阻止作戦③
ここはアメリカのイエローストーン公園。
奥深くには異能者が集まる村が形成されていた。大きなグループの一つである。
全世界に呼び掛けた異能者のリーダーたる張本人もそこにいる。
この場所を異能者達の集結場所としたのは理由がある。
人間世界への宣戦布告を行うにあたり、自身の異能と合わせて大々的に宣伝するには効果的な場所だからだ。
初めから圧倒的に優位的な位置に立ち、初戦を制したほうが今後も有利に事を進められる。
「アレクサンドル様。いよいよ明日が決行日ですね。」
「ああ、人間共は自らの文明を維持する為に地球そのものを食いつぶしている。地球を守り、ひいては人間を守ることにも繋がる。あくまでも増えすぎた人類を摘み取るだけの作業なのだ。」
「はい。増えすぎたからこそ、飢餓や貧困の元になっています。更にたまたま異能を発現した人は、人間に目撃された場合、異能内容によっては恐れを抱かれてしまい、駆逐されてしまう傾向にあります。」
「異能者自身も好きで発現しているわけではない。俺もそうだ。そして我々も人間共にやられっぱなしでいるわけにはいかない。異能者達を集め、守らなければならない。」
「これまでの異能者達の無念、どうか晴らしてくださいませ。」
「わかっておる。明日はこのイエローストーンにありったけのエネルギーを叩き込んでくれる。明日の会見の準備はできているな?」
「はっ!もちろんです。全世界へのハッキングはいつでも可能な状態となっています。」
人間社会に反目する異能者達のグループが一大勢力化し、イエローストーン公園に集結していた。
変装能力で自身を動物に見せたり、住居は地中に張り巡らすなど、徹底した偽装工作が行われており、人間には気づかれないようになっていた。
一方、ペアとして行動していたキンメリーとディンもアメリカにいた。
アメリカ本土の全体エネルギーが全体的に異常向上しているのがわかったからだ。
アメリカ本土に到達すると人工知能が二人に告げる。
「強大なエネルギーがアメリカ本土内の北西部に集中しています。」
「もう少し正確な場所は分かるか?」
「少々お待ちください。………」
「キンメリー。二人で行って説得できるのか?」
「分からない。異能者と触れ合ったのもディン、お前が初めてなのだ。観察は今までにもしているが、異能を予期せぬ部分で発現してしまい、人間に粛清されてしまった人も何名か見てきた。集結している異能者達はそういう境遇の集まりだと思われる。」
「そうか。境遇は理解できるな。我も異能を与えられなければ普通に暮らしていたかもしれないのだからな。」
「……、解析完了。ワイオミング州の北西部当たりです。恐らくイエローストーン公園かと思われます。」
イエローストーンは過去に噴火があったと聞く。
キンメリーは異能者の中に火を自由自在に操る人がいることを思い出す。
あのソ連、今はロシアだが、あそこで最大規模の水爆実験がされた後に顕現した人だ。
強大な力は持つが、自制はしている人として記録されているはずだった。
だが、他にイエローストーンを指定した理由が思い浮かばない。
「まさかな。急ぎ向かわなければならない。行くぞ。」
「やれやれ。南極で叩き起こされたかと思えば、次はアメリカで戦闘になるかもしれんとはな。」
「地球規模の影響が出るかもしれんのだ。少しの間だけ辛抱してくれ。」
キンメリーとディンは空に飛び立つ。
キンメリーには飛行能力があるが、ディンにはない為、キンメリーがディンを浮かび上がらせる形で一緒に飛行している。
ディンの身体的負荷を考慮し、スピードは大分落としているが、数時間もあればイエローストーン公園に着くだろう。