異世界の王となる!このノートの力で
「アステマ君。やればできるじゃあないか。オレは信じていたよ君のことを、うん」
「え、急にどうしたの? なんか気持ちわるいんですけど……」
「そして、これだけはいいたい」
「なに?」
「おまえ悪魔だろ?」
「は? あくまじゃねーし!」
この後に及んで否定するアステマ。こんなチートアイテムを渡してくる女神がいるわけがない。どこからどうみても、悪魔アイテムだろうに。
「フッ……どちらでもいいさ。だがアステマ、いまのお前はオレにとっては」
「うん……」
「まちがいなく女神だ」
「!? 女神」
「そうだ。オレの女神だ」
「あたしが女神……ついに」
なにやら感慨深げにしているアステマ。ちいさくガッツポーズをして、うれしかったという雰囲気が伝わってくる。オレに向けてくる視線もなにやら丸みを帯びたようだ。
☆
「えっと、ダイスケ。そのノートの使い方だけどね……」
「大丈夫だ。しっている」
「え? そうなんだ……」
「それよりもアステマ『ドラゴン追い祭り』の、参加者名簿を入手できるな?」
「参加者名簿? できるけど……」
「すぐにもってこい」
「そんなのどうするの?」
「どうするってオマエ、それは決まっている……」
オレはアステマから受け取った黒いノートに目をやる。このノートに書き込めば……
「ダイスケ……本当に必要なの? 本当にそれでいいの?」
「ああ。覚悟は決めた。手をよごすのはオレだけでいい」
「……わかった。なにをするつもりか、わからないけど。もうなにもいわない。名簿もってくるね、まってて」
そういって、宿の部屋を出るアステマ。部屋にオレだけが残され、祭りの準備で騒がしい外の喧噪とは別世界の静寂が支配する事となった。
「――ククッ」おもわず、喉の奥からの笑みがでた。
まっていろよ、ドラゴン追い祭り。
まっていろよ、バレンヌシア帝国騎士団。
「くふッ、あははははははははははははははははははははははッ!」
再び部屋に響き渡る、オレの哄笑。
これが笑わずにいられるか。ここで笑わず、いつ笑う?
『ドラゴン追い祭り』での勝利は約束された。
「まっていろよ、エルフハーレム!」
オレは高々と、両手でノートを掲げる。
「オレは異世界の王となる!」