佐田「ええ~っと……一応、あるデス」


勝美「うわ~!!はくじょーものだぁ!(〃≧∀≦)」


凛「あ、あう…………うう」


佐田「ああ!せっかく心を開きかけてくれていた須田ちゃんが!!」


星畑「ンフフフ………童貞にしか心開かねえんだな」


佐田「逆ユニコーン」


殿川「勝手な意見だけど……佐田くんには永遠に心開かなさそう」


凛「ショ、ションナコトハ……すいません」


佐田「………そういう星ちゃんはどうなんだよ!回ししてたら逃げられると思ったら大間違いだぜ!」


星畑「そりゃあもう、雄琴でしっぽりよ」


凛「!!」ガタッ!!


佐田「………素人ってこと?」


星畑「うん。芸人の先輩に……20歳のバースデイだったな」


黒川「………それ一回こっきりだよな」


星畑「一応………本番よりもマッサージの時の方が気持ちいいぜアレ」


殿川「フフフフ……ちょっと男子たちがマジのトーンで語り合ってるんですけどぉ」


勝美「うわ~!生々しいですねえ!!(*/▽\*)」


凛「……ふーぞく……ばってん……一回こっきり…しかも付き合いやけん……よか!うんよかと!問題なか!」


黒川(何かぶつくさ言ってるな……推しの性事情なんて聞きたくなかったんだろうか……まあ、俺も何となく知りたくなかったけど)


殿川「ま、男子の皆様方はそこで猥談でもしててくださいっと……私、お花摘み行きまーす」


勝美「う~い!私も行く~!凛ちゃんも行こ~ぜぇ!こーいう時は群れなきゃソンソン!(*∩∀∩*)」


凛「ひゃ!…は、はい!……ひょ、ひょっとしてこれが幻の連れション……!!」


~女子、一時抜ける


星畑「…………飲み会久々……何か無性に変な気分になってるわ俺」


佐田「おれも、いや、変なこと言ってないかな俺?」


黒川「ていうか……酒飲んでから凛ちゃんが喋る喋る。俺らの心配はどこ吹く風だったな」


星畑「いいことじゃん。まあ、須田が飲めてんのは周りの女子が良さげだったことも大きいだろうけどな」


黒川「そーね。優しい人で良かったよ。個人的にも」


佐田「……前半の反省としては……星ちゃんが勝美さんと打ち解けられてんのに俺がイマイチってところだな」


星畑「……おれ、そういう関係築く気は微塵もないから安心しろよ」


佐田「星ちゃんはその気なくっても!勝美さんは分からんじゃん!自分の顔の良さ舐めちゃいかんぜ」


星畑「俺がイケメンなのは知ってるけど……勝美は何て言うか……ラブなオーラを感じなかったけどな。何か、フツーに友達と飲んでるみたいな感じだった」


黒川「……そうなの?」


佐田「まあ、黒ちゃんたちは俺が一方的に誘っただけだから恋愛とか意識してないと思うけど、あの中で付き合うとしたら誰選ぶよ?」


星畑「見た目だけなら……須田かなぁ」


黒川「それ、本人聞いたら大喜びするだろうな」


星畑「そうか?なんか俺のことはそういう目で見てねえと思うけどな?アイツ」


黒川「んなわけないじゃん。さっきお前が風俗入ってる話聞いてショックそうだったぜ」


佐田「………そういや、須田ちゃんって星ちゃんのファンなんだよな?」


星畑「うん」


黒川「…………結構マジでファンだぜ」


佐田「……それで、星ちゃんと同級生の黒ちゃんが偶然、ネットで凛ちゃんと知り合って仲良くなって、3人つるんで家に行きかいするくらい仲いいってなんか上手くいきすぎじゃねえ?」


星畑「ネット?」


黒川「あ~………ははっは」


星畑「まあ、確かに須田は謎が多いんだよな」


黒川(言われてみれば、自分の推しが、まるであの娘に吸い寄せられたように集まってきたもんな。凛ちゃん自身驚いてたけど)


