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覆面狂詩曲 ~白猫を添えて~  作者: 餅鍋牛
大迷宮編
12/26

覆面とマルノー村


痛い、痛い……どうして、ぼくのことをたたくの?みんな、どうして?


いやだ、地下に閉じ込めないで、暗くてじめじめしてて、いやだ……


お父さん、なんで?お母さん、なんで?ぼくを助けてくれないの?


……お腹、すいた。でも、ごはんは誰もくれない。ぼくはどうして生まれてきたんだろう。


『落ちこぼれ』


『出来損ないが、飯など食えると思っているのか』


『なんてできの悪い子、この子を産んだのは間違いだったわ』


『この、屑が』


どうして、ぼくはここまで嫌われているんだろう。だれか、教えてくれないかな。


もう、いやだな。たたかれてたたかれてたたかれて、体中の感覚が、もうないや。


だれか、だれかぼくをここから、出してくれないかな……無理だよね。



「もう……やだよぉ……」



あれ、だれかが泣いてる。


大丈夫?どこか、痛いの?一人じゃないよ?


あれ、目から何かが出てきた。水?なんだかしょっぱいね。



「だれか、助けてよ……」



大丈夫、大丈夫、ぼくがいるよ。泣かないで?あなたはだあれ?……あれ?



「だれか……」



……あぁ、これは、ぼくか。

























 俺は人間が住んでいるっぽい村に降り立った。なんだか寂しい感じの見た目をした村だが、一応文明はしっかりしているらしく木製っぽい材質のお洒落な家がそれなりに建っている。地面はさすがにコンクリートとかはなくて、魔王国の様に石が敷き詰められているようにも見えない。うん、土。

おそらく寂しく見えるのは電柱とか街灯が見当たらないからだと思う。それと、小さな畑がぽつぽつとあるだけなので産業的にも活気も感じられない。本当に村落って感じだ。


 ここで俺に降りかかる問題が二点ほどある。まず一点目。


「な、なんだてめぇ!魔物かぁ!?」


「こ、ここは通さないぞ!」


俺が不審者であること。

よくよく考えればそうである。俺は今真っ黒の布を頭全体に被った赤い服で赤いコートの男だ。しかも大荷物なので盗賊に見えなくもない。

 しかし、この問題は一瞬で解決させることが出来るのだ。てれててってれー、冒険者協会でもらったよくわからんカード~(だみ声)……あ、ランクカードって書いてたわ。ランクカード~(だみ声)。


「き、金級冒険者?!?!?」


「金級!?ど、どうぞどうぞこちらへ!無礼をお許しください冒険者様、ようこそマルノー村へ!」


 粗末な槍でさっきまでこちらを威圧していた門番にしては身軽な男二人は、こちらが金級冒険者であることを知ると驚いた顔をし、すぐに接待モードへと移行していた。この手のひら返しっぷりはすごい、そして金級冒険者ってすごい。小さな村程度なら権力者になれそうな気がしてきた。


 そしてもう一つの問題。


「おや?そこのお嬢さんは……」


そう、アイノだ。

アイノは獣人である。超排他的コミュニティで差別国家が出来上がりがちな人間であるが、おそらくこの国でも例外ではないだろう。ここがなんて国でどのような政策だとか王様がいるだとか全く知らないし、地図にはやはりマルノー村なんてない。古すぎるのも問題である。

 脱線したが、一応この問題も解決済みである。


「かわいいですね、娘さんですかね?」


「おい、滅多なこと言うんじゃねぇ!す、すいません相方が」


サレイノによって選ばれた服を着て可愛さ無限な()()()()()を見て、髪型が残念な門番が鼻を伸ばしている。このロリコンめ……

実は、今のアイノは人間に見えているのだ。

その秘密は、今彼女が頭にかぶっている大きなボンボン付きのニット帽に隠されている。今彼女が来ている服もそうだが、こ赤と黒の柄つきニット帽はサレイノがくれたものだ。昨日までずっとぼろぼろのノースリーブワンピースもどきだったのでサレイノが見かねて選んでくれたのだ!優しい姉が出来てよかったなとアイノに聞いたら満面の笑みだったので、サレイノも大喜びするだろう。


 また脱線したが、このニット帽には俺の筆魔法(仮)によってとある機能が付与されている。

それは、偽装。


これを被ればどんな生物でも人間に見えるのだ!試しに俺のスーツケースに引っ掛けたら、まるでスーツケースに命が宿っているかのような錯覚に陥ったので少々危険だが、アイノが被るには申し分ない性能である。おかげで、この馬鹿二人にはアイノがただの少女にしか見えていないはずだ。

