阻止作戦①
「閣下、宜しかったのですか?」
「…構わんよ。自分でどう考え、実際に対処していく能力は異能とは全く別物だ。機会を自ら掴んでいく姿勢を肯定したまでのことだ。」
「人間社会への過剰な干渉は後戻りもできない様々なリスクが内在されます。」
「そのリスクも踏まえてのことだ。結果がどうなろうと、経験の一つとして積ませるしか無い。成功事例が積み重なれば、私は安心して地球の監視から安心して離れられるものよ。」
「閣下。その成功事例が積み重なる確率は少しでも上げておいた方が宜しいかと。」
「そうだな。一案ある。」
代行者が手を振りかざすと、杖のような機具が生成される。
それは人工知能が入っている機具の形態に類似している。
「閣下、まさかー。」
「そのまさかだ。性能はだいぶ落とすが、ソレにも人工知能を付与する。そして、キンメリーに与えることで様々なアドバイスをしてもらう。」
「力を生み出す元は閣下に直結しています。キンメリーでは使いこなせず、暴走する恐れもあるかと。」
「問題ない。まずそなたに直結させている。暴走の恐れがあるならそなたがもう一方の人口知能への力の供給を停止すればよい。」
「それは責任重大ですね。わかりました。」
「あくまでもキンメリー自身に問題解決をさせるのだ。人工知能はアドバイスに留め、判断することがないようにする。そしてそれに対する力の行使判断はキンメリーに委ねる。」
そうして、キンメリーも代行者と同様に人工知能とタッグで問題解決にあたるのであった。
現在、キンメリーは人工知能を代行者から与えられたものの、当事者の立場になって対処することも重要だと考えており、世界に散らばっている異能者から選び、同胞にしようと考えていた。
「ふむ。半数の異能者がグループに入っていて、人間社会には敵対的だな…。」
「残りの半数の異能者は本事柄には興味を示さない、あるいは争い事には巻き込まれたくない、ということで単身を保っているものと思われます。」
「その単身の異能者から選んだほうが協力してくれる確率は高くなるだろうな。一つ気になる人がいるのでサーチしてほしい。」
「どのような人物ですか?」
「私の時は広島原爆の時に異能発現したらしいが、長崎原爆の時はどうだったのか、その際に異能者は出なかったのか、というのを調べたい。」
「畏まりました。サーチ開始します。少々お待ちください………」
この人工知能は代行者の側に控えている人工知能に比べれば大分性能は落ちるが、ナレッジ自体はほぼ引き継いでいるようだ。
有り難い存在である。
「完了しました。長崎原爆の時にも異能者発現していることが確認されています。そして、その人物は現在日本には存在しません。南極点の地中深くに自身を幽閉しているようです。幽閉後は特に動きは記録されていません。」
「なんだと!?ということは明らかに単身の人だな。同じ国のもとで異能発現した仲間として引き入れられないか交渉するか。」
そうして、南極に降り立つのであった。