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終末の魔女  作者: 悠
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 しかし――これ、どうしよう。


 本格的にシズクさんと口裏合わせをする必要ができてしまった。

 突入する前は呑気にも「シズクさんらしく振舞えばばれることはないだろう」などと考えていたが――迂闊なことをしたせいで早急にシズクさんと合流しなければならなくなってしまった。


 少し、考えなしに突っ走りすぎてしまったか。


「……ふ、二人は彼ら――気絶している騎士を頼む。私は上に報告してくる」

「報告なら私が……」

「いいや。私に任せてくれ」


 女性騎士が手を上げたが、彼女に任せてしまうとシズクさんと合流する機会が失われてしまう。そうなればもう平和的解決は不可能だ。


 俺は彼女たちの目を避けるようにして怪しげな集会場を後にした。


 猶予は――一時間もないだろう。普通に考えて三十分ほどか。こんなことに首を突っ込まなければもっと時間があったはずなのに。


 まあ嘆いていても仕方がない。急いでシズクさんと合流し、事の次第を説明して許しを得なければ。

 しかしそんなに簡単にシズクさんを発見できるだろうか。地上へ戻る階段を駆け上がりながら、ふと思う。


 俺が見る限り、彼女はとても実直な人だ。理由もなく仕事に遅れたりする人間とは思えない。何らかのトラブルがあったと見た方が自然である。


 そう考えると短時間で彼女を見つけることはとても困難に思える。アングラマイン姉妹に頼ることも視野に入れるべきだろうか。


 長い階段を上りきって館の一階に戻る。

 階段の入り口を守っていた男たちは気絶したままだった。テーブルに散乱したトランプも、なぎ倒されたイスも、そのままの状態をキープしている。


 一応、俺たちが地下にいる間に新たなラヴェル教徒が来訪している可能性も考えていたが、この雰囲気だとそれは切ってもよさそうだ。


「さて……」


 まずは――騎士がこの館を監視するために用いていた廃屋に寄ってみるべきか。そこでシズクさんを発見できないようであれば、姉妹に相談してどうにかしてもらおう。問題は、騎士から疑われても知ったことかと彼女たちが言いそうな点であるが、そこはどうにかして説得しよう。


 ――そんなことを考えながら玄関ホールに足を踏み入れ。

 そこで白銀の鎧を纏ったシズクさんと鉢合わせした。


「――ッ!」


 やった、早くもシズクさんに会えた――と喜んだのは一瞬で、すぐに芳しくない状況に置かれていることに気が付いた。


 まずはこの場所。改めて言うことでもないとは思うが、ここはラヴェル教のアジトの中――すなわちシズクさんにとっての敵地。そして今の俺の姿は、シズクさんと瓜二つ。

 もし俺が敵地で自分と同じ顔をした人間と遭遇したとしたら、当然、罠を疑う場面だ。


 つまりはそういうこと。


 シズクさんは俺を視認した直後に剣を抜き放ち、跳びかかってきた。


「ま――待ってください!」


 俺は迎撃を選ばず、慌てて両手を上にあげる。身体を使って敵意がないことを示したわけだが、そのまま首が飛んでもおかしくはなかった。しかし白銀に煌めく剣は、俺の首から僅か数センチのところで止まった。


「シズクさん、俺です。ジンです!」


 そう叫んだ直後、俺は身体の内側から風船が膨らむような感覚を覚えた。痛みはない。しかし掻痒感に似たものを感じ、肉体が変化していくのが分かった。


 初めは当惑した表情だったシズクさんも、俺の様子を見て驚きで目を見開く。


「え……じ、ジン、さん……?」


 彼女の反応を見るに、どうやら俺は無事に元の姿に戻れたようだった。ついでに服も魔術が解けて自前のものに戻っていて、男の姿で短めのスカートを着用という事態も避けられた。


「いや、ほんと、助かりました」

「あの……どういうことです……?」

「えっとですね……」


 何が何やらと目を白黒させるシズクさんに、俺はヴァイオレットのやんちゃな行いについて一から説明した。


「……というわけなんですよ。ほんとに色々とすみません!」


 正直、なぜ被害者の俺が謝っているのだろうと思わなくもない。だが謝罪できるのは俺しかいないため仕方のないことだった。


「そ、そうですか……今回は、何も咎めませんが、二度とこのようなことはしないで下さいね」

「はい! ヴァイオレットさんにも言って聞かせますので!」


 しかし説得できる可能性は低い。まあ、流石にもうこの街で騒ぎを起こすことはないだろうが。


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