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エルフのうすい胸につまっているもの

「あいつおかしいねー。あめ玉おいしいのにねー。ねー『ニケニャン』」


「ニャー」


「ニャー?」


「あ、ダイスケ。しょうかいするね。新しい家族『ニケニャン』だよ。ほら挨拶して」


「ニャー」


 アステマがそういって、抱きかかえてみせてきたのは子ネコ。


「カワイイ名前でしょ?」


「そうだな……すんごい身近に、似た名前のエルフをしっているけどな……」ここで名前にツッコんだら負けな気がするので話をすすめる「で? その子ネコが、どうしてここにいるんだよ?」


「カワイイでしょ? 暇だから外みてたらさー、下をチョロチョロしてたんだ。んで、そのままだとドラゴンにたべられちゃいそうだから、つれてきた。これからは、あたしの使い魔として、がんばってもらおうとおもう」


「!? ちょっと、まて! いま外からつれてきたって……あ、おまえまさか! どうやって外へ行った?」


 いまのアステマは、魔力不足で空を飛べない。と、すれば……。


「え? そりゃもちろん、正面の扉を開けて」


「……ジェラートすまない。これだけ確認したい? どこから屋敷に入った?」


 オレは気になっていた。オレ達の住んでいる屋敷は大商人の屋敷。盗人などを防ぐためだろう、ちょっとした要塞のようなつくりだ。だから、扉を閉ざしてしまえばフツーには入ってこられない。出入りできるのは正面の大きな金属扉だけだ。とうぜん、そこは固く閉ざしている。だとしたら疑問が残る……。ジェラートがどうやって侵入したのか? しかも彼は満身創痍で片足……。


「ふつうに、入り口の扉からだが……」


「……ですよねー」オレはアステマを睨みつける「バカアステマ!! もしかしておまえ!? 扉開けっぱなしだろ!」


「!? あ、やば……」


「……やっぱり、おまえ……か」


「あたし、扉を閉めてくるね!」


 アステマが部屋を飛び出した。とうぜんオレも後につづいた。



 ☆



 幸いにも、他に侵入者はいなかった。

 ……すぐに気がついたからよかったようなものの……。これ、そのままだったら、確実に大惨事。


 いまは屋敷内の確認を終えて、ジェラート以外の全員が食堂に集まっている。


「ねー? ダイスケ。『ニケニャン』飼ってもいい?」


 当のアステマは何処吹く風で、そんなことをいう。


「だめだめだめ! ぜったいだめだ!」


「なんでよ! べつにいいじゃない!」


「ふざけんのは、おまえの胸だけにしろ!」


「胸のことをいうな! だいたいニケに失礼でしょうが!」 


「ええっ!? ニケ!?」


 とつぜんの流れ弾に、愛するエルフがリアクション。


「ニケアはそのままでいいの! だってエルフなんだから!」


 エルフのうすい胸にはたくさんのものが詰まっているんです。ファンタジー好き男子の夢とか夢とか夢とか……。そもそもエルフで大きいなんて邪道ですよ。えらい人にはそれがわからんのです。むしろこのばあいは、エロい人。


「……やっぱり……おおきいほうがいいのかな……」


 ニケアがじぶんのむねをさする。そのしぐさにグッときた。だいじょうぶ。あとでオレがさすってあげるからね。


「なんでだ、なんでニケはよくてあたしはダメなのさ! おなじ、ないもの同士じゃんか!」


「っうか、胸の話はいいんだよ! アステマ……。おまえ、この状況をわかっているのか?」


 ジェラートも増えた。食糧問題はいっそう深刻度を増した。


「ふふん。そうくるとおもったよダイスケ。どうせ食糧のことでしょ? それならだいじょうぶだよ。……あたしに、いい考えがある」


 自信満々といった様子でアステマ。こいつのいい考えって、嫌な予感しかしないけど……。


「いちおう聞くけど、で? どうすんだよ?」


「ロークとブーケの分を減らせばいい」


 ……鬼かおまえ。


 いや、悪魔か。


「ヒッ……」「あっしらですかい……」湿度を帯びた視線をおくる哀れな老人2人。


「なんか文句あんの! あんたら老い先みじかいんだから、すこしは遠慮しなさいよ! この居候! 無駄飯食らい!」


 ――バシッ。


「いたっ」


「おまえが遠慮しろ!」くってかかるアステマに、オレはチョップをお見舞いした。

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