佐田「…………裏で女子、何の話してるんだろうな?」


黒川「さぁ?凛ちゃんもいるし、そんな変なことは話してないと思うけど」


星畑「それで?黒川」


黒川「何?」


星畑「いや、お前言われてみたい言葉何なんだよ」


黒川「聞くタイミング今じゃねえだろ!?いやまあ、言えてなかったけどさ!でも今では無いだろ!」


佐田「ぎゃははははは!!」


星畑「あと、お前。童貞か否かもはぐらかしたまんまだよな」


佐田「あ!本当だ!ズル!!」


黒川「いや、分かるだろ?……わざわざ聞くまでもないじゃん」


佐田「やっぱ童貞?素人でもない?」


黒川「ない………強制はしないけど、これからはそういうリアルな下ネタ無しで行こうぜ……」


星畑「下ネタになったの勝美のせいだからな?」


 そんな話をしていると、女性陣が帰ってくる。新たに注文をし直し、飲み会の後半戦が始まる。事前に念押ししたのが効果的だったのか、星畑が振る話は、好きな野菜の好きな調理法だったり、ジャガイモは野菜に含むかだったりという、食べ物系のなじみやすい話題が多く、健全に盛り上がった。


勝美「やっぱジャガイモはほっそいほっそいのにして、揚げてやるのが一番でしょ~(ρ`ω´)ρ」


殿川「え~……私もフライドポテト好きだけど~……太い方が美味しくない?」


佐田「俺も肉厚のが好きかなぁ……皮付きだとなお良し!」


星畑「俺もぶっといのが好きだなぁ。皮は向いてる方がいいけど」


黒川(下ネタか否かが分かりにくいラインで突っ込みにくいぜ)


凛「わ、わたしは……カリカリ派です」


勝美「やったぁ~!結婚しようぜい!(⊃´3`)⊃」


凛「クヒヒ……」


佐田「そういやさぁ……話、変わるけど……須田ちゃんって博多出身でしょ?」


凛「へっ!?な、何故それを!?」


佐田「さっき独り言が博多弁だったよ?」


凛「///………あ、え、う……そ、そうでしたか……」


勝美「博多美人だ~!!(*゜∀゜)=3」


凛「び!美人だなんてそんな………」


殿川「へえ~………何でわざわざこんな遠い大学まで来たの?」


凛「え、えっと………ここと、地元のガラが悪すぎる専門学校にしか受からなかったんです……」


勝美「犬大の偏差値の低さはマジで逆ノーベル賞もんだよね~!」


黒川「え?勝美さんも犬大?」


勝美「レイでい~よ!(*^ ^* )V」


黒川「あ、はい……え~っとレイさんも?」


勝美「イエ~ス!!(*^ ^* )V」


凛「あにょ……にゃにがくぶ……でしゅか?」


黒川(何でまた硬くなってんの?)


勝美「社会学部!!(*`∇´*)v 」


凛「ふあえ……い、一緒です……」


勝美「マジで!!何かかぶりあるかな~……あったら一緒に講義受けようぜ!!(*・∀-)☆」


凛「おおおお~~………」(←感動で打ち震えている)


星畑「俺の行ってた専門学校が実質一番偏差値低いだろ?」


黒川「NSCは専門学校ともまた違うだろ……しかもお前そこ中退してるじゃねえか」


佐田「え!?何で!?」


星畑「いや~……コンビ組んでた奴が芸人辞めちゃってさ」


黒川「だからと言って別にフリーにまでならなくていいだろうに……下積みゼロで良く使ってもらえるな」


星畑「先輩には頭が上がらんね」


凛「うへへへへ……圧倒的な人徳のなせる業ですよ」


殿川「おお……ガチファンっぽい意見」


佐田「でもさ、犬大って偏差値ほど大学の雰囲気悪そうじゃないよな」


黒川「この前の文化祭、スリーピースバンドのアフロスタジオ※来てたんだろ?めっちゃ羨ましいわ」

※架空のバンドです


凛「そ、そうですか?あの人たちの音楽って……ありきたりというか、どこかで聞いたことあるというか……その聞いたことある元ネタも大したことないというか……カラオケありきというか、歌詞もZ世代のハッシュタグを張り付けたみたいなうすら寒いのばっかりですし、その癖、尖ってる風の才能あるアピールが鼻につくし……………」


