表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金鎖の解師  作者: 畑中希月
第二章 解師を目指す少年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/27

七 魔法院へ

 カゥが去り、カヌトは以前のように、一人で全ての授業を行うようになった。


 ロウは四か月後に迫った試験のために積極的に勉強し、ミナキも彼に引っ張られる形で熱心に学んだ。そのせいもあって、魔法図の授業だけでなく解呪の授業も、次第にロウに追いつけるようになってきた。


 その他の授業は、相変わらず基礎を固める段階だった。しかし、ミナキはこれまでのように自分の現状に落胆しなくなった。得意な科目がふたつあるだけで、自信とはこうも違うのかと、驚いたものだ。


 それに、ロウという競争相手がいることに、ミナキは勉強の手応えを感じるようになっていた。例えば、難しい問題にぶち当たった時でも、ロウはとっくの昔にこの問いに答えられたのだと思えば、俄然やる気が湧いてくるのだ。


 それは、ロウも同じらしい。ともに受ける解呪の授業で、ミナキのほうが先に手を挙げると、ものすごく悔しそうな顔をする。その様子を見て、カヌトは笑った。


「二人は好敵手だな」


「違います。基礎が全然違うのに、そんなことあるわけないです」


 ロウは認めようとしなかったものの、内心で危機感を覚えているのは明らかだった。


 二人の競争は生活全般にも及んでいて、床を雑巾がけする際にも、どちらが速いか競うこともあった。これにはカヌトも両手を腰に当てて呆れていた。


 勉強の息抜きとしてカヌトが教えてくれる乗馬は、馬が一頭しかいないので、競り合うことはできなかった。それでも、自分のほうがロウより速いに違いないと、ミナキはひそかに思っている。


 日々は飛ぶように過ぎ、試験を受けるため、ロウが魔法院に戻る日がやってきた。


 魔法学術協会ニギ支部は、ナサーンの西にそびえ立つアシ山脈を、二テュマン(二時間)ほど登ったところにあるという。ミナキとカヌトは、登山道の入り口までロウを見送りにいった。


 その日は雨が降らず、雲間から太陽が覗いていた。荷物を背負い、山道に備えて靴を履いたロウは、ふんぞり返った。


「じゃあな、ミナキ。俺はこれから学年一の成績を取ってくるぜ。俺との差がますますついちゃうな」


 ミナキは思い切り冷たい視線を、ロウに送って見せた。ロウがいなくなれば、しばらくは家が広くなって、せいせいするというものだ。ロウも負けじと睨み返してくる。

 カヌトが二人の間に入った。


「まあまあ、二人とも、それくらいにして。ロウ、試験は落ち着いて受けなさい。君の実力なら何も心配はいらないんだからね。それから――気をつけていってきなさい」


「はい」


 ロウは珍しく素直に頷いた。ミナキはいつ出そうか迷っていたラーナンを、ロウの前に突き出す。


『どうしようもない成績を取って、先生の評判を落とすようなことだけはしないでよ。……頑張ってね』


 ロウは呆気に取られたような顔で、ラーナンを見つめていた。だが、すぐにいつもの小生意気な表情になる。


「当ったりまえだ。結果を楽しみに待ってろよ」


 ロウは身体を山道に向けたあとで、ちらりと振り返る。


「じゃあ、いってきます」


 ミナキは手を振った。山道を歩いてゆくロウの後ろ姿が見えなくなるまで、ミナキはカヌトとともにその場に佇んでいた。


 ロウを見送ったあとで家に帰る途中、ミナキと並んで歩いていたカヌトが言った。


「実はね、ミナキ。明日、君にわたしが用意した試験を受けてもらおうと思っているんだ。君の試験は、ロウが受けるものとは違って、一日で終わる予定だがね」


 ミナキは目を輝かせた。この四か月間で、ロウが受ける「試験」というものへの興味が最高潮に達していたのだ。何より、今までの頑張りを、成績として評価してもらえるのが羨ましかった。

 カヌトはミナキの目を見て、ほほえんだ。


「試験の内容は明日まで秘密だ。だけど、範囲は今までに学んだこと全てだから、今日中にしっかり復習しておきなさい。今日は授業はしないが、分からないところを質問するのは構わないからね」


 ミナキは張り切って大きく頷いた。


 家に帰ってから、ミナキは早速、復習に取りかかった。家事や食事など、生活に必要な時間以外は復習にあて、疑問点があればカヌトに質問する。カヌトは魔法具を作る手を止めて、質問に答えてくれたけれど、夕方になる前にふらっと外出し、しばらくの間、戻ってこなかった。


 時間がどんどん過ぎていくにつれ、ミナキはどれだけ勉強しても、足りないような気がしてきた。つい夜更かししそうになって、明日は失敗するわけにはいかないのだからと思い直し、寝床に入る。だが、気が高ぶってなかなか眠れない。今頃、ロウも同じような気分でいるのだろうかと思いながら、ミナキは遅い眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