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プロローグ

 父はオカルト好きである。

 例えば、書斎の本棚にビジネス書や哲学書などではなく、

 ム○が整然と並べるような人間が父だ。

 そう、父はちょっと残念な人だ。


 1ヶ月前、私が初めて中学に登校する日、私が目を覚ますと父はもう家にはいなかった。

 単身赴任先に帰ってしまったのだ。

 私は登校日初日という不安なときにそばにいてくれない父を少し恨んだ。

 本当にちょっと残念な人だ。


 けど、父は手作りのお守りをおいていってくれていた。

 オカルト知識をつかっていろいろな呪い(まじない)掛けたとのことだった。

 こんなことで親の役割を少しでも果たしていると思ってそうで、本当に残念な人だ。

 まあ、でも、こういうところは嫌いではない。


 私は登校日、失敗した。少し浮いてしまった。

 友達ができなかった。

 中学になってこっちに転校してきたのはクラスで私だけ。

 もうすでにグループが出来上がっていた。

 父の変なお守りにも気づかれてしまって、ちょっと引いていた気がする。

 

 4月。とくにいじめられるというわけでもないけれど、

 誰か親しい友達ができることもなかった。

 そして、5月。

 私はちょっと引きこもり気味になった。

 ゴールデンウィークが終わっても学校に行きたくなくて、母に仮病をつかった。

 母は分かっているようだけど、まあちょっとだけ休みなさいと言ってくれた。






















 ゴールデンウィークが終わってから2日後、ソシャゲにハマった!

 人生が楽しい!私の仲間はここにいた!

 ガチャが楽しい!石を!石を集めるのだ!

 そのためにも、ギルドで活躍するのだ!

 私は未成年、カードも使えない無課金勢なのだから、

 時間をかけることで天上人に追いつくしかない。

 幸い時間はある……


 ゴールデンウィークが終わってから一週間が経った。

 ギルドで私が中学生の女子だとバラしたが誰も信じなかった。


 「いや、釣りでしょ」

 「明らかに釣り乙」

 「ユリさんがそんなしょうもないこと言うなんて…」

 「いや、こんな昭和の話できる中学生いないから」

 なんていうのが、彼らの談である。


 どうもお父さんから聞いたサイ○バの話をしたのがよくなかったらしい。

 あるいは、織田無○の方か。

 なんにしても、このアラサーだかアラフォーだかがたむろしているギルドはすごく居心地が良かった。


 2週間、経ってしまった。

 考えてみれば、この間、私は学校に行っていない。

 これはリカバー可能なの?いけるの?とは思ったが、

 ギルドの中で話してみると

 「話半分に聞くけど、今のうちに行っといたほうがいいよ」

 とみんな言ってくれた。

 よし、学校に通うにしてもソシャゲのイベントを最優しよう。

 古戦場からは絶対に逃げない!


 などと思いつつ、私はゴールデンウィークとあわせて3週間ぶりくらいに学校に向かっていた。

 

 タッタッタッ


 玄関をでて、外の門をガチャりと開けて、歩道を走った…

 そして、100mほどの横断歩道、私の視界には車がなかった。信号は赤だったのが見えた。

 だから…そのまま走り抜けようとした。


 タッタッタッタッ


 そして…お約束のように…つんざくようなブレーキ音が聞こえ…右側を振り向くとすぐ目の前にトラックがあった。


 キーーーーッ 


 足がもつれてその場に倒れた私を車は容赦なく轢こうと猛スピードで近づいてくる。

 私はそれが怖くて、目を瞑った。


 …

 …


 …きっとすぐに激痛が走って死んでしまうのだろうと思っていた。

 だけど、待てど暮らせど激痛はやってこない。

 恐る恐る私が目を開くと、私は真っ白い空間にいた。

 さっきまでいたところじゃない。


 「ちょっとちょっと、こっちよ」

 

 私は立ち上がりながら、声がした方向に振り返った。

 そこには…そこには綺麗な女の人が座っていた。すごく豪華な椅子に偉そうに。

 あの椅子はロココ調とかいうやつだ。

 お父さんが、○グネスとかいう人の話をしながら教えてくれた。

 なんかすごい国際団体の代表で、すごくお金があって、

 豪華な家具を持ってて。その家具がロココ調。


 「あなた…賀茂小苗(かもこなえ)さんね。

 さて、最近は死んだあとどうなるかみんなに知れ渡っているみたいだけど…

 あなたはどんな世界に行きたいのかしら」

 「え?」

 

 あれなのだろうか。最近、よくある異世界転生もの。

 こんなかんじで女神様が出てきて。

 でも、まさか。


 「あら?知らないのかしら?

 最近は、死んだら異世界に転生できるのよ。

 どんな世界がいい?あなた栗色の髪が可愛いのね。

 あなたくらい可愛いのならあなたが世界を選ぶ権利があるわ。

 好きな世界に行かせあげるわ」


 ああ、本当にそうなのか…でも…


 「あの、私は死んだんですか?

 それから、どこの世界とか言われても…ちょっとどうしたらいいのか…

 私は…その、中学生で…そもそも、現世の進路すらはっきりしないので…」

 「う~ん、まあ、人間ってのはいつか死ぬものなのよ。

 落ち込まなくてもいいわ。どの世界か決められないのね。

 じゃあ、どうしたらいいかしら…」


 ゲームみたいにお試しでやってみてリセマラとかできたらいいのに。

 ダメ元で言ったら怒られるかな?


 「あの、ちょっとだけ試してみてその世界がよかったらその世界に行けるとか、

 そういうお試し期間的なことはないんですか?」

 「ん~?」


 あ、やっぱりだめか。怒られる?

 ひどい世界に送られちゃう?

 やっぱり言わなきゃよかった。


 「…それ面白そうね!いいわ!!そうしましょう!!

  そ~ね~…じゃあ、最初の世界はどこにしようかしら」

 

  え、ほんとに?いいの?

  それなら、私がやっているゲームみたいな剣と魔法の世界をとりあえず試してみたいな。


 「じゃあ、剣とか魔法とかそういう世界を試してみたいです!」

 「わかったわ。そこに飛ばすわね。一週間がお試し期間よ。

  じゃ、がんばってね」


 白かった空間が目が開けられないくらい眩い光を放つ。

 一瞬、体が宙に浮いたような感覚を覚える。

 気づくと、私はまた違う場所にいた…



 







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