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西暦2017年のゾンビパニック ⑴  作者: あげだま
1/1

「奴ら」との死闘

ゾンビから逃げる夢を見ました。

あまりに面白かったのでノベルにしておこうと思います。

1、2話くらいで夢の内容が終わるのでそこからは妄想しながら。

登場人物...

主人公: 男性。大学3年生。同窓会を機に帰省をする。栗山とは小学校からの親友。

栗山: 男性。 主人公と同じく大学3年生。地元の大学に通っている。

岩崎: 女性。 主人公らとは違う学区、出身中学。

高橋: 女性。岩崎の親友。






【発端】

実家のあるこの街に帰省するのは今年の正月以来だ。

大学3年目の夏、僕は田園を走る電車から夕日を眺めた。 車内は寒いほど冷房が効いていて、7月後半の暑さは年々増しているように思えた。 すでにぬるくなったコーラを飲み干し、実家の最寄駅に降りた。


「ただいま。」

半年ぶりに発した言葉が 玄関に響く。 靴を脱ぎリビングに向かった。


「おかえり〜、予定より早かったわね。 手洗いうがいしてきなさい。」

母はいつもと変わらず夕食を作っていて、妹は買ってもらったばかりのスマートフォンとにらめっこ中だった。 机の上には1枚のハガキ。 僕を実家に呼び寄せたハガキだ。


「○○中学校 ○期生 同窓会のお知らせ」

中学を卒業した頃は同窓会なんてずっと遠くの日だと思っていた。 その日付は3日後に迫っていた。

遅めの夕食を済ませた後、僕は眠りについた。




【その日】

〜3日後〜


街には17時の鐘が鳴り響く。 僕はまた車から外を眺めていた。

「遅くなるようならライン送ってね。 」

車で会場のホテルに送ってくれた母はそう言って帰って行った。 会場には多くの旧友たちが揃っていた。

着慣れないスーツに違和感を感じながら僕は受付へと足を進めた。


同窓会は無事に進み、各々自由に談笑していた。用意されたビールと烏龍茶を交互に飲みながら旧友たちとの思い出話に花を咲かせた。 その時だった。


受付の方でなにやら騒ぎが起こっていた。 遠くで聞こえる女性の悲鳴、警備を呼ぶアナウンス。

しかしそれに気づいたのは会場の扉付近にいた僕と親友の栗山だけだった。


「なんだろうな今の。誰か叫んでなかったか?」

彼はそう呟いてグラスのビールを飲み干した。 小学校の頃から少し大人びた性格の栗山とは早いうちに打ち解け、僕らは仲良くなった。 顔を合わせるのは3年ぶりだ。


「どうせ酔った奴が暴れてるんだろ、1組の林とかガブガブ飲んでたぞ。」

僕はそう言ってトイレに立とうとした。 会場を隔てる重い扉を押した時、目の前に人影が見えた。

親しい友人なら挨拶でもしようと顔を伺った。 それが初めての「奴ら」との邂逅だった。



焦点のあっていない目。

青黒く変色し、所々出血している皮膚。

鼻をつく匂いと獣のような殺気。



扉の先には同じようなのが何体もいる。 僕は反射的に叫び声をあげ、その足を会場に引き返した。

その場にいた全員が僕を見る。 僕はふと学年集会で表彰された時に全校生徒から注目された瞬間を思い出していた。


「外に何かいる...! 誰かが襲われていて、警備の人が、


誰もが僕の声に耳を傾ける中、鋭い叫びが会場に響いた。

ゆっくりと僕は振り返った。

さっきの「奴」が入ってきてしまった。 そうだ、僕は扉を閉め切っていなかったんだ。

そう思う間も無く「奴」は近くの女性に覆いかぶさった。


止めようと「奴」を引き剥がそうとする者、さらなる悲鳴をあげる者、状況が飲み込めず戸惑う者。

僕らの思考は目の前の現実に追いつけずにいた。 そこへ一石を投じたのは館内アナウンスだった。


「全館に連絡します、 ただいま当ホテルは何者かの襲撃を受けています。 各自避難を急いでください。

繰り返します。ただいま当ホテルはー。」


アナウンスと同時に警報がけたたましく鳴り、非常口を示すランプが点滅し始めた。

まさに自分たちが非常事態に飲み込まれていることを実感した。

