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健全なる幽霊の掟

第二章 健全な幽霊の掟


 暗い森の路上にある、一台の車が颯爽と明かりを照らし動き始めた。そこには、さきほど旅館で騒いでいた3人組であった。運転をしている琢磨は言った。

「いやー、しかし本当に出るなんて、正直驚いたよ。」

「意外にも翔太が怖がらずに帰ってきたのは、逆に驚いたけどな・・・。」

 前の座席に座っている信也が言った。

「たしかに・・・。」

 翔太は、二人が言う事に聞く耳を持たず、一人悩んでいた。

「どうしようかな、これから? こいつらに見えてない事が救いだな・・・。というか肩が重いなあやめが居るからかな?」

 翔汰の横で、ニコニコした笑顔で見つめるあやめ。

「おい、翔太大丈夫か? 冗談だって。」

「いや、琢磨。意外にも、この車に付いて来たりして・・・。翔太の横とかさ。」

と、信也が言った。

「やめろって、いるわけ・・・・・・。」

 笑いながら琢磨が、バックミラーで、翔太の横を見た。そこにいたのは、居るはずのない女がいた。琢磨は、急ブレーキを踏んだ。

「うわ、どうしたんだよ急に。」

「いや、今うしろに・・・・・・。」と、もう一度、バックミラーを見た。

「あれ、いない。」

「なにが・・・。」

「さっき、翔太の横に女が居た。」

 信也も、それを聞いて、後ろを見渡したが、なにもいない。その中で、翔太は、ばれる事を恐れ、慌ててくさい芝居をし始めた。

「居るわけないじゃん。ほら何にも居ないよ。」と、慌てて言った。

 焦りながらも、居る事を一生懸命に隠す。本当は、頭や体にあたっているのに、気にせずにしていたら、あやめが機嫌が悪そうに言った。

「そろそろやめてくれない。」

 あやめが言っていつことに気が付かなかった。

「そうだよ、翔太が言ってるんだぜ。居るわけないじゃん。」

「だよな・・・。ごめん気のせいだった。よし帰ろう帰ろう。」

 琢磨は、改めて車のアクセルを踏み、走らせた。翔太は、安心したようで、背凭れにもたれかかった。安心して、あやめを見たら、全力パンチが飛んできた。

「ぶぁっ、いて・・・。」

 思い切り、頭を殴られた翔太を睨み付けた後、ソッポ向いた。信也は、急に痛がった翔太をみて笑い、琢磨は気にせづ運転をしていた。

「何してんだよ、翔太。寝ぼけて頭でも打ったか?」

「ん、あ~うん。なんでもない」

 翔太は、何で怒ったのか分からなかった。結局、あやめの不機嫌の理由が分からないうちに、、翔太の家の前に到着した。

「よし、着いたぞ。今日はごめんな。じぁっ、また今度な。」

 後部座席を振り返り言う琢磨。

「うんじゃ、まぁ、生きて帰ってこれて良かったな。」

と、最後の最後まで、信也におちょくられた。

「はいはい。じぁ~な。」

翔太は、ドアを強めに閉めた。二人を見送ると、もじもじしていたあやめに近づき、話を聞こうとした。けれど、何も言ってくれない。

「どうしたの? なんか言わないと分かんないだろ。」

「・・・・・・・・・。」

「まぁーいいや、ちゃんと着いて来いね。」

 あやめは、下を向いて黙ったまま翔太の後に着いて行った。翔太の家は、マンション二十階あるうちの、4階の207号室にあるが、現在エレベーターが壊れているために、歩くはめに。買い物をした後に、苦手な肝試しのせいで、たった四階でも相当疲れる。

「ふぅー、着いた。」

「・・・・・・・・・。」

 翔太は、玄関の扉を開けて入ると両手がふさがっている為、そのまま扉が閉まってしまった。急いで買い物の荷物を置き、扉を開けようとすると、あやめは、気にすることなく通り抜けて入ってきた。

