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魔王と勇者

魔王と勇者は平和を望む

作者: 六連星と七つの月

側近から見た魔王と

魔法使いから見た勇者はこんな感じです。



長らく魔王様に付き従い

側近にまで上り詰めたがいやはや

知れば知るほどこの方は不思議だ。


魔王でありながら、温厚で

魔物を率いて人類へ攻め込むこともなく

効率的な自然環境の回復ばかりに力をいれている。


荒れ果てた地へ足を運んでは

人間達の間で浄化作用があるとされる

聖なる水を撒いて行く


「気休めかもしれないが

私は少しでもこの土地がよくなることを

願っているんだ」


魔王らしくない、この方は

そう言って笑う。


そんな事から魔王様による

浄化作業が始まった


日に日に増えていく

勇者の如き装備を纏い

力を持て余した魔獣達を無害なものへと変えていく、血走った目の獰猛な魔獣達が

まるで、人間達に飼いならされた犬猫のようにだ。


魔王様は、暮らしやすくする為だと言うが

これでは、家畜のようではないか

私が言えば


「魔獣も獣もかわらんさ

ただ、魔力量の違いだけだ」


とカラカラ笑う。



そんなものなのかと、問えば

そんなものなのだと、答える


魔物とはすなわち魔力により変異した生物であり元は同じなのだと

ただ、その魔力には毒性があり

順応できないものは、魔力に蝕まれてしまう

森の木々はその為枯れてしまうそうだ


…確かに植物系の魔物は少なく

また、極端に弱い

それは魔王様いわく植物は魔力との相性が悪いのだとか。


「魔王様は、魔力の浄化を行った後は

どうされるおつもりですか?」


「そうだな…私は魔物達が

平和に暮らせる日々を望んでいるんだ

それには、人間達との接触も避けられないだろうな

だが今はまだ彼等にもこちらにも歩み寄る余裕がない、幸い争っているわけでもない

彼等から学べる事もある

共存の道を行ければ良いが

まずは私達が害を及ぼさないとわかってもらわなければならないね」


「…共存ですか」


「おや、嫌かい?」


浄化を行えば魔物は著しく魔力が減少する

不安がないわけがない。


「魔王様、植物を魔力に耐えられるようには

できないのですか?」


「相性が悪いんだ、できるようになるまでに私達が滅んでしまうよ」



魔王様は、自分で魔力のコントロールができない魔獣を無害化し

魔族達には魔力の危険性とともに

魔力の毒性を和らげる魔法を教え

魔人達にはその強い魔力を垂れ流しにしないよう徹底的に自ら魔力コントロールの指導を行った。


「魔王様、魔力からなる

魔法がなぜ魔力の毒性を和らげることが

できるのですか?」


「あぁあれはね、正確には魔法じゃないんだ

人間の神父が使うものなのだよ、一番弱いやつだけどね」


「なんで魔物が使えるんですか…」


「そうだね、まぁ魔族にも聖職者はいるだろ?

多分神の庇護は平等なんじゃないかな」


「魔物なのに?」


「さぁそれ言ったら私だって

こんな装備着れないだろ?」


いや、それは魔王様だからじゃないですかね

私が着たら大ダメージだと思います…。


この方はどうも魔王らしくなく奇抜な方なのだ、だが私はこの方の行く道へ着いて行く


だって、この方は王だ

間違いなく魔物の為の王なのだ。








やぁ私は勇者のお供の魔法使いだ。


勇者の魔法に興味が湧き

ほぼ無理やり勇者の旅に着いてきてやった。


勇者は勇者でありながら

どうも変な奴だ


生物はみな魔物へ進化するべきだと

熱く語るような勇者さ、神父様が聞いたら

卒倒しそうだが私はわりと賛成だ

だって魔法の幅が広がるじゃないか

私は世界平和なんかよりも

いかに強力な魔法を開発できるかに

命をかけている。


「勇者殿は何故

魔物になりたいのですか?」


「なりたいわけじゃない」


へぇ、じゃあなんで?


勇者いわく魔物とは魔力により変異した

生物の進化形らしい

その為、魔力への免疫は人間の数倍

強い魔力にあてられてぶっ倒れる事もないらしい。



それに魔物になってしまえば

多少荒れた土地でも生きていける

変異次第では空だって飛べるし

水の中でだって暮らせる。


だから、生き延びたいなら

魔物になるべきだと勇者は言う


人は進歩していくものだ

魔物になっても、人として生活していける筈だ丈夫な身体を手に入れ

多少無茶な土地でも、人としての知識を活かし住みやすく開拓できる筈だ


その為に勇者は禍々しい呪われた装備を揃え、全生物に魔力を流し込み進化させるべく

準備をしているそうだ。


なるほど、その悪趣味な装備は

別に趣味ではないのかと問えば


「え…かっこいいだろ?」


と可哀想なものを見る目で私を見る

先に失礼を言ったのは私だが

ムカついたので、杖で殴っといた。


「に、しても勇者殿

いきなり魔力テロなんて起こしたら

それこそぶっ倒れるんじゃないですか?」


「あー、そうだな

そこら辺は考え中なんだけどさ

まず、長期間少しづつ魔力を流して

耐性をつけさせてから、ドカンと一気に行こうかなって思ってる」


「ドカンと…」


「そう、多少負担はかかるけど

ずっと時間かけてちょっとずつだと

緩やかに魔物化してくけど

完全に魔力化するまでに世代跨いじゃうから

それじゃ遅いんだ

なるべく早くこの状況から立て直さなきゃいけない

滅びない為には、もっと人間は強くあるべきだ、そう魔力により進化すべきなんだよ」


どうも勇者からすると人間は非常に弱いらしい、それで魔物になろうとするなんて

やっぱり勇者は発想がぶっ飛んでる

だから面白い。



「それには、バカみたいな魔力が必要だ」


「へぇ、勇者殿それはどのくらいの?」


「うん、そうだな魔王くらいは欲しいね」


彼はヘラっと笑って

魔王城を指差した。


あぁ本当に彼は最高にぶっ飛んでる

ならばお供しよう勇者よ


言動によりとても勇者にゃ思えないが


彼は間違いなく勇者なのさ

だってほら、こんな無茶に挑むんだ

確かに勇ましい者だろ?




最後まで読んで頂きありがとうございました。


誤字修正致しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔王と勇者、おのおのの目指す平和の動機がさらに理解出来るようになりました。 目指す平和の方向性が全く正反対の二者が共に悪意からではなく善意で行動しているのが非常に複雑です。二人とも自分の所…
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