勝美「……………………………………( ゜ロ゜)」


殿川「……………………………………」


佐田「……………………………………」


黒川「……………………………………まあ、凛ちゃんポピュラーすぎる音楽嫌いだもんね」


凛「あ!(察し)………………………ええっと……なんちゃって」


星畑「いや、ごまかせねえよ!!」


勝美「あっはははは!!ヾ(≧∀≦)ノ」


佐田「びっくりした~!!須田ちゃんもそんなはっきりしたこと言うんだ!!」


殿川「ね!!」


凛「す、すいません!本当に……ああ、やっちゃった………お耳汚しを……馬鹿馬鹿馬鹿」


勝美「だ~いじょう~ぶ!!だいじょうぶ!!(*゜▽゜*)」


殿川「うんうん。黒川くんには悪いけど私もああいうフツーのことしか言ってないくせに得意げにしてるアーティスト嫌いだから分かるよ。中学生向きというか」


佐田「俺も黒ちゃんと同じでフツーに好きだけど。でも、別に人それぞれだしなぁ」


黒川「はは…」(俺はあくまで人気のある奴呼べてるのが凄いっていう意味で言っただけなんだけど)


星畑「須田が歌手のことで毒吐くのはいつものことだけど、黒川が好きなバンドをこけ下ろすのは珍しいな」


勝美「? 何で?(。´・ω・)」


殿川「黒川くんのことは別に尊敬してるわけじゃないでしょ?」


凛「そ、そんなことないです!!」


殿川「へ?」


黒川「あ!ああ~……俺ら趣味が合うから……それで結構音楽の好みも似てたんだよ!そういう意味だろ?」


星畑「いや、須田は黒川のこと尊敬してるだろ?趣味が合うって言うかアイツの好きな歌手がお前じゃん」


黒川「うおい!!」


 別に凛と黒川の本当の関係性というか、間柄を秘密にするよう星畑に頼んだわけではなかったが、それでも今までの佐田とのやり取りや空気感で言ってはいけない雰囲気なのは分かるだろう。少なくとも、いつもの星畑なら察知してなおかつ慮ってくれるはずなのだが、今回はむしろ墓穴をボーリングしている。そのため黒川も怒りより先に様子がおかしいという事に意識が行く。星畑の周囲を注意深く観察すると、彼が空けたであろうジョッキが4つほど転がっているのが見える。


(あ!あいつ……3杯どころか4杯も飲んでるじゃねえか!!いつの間に!!全く気が付かなかった!)


 事前に聞いていた話だと、星畑は2杯より多くアルコールを摂取すると場酔いしてしまいやすい体質になり、何かと開放的な性格になってしまうらしい。ただいま絶好調で他人様のことを暴露している。


殿川「え!?どういうこと!?黒川くんって歌手なの!?」


勝美「うっそぉ~!全然見えない!!(;゜ロ゜ノ)ノ」


佐田「………いや、そう言われてみれば………こいつ絶対にカラオケだけは誘っても来ねえんだけど、もしかしてそれってそういうことか!!」


黒川「関係ないわ!!そもそもお前とは飯くらいしか行った事ねえだろうが!!」


凛「あわわ…」(←推しをプレゼンしたい一心と場のフォローをしなければという一心が絶賛格闘中)