「あっ・・・、ごめん。まぁ、入ってゆっくりしていいよ!」

 翔汰は、買って来た荷物を冷蔵庫にしまいに行った。

「・・・・・・・・・。」

 下を見ながら、相変わらず一言も話さないあやめ。

 翔太もいい加減、黙っているあやめに嫌気が差し、何で怒っているのかを聞こうと、おちゃの準備をして始めた。お茶には合わないが、お茶菓子にプリンを出した。すると、あやめの目の色が変わり、近づいてきた。そのままテーブルの椅子に座って、翔汰の持っているプリンを見つめる。

「そっそれは・・・。」

「ん、お茶がどうした?」と、分かっていて、冗談を言った。

「ちっ違う。そっちのプリンのほう」

「うん、だからプリンがどうしたの?」

「いや・・・、別に何にも・・・ないよ。」

「ふーん、そーなんだ。食べたい?プリン。」

 翔太は、プリンを片手にあやめの前でちらつかせた。すると、あやめは目をきらきらさせながらプリンを目で追っている。翔太は、これは占めたと思いちらつかせながら質問をすると、瞬く間に反応が変わった。

「わかっわ。言う言うから頂戴。だからねっ、早く。」

「うんうん。それで何で怒ってたの?」

「別にたいした理由じゃないんだけど・・・。あんたが、車の中で私が居るのにずっと叩いてきたから、うっとうしくて・・・はい、そんだけです。」

 翔太は、約束どおりプリンを渡した。

「やったー。ありがとう。」と、嬉しそうに食べる。

 とても満足したような微笑をちらつかせながら、一口一口美味しそうに食べている。

「ふーん、なんだ。もっと深刻なものかと思ったけど、それならそれでこっちもごめん。あの時は、お前が居ないと思わせるためにやった事なんだ・・・。それにしても、そんなにプリン好きなの? 口についてるぞ!」

「え△○#^!$$★Щ・・・・・・・・・。」

「飲み込んでからしゃべろうよ。女の子が、そんな食べ方したらだめでしょ。」

 翔太が言うと、あやめはプリンを飲み込んで口を拭いた。

「うん、そゃー死ぬ前から大好きだから。あと、私女の子って年じゃないよ。もうだって、三十二年前に二十歳で子供産んだときに、死んだから・・・。」

「えっ! じゃー、五十二歳ってことだよね。おばちゃんじゃん。」

 翔太は笑いをこらえながら、つい本音が洩れてしまった。すると華麗なあやめのドロップキックが飛んできた。思いのほか強く吹っ飛び、ソファーに勢いよく倒れた。

「おばさん言うな。しかも、それは生きて居たらの話で死んでるから20歳のピチピチの女よ。ちゃんと見なさい若々しいでしょ。」

「そりゃそうだけど・・・。おば・・・うん若い。」

 翔太は分かりやすいお世辞を言う。あやめに少し睨まれた。

「まぁ、そんなことよりご飯作んないと。ちょっと待ってて部屋にかばん置いてくるから。」

「はーい。行ってらっしゃい。」

 もぐもぐと食べながら、翔太を気にも留めずプリンを穂奪っている。翔太が居なくなった瞬間に、テーブルに置いてある翔太の分のプリンを急いで食べた。

「ふー、夕食でも作るか。あやめも手伝ってくれない。」

「うぶ! うん、いいよ。私こう見えて料理決行できるんだから・・・。」

「そうなんだ。だったら、味噌汁とサラダ作ってくれない? 俺はメインを作るから。あれ・・・。ここにおいてあったプリン知らない? 」

 翔太はキッチンへ行こうとしたとき、先ほど食べていなかったプリンを探すが見つからない。テーブルの下などを探すけれど見つかんない。キッチンに戻り、冷蔵庫を確認するが三つあったうちの一つしか見当たらない。

「もしかしてあやめ食べた。俺のプリン?」

「いや・・・、一つしか食べてないよ。」

「ほんとに・・・・・・。」

 翔太は質問している時、あやめは目が泳いでいる。さらに、あからさまに動揺していた。

「怒んないから、正直に言いなさい。」

「ごめんなさい食べました。」

 観念した様子で、直座にあやまったあやめ。

「やっぱり。あのプリン、風呂上りに食べようと思っていのに・・・。今回だけだからねー」

「はーい。わかりました。」

「じゃー、早速作ろうか。早くしないとおなかが減って仕方ないよ。」

 そうして、料理をし始めた。今夜の献立は、メインにデミグラスハンバーグに味噌汁とサラダだ。翔太は順調に調理を始めている。あやめも、以外にも包丁さばきは旨くきれいに野菜を刻んでいる。翔汰はハンバーグのタネをフライパンに乗せた。

