トラックに撥ねられ、異世界の果てまで~~~イッテ9
「 (∩・∀・)∩ワッショ-イ!!」
トラックにはねられた。次の瞬間。
目をひらくと、満面の笑みをうかべる少女がいた。
おもいっきり両手を挙げている。
「わたしはアステマ。異世界の女神だよ」
「女神?」
女神と名乗った少女をみる。
映画なんかでよく目にする古代ローマっぽい白いヒラッヒラの衣装。ところどころ金の装飾具。
――うん、女神の衣装イメージって、そんな感じだよね。
おおきな紅い瞳と、紅いショート髪。
――可愛い。よく似合っている。
耳の先はすこし尖っている。
――エルフみたいだね。いいね。
笑顔でみせる、白い歯には牙。
……牙?
コウモリのような羽。
…………ん?
黒い尻尾。先っぽトランプのスペードみたく尖っているやつ。
はいアウトーー!!
「おまえ悪魔だろ?」
「は? あくまじゃねーし!」
「だって、その黒い羽と尻尾」
「羽と尻尾がどうか?」
「それ悪魔の、だよね?」
「カッチーン。あたし、あったまきた! ふっざけんな!」
「え……。あの……」
「おまえ、リアルでみたことあんのか! 女神!」
「……ない、です」……あたりまえだ。そんなのない。
「じゃあ悪魔は? リアルでみたことあんのか? 人間のくせに! おう!」
「それも、ないです……けど」
「じゃあ、なんであたしが悪魔なんだよ! おまえの勝手なイメージだけで決めつけんな! あたしは女神だ女神!」
「はっ、はい」
すんごい剣幕。……なんで初対面で、ここまでキレられなきゃならないのか。
「二度とあたしに悪魔とかいうな、わかったか! つぎ言ったら殺すからなオマエ」
殺すて……。
……女神はそういうこと、ぜったい言わないと思う。でも……。
「はい、スンマセンッッシタ!!」
こういう面倒なときは、言葉に勢いだけつけて謝罪しておけば、場がおさまることをオレは知っている。
「よろしい」
満足げに女神(自称)が、うなずいた。
☆
「で、あの女神さん? オレはなにをすればいいんでしょうか?」
「ん。いい質問だねー。ヒントは(∩・∀・)∩ワッショ-イ!」
「は?」
「うー。(∩・∀・)∩ワッショ-イ! はいコレ着てコレ」
アステマから渡された『祭』と背に大書きされた水色の半被。
……意味不明。
「あの、ヒントとかいいんで……。言葉で説明してくれます?」
「なんだノリわるいなー。見矢川ダイスケ。あんたといえばお祭りでしょ! 世界最強のお祭り男! よっ! 男のなかの男! 勇者の中の勇者! (∩・∀・)∩ワッショ-イ!!」
「見矢川? ダイスケ?」
「ダイスケェ! ぅうあれをみてみろ!! これ言ってみたかった。キャハハ」
勝手にはしゃぐ女神。オレは困惑する。
「え? え? ……」
「……なんなのその薄い反応。てれびでみるのと大違いじゃん。やっぱあれは営業用のテンションなんだ、がっかり」
「オレ。皆川ダイスケ」
「え…………ミナガワ?」
「うん」オレはうなずく
「お祭り男。ミヤガワじゃなくて?」
「オレはミナガワ。見矢川ダイスケって芸能人でしょ? 関西出身のお笑い芸人の。TV番組の『異世界の果てまでイッテ9』とかに出ている……」
「……………………」
「あの女神さん? その沈黙はもしかして……」
「…………そう? あんた似ているとおもうけど……」
あ、あれだ。外国人はみんな顔がいっしょにみえるというやつだ。
「ぜんぜん似てないけど。だいたいオレ高校生だし。まったくの別人」
「…………やっば」
「……もしかして? 間違え?」
「…………………………………………しまった」