一応、正体を知っている者に対してはあまり」効果を発揮しないようだが、それでも人間だと思えるので結構効力が強い。他にもたくさんの装飾品に色々書いたら俺だけで異常物質の大量生産が出来そうだ。


「泊まれるところ、あるかなぁ?」


「ん~どうだろうな。なぁ、ここって宿泊施設あるか?」


「へっ?あ、あぁありますとも!宿屋まで案内しますね……おい、お前は村長に知らせてこい!」


「お、おう!それではごゆっくりどうぞ」


 さっきまで鼻を伸ばしていた男は村長を呼ぶために走ってどこかへ行ってしまった。まぁロリコンがいなくなって精々したのでいいことにしようか。この世界における金級冒険者は相当貴重なものらしいので、おそらくなにかしらの接触はあるはずだ……だが、俺は堂々としていればいい、そうすれば大抵何とかなる。我々冒険者は国に縛られない生き物なのだ!人質取られたら終わりなんだけどね。


 村を歩いていると魔王国では見なかった虫や草があって面白い。ゴリレオクスに案内してもらっただけなのであの辺の植物や生物に関することはあまり知らないが、それでも気候の違いで生えている植物や生物が随分と変わっているのがわかる。まぁ、そもそもの話だが地球には絶対いないであろう深緑色の変なてんとう虫みたいな未発見の生物や植物とかがわんさかいるので俺にとってはすべてが知らないもので、眺めていて飽きないから面白いだけだ。

 アイノは自分の手に乗っかった青く輝く蝶を見て嬉しそうにしていた。いちいち様子を見るために顔を上に向けるのは結構きついが、こういう和んだ状態のアイノを見るとそんなことも吹っ飛ぶので我慢できる。


「つきました、ここが村一番の宿『コモン』です!」


 どや顔で青年が言う。コモンがこの世界で何を示すのかがわからない以上、俺にとってこの宿屋は面白い名前だったという思いでしか残らないだろう。コモンて……見た目的には、それなりに大きめのちょっとぼろいアパートって感じだ。外壁塗装もしていないむき出しの壁に思えるのは気のせいだろうか……普通の民家に泊めてもらうほうがいい気がしてきた。だってほかの家は木製だけど色塗ってるし。

 なんかガチャで失敗になってしまう気分なのは仕方のないことだろう。もしくは新しくかったカードゲームのパックにレアが一つもなかったみたいな……そこで俺は考えるのをやめた。


案内してくれた青年に礼を言い、俺は宿屋へ入っていく。なんか後ろで「金級冒険者にお礼言われたっ」とか言っているがここまでくると怖いので無視して宿屋の扉を閉める。


「いらっしゃい、おたく冒険者?」


「そうだけど」


 中にはなんか胡散臭そうな顔をしているという偏見百パーセントの感想が出てくる店主っぽい人がカウンターで肘をついてこちらを見ていた。明らかに舐められているけどどうでもいい。これで一泊大金貨とかだったらそこら辺の家に泊めてもらおう。


「階級は?」


「金」


「へぇ……あぁ、一泊大金貨五枚だよ」


「民家に泊めてもらうわ、じゃ」


「え、ちょま」


 なんか追いかけてきたので急いで外に出て宿屋の扉を閉めて戸が開かないように抑える。外側に開く扉なので俺がじっと抑えていればやつもこちらに出てこれまい。

ドンドンドンと、自分の宿の扉を叩いている店主。哀れなやつだ、欲張らなければその残り少ない髪の毛を散らしてしまうほどのストレスを抱え込まなかったのに。というか、一泊大金貨五枚とか家片方が安い宿ってなに?なんなの?


「おい、何で押さえてるんだよ!悪かったよ!ごめんって!おい、いい加減扉から手を放せ!ねぇ!」


「いいよ」


「ってうぉあッ!?急に放すやつがあるか!」


「放せっていうから」


「いやそういう問題じゃ……な、なんだよその目は」


「…………はげてんなーって」


「るせぇッ!!てめぇこちらが下手にでれば調子乗りやがって……あ、まって、そのよくわかんない硬そうなもの振りかぶらないで。申し訳ありませんでした、こちらが悪かったです、冒険者様の足元見ようとしてすいませんでした」


