表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/74

起きてしまった悲劇を前に、この場の誰もが心を痛めていた。この場の誰もが?

「『ですっ☆ノート』まだ、もってたんだね……ダイスケ」


「いや、オレもノートの存在を完全に忘れていた……」


 思いだす。ドラゴン追い会場での騒乱のなか、オレが投げ捨てた『ですっ☆ノート』それを拾って届けてくれたのが、そもそものニケアとの出会いだった。


 たしかにうっすらと、オレの記憶にはノートを抱えていたニケアの姿が……。

 可愛かったなぁニケア。その出会いの可愛さの衝撃たるや……いや、いまも全然可愛いんだけどね! そんなニケアの存在にテンションMAXだったオレは、ノートの存在をいままで完全に忘れていた。あのまま屋敷に持ち込んでいたのか……。


「ダイスケさん『ですっ☆ノート』って、なんですか?」


「そのノートに、なにかあるのか?」


 オレは固まっているアステマを横目に、ニケアとジェラートに説明をする。


『ですっ☆ノート』は、アステマがオレに渡してきた既視感バリッバリの悪魔アイテム。似顔絵で描いた対象を死に至らしめるらしいが、じっさいに効果をこの目でみたのは初めてだ。だって、オレ似顔絵なんて書けないし……。だから、効果を確かめることなんてできなかった。ただの使えないアイテムだとしか思っていなかった。でも、きちんと絵を描ける人間がつかうと……。


 ほんとうに効果があるんだな『ですっ☆ノート』



 ☆



「――と、いうわけなんだ」


「!? そんな……」「なんたることだ」


 オレの説明に、衝撃をうけるニケアとジェラート。そりゃあそうだろう。間接的にとはいえロークとブッケ。そして子ネコの命まで殺めてしまったという事実――


「『と、いうわけ』ってさーどういう訳? 1からせつめいしてよー。せつめい責任はたしてよー。『と、いうわけ』だけじゃ、なんのことなのか、わからないんですけどー」ニヤニヤするアステマ。


 ……そこに食いつくなよ。スルーするのがお約束だろ。

 って、わかってて言ってやがるなコイツ。


 いや……逆にマジで詳細に説明したろか。


 ぶっちぎりの過去最長セリフで度肝ぬいたろか。そしたら『冥王黒神暴君究極悪魔皇帝龍ヘルエンド・ダークネスオブ・フェルディナントワグナス』なんて、目じゃない惨劇だからな。


 そういう禁断の選択肢もあるってことを世に……


「そんな……しらなかったんです! そのノートがそんな危険なアイテムだったなんて!」


「わたしもしらなかったんだ。ローク……ブッケ、すまない」


 ニケアとジェラートは100点満点のリアクション。優秀な生徒を持って先生はうれしい。きちんと話をすすめようという意欲・姿勢。そんな二人のあるべき姿を前に、我にかえるオレ。


「……アステマ、おまえは反省文な」


「なんでよ!」


「あとでミーティングな、ふたりだけで」


「!? ふたりだけ……あ……うん」瞳を潤ませて、くちびるに手をやるアステマ。


「そういう意味ちゃうわ!!」


「ダイスケさん……命知らずですね」ニッコリとニケア。耳がピンと張っている。


「ちょ、ちがうからニケア! ニケアまでこっち(コメディ)に来ちゃダメ! さ、正規ルートの話すすめよ。ジェラートなんかいって! はい、コメント!」


「異世界の勇者殿……。たいへんだな、貴公も」


「そうじゃない!!」



 ☆



「……ニケが悪いんです。ジェラートさんにノートを貸してあげたばっかりに……絵を描くのが好きだって聞いたから……ずっと部屋から出てこなくて、元気がなかったから……」


「ニケ殿は悪くない。悪いのはわたしだ。絵を描いたのはわたしなのだから」


「二人とも、悪くないよ。あのノートにそんな危険な効果があるなんて、誰も思わないだろうし、オレがきちんと管理しておくべきだった。だからオレが悪い……」


 偽らざるオレ達の気持ち。起きてしまった悲劇を前に、この場の誰もが心を痛めていた。だが、責任を感じ謝罪を口にしても、ロークもブッケも子ネコのアスニャンも返ってはこない……。


「あ、あたしは悪くないからね!『ですっ☆ノート』は、ダイスケにあげたんだから! あたしは無関係なんだからね! あんた達の責任なんだからね!」


「「「(くぉのアマ……)」」」


 ――ギンと、オレ達の視線がアステマを刺す。


「ビクッ――えっと、あの……。あたしも、すこしだけわるかった……かも、ゴメンナサイ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