ニケアVSアステマ。カーン!(金属音 バトル1
「……はい、ダイスケさん」
ふんわりとした笑顔をうかべるニケア。そのままオレに頭をあずけてくる。耳のさきが、ちょんとオレの二の腕にあたる感触。よかった……いつものかわいいニケアにもどったようだ。冷気も止んでいる。
「……ふぅん」
みるとアステマは、メラメラと紅いオーラをだしていた
何故に!?
「ダイスケの……嫁。ねぇ……この娘が、ねぇ……。へー」
ニケアに近づき、品定めするように下から上へジロジロとみる。その視線はねちっこくてじつに感じがわるいものだ。……アステマのこういう表情はじめてみた。いつもは脳天気にバカがつくくらいの軽い、なーんも考えていないような表情なのに。
「……アステマ?」
「なーんか……」
「どうかしましたか? アステマさ――」
首をかしげて問うニケアを、さえぎるように放たれたのはアステマの言葉。
「パッとしない娘ねー」
にぱっとした笑顔で、そんなことをいう悪魔。
パキッ。
ニケアの足下が再び凍る。
「まーだ、お子様じゃない……、あ、ごめんなさいねー、ほんとうのこと、いっちゃってー、ニ・ケちゃん」
「(――キッ)ニケは……お子様、じゃ……ない、です……」
「えー? だって、胸なんてぺったんこじゃない。ね? ダイスケ?」
「そうぺったん――ちょ、オレにそんな話をふるな! ……って、オレはぺったんこも好きなんです! だから無問題!」な? みんな? かわいければいいよね!
「そ、そうですよ! ダイスケさんはぺった……。……む、胸がおおきければいいなんて幻想ですよ、いまどき流行りませんよ!」
「そうはいっても、大きいのがすきなのが男なんだから。あたしみたくさあ」
そういって両手ですくうように持ち上げて、前屈みで胸強調ポーズをするアステマ。
「いや……わるいがアステマ。お前。いうほどぜんぜん大きくないぞ……むしろ小さいほうだと思うけど……。あのさ、気になっていたんだけどさ、おまえ悪魔っ娘コスになってから、なーんか胸大きくないか?」
「――(ギクッ。……)」
「あー、その反応! もしかして? おまえ、パットかなにかいれてね?」
「!? な、そそそんなこと、ないし!!」
「……怪しいな。だっておまえ、前にみたときかなりぺったんこ系だったじゃん。手でかくしてたけどぜんぜんなかったじゃん! おかしいじゃん、こんな短期間で大きく――」
「……そんなの、なんでしっているんだ。ダイスケさん……」小声の低音でニケア。
……うっわ、墓穴。
「「そ、その話は置いておいて!」」
オレとアステマがハモる。お互いの利害の一致をみた。この話は……マズい。
「……と、とにかく! ニケちゃんはさ、どうみても子供だってこと。結婚はさー、はやいんじゃない? おとなになってからでも――」
「お、おとなです! こうみえても、ニケは170才ですっ」
……あ、170才なんだニケア。いままでエルフに年齢を聞くのは失礼かなーと、聞いていなかったけど……さすがはエルフ。オレの十倍は生きているんだ。その170才が人間に換算して何才かまったくわからないけど。見た目は、華奢なこともあって、人のJS高学年くらいの幼さを感じさせる。
……なんだよ? そんな娘にオレが、いかがわしいことしているだって? いいんです! こうみえてもニケアは170才なんだからねっ! だからセーフ。誰がなんといおうとも、全力でセーフなんだからねっ!
「あーざんねん。あたしなんか680才だから。エルフかなんかしらないけどさあ、相手がわるかったねー」
680才て。さすがは悪魔アステマ。エルフのさらに上をいっていたか。エルフにまして人間換算で何才か、まったくわからない。ちなみに見た目はJCくらい。ニケアよりは大人っぽいけど、まだまだ子供感はぬぐえない。
「だからー。あたしニケちゃんとちがってさー、おとななんだよねー。超おとな」
「………………………ババァ」
「あ゛!? なんかいった――」
「それに……その黒い衣装」
「衣装がなにか?」
「あれですか、お年を召された女性が急に露出度が高くなる、あれですか?」
「……ちょ、やめようねニケア」
「……ぐっ」奥歯をかむアステマ。
「焦りすぎですよ………………………ババァ」
「あんだとゴルァ! ガキエルフ! やるか!」
「やってやりますよババァ!!」
――ヒュパッ。と拳を構えるアステマ。
……こいつ炎魔法使えるんだよな。
――パキキ。と、手に氷剣を生やすニケア。
……そんなこともできるんだニケア。
って、止めないと。
「ストーップ! ストーップ!!」
オレは二人の間に入って、ごういんに引き離す。リアルファイトは勘弁してほしい。
「そもそも! アステマさんは、ダイスケさんの何なんですか?」
「えっ? あたし……えっと、あたしはあれだから……」
「あれってなんですか? ニケはダイスケさんの嫁。妻ですよ。ね? ダイスケさん?」
「…………うん」オレは頷く。
「で、アステマさんは? ダイスケさんの何? ただの他人ですよね? せいぜい知り合いとかそのていどの仲ですよね」
「あ、あたしは……」
「はっきりと言葉でいってくださいね……ふふ」
余裕の表情をうかべるニケア。嫁という圧倒的マウントをとっている。
「あたしは……」
アステマはオレとの関係性を、なんていうんだろう? 知り合い? 友人? どれもしっくりこない……。そんなんじゃない気がする。言われてみると、オレもよくわかんないんだよな……アステマがどう思っているのか気になる。
「あたしはダイスケの……」
「ふーん。ダイスケさんの?」
「ダイスケの――せ、セフレなんだからねっ!!!!」
「そうそうセフレ……って、うおい! アステマ!」
「!? セフレ!!!!!!?」




