ループ
ただ、「ループループ、またループ」という文が書きたかっただけです。すみません( ^ω^)
ぐるりと回る感覚に、あぁ…まただなんて暢気に思う。お腹にじんわりと広がる温かさも、それに伴う激痛もあるというのに、頭だけが眩暈とは違う感覚を訴える。
痛いのやだなぁと呟くと、私にそれを与えた彼は顔をぐにゃりと歪めた。可笑しいの。…私を刺したの、あんたじゃん。
「ははっ、はっ…ぶっ、さいくー…」
突き刺さったのは包丁かナイフか。そんなの知らないし、知る必要もない。私の役目はただこのまま息絶えて、そして彼をいつか、そう、不確定ないつかに、彼を、きっと、そうだ、私…
「さっさと死ねよ、クズ」
「…う…ん、ごめ…ね…」
「はやく、死ねよっ!!」
泣くなよみっともない。いつかの彼が私に告げた言葉を、彼に向けようと口を動かして
そこからもうブラックアウト。
頭が意識がぐるりと回る感覚がして、身体が軽くなって、先程の激痛なんて無くなって、ぱちりと目を開く
「よく寝てたな」
隣から声がかかってそちらを向くと、さっきまでぐちゃぐちゃな顔を晒していた私の幼馴染である彼が無邪気に笑ってた。ああ、そう、また駄目だったんだ。
「肩貸してくれてたんだ。ありがとね。でも起こしてくれてよかったのに。部活始まっちゃうよ」
焦げ茶色の短髪が太陽を反射する。こちらを見つめる瞳と見え隠れする八重歯が、年齢より幼い印象を与える。
もうすぐ進級だというのに、勉強にはちっとも関心を向けず野球にばかり時間を割く熱血男子。生まれた時から近くにいる、大事な幼馴染。
私の言葉ににかりと笑い、軽い動作で立ち上がった
「おー、そろそろ行かないと、主将が探しに来そうだ」
ばいばいとお互い手を振りまた明日。彼の背中が見えなくなってから気づいたが、学校の中庭に居たらしい。 そのまま芝生に座り込み、ゆっくりと膝をだく。心に酷い失望感と少しの安堵が同時に押し寄せる。苦しい、苦しい。あぁ、神様の意地悪。
端的に言うと、私は呪われている。それも神様に。偶然突然理不尽に私は呪われてしまったのだ。
ある日見た夢の中で神様が言う。ゲームをしようと。私は言う。何の為に?神様は笑って私を見つめた。拒否は許さない。期限は神様が飽きるまで。内容は簡単で、ひたすらループを繰り返して、幼馴染に殺されること。様々なやり方で苦しんで殺されること。理由は簡単、暇だから。
そんなこんなで、かれこれ3桁は超えるほど彼に殺されている私。今日を終えて丁度一ヶ月後、突然私に対する殺人衝動にかられた彼が殺しに来る。殺害方法は神様の気分次第。死ねばループループ、またループ。もう壊れてもおかしくないのに、私の精神はある一つのことで支えられてここにある。
何度も繰り返す内に気がついたこと。私がループに捕らわれていると同時に、幼馴染もまた、時のループに捕らわれている。その証拠に、時を逆行する毎に、前回の記憶が少しずつ彼に残っている。何回目かの時から、彼は相談してくるようになった。悪夢を見るのだと。誰かを殺す夢なのだと。…それは、私を殺す夢なのだと。
どうやったら神様は飽きてくれるのか。どうにかして、彼をゲームから逃がしてあげなくては。
彼は関係ない。呪われたのは私。彼はただ巻き添えを食らっただけ。関係ないの。
先程は、一ヶ月間彼に嫌われるように行動し、倉庫で殺された。…少しでも、彼の罪悪感が消えればいいと思っての行動。
初めて、彼に嫌われた。想像以上に、辛かったけど。
「…まだかなぁ」
まだ、神様は飽きないのかなぁ
嫌だ嫌だと泣きながら、呪われた私を殺した未来の幼馴染達。私の死んだ後、貴方達がどうなったのか知る術も無いけれど。貴方達の犠牲の上に、いつか、どこかの幼馴染がループを、この悪趣味なゲームを抜け出せたら
私はようやく、心から貴方達に謝罪が出来ると思うんだ。
多分、神様はすでに飽きかけている。
お互いに恋愛感情はありません。ただ、家族のように思ってる感じです。