 宿屋の主は怯え始めた。怒ったり焦ったりと忙しい人間ではあるが、面白いのでよしとしよう。謝礼として部屋を無料で貸してもらおうかなーなんて思っていたら、宿屋の主はこちらの思想に気づいたように顔を青くして「それだけは勘弁を」と泣き出した。本当に忙しい人物である。


「お前……泣くくらいならぼったくろうとするなよ、誰だって同じ思考回路になるだろ絶対」


「いや、まぁ、そうですね、はい。すいませんでした」


「へんなひとー」


アイノにまで言われてしまっている。まぁ確かにちょび髭で頭がバーコードで服がダサいから正直変な人にしか見えないので仕方ないと思う。

 

 しかしこの人面白いな。今までこうやってぼったくろうとして生きてきたんだろうけど大抵失敗してそうだし、子悪党どまりって感じである意味大物感がある。きっとこの村の子供たちに「俺は昔特級冒険者だったんだぞ!」とか言って自慢していざ魔獣が現れたらいち早く逃げる人ってタイプだろうきっと。絶対そうだ。


「とりあえず、俺は別の宿に泊まるわ。なんか胡散臭いし」


「この村にはここしか宿がありませんよ?さっきのお詫びに一泊銅貨五枚でいいのでどうでしょう?」


「なんか腹立つ顔するよなぁ……三泊で銅貨五枚なら許してあげるよ」


 どんだけ貧乏なのかは知らないけど宿屋の主がムンクの叫びみたいな顔になった。儲からないなら重労働しとけよ……ずいぶんと貧相な身体つきだから無理かもしれないけどさ。

 しかしこの村には宿がここしかないというのは大問題である。この村から出てしまおうかとも思ったのだがアイノが割と楽しみにしていたのであまりがっかりさせたくない、仕方ないので俺が折れることにした。


「ったく仕方ないなぁ~、銅貨一枚で五泊!」


「悪化してるッ!?」


とりあえず銅貨五枚で二泊に落ち着いた。





「いやぁ先ほどは本当にすいませんでした」


「何回目だよそれ……あ、おかわり」


「おかわりー!」


 俺はコモンで食事をしていた。この宿屋、設備があまりなさそうな感じだったのになんと厨房付きである。そしてこの男……宿屋の主にして料理人アッコクの料理が非常においしい。麻薬でも入れられてるんじゃないあってくらいにはうまい、どれもハイディリッヒの山菜盛に負けてない。そしてアイノがパフェをたくさん食べている。目がジャンキーだ、絶対麻薬は言ってるだろ。


このアッコクという男、気になって聞いてみたら今まで冒険者に対して行ったぼったくりでの儲けが結構あるらしい。一般的な価格としては銅貨十枚が妥当なんだそうだがそれを銀貨十枚とか金貨とかにしても満足して帰るという。アッコク、多分料理のおかげだよ。

 そういうとなんか照れだした。


「い、いやぁ、この村で俺の料理を食べる人は少なくって……」


「まぁ、ぼろいしな」


「仕方ないでしょうッ!ただでさえかつかつなのに食材のためにお金をつぎ込んでるんですよ!」


「おぉ、食材もケチってないのか、そういうのはいいところだな。お前宿屋やめて料理人になったら?」


「なんてこと言うんだ……ソーイチさん、そんなことでは悪党と言われてもしらないですぜ?」


「いや、ぼったくられそうになった店でちゃんと金払って泊まりさらに料理も食ってるんだぞ?聖人君子じゃないか。そして悪党はお前だよ」


食事を終えて、代金を払う。今回はメニュー表通りの値段だった。さすがに懲りたのか、料理人としてのプライドなのか、ぼったくることはなかった。というか、どの料理も安すぎる。宿代ぼったくるならこっちぼったくればいいのに……

 暇になったのでアッコクに部屋を案内してもらい、荷物を部屋に置く。盗まれないか心配だがどうしようもないのでどうにもできない。心配だ。

うんうん唸っているとアッコクが色々教えてくれた。


「別に盗んでも、ここに商人の馬車が来ない限り売ることもできないですよ?こんな辺鄙なところに来るのは大抵下っ端ですし」


 なるほど、ここはそんなに田舎なのか。そう思ったらなんか「田舎ですいませんね」的な目で見られた。一応俺、覆面で顔見えないはずなんだけどね?こいつ特殊能力でも持ってるんだろうか……

とりあえず荷物は置いて行っていいと判断したので部屋に置いておく。この部屋が果たして畳何枚分なのかはわからないが、トイレもあり風呂もあり大きいベッドもあり、まぁそれなりの広さだと思う。

今思えば、科学が恐らく発展していないであろうこの世界ではトイレとか風呂とかどうなっているんだろう。下水とかなさそうだし、なにか魔術で応用しているんだろうか?


