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覆面狂詩曲 ~白猫を添えて~  作者: 餅鍋牛
大迷宮編
14/26

覆面の女体化と森林

探偵さ


 俺は金級冒険者、汪美創一。

幼馴染で同級生の習字道具を探しに行って、いつの間にか異世界に飛ばされていた。


謎の美少女アイノと金塊に目がくらんでいた俺はこの世界の危険に気が付かなかった。

俺は旅先の村で老人に魔術をかけられ、気づいたときには……


女体化していた。


「誰が頭脳は子供だよ……畜生」


 どうでもいいことを考えて気を紛らわせようとするも現状に対する焦りで一向に落ち着くことが出来ない。


俺は今、村長の家から出て付近の森に来ている。アイノも一緒だが、彼女は俺がいったいどうしてこんな姿になっているのかが理解できていないらしくしばらく放心している。なんか「お父さんって、お母さんなのかな」的なことが聞こえてくるが、きっと気のせいだろう。そこまで精神がやられてしまうほど彼女は弱くない……はず。


 今俺がこの森を歩いているのはわけがある。それには村長の依頼が関係しているのだ。



俺が自分の胸に気が付いたときに、あの爺は俺に舐めまわすような視線を全身に万遍なく向けながら話した。


『ほう、これはなかなか上玉ですなぁ……くく、さぞ驚いていらっしゃるようですが、どうです?女の身体というのも悪くはないでしょう。いやぁそれにしても魅力的な肉体をお持ちだ、ここで私と……』


『それ以上言ったら殺すぞ』


『おやおや恐ろしい、その覆面の下ではオーガのような形相をしたソーイチ殿がいるんでしょうな……うむ、顔が隠れている状態というのもなかなか。おっと失敬、この状況に理解が及んでいないようなので説明してあげましょう。貴女の身体は見ての通り女のものとなっており、そうしたのはこの私です。少しだけ薬学と呪術を嗜んでおりまして、今の貴女の身体は私が好きなように変化させることが出来る。それは肉体の構造も、容姿も、性感帯ですら私の管轄にあるということです』


『……きも』


『そういってられるのも今のうちですよ。貴女はあと半日で余裕などなくなってしまうくらい発情してしまうのだから』


『…説明してもらおうか』


『言葉通りですよ。貴女は今、自分の尊厳を人質に取られているのです。今まで男として生きてきた人間がいきなり女になり、さらに半日経てば私の上に跨るように呪術で縛ってあります。こんな老いぼれに貞操を捧げ自ら喜んで腰を振り、艶っぽい声を一晩中上げる続けるなど……とんでもない屈辱ではないですか?』


『…趣味悪いな、とんだ性癖の持ち主だ……あと、アイノが寝てるからいいけど二度とこの子の前でそういう表現すんなよ』


『その子ですか……いいですねぇ、良い声で鳴きそ……これ以上はやめておきましょうか。きっと貴女は「俺に何をする気だ」とか考えていますね。これから貴女にはその依頼を受けてもらいます。書いてある通り黒爪のモータルという魔獣を討伐して、そこ書いてある討伐証明部位を持ってきてもらうだけで結構です。制限時間は明日の日の出まで、それまで達成が確認できなかった場合は私のもとへ自然と訪れて……あとはわかりますね?』



 あの爺、とんでもない変態だったのだ。呪術と薬学でどうしたらこんな状況を作りだせるのか全く分からないが、少なくとも俺はあの変態を相手にしたくない。というか、普通に男に戻りたい。覆面してるから顔はわからないけどスタイルがおかしいのだ。なんでこんな胸デカいんだよってくらいあるし、なぜかジャージが体のラインを強調してくるせいでどんな視線からでもセクシーにしか見えないっぽい。アッコクが鼻血だしてからわかったのが物凄く悲しいが……

しかも、この体になってから俺の声が完全に女性の者になっている。いつもの高校生らしい少し低めのジマンなボイスが、あっという間に美人な声になってしまった……なんか、悔しい。

 てかあの爺、さっきまで男だった相手になんてこと言ってるんだ。ド変態どころの話じゃないんだが、あれじゃあ性欲モンスターじゃないか!そこら辺の一般中学生にも引けを取らないキモさを感じたぞ……


 こんなことして何が楽しいのかは……まぁあいつの性格に起因することだろうから考えないでおく。俺はとりあえず言われたとおりに討伐依頼をこなせばいいのだ。神話級といきなり戦うってのが難点だが……

 それに、あの爺の話だけでは俺はこの姿を戻してもらえるという保証がない。あいつ、一言も俺が依頼を達成したことを発していないのだ。このままでは確実に俺が自殺する運命にある……どうしたものか、筆の魔法は正直なにを書けば現状を打破できるのかがわからない。何回か試したが、あの紫の液体が俺の身体に全くついてくれないのだ。お手上げである。


「はぁ……どうしよう。絶体絶命の大ピンチだぞこれ……このままじゃ音夢に顔向けできないし、魔王国にも戻りたくない。参ったな」


 そしてタイムリミットだ。なんと明日の日の出までしかない。俺はどうしたらいいんだ……


「…………お父さん、お母さん?」


「ちがうぞ。俺はお父さんであってお母さんでは断じてない!」


「…………よかったぁ。お父さんがお母さんになったらよくわかんなくなっちゃう」


 アイノが目を覚ましてくれたようだ。危うく彼女の頭の中をで父と母のゲシュタルト崩壊させてしまうことになってしまうところだった。

しかし参った。俺だけでなく爺の発言ではおそらくアイノも餌食になる。それだけは絶対に阻止せねばならない……


というか、あの口ぶりじゃあ常習犯だよな。このまま国に突き出せば……いや、無理そうだな。多分そういうのも対策しているはずだ。もし出来たらとっくの昔にこの村の村長は別の人物に代わっている。しかし大人しく従っていたとしても自分とアイノの安全が保障できないという状況だ。アッコクは多分いろいろくぎを刺されている……というかまず、あいつが協力者であることも可能性の一つにある。だとすると俺は人間の国に二度と近寄らなくなる気がするが、あの子悪党で子供たちに優しい男がこの話に関わっていないことを祈りたい。俺が女体化したときは心底驚いたという表情をしていたし、大丈夫だといいのだが……