星畑「こいつは高校の頃から頑なにカラオケだけはしなかったな」


黒川「お前ちょっと黙れ!!」


殿川「え………その慌てふためきっぷり……もしかしてホントに歌手なの?」


黒川「違うって!!」


星畑「須田よ……お前、黒川は歌手だと思うか?それともただの大学生か?」


凛「グレイト・シンガーです!!」


黒川「違う違う違う違う!!………何そのGTOのやっすいパロディみたいな……」


殿川「…………何か雰囲気的にただのイジリっぽいね」


佐田「…………要するに音痴ってことか。絵の極端に下手な奴を画伯って言うみたいな」


凛「うううう~~~~………」


佐田「え!?須田ちゃん、何で俺に威嚇してるの!?」


勝美「凛ちゃんはそんな回りくどいイジリとかしないと思うけどなぁ……(*´~`)」


黒川「………イジリではないけど……ホントに歌手でもないから」


凛「………歌手です……グレイトなシンガーですぅ!!」


黒川「……ええ~」


凛「…………黒川さんはホントに凄いんですよ?わたし、こんなにいつも言ってるのに……」


 突然、前のめりになっている黒川の服の襟を凛がつまんでくる。何となく艶めかしい行動に喉が小刻みな痙攣を起こす。


凛「…………黒川さんは……宇宙一ですよ。宇宙一パンクでロックでサイケデリックで」


黒川「ちょちょちょちょ………酔いすぎ、酔いすぎ……分かったから…ごめんごめん」


殿川「すっごいラブコール……」


佐田「おいおい……さては嘘ついてたな黒ちゃん。どう考えてもただの趣味の合うだけの間柄じゃねえじゃん」


黒川「嘘ってわけじゃ………ネット経由で知り合ったのはホントだし」


星畑「…………全くよぉ。同じファンでも……明らかに黒川にだけ熱の入れようが違うだろうがよぉ。流石の唐変木星ちゃんもそこは気にするぜ」


殿川「おおっと……こっちは何か訳ありな発言?」


勝美「三角関係ですかねぇ!純ちゃぁ~ん!(*´艸`*)」


黒川「そ、それは……今一番ハマってるのが音楽だからじゃねえの?言っとくけど凛ちゃん滅茶苦茶お前のライブチェックしてるからな!」


 ちなみに今の黒川のセリフを分かりやすく翻訳すると、「寝言を言うな。俺なんざ単に趣味が合ってる知人なだけで、ホントにエンターテイナーとして見てるのはお前の方だっつうの!」である。


凛「こりゃあ!私みたいなカスの為に争わないでください!」


佐田「強気な竹内まりやだ」


殿川「自己評価は低いけどね」


勝美「男の嫉妬は見苦しいぜい!(*`・ω・´)」


黒川「ていうか……凛ちゃんまで急に酔いすぎでしょ!?」


殿川「何かさっきあたふたしながら誰彼の構わずジョッキを飲み干してたよ」


黒川「このおバカ!!」


凛「キャン!!」


佐田「…………お、俺の酒にまで手を付けてるじゃん……か、か、関節キッス……」


星畑「な?こいつ熱くなってからが本領発揮だろ?」


殿川「……熱くなったらお酒に逃げるのは今のうちに直しといたほうが良いよ」


黒川(星畑の酒癖ってテンションそのままで悪ノリのタチの悪さだけが上がるのか。何て面倒な)