 あまり考えていても仕方ないので、折角だしこの村を歩いてみることにした。そう言いだしたらアッコクが案内するとか言い出してきたので行くか迷ったが、反応がいちいち面白かったのでとりあえず一緒に行くことにした。


「ここが私の宿コモンでぇす!」


「はいつぎー」


やっぱおいてきたらよかったかも。つい口に出してしまったのでアッコクがしょんぼりしだした。こいついちいちなんなんだよ、そういうのは美少女がやるのが面白くて可愛いっていう一石二鳥の法則があるんだよ、なんで禿のおっさんがそんな情緒なんだよ!


 村には何もなかった。正確には家があるが、それ以外は畑くらいしかない。よく今まで村として成立してきたなぁと思ってしまうほど清々しいレベルで何もないのだ。村の子供たちは砂を掘っていたり、将来騎士になりたいという子は木剣を振り回していた。平和だ。

アッコクはやはり子供たちに武勇伝を聞かせていたらしく「あ!騎士のおじちゃん!」「魔術師様!」「特級冒険者さんだ!」と、それぞれに言われて汗を流している。こいつ馬鹿だ。


 どう笑ってやろうかと思っていたら、なんと俺をターゲットに向くように仕掛けてきた。


「よぉお前たち!今日は現役の金級冒険者様を連れてきたぞぉ?」


「ほんと!?ねぇ、ランクカード見せて!」

「わぁ!魔術師みたい!肩車してる子はだれ?」

「剣は?剣は使わないの?」


「ちょ、おいアッコクやりやがったな」


「なんのことですかねぇ?さぁ、今日はこの方がおお前たちにいろんな話をしてやるからな!!」


「「「やったー!!」」」


 俺はそれから一時間くらい子供の相手をすることになった。アイノは面白がって子供たちに混ざって一緒に俺の話を聞いているし、アッコクもなんか一緒に興味津々で聞いている。おい!


子供たちは黒髪黒目で髪の長い柔らかい印象の女の子イオ、水色の髪に茶色の瞳のどこかのほほんとしている女の子セリカ、金髪で青い目の幼いのにイケメンな男の子ウォルの三人だ。

イオは将来冒険者になりたいらしく、どうやって冒険者になったのか、武器は何なのか、倒した魔獣などを聞いてくる。セリカは魔術師に憧れていて、どうやったら魔術が使えるのか、どんな魔術があるのか、俺が浮いているのは魔法なのかなどを目を爛々と輝かせて聞いてきた。そしてウォル、この子は騎士になりたいらしい。なんでも……


「イオとセリカを守りたいから!」


だそうだ。この色男め……イオもセリカも嬉しそうだ、が、どっちか一人にしろよ少年、ハーレムとかその年でやってたら俺憤慨するぞ?

 ウォルが知りたい剣の話はさせてやれなかったが、俺は色々と面白おかしく昨日の経験を一時間かけて話し続けた。

正直疲れる、なんでつい先日この世界に来たばかりなのにこの世界の話をせねばならんのだ……


「ねぇねぇ!ゴリラの話また聞きたーい!」

「私は土からつくる龍を見てみたい!」

「僕はナイフで龍を切った人の話を詳しく聞きたいな!」


「ほれほれ、冒険者様が困ってるだろ?そろそろやめてやれ」


「「「「えー?」」」」


 アッコクが「なんでお嬢さんまで?」って顔しているな。安心しろ、俺にもわからん。アイノはこういう性格なのかもしれないな、俺もこの子の親として、アイノのことを知っていかなければ……

 なんとか話を切り上げたかったのだが、やだやだと駄々をこねてくるので、俺は子供たち三人に贈り物をすることにした。幼稚園児がイベントでわがままいうときにこの方法を使うと静かになるっていう謎減少を利用したライフハックだ。生きるうちに使うことは少ないけど……


「よーし、今日はこれで終わりだ。だけど、最後に君らにプレゼントがある」


「やったー!ランクカード?」

「魔術師の杖がいい!」

「僕は聖剣!」


「お、お前ら欲張りだな……残念だがそういうものは渡せない」


「「「えー」」」


「まぁそう残念がるな、保証はできないがきっといいものだから……さて、じゃあまず三人は石を拾ってきてくれ。どんなのでもいいぞ?かっこいい石、可愛い石、自分がいいと思った手のひらに収まる大きさの石を一つだ。さぁもってこーい!」