「へー、本当に出来るんだ。」

「だから、出来るって言ったじゃん。ほら、ハンバーグ見とかないと焦げちゃうよ。」

「あー、あぶね。」

 そう言うと、あやめはサラダの野菜の盛り付けまで終えると、味噌汁作りに入った。冷蔵庫の中を確認すると、味噌汁入れる具財を探している。

「あれー。豆腐あるけど、若布ないけどどうすればいい?」

「えっと、あーそうだ買い忘れた。まぁーいいや、確か残ったキャベツあるでしょそれ使ってよ。うち基本、若布ないときはある物で何とかするんだ。」

「ふーん、じゃ適当に千切ればいいのね。」

「うん、よろしく。よし出来た。じゃ先にテーブルに並べてくるわ。食器もついでに。」

「はーい。」

 翔太は、デミグラスハンバーグを食器に乗せると、テーブルを拭いたりしてほかコップや箸などを二人分運んだ。すると、あやめが呼んだ。

「よーし出来た。ねぇー味見してくれない。結構いい感じに出来たよ。」

「うん。ジャー頂きまーす。おっ美味し・・・。」

 すると、最初の一口は美味しいと思ったが、なぜか急に体に激痛が走り味噌汁を吹いてしまった。

「ぷっぅぅぅぅぅぅーーー。」

「ちょっと大丈夫? 急吹いちゃって・・・。」

「大丈夫じゃない。何したらこんな味になるんだよ。ほぼ塩の味しかしないぞ!」

「えっ! うそ、結構自信作だったのに。」

 あやめは、味噌汁をもう一度味見するけれど、別に普通の味噌汁の味しかしない。

「美味しいじゃん。あんたが、舌が悪いんじゃない!」

「いや、どう考えても不味いじゃん。まぁいいやちょっと薄めたら食べれるかな」

「やっぱり、こいつが作る料理美味しくねーだろ・・・。」

「エぇー美味しくないですね。ん?」

 よく見ると、翔太の横に立った先ほどまで一緒にいた玄さんが立っている。それに、当たり前のようにうちの冷蔵庫を開けビールを飲んでいる。よく見ると、リビングに旅館にいた幽霊たちが宴会を始めている。

「ちょちょっと、なんで居るんですか? しかも大勢で・・・。」

と、慌てながら言った。

「いや、お前さんに言っておかないといけない事があったんだ。」

「なんですか? 言っておかないといけない事って?」

「まぁ、立ち話もなんだから、飲みながら話そうぜ。」

 玄は、楽しそうにお酒を飲んでいる。あやめは、失敗作の味噌汁を何度も味見しながら行った。

「玄さん何でここに居るの?」

「いやなんだ、なんせ急だったから送別会やれなかったからな。それもついでにやろうと思ってきたんだ。あっそうだ!お前さん酒とつまみは持ってきてあるから大丈夫だぜ。」

「そうですか・・・。それでしたら、パートしましょうか!」

 ビールを飲むための、コップや紙皿をリビングに運びながらいう翔汰。

「やったー。」

 と、飛び回りながら喜んでいるあやめ。

「というか、幽霊もお酒飲むんだ。」

 あやめは、嬉しそうに幽霊の皆の所へ行った。翔太は、玄の横に座り話をし始めた。あやめとほかの皆は、楽しそうに踊ったりしている。

「で、話ってなんですか?」

「ん? あーそだった。話ってーのは、俺達幽霊についてです。」

 お酒のせいで、テンションが騰がっている玄。

「幽霊についてですか。」

 翔太は改めて考えると、あやめや玄さん幽霊についてなんも知らない。というか、幽霊が居る事を知ったのもつい先ほどだ。それについて教えてくれる玄に対し、不思議と興味が沸いてきた。