凛「ううう~………きもちわるい……」


 黒川に頭をはたかれた拍子に机にぐったりと倒れた凛が呻く。おまけにコプコプと喉を鳴らしている。


殿川「やっば……吐きそうじゃん……ちょっと介抱してくるから……」


凛「すびばべん………」


勝美「ありゃりゃりゃ(;´・ω・`)」


 殿川によって、トイレに連れていかれる半グロッキー状態の凛。


勝美「あははは……何か凄いことになっちゃったね( 。-ω-)」


黒川「マジでごめん……こんな会場を荒らす羽目になっちまうとは」


佐田「いい、いい。はたで見てる分には楽しかったし」


星畑「お前、良い奴だな~……」


佐田「え、そう?……何か星ちゃんにそう言われると嬉しいな」


勝美「で?……わざわざ嘘ついてたっていう凛ちゃんとの関係性を吐きなさい!(*`・ω・´*)」


佐田「そうだ!まあ、歌手ではないってのは分かったけど」


星畑「そ~だそ~だ!」


黒川「星畑てめえ……あとでしばく……本当の関係も何も……昔ちょっと歌うたってた時が合って、凛ちゃんがそれ聞いてファンになったってだけだよ」


佐田「ネット経由で歌ってことは何か動画でも出してたの」


黒川「そう……動画はもう全部消してあるから探しても無駄だぜ?」(←最後の予防線大嘘)


佐田「探さねえよ……興味ないし」


星畑「あ~ん?……あれ、消してたっけ?」


黒川「消しました!!」


勝美「え~!私は見たかったなぁ……(>へ<) 」


佐田「!!……じゃあ、こ、この後、黒ちゃんの歌唱見がてら、二次会でカラオケってのは……」


勝美「凛ちゃんが無事だったらね(*´▽`*)」


星畑「ちべたい!!ちべたい!!」


黒川「氷でも食って酔いを醒ましやがれ!このアンポンタン!」


佐田「星ちゃん酔ってたの?」


勝美「アツくなった方が面白いのはこっちも一緒だね~(*´∀`)」


佐田「でも……何で隠したがったんだよ」


黒川「俺は歌手じゃないし……それにまあ、説明する程の事でもないしさ。変な誤解されたくもないし、隠した方が楽かなって」


佐田「隠したいってこと、須田ちゃんにもちゃんと言っとかないと。人のキモチなんて分からないんだからさ」


黒川「キモチ?」


佐田「だってお前、好きなアーティストが自分はプロでも何でもないって連呼してるの辛いぜ?」


黒川「………え?」


佐田「自分が好きなものを好きなその張本人から否定されるって……すっげえ辛いだろ」


黒川「あ~…………そうかも」


星畑「……まあ、そこはさ。バナナだよバナナ」


黒川「………今度は何の下ネタを挟むつもりだよこの酔っぱらい」


星畑「違う違う。ホレ、何か行ってたじゃん。バナナのレコードの時にさ……このアルバムは売れなかったけど買ったやつは全員バンド始めたって」


黒川「………ああ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコの下りか……それが?」


星畑「……須田も少なからず音楽に触れるんだし、好きなモノを形にするのはそっからでもさ」


黒川「いまいち、言いたいことが分かんないけど」


星畑「だーから!アイツが好きなモノに影響受けて好きなものを作って……そうすればいくらお前が認めなくても、自分の好きは実を結べるって言いたいの!!」


勝目「深いことを言いますなあ(*・▽・*)」


黒川「実を結ぶ……」


星畑「バナナの奴もつまりそう言う事だろ?バナナの奴が凄いってことは、影響を受けて作られた音楽の、そん中からまたゴロゴロ転がってる名作が証明したってことになるんだろうがよ」


佐田「………まあ、バナナ云々のことはよく分からんけど、あんま自分を卑下しすぎるのは須田ちゃんに失礼だぜ?」


 その言葉にハッとする黒川。つい一昨日、プレゼントを拒む凛が天知から言われたことと同じではないか。結局、どこまでも似た者同士だというわけである。


勝美「でも……そ~かなぁ……そこが問題じゃない気がするけど(*゜-゜)」


黒川「へ?」


勝美「あの時の黒川くん……何だか星畑くんにジェラってるように見えたけどな( ´・ω・)」


星畑「こいつ……本当はちゃんと歌手になりたいんだろ。だから形だけでも芸人名乗れてる俺にちょっと意識するところあんじゃねえのかな」


黒川「…………………先にジェラシー燃やしてたのはお前じゃん」


勝美「そこは私からは何とも言えませんなあ(。-∀-)」


星畑「ジェラシーつうか……お前ら見てるとな~んかもどかしいんだよな。互いに変なフィルター貼ってるみたいで」


 黒川はその言葉を受けて、氷を背中に入れたようなぞわりとした恐怖に襲われた。咄嗟に深くは考えないようにした黒川だが、今の言葉に、自分が築いてきた現状の世界を壊すような危なっかしさを感じたのである。都合がいいことに、ケロッとした状態の凛が申し訳なさそうに飲みの席に戻り、この話は終わった。ついでに飲み会も終わり、メンバーはまるっとそのまま、二次会のカラオケに舞台を移すことにした。