「「「「わかった!」」」」


「え、アイノも?」


 イオ、セリカ、ウォル、アイノが一斉に散って様々な地面を漁り石探しをしている。果たしてうまくいくかどうかわからないが、この四人にいいものを渡せるといいな……おい、アッコクにはやらんぞ。お前は自分で掴み取れ。


 四人が意志を持ってきた。イオはなんか真っ黒の石、セリカはすべすべした茶色い石、ウォルはごつごつした赤い石、アイノは真っ白の平たい石。アイノとイオの石はこの村のどこにあったのか気になるところだが、とりあえず俺は四人からその石をもらって筆を持つ。スーツケースからあらかじめ出しておいたのだ。

これからやることはただ一つ、この石に願いが叶う効果を付与する。付与って言い方が果たしてあっているかが問題だがまぁいいとして、石に同じ文字を書くのだ。


書く言葉は「如意宝珠」これは持っていたら願いが叶う石とかそんな意味だった気がするので、多分この石もそういうものになるだろう。一応、三人はそれぞれの願いが叶うようにイメージして書いた。アイノの石は、アイノがいったい何を望んでいるかわからなかったのでとりあえず願いが叶うように祈りながら書いておく。それぞれ光が終わった後に渡すと、なんかよくわからないけど喜んでるって感じではしゃいでいた。まぁ光っているときにすでに大はしゃぎしていたので、こうなることは予測出来ていたが……アッコクが物欲しそうな顔でこちらを見ている。お前にはやらん!


「ねぇねぇ、これなーに?」


「ぴかーって、光った!」


「お兄ちゃん!ねぇ!贈り物ってこれ?」


「あぁそうだよ、でも今見た通りこれはただの石の贈り物じゃない……なんと、持っていると願いが叶う石だ!」


「「「おおおー!!!」」」


「さっきの光は三人の願いが叶いますよーにって考えながら俺が魔法をかけたから出てきたんだぞ?」


「じゃ、じゃあ私は冒険者になれる?」


「あぁなれるとも」


「私も、魔術師になれる?」


「もちろん」


「ぼ、僕は騎士になれる?強くなって、二人を守れる?」


「あぁ!だがよく聞け?この石はあくまでもお前たち三人の将来なりたい夢を叶えてくれるんだ。お金のことばかり考えたり、毎日遊びたいとか、そんなことを願ったら石の魔法は解けるようになっている。そして、その石を持っているだけじゃ願いは叶わない。石が願いを叶えてくれるのは、その石を持つ人間がどれだけ頑張ったかで決まるんだ。精一杯頑張らないと、イオは冒険者になれないし、セリカは魔術師になれないし、ウォルは騎士になれず強くもなれず二人も守れないことになる。だから、頑張るんだぞ?」


「うん!わかった!願い叶えるためにがんばろうね!」


「うん、私もいっぱい勉強する!」


「僕も、二人を守るためにいっぱいいっぱいいーっぱい!剣の練習をするよ!」


「そーかそーか、頑張れよ!願いが叶ったらいつか大きくなって俺に自慢しに来いよ?」


「「「うん!」」」


子供たちは嬉しそうに石を持ってはしゃいでいる。落としそうになってイオが大慌てで石を握っているのを見て二人が笑う。仲が良さそうで何よりだ。

もし、書いたとおりに願いが叶うものならヤバいものなんだろうが、俺はしっかりイメージして書いたので三人が悪の道を進もうとしたり途中で頑張らなくなって夢が無くなったりしたら効力は消えるはずだ。 今までこの筆を使ってきて分かったのは、割とイメージが大切ということだ。あまり焦るとイメージがしづらいので、やはり戦闘には向いていない。俺も強くならなければ……


「ねぇ、お父さん」


「うん?どうした」


「これ持ってたら、お願い叶う?」


「あぁ、叶うぞ?だけどアイノが本気で望むものじゃないと願いは叶わないな~」


「そうなんだぁ……よし!アイノもお願い決めた!」


「おぉ、なんの願い?」


「秘密っ!いつかお父さんになったら教えてあげるね!」


 いたずらっぽく笑うアイノはとても可愛かった。水色と白のワンピースと胸に提げてあるダイヤの葉、そして赤と黒のニット帽……ニット帽邪魔では?


 まぁ可愛いしいいか!という答えが導き出され、俺は癒されていた。


 













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