「そうだ、じゃーまず最初にお前が知ってる幽霊言ってみろ。」

「えっ、僕が知っている幽霊ですか?そうですね・・・、死んでも死に切れないとか、この世に未練があって成仏できないとかですかね。」

「まぁーそんなとこだろうな。幽霊ってのはお前さんが言ったとおり、この世に未練があったりして、あの世に行けなくなった人間の魂なんだよ。俺達もその一人よ。」

「あの、幽霊って、いつごろから存在するようになったんですか?」

 玄は笑って、お酒を飲み乾すと少しふらふらしながら言い始めた。

「えーと、たしか・・・、縄文時代だっけな。」

「そんな昔からいたんんですね。」

「そうだ、まぁー動物や人間などが存在するころには、幽霊は居たんだよ。」

 玄は、幽霊について詳しく話し始めた。

幽霊は、元々は何かを告知したり要求するために出現してきたんだと。しかし、戦争や争いが多くなり、人に対する怨根にもとずいて復習や執着のために出現し始めた。よく言われる、幽霊は白い服を着ていて、白い三角布を被っているというのは、もう昔の話で今は死んだ世代によって様々なのである。

「そうなんですね・・・。」

「わたしは、こう見えて江戸時代に死んでんだよ。ハッハハハ・・・。」

と、殆んど酔いが回っている。

「えっ、じゃー何歳ですか?」

「たぶん、三百歳ぐらいかな。もう忘れたは・・・。」

「じゃ、徳川家康の事知っているんですか。それに、埋蔵金は本当にあるんですか?」

「知ってるも何も、飲み仲間だもん。埋蔵金か? 確か、ほとんど女に貢いで無くなったとか言ってたな。」

 翔太は、驚いていいのか呆れていいのか分からずにいた。授業で習っている、あの徳川家康が、ただの変体親父だったとは。

「いいよな、わしなんて連れてってもらったことないのに・・・。まぁー、お忍びで行ってたらしいから仕方ないんだけど。」

「あのー、話って幽霊の事だけですか・・・?」

 玄は、あわてて思い出した様子でお酒を一杯仰いでから行った。

「あぁーそうだ! 言い忘れるところだった。これはお前さんに行っておくから、絶対に守ってくれよ。」

「はい・・・。あっ、ちょっと待ってくださいメモ執りますから。」

「早くしろ、また酔いが回ってくるから・・・。」

「はい、いいですよ。」

「今から言う五つの事をあいつに言っといてくれ。幽霊の基本の絶対ルールだ。」

「絶対ルール・・・?」

 玄が言うには、この五つが幽霊の基本の絶対ルールらしい。

  ~幽霊の絶対ルール~

1・幽霊は霊力の弱いところに長時間いないこと。

2・直射日光を3時間以上浴びてはいけない。

3・悪霊に会ってもつるまないこと。(怨念などが移り自分も悪霊になる事があるため)