あの爺が俺にどんなトリックでこんな体にしたのか些か気になるがとりあえずそこはいつかあの爺に吐かせてからということにする。絶対にあの男を後悔させてやる……


「お父さん、これから魔獣倒しに行くの?」


「そうなんだよ。アイノは宿で待つか?今なら間に合うぞ」


「ううん、アイノもいく」


「そうかぁ……なんかやけに気合入ってないか」


 アイノはいつものような「いくいくー!」というような感じのノリではなく、やけに真面目な雰囲気でともに来ると言った。視線を向けて見ると、なにやら不安そうな表情ではあったが、瞳はまっすぐと何かに向かっているように見えた。


「アイノは……アイノはここでなにかをしなきゃいけない気がするの」


「なにか?なにかって、なに?」


「わかんない。でも、アイノはここで何かをしなきゃいけない。何かを見届けなければいけない。何かを……何かを……」


 アイノはそのまま唸って考え込んでしまった。いったいどうしたというのだろう。彼女は少しだけ…少しどころではないけど不思議なところが多々あった。見た目的には六か七歳くらいだというのにいろいろな知識を有しており、しかし一般常識的なところを知らなかったりする。この少女も良く考えるとなにものかもわからない。

少し怖くなってきたが、あまり考えていても仕方がないので思考を中断する。このままではアイノを悪く捉えてしまいそうだし偏見で物事を決めるのはよくない。それに、こんな美少女の謎に恐怖してどうしろというのだ。世の中、知らないほうが身のためだという子ともあるそうだし、俺はあまり深入りしないようにしておこう。いつか必要になったらその時はアイノに直接いろいろと話をしてもらおう。


「まぁ、なにかするんだったら俺も付き合うよ。だけどこんな辺鄙なところでいったい何するんだろうな」


「うーん……なんか、この先に行ったら頭の中にあるなにかに近づけそうなんだけど」


「ほうほう、じゃあ飛ばすかぁ!」


 俺はまっすぐ前にぐんぐん移動していった。木にぶつかりそうにならないか怖くて仕方ないが、甘く見てはいけない。昨日あの雀共と行ったチキンレースで俺は見事逃げ切ったんだぞ?これくらいの操作は俺の指を動かすくらい容易い。

 

 すいーすいーと横によけたり下にしゃがんで枝を避けたりしつつ、俺はアイノがいう「何か」に迎えるように進んでいく。


「おーいアイノ、どうだ?その何かとやらはありそうか?」


 宝探しの気分で俺はアイノに問う。正直、アイノがなにを探しているかというよりアイノがいったいなぜこんな時に電波のようなことを言い出したのかが気になるのだ。どこか天然なところがある彼女だが、何かを見届けるとか言い出したのは初めてだ。これからもしかしたら相当長い付き合いになるかもしれないのだから、今のうちに色々知れるよう経験しておくのも悪くないだろう。


 俺が質問した後、アイノはしばらく考えるように唸っていたが、突然目を大きく見開いて俺に叫んだ。


「それ!止まって!あったよ!」


「うおッ、とと……あれ?なにもないじゃないか」


 アイノがクワッ!!という感じの表情をしたので結構ビビったが、アイノはそんな俺も気にせずに方から降りて走っていく。止まったはいいものの、ここはさっきから自分たちが進んでいるところのどこでもないただの森林地帯だ。アイノが向かう先にも大したものはないし特別何かを感じるわけでもなかった。


 しかし驚いたことに、アイノは走っていったある地点から何かに溶け込むような感じで姿を消していったのだ。

一瞬驚いて向かおうとしたが、こんどなんと空中からアイノの生首だけがこちらを覗き始めた。


「お父さん!こっちきて!ここにアイノの頭の深いところにあったのがある!」


「お、おう……心臓に悪いからそういうことはやめような?」


 なんとも言えない感情になりながらも、俺は恐る恐るアイノが首を出しているところまで進んでいった。


やはり何もない。そこにはただただ森林が広がっている様子が見えるだけだ。しかし、空中に手を伸ばすとそこだけ水に石を投げ入れたときに生じるような波紋が現れ、俺の手はどこかへと消えていく。


 奇妙な感覚だがこの中にアイノが入っていってしまったので怖気づいてはいられない。俺は意を決して全身をその謎の空間へ突っ込む。


 するとそこにあったのは……






「なんだ……これ……」



 先ほどまでいた森ではない全く別の場所。


巨大な石の柱が規則正しく並んでいたり、視線の先には石でできた寺院のようなものがあり、後ろを見てもなにかの残骸のような感じで石造りの建築物が林立している。下を見ても文明を感じさせるようなコンクリートに見えなくもない舗装された地面。


大小さまざまで、誰かが住んでいたような錯覚さえ感じてしまうたくさんの建造物や装飾品は、そのどれもが苔や雑草に覆われ風化している。


 所謂、遺跡というところだった。











なんか遺跡ってワクワクしませんか

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