                     3



 カラオケボックスに向かう際中、凛は勝美に肩を支えられ、フラフラと危なっかしい二人三脚状態である。倒れそうになると、近くにいる殿川がすかさず救助に入り、わちゃわちゃと盛り上がっている。佐田はその様子を遠からず近からずの距離で、混ざりたそうに見ている。黒川は星畑と、少し離れた後ろをポツポツと歩く。


「黒川、お前、さっきの佐田の言葉気にしてるだろ?」


「え?」


「さっきの、須田のキモチも考えろって下り」


「ああ、まあ」

「…………………そういえば、あんだけズケズケと余計なこと言ってたくせにあん時はすかさず俺をフォローしてくれてたよな。わざわざバナナレコードまで引っ張って」


「……自分の…何て言うか実力?才能?……それが優れてるか否かなんて、やってる本人が一番分からねえし、信じられねえんだよ。ファンから認めてもらってるのと、そこは全く別物だ」


「星畑……」


「これは……自分で何か表現してみないと中々分かんないことだよ。特に、黒川の場合なんか特にそうだろうな」


「………ああ」


「須田もな。今日は酔ってたからあんなこと言ってたけど、心の中ではちゃんとわきまえられてると思うぜ」


「……分かってるよ」


「ただ、アイツがいくら、わきまえてくれてても……単なるファンとアーティストの関係でいるには、今の距離は近すぎるけどな」


「……………………………」


 そこからは一切の会話がなく、カラオケにつく。いざ到着した瞬間、星畑は勇み出るようにテンションを上げてくる。


「言っとくけど、俺、相当な音痴だぜ!」


「私は逆に歌には自身ありま~す!!(*゜▽゜)ノ」


「えへへへへ………人とカラオケ行くの本当に今日が初めてです……」


「へええ~……そりゃまた珍しい」


「ボ、ボッチでしたから……ヒトカラなら腐るほど」


 何とか佐田とも会話できるようになってきた凛がはにかむ。ドリンクバーやらトイレやらあれこれしながらルームにたどり着き、勝美がソファにダイブする。


「ヘイヘイ!!黒川くんはどこでい!!一発盛り上げろーい!!(ノ≧∀≦)ノ」


「く、黒川さんをそんな雑な前座みたいにしないでください!」


「ていうか黒ちゃんがいないけど?」


「あ、あれ?……本当だ。ドリンクバーでしょうか?」


「純ちゃんもいないじゃん(*゜?゜)」


「まあ、トイレかドリンクバーだろ」



                      4



「あ、あれ?………何でみんな来ねえのかな?105号室だよね?」


「ううん。205号室だよ。ルームはこの真上」


「はい?」


 黒川は何故か星畑らがいる正式な部屋の真下に入っていた。一人トイレに抜けていた黒川をこの場所に導いたのは同じく誤った部屋でくつろいでいる殿川である。白い足を宙に浮かしながら、こっそり持ち込んだチューハイの缶を一気に流し込んでいる。