4・丑三つ時(午前2時ごろ)は、霊力が以上に高くなるからあまりこの家から出ない事。

5・人と恋愛をしてはいけない。

                                             以上

「まぁー、この五つさえしっかりしていれば一週間は大丈夫だよ。」

「いや、5に関しては良くないですか。恋愛って・・・。」

「基本的にいいんだが、人に迷惑になることが多いからそれ防止のためだよ。」

「なんか、学校の校則みたいだな・・・。」

「あーそれから・・・・・・。」

 玄は、急にまじめな顔で翔太を見て言った。

「なんですか? それから・・・。」

「あいつが、ここにいれるのは時間は1週間だ。」

「一週間ですか?」

「まぁーつまり、あいつか成仏するまでの時間だよ。翔太、頼むからあいつの子を絶対に見つけ出してくれ、頼む。」

 玄は、翔太に頭を深々と下げた。

「一週間って、短くないですか。それに、成仏しちゃうって・・・そんな。」

「だから、頼む。あいつはお前さんを信じているから。あいつにも、一週間ってのは言ってある。お願いだ。

「・・・・・・・・・・・・。」と、少し黙り込んで考え始めた。

「わかりました。絶対に見つけます。あいつのためにも・・・。」

「うん、あらためてありがとう。」

「じゃ、僕たちも送別会に参加しましょうか! 玄さんは、さっきから飲んでいるけど・・・。」

 話が終わると同時に、あやめがこちらを向いて話しかけてきた。

「玄さん、翔太に皆の事を紹介しようよ!」

「あーいんじゃねーか。俺は、もう紹介したからいいよ。」

「はーい。じゃーまず、翔太を一番最初に脅かした美崎ちゃんからどうぞ。」

そこにいたのは、翔太たちが最初に見た幽霊の女の人だった。幽霊の中で、絢雨を除くたった三人の中の一人らしいが、黒髪で長く清楚な雰囲気がある。

「えーと、さっきはごめんね。でも、怖かったでしょ!いやー、悪いと思ってたんだけどね。それに・・・。」

「はーい。そこまで、美崎ちゃんしゃべりすぎ。」

「スイマセン・・・。」

 翔太が思っている以上に良くしゃべる。が、彼女は絢雨に止められて渋々元いたところに座った。次に来たのは、トイレでなぜか笑った人だ。見たからに、自分酔ってますといわんばかりにお酒臭い。外見は、お寺の住職のような幽霊だ。

「あの、なんでトイレの時に笑ったんですか?何か、面白いこと言ってましたか。」

「うーヒクッ・・・。おっ、兄ちゃんなんでここに居るんだ? あれここ何処だ?」

 そう言うと、うとうとと寝てしまった。

「まぁー、気にしないで基本酔っているから。」

「そうなんだ・・・。」

「じゃー、もうめんどくさいから一気に言うね。こちらから見て、テーブルの左から死ぬ前は魚屋の店主五朗にその後ろは、女の子二人ゆんちゃんに薫ちゃんそれに・・・。まぁー、こんなとこ覚えた?」

 あやめは、次々に紹介してくれた。けれど、一気に言われても顔を覚えるので精一杯だ。

「うん、顔は覚えたかな・・・。」

「そっ、じゃ皆どんどん飲んじゃおう。」

「オーーーーーーーー。」

 それぞれ紹介が終わると、送別会の続きが始まった。みんな、あやめとの別れに涙を流すものや、笑って寂しさを隠そうする者もいる。そんな中、一人の男が送別会ようの持ってきた鍋の具合を見て締めを入れようとしていた。

「そろそろだな。おい、あんちゃんうどんあるか?」

「えっ、うどんですか?ありますけど、というか鍋まで持ってきたんですか・・・。」

「まぁーいいじゃんか、それよりうどん持ってきてくれ。」

「わかりましたけど。ちょっと待ってて下さい、取りに行って来ます。」

 翔太が、冷蔵庫まで取りに行こうとしたときあやめが、

「ちょっと待ってよ。私、ご飯派なんだけど。ご飯にしてよ。」

「いや、俺はうどん派なんだよ。俺は、絶対にうどんがいい。」

「あのー、だったら多数決にしたらいいんじゃないですか?」

「それもそうね。翔太にしてはいい考えじゃん。じゃ多数決ね。うどんがいい人、えーと八人。ご飯がいいひと、ひーふーみーあれこっちも八人だわ。後は玄さんしだい。ねぇ、玄さん。玄さんはうどん派ご飯派?」

 皆のどちらが来るのかをドキドキしていると・・・、

「俺は、そば派だ。」

「・・・・・・・・・。」

 玄は一人だけ、そばを選択したが皆は寂しい目で玄を見ていた。みんな、何も聞こえなかったかのように、ほかの具体策を考えた。

「しかたない、じゃんけんね。」

「おう、いいじゃねーか。最初はグーじゃんけん・・・パー。」

「いやったー勝った。じゃ、ご飯ね。」

「くそーこの右手がこの右手が・・・・・・。」

 翔太は、ご飯を取りに行った。しかし、炊飯器を開けるとそこには水浸しのご飯があった。それに、さらに不幸にも冷蔵庫にうどんがなく、あったのはそばだった。自分が炊飯器と冷蔵庫を見る前にじゃんけんなんていってしまったための結果だ。。この状況で、ご飯長けてませんでしたと、うどんじゃなくてそばだったとは言いにくい。でも、ない物はないと言わないと・・・。

