拾われた今日この頃
気が付くと、まるで二日酔いの様に頭が痛む。
重い瞼を開けて俺は考える。俺は寝てたのだろうか、そう思い、寝る時のことを思い出そうとしたが、記憶が全くない。
パーティーの後、自室で荷物を整理をしていたところまでは覚えているが、パーティーの時に飲んだ酒が原因か。なんにせよ早く起きないと、日光が眩しすぎ……る?
俺はそこで自分の行動に疑問を感じた。
どうして俺は日光を浴びているんだ? てかここ何処だ、何で俺は野原に?
頭痛でうまく頭が回らない、何なら手足も動かない。まるで手足が無いように、重さすら感じない。麻痺状態なのかと思ったが、流石にそこまでは飲んでいないはずだ。
俺が現状を理解しようとしてると、遠くから足音が聞こえてきた。その足音は段々と俺に近づいて、それが若い女性だと分かった。
女性は俺を覗き込む様にしゃがんだ。
それにしても俺は目まで悪くなったようで、女性がとても大きく感じる。いや、俺が小さくなったような視点といった方が正しく、俺の脳はさらに混乱した。
すると、俺を見ていた女性が首を捻り、別の誰かに話しかける。
「貴方見てみて、綺麗な石があるわ」
石? 何を言っているのかと考えた途端、女性は俺を持ち上げる。片手で俺を太陽にかざす女性に、一瞬訳が分からなくなったが、俺を見つめる女性の瞳を見て理解した。
瞳に反射して見えるのは、雲一つない空に太陽、そして────太陽に当たり輝いている赤い宝石だった。
ありえない事だと思う。それでも、賢者と呼ばれた俺の本能が告げている……これは真実だと。
今、彼女が握っている赤い石が自分であり、そのせいで感覚がずれていたのだと。
どうして俺が石になっているのかは分からないが、物に人格を移す魔法が存在するのだから、俺が石になっても不思議じゃない。しかし、それはあくまで自分と同じ人格を複製するだけで、使い手も限られる。俺は使った記憶もないし、そもそも使えない。他人が使おうにも、複製には本人の魔力が必要になってくる。
それにしてもどうして俺を石にしたのか、今は分からないが、いずれ──
「確かに綺麗だねオーラ。だけどどうしてこんなところに? 見たところ石というよりも、宝石に近いと思うのだけど。前に村に来た商人の落とし物にしては、道を外れすぎてるし」
俺が自分について考えていると、男性が俺を見て感想を言う。
確かに今の俺は石というより宝石の方が近い。前に見た錬金術用の宝石にそっくりだ。
男性が石の出所について考えていると、オーラと呼ばれた女性が、男性に話しかける。
「そんなことは別にいいじゃないクォーツ。それよりも貴方これ加工できる? お揃いの結婚指輪にしたいの」
オーラの発言に俺は動揺した。今確かに加工と言ったが、俺の体である石を加工した際に俺がどうなるのかは全く想像できない。
しかし、俺の不安は杞憂に終わる。
「うーん……出来なくはないけど、下手に加工しなくても十分綺麗な形をしているから、首飾りにした方がいいと思うよ」
クォーツの提案にオーラは賛成し、俺の加工は無事なくなった。
しかし、どうして俺は見たり聞いたりできるのだろう? そもそも──
俺の思考は急な眠気に遮られた。段々とぼやけていく視界に、俺はこの先の不安を募らせながら、再び眠りにつく