「え?じゃあ、ここに居たらダメじゃん……早く、上に行かないと」


「私は行きたくないなあ~……」


「ええ~っと……何で?」


「疲れちったから」


「ええ~……よ、酔っぱらってるの?」


「酔ってるよ~……体も火照ってます」


「はい……あの、上」


「……火照ってますよ~」


「…………………はい」


「脱がして?」


「はい………え?いや、それは……」


「脱がしてってば」


「いや、ははは……それは」


「脱がして?」


「ふ、服を?……ダ、ダメでしょそれは、凛ちゃんとかに頼まない」


 「と……」と言う黒川の眼前に、いつの間にか靴下まで脱いだ殿川の素足が放り出される。


「じゃあ、履かせて?」


「え?……靴?……」


「うん。まずは靴下……」


「え~……いや、だから……不味いでしょ」


「何がまずいの?」


「え?いや、だって、ほら、えっと……」


「上に行きたいんでしょ?」


「え、あ……うん」


「じゃあ、靴履かせてよ」


「自分でやってよ……」


「履かせて?」


「…………これ、大丈夫な奴なのかよ」


「何が?」


 しばらくこんな不気味なラリーが続く。そう言えば、こいつは地雷女だった。今回だけで10回は見直した男、佐田が確か言っていた。黒川のそんな思考も、艶めかしいイタチごっこに気圧され、遂に屈し靴下を履かせてやることにする。


「………動かないでよ」


「…………ヒヒヒヒ」


「な、何がおかしいんだよ!」


 靴下を片方履くまでは大人しかった彼女だが、片方だけの状態で急に足を上げ立ち上がり、逆にかがんでいた黒川を見下ろす。


「………熱い」


「………え……え!…!?えええ!?」


 アイドルが束になって司会にお辞儀し、ニューシングルの宣伝をしている横で黒川の小さい叫びが響く。無理もない。そこのセンターくらいならなれてしまいそうな整った女が、今、インナーまで脱いで白い肌と黒い下着を晒しているのである。


「な、何!?……何してんだよ!?バ、バカじゃないの!?」


「バカ?」


「………バカって言うか……変だって…服着て服」


「………バカジャ~ンプ」


 突然、ジャンプして黒川の元へ降ってくる殿川。ガタガタとなだれ込むように2人は絡まり、黒川は気づかなかったが、本来触れるべきでない場所に数回触れる。目を開けた黒川の前には、半裸の美女がニヤリと笑ってしがみついている。酔った姫月に抱きしめられている時の凛はこんな感じだったのだろうか。


「………はははは……黒川くんって……さ。さっき何で自分が童貞かどうか言わなかったの?」


「………え、いや、それは」


「……言わなくっても童貞って分かるから?」


「………え、あ、まあ……」


「確かにねえ……童貞臭いもんねぇ……」


「………………」


「じゃあさ……私はどっちだと思う?」


「………え?……」


「処女かどうかって聞いてるの」


「え、いや………処女……じゃ、ないでしょ」


「ピンポ~ン!はははは……まあ、そんなことどうでもいいよね~」


「あの、離れてマジで……何?やってんの?」


「分かんない?」


「………分かん……ない……」


「はははは!!……今、わざと()()()で区切ったっしょ!!」


「そ、そんなわけないだろ!?」


「…………星畑くんはさぁイケメンだけど……な~んか近寄りがたいしぃ…佐田くんは優し~けどありふれてるしぃ……」


「………………何の話だよ」


「ホントに分かんない?」


「………~~!!……だから!」


「S〇X誘ってるんだよ?」


「!!」


「………だからさ……別に付き合ったりとかしなくていいし…しよ?」


「な、なんで?」


「理由聞いちゃう?」


「……いや、だって……急すぎ……」


「…………全部終わったら教えてあげる」


 カラオケのモニターでは、過激な恋愛について熱く歌った歌がお洒落なPVと共に流れている。そのアーティストは、丁度、凛が毛嫌いしていた件のバンドである。



































































































スリーピースでアフロという名前をつけると鶴というバンドを想定してしまうのではと、今更気が付きました。全く関係ないので変更しませんでしたが、鶴ってそう言えば3人編成だったな、ファンクやってるのに3人って凄いなと、改めてリスペクトするいい機会になりました(?)個人的なおすすめのアルバムは『我がまま』です。

それでは次回お会いできるのを楽しみにしております。

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