異能者の存在
時は流れ、昭和40年頃。
日本は戦後から20年、高度経済成長期に突入していた。
「ここまで立ち直りが早いとは感心するものだ。」
代行者は目の前に広がる街並みをみて、そう呟く。
傍らには代行者自身が生み出した人口知能の存在がいる。
遥か昔、代行者は自身の強大な力を制御する為に惑星の芯から頑丈な物体を取り出し、それに意思を与え、力の制御を任せることにしているのだ。
外見は無造作な棒のようにも見えるし、杖のようにも見える。代行者の大きさと同じぐらいだろうか。
ソレは遥か昔から代行者を支え、助言もしてきた。
「閣下。あの異能を持つ子供を拾ってから20年が経ちます。他にも同様の存在がいることを確認しています。」
「うむ。分かっている。あの原爆が様々な作用を生み出すこともわかってきたしな。あれは…危険だ。」
あれから世界を観察し、いくつかの事が分かってきた。
・原爆と呼ばれるものは宇宙空間に散在しているエネルギー源と一時的に繋がる機会になる
・人間は高度知能生命体であり、その機会と直接繋がる可能性が他の生命体と比べて非常に高い
・直接繋がった人間には何かしらの異能として残り、エネルギー源との繋がりは断たれる
「あれから、あの子供を育ててきたが、やはり人間の親と同様にはいかないものだ。異能が顕現しないよう、抑えるのは十分苦労した。」
「閣下と繋がりがある時点で普通の子供ではありませんし、あの異能は将来的に閣下を脅かす可能性があります。」
「そんなことはわかっている。希望なのか絶望なのかはもう少し見極めなければならない。」
育てるときも、人間の世界で、と考えたが結局は異能顕現を抑え、コントロールの仕方を教える必要もあり、別空間で育てることにした。
当然、地球上の文化、政治等、あらゆる教育はしてきている。
ただ、性格形成がうまくいっているかは不安だ。
まだ短い期間ではあるが、名前もつけてるし、それなりに愛着もある。
通常の子供と異なる点は、育てられた環境と成長スピードが極端に遅い事だろうか。
20年経った今でも少年の外見である。
また、他の異能を持つ存在も確認しているが、現段階では脅威とは感じず、放置していた。
世界は原爆の開発競争に突入しており、そういう存在も増えていき、いちいち監視などしてられないからだ。
そして、副盟主様とは連絡取れないままである。
「父上。ただ今、アフリカの観察を終え、戻って参りました。」
「キンメリー。ご苦労だった。」
キンメリーと呼ばれる存在こそ、代行者に育てられしもので、最初の異能者でもある。
この存在が大きな災いの元になるとは、この時は露ほども思わなかっただろう。