「あのー、その・・・。」

「なによ、翔太。」

「ご飯炊けてなかった。それにうどんじゃなくてそばだった。」

「なにーーーーーー。」

 あやめと男勢は共に叫んだ。

「それなら先に言えよ。どうすんだよ、どっちもねーなんて。仕方ない、ここはお互いになかったと言うわけだからそばでいいんじゃねぇーか?」

「それもそうね。翔太、早くそば持ってきて入れてよ。」

「はーい。今すぐ。はいどうぞ・・・。」

 そうして、一人を除いて少し不満を持ちながら締めのそばを啜った。

なんだかんだで、鍋も食べおわり、悲しくも楽しい送別会の時間が次第に過ぎていった。すると玄が、翔太の家の時計を見ていてつぶやいた・・・。

「もうこんな時間か、長居しちまったな。よーし皆そろそろお開きだ。」

 時計を見ると、午前0時半だった。

「えーもう。なんか早かったな・・・。」

 残念そうにしている。みんなは泣くのを我慢しながらあやめにお別れの言葉を言い帰っていく。

「じゃーね、絢雨。あの世でも元気でね。風引かないでね、じゃあね。」

「うん、あの世で待ってるね。みんな・・・・・・。」

 そうして、玄以外の皆は帰っていった。

「じゃー、もうかえるわ。よろしく頼むぞ! あやめあまり迷惑かけるんではないぞ。」

「わかってるよ。元気でね玄さん。」

「あー、じゃさいなら・・・。」

 玄は、一言添えると静かに外で待っている皆と帰っていった。

「さーて、食器でも洗いますか!」

「あーいいよ、仕方ないから私がしてあげるから休んどいて。」

「えっいいの? サンキューそれじゃー、俺風呂ためてくるわ。」

「ご飯どうすればいいの?すてていいの、あんだけびしょびしょなら食べれないでしょ。」

「あー、それは俺がするからいいよ。」

「わかった。」

 翔太は、お風呂にいき洗い始めた。洗う終わった翔太は、蛇口を捻った。すると、服を脱ぎ始めお風呂場にあるボックスかからパジャマを用意した。準備が終わるころにはちょうど、お湯がたまっていた。

「おっ、ちょうどいい。さぁーて、早く入ろう。」

 食器を洗っているあやめは、翔太がお風呂に入っている事は知らずに、食器を洗っている。

「よし、終わった。あれ、翔太遅いな・・・。」

 食器を洗い終えると、翔太の事が気になりお風呂場のほうへ向った。洗面所には誰も居ないが、その隣にある洗濯機の中を覗くと、さきほど翔太が着ていた服が入っている。あやめは、少し動揺していた。いくら幽霊でも、いくら死んでから何十年たっても二十歳の女の子に変わりはないのだから。

「まさか、お風呂入ってるのかな? どうしよう、早く出ないと翔太が上がってくる。」

「ガタガタガタ・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 あやめの勘が当たり、出ようとした時にしかも目が合ってしまった。ついでに、下も見てしまったあやめは目を手で隠した。その瞬間に頭が真っ白になり、翔太に思い切り力を振り絞り顔面を殴った。

「きゃーーー。」と、絶叫する。

「えっ、ちょっえ・・・。うわっぶぁっ・・・。」

「ちょっ早く着替えてよ。」

「分かったから、早くでってくれよ。着替えられないから。」

 下半身をバスタオルで隠しながら、あやめを追い払う翔汰。

 あやめは、何も言わずに出て行った。着替え終わり翔太は、あやめに謝り部屋の案内をし、寝室へと向った。

「いててて、あーベットふたつあるからそっち使えよ。」

「本当にごめん、なかなか来なかったからその・・・。」

「いいよ、こんぐらい。とにかく今日はもう寝よう。」

「うん。じゃーおやすみ。」

「あー、おやすみ・・・・・・。」

 二人は、ベットに入って横になった。すると、今日の事で疲れていたのかすぐに目を閉じぐっすりとと夢の中へ入っていった。




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