誰もが非常口へ走り始めた。 そこにはさっき「奴」を止めに入った者もいた。

僕は襲われた女性に目をやった。


「...っ!」

不自然に曲がった首からはどくどくと血が流れている。 すでに動かなくなっているその身体を

「奴」は貪っていた。

腕を、腹を、顔を。 人が人を喰う常軌を逸した光景に硬直していると、


「おい! 何やってんだ! 逃げるぞ!」

栗山が僕の背中を強引に押した。

非常口には向かわなかった。


「こっちの従業員通路ならすぐにホテルの裏口に出れる。 非常口はロビーに繋がっちまう。

今はこのホテルから離れよう。」

僕たちは外へと走り出した。



【ナイトラン】

栗山の言った通り僕らはホテルの裏口に出た。 未だに僕は何が何だかわからなかった。

不安と恐怖で押しつぶされそうになる。 むせ返るような夏の夜に、僕らは2人で歩き続けた。


「どうなってるんだよ一体...。 まるでゾンビ映画じゃないか?」

栗山はそう呟いた。 もしあの時、他の皆と同じくロビーに続く非常通路へ進んでいれば 僕らは再び「奴ら」に遭遇していただろう。 彼の冷静さに救われた。

幸いホテルの裏口から続く通りでは「奴ら」に会うことはなかった。20分ほど歩き続けると僕らはようやく他の生存者に出会う。


「もしかして○○ホテルから逃げてきた人?? 」

不安げにそう訪ねてきた女性2人は僕らとそう変わらない年だった。 その人たちと僕らは違う学区に住んでいて、どうやら同じホテルの隣の会場で行われていた同窓会の参加者みたいだ。 母校を聞いてみるとやはり隣の中学校の人間だった。

彼女たち、岩崎と高橋は2人で逃げ出した後、この付近で迷っていたらしい。


「あのバケモノは一体何なの...? 私たちの学校の人も襲われちゃって...」

「携帯も全然繋がらないし、どうしよう。」


「えっ、携帯が繋がらない?」

彼女らの発言で今更僕は携帯を見つめた。 確かに電波が入っていない。


「てことは、電話やメールで助けを呼べないってことか。俺たち、ここに取り残されちまったな。

ひとまずどこか屋内に隠れよう。このまま外にいれば奴らに出くわしちまう。」

栗山の一言で僕らは住宅地を目指した。



【拠点】

「ごめんください、開けてもらえませんか。ごめんください。」

昔ながらの大きな日本家屋を見つけた僕は玄関を叩いた。 しかし返答はない。


「おかしいわ、まだ7時なのに電気がついてない。」

岩崎は不安げに家屋を見つめている。すると、


「裏口、こっちにあったよ〜。」

付近を見回っている高橋と栗山が戻って来た。


「そっちはどうだ? 裏口からも声をかけたが何の返事もなかった。」

やはりこの家に人はいないようだ。 僕らは満場一致でこの家に隠れることに決めた。


最初は空き家かと思っていたが、中に入ってみると人の住んでいる形跡が見られる。

干されたままの洗濯物、ラップで保存されている惣菜、ホコリの積もっていない家具、

きっとここの住人は早いうちに避難したのだろう。

家の中の安全を確認し僕らは雨戸を閉め、玄関にはタンスやテーブルを使ってバリケードを設置した。

これでひとまず安全な場所を確保できた。

僕と栗山が力仕事をしていた間、女子2人には家の中の食料や衣服を集めてもらった。


「携帯の電波は入らないけど、電気と水道はまだ大丈夫みたい。料理もお風呂も大丈夫だよ。」

「布団も人数分あるみたい。 今夜は何とか過ごせそうだね〜!」

どうやら今日を乗り越えるには十分みたいだ。

簡単に晩ご飯を済ませ、順番に風呂を済ませた。

寝るときは30分ごとにベランダでの見張りを交代する。 2度目の交代を終えた僕は豆電球が淡くオレンジに照らす天井を眺めながら今日を振り返った。



未だにこれが現実だと信じられない。 目の前で人が殺されたんだ。

人が人を喰っていた。いや、「奴ら」はもう人ではない存在なんだろう。

今はただ奴らに遭遇せずに生き残る道を探さなくてはならない。

早くこの悪夢が終わって欲しいことだけを願って僕は眠った。





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