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密着する悪魔とエルフ警察24時

 そんな感触に、オレの下半身が敏感に反応する。

 そうすることで、勢いと飛距離がのびた。なんの? ……って、しっこの威力。


「せふれ……」ゴクリとオレの、のどが鳴る。


 しょうじき、アステマの魅力すぎる提案。これまで、なんどもその機会はあった。


 ……どうしよう。

 いまこそ、いまこそ! その時ではないでしょうか! 


 ……だって夜が明けたら、あの恐ろしいドラゴンと対決するわけだし。そうしたらオレは、もしかすると……。いやいやいや、まつんだ。弱きものその名はダイスケ(オレ)


 ……ニケアはどうなる? 愛するエルフ。オレの嫁。そんな彼女を、また悲しませることに……。っうか、その前に確実に殺される。そうなると、ドラゴンと戦う前にオレはこの世にいない。すりおろすって言っていたし……マジでやりかねないし。


 ホント怖いから、ガチギレモードのニケア。


 しかし……。バレなければどうということはない。という悪魔の囁きが。

 リターンとリスクを計る。

 『アステマの身体』と『オレの命』。フツーなら天秤おもいっきり『オレの命』に傾くけど。

 ……だが、バレなければ。ちょっとだけならば。そこに可能性が……。

 そう、ニケアは寝ている。うまくやれば……。ぐぐっと、傾いていた天秤の秤があがる。


 いや、ダメだダメだ……オレ!


 くっ、そういえばアステマは悪魔。妙に納得してしまう。これが悪魔の囁きというやつなのか。なんという恐ろしい攻撃。ここまでオレの鋼鉄の精神を惑わすとは……。


 とはいえ、アステマ可愛いんだよな。ニケアとは違うタイプの魅力がある……。唇の弾力も、ぷるっとしているし……。ちなみに、ニケアのはふわっという感じ。ちいさくてやわらかいんだよな……。唇は両者甲乙つけがたし。よってこの勝負、引き分けとします。


 ……でも、ニケアには耳があるからな。あのエルフ耳は先端はちょっと冷たくって、根元にいくごとにあたたかく……って。違うから! いまは、そういう話じゃないから! やるかやらざるべきか。それが問題だ。男になるか否か。その瀬戸際にオレは立っている。


「……え?」オレに抱きついていたアステマが前をのぞき込む「って、なにしてんだダイスケ!!」


「!? っうか、みるな! みてわかるだろ! ……いや、やっぱみないで! みなくてもわかるだろ!」


「しんじられない……。わかんない、そんなの……わかんないよ」


 オレが首だけで振り返ると、よろよろと後ずさり、両手で顔をおおっているアステマ。


「みろ、おまえが後ろから抱きついてきたから、手についちゃっただろ「うっわ……汚いな」ピッピッとしずくを払う。


「サイテー! サイテーだダイスケ!! あたしが……、勇気をふりしぼって……告白したのに。おしっこするなんて……こんなの、きいたことない」


「オレも聞いたことねぇよ! 空気よめよ! この状況で男がすること他にあるか! こんなタイミングで告白するな!」


「酷い……こんなのって。………………………………酷すぎるよ」


 紅い瞳に、みるみる涙を満たすアステマ。ポロッポロとしずくが床に落ちる。


「!? あれ……あれれ?」


「本気だったのに……。あたしダイスケになら、って。…………ずっと。はじめてはダイスケにって……」


「え…………」


 ……いや? オレが悪いの? そういう流れ?


「バカ! バカバカバカ! もうしらないから!!」


 すごい勢いで部屋をとびだすアステマ。


「おっ、おいアステマ! ちょっと待て!」


 黒ドラゴンとの対決を前にした、この状況でこの流れ。これはよくない展開。

 すぐにアステマを追わなければ、外は危険でいっぱいだ。


 オレは、だしっぱなしのものをズボンにしまって後を追う。



 ☆



「……アステマ。早まるなよ」


 オレ達が寝る部屋から外に繋がっている。そこに戻ると――


「アステマさんがどうかしたんですか?」目をこすりながらニケア。


「ごめんニケア。起こしちゃったね。アステマが外に出てったんだ」


「? アステマさんなら、そこにいますけど……」


 みると、部屋の端でネコみたく丸まっているアステマの姿。


「……なにしてんだよアステマ」


「みればわかるでしょ! もう寝る。ふて寝だ。ふて寝!」


「いや……ふて寝て」


「あたしに恥をかかせたこと……ぜったい後悔するから! そのときになってもおそいんだからね!」


「いや、あの……、オレからいうのも何なんですが……。こういうときは、スパッと、外に飛び出すんじゃないでしょうか? 決戦前夜だし、なんというか、そのほうが盛り上がるというか――」


「そんな危険なこと、あたしはしない。じゃ、おやすみ」


「あ……ああ、おやすみ」


「そうだニケ。あんたにだいじなこと、いいわすれてた」


「は、はい。なんですか? アステマさん」


「むこうの部屋で、ダイスケがあたしに下半身を露出してきた」


 そういうとアステマは寝息をたてて就寝した。


 ……寝つき、超いいねキミ。


 って……オイ! おまえなんてことをいってんだよ!!


「……………………ダイスケさん」


「!? は、ひゃい!」


「アステマさんのはなし。どういうことですか? ニケに説明をしてくださいね」ニッコリとニケア。いつも垂れ気味の耳が――ピンと張っている。そして、暗闇に輝く碧い双眸。


「いえ、あのですね……まったくの誤解なんです」……うっわ、これはヤバイ「む、無実なんです……なにもしてないんです。いや、なにもしてないことはないんですが……その、とちゅうでアステマがいなくなったから、なにも……まだ」


 じぶんでも嫌になるぐらいの、しどろもどろ。


「…………。なにぶんこれは形式的なものですから。いえ、お時間はとらせません。むこうの部屋でゆっくりと、お話を聞きますね。ご同行ねがいます」

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