60 鬼の少女とボッコボコ
「対戦相手を指定したいんですけど」
リヒャルトの元へ訪れてから二日後、怪我の完治の直後、烈火はコロシアムの受付にまでやって来た。
さっそくバトル、の前に。
切り出したのはそんな言葉である。受付さんは特に驚きもなく事務的に受け入れる。
「対戦相手はどなたでしょうか?」
「夜鳥・楡」
「今すぐの対戦を希望しますか?」
「あ、いや……えっと、十日後とか、できませんか?」
今すぐ戦っても勝てそうにない。ちょっと経験積ませてください。一、二戦くらいは十日あければできるだろう。微妙に期間の空け方がリアルな怪我前提の考え方であった。まあ、先回ので三日休んだし、こんなものだろうという予測だ。B、Cランクの時のような連戦は望むべくもない。
「試合の予約ですと、対戦相手の都合を聞かねばなりません。夜鳥様が受付に訪れた際にご確認いたしますので、それまでしばらくお待ちください。夜鳥様が訪れなかった場合は残念ながら希望は受け付けられませんので、了承ください」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
定型的にそれだけ言って、烈火は今日の試合参加を申し出る。それでいつものように観客席に――行く前に声をかけられる。
「お前さん、別に気にしてない的なこと言ってたわりには即行リベンジかよ。負けず嫌いだねぇ」
「……別にそういうこっちゃねぇよ」
気配は気付いていたので滞りなく、烈火はダグの軽口に応える。
並び歩いて、席へと移動。どっこらせとおっさん臭い掛け声だして、ダグは座る。
「で、こんなすぐに挑むんだ、なんか勝ちの目でもあんのか? 弱点見つけたとか」
「いんや、なんも」
マジでなんもない。そういう意味で再戦を希望したわけではない。ちょっとした別の事情が組み込まれてしまったのだ。
まあ戦うことになった段であの電撃対策になんないかなぁ、と昨日リーチャカに小剣を新たに注文しに行った際に尋ねてみたが――
「電気を通さない刃?」
「ああ、無理か?」
「……無理ダ」
「そうか……」
「そういうのは鍛冶師に頼む仕事ではない」
「だよな……」
と一蹴された。当たり前だ。ともあれ一週間後に小剣は追加で造ってもらう約束だけしてその日は帰った。戦ってばっかりだから、剣のほうにも負担がかかるのだ。魔物相手じゃない分、そこまで酷く早く磨耗はしないが。
あっけらかんと首を振る烈火に、ダグは呆れ顔。一応、そこまで馬鹿じゃないと評価してたのにと、若干の失望が混じる。
「おいおい、じゃあなんでまた喧嘩なんぞふっかけやがったよ。ほんとにただの負けず嫌いのガキ根性か?」
「あー、うん。なんていうか……挑発に乗っちゃったというか……」
「は? 夜鳥が挑発してきたのか?」
「いや、夜鳥さんは関係ない。ちょっとおれのいずれぶん殴るべき宿敵というか、なんというか」
意味がわからん。ダグは理解に努めることを諦めた。たぶん、凄くつまらなくて小さいどうでもいい理由なのだろうと察した。
大枠で正解である。
「ふぅんあっそう。で、けど挑発に乗るくらいだし、勝てないわけではないと踏んではいるのか?」
「どうだろ。でも絶対勝てないとは思わない。相手も人だ、突きうる隙はどこか探せばあるもんだろ」
「鬼族だけどな。なんて揚げ足取りに意味はねぇわな。ともあれ安心したぜ、クライ。ちゃんといつも通りにふてぶてしい。勢いでやった暴挙ってわけじゃなさそうだ」
「賭けるからか?」
「それ以前に俺の見る目の問題だ。俺の御眼鏡は高級だぜ? かなった誰かに不様は晒してほしくねぇ、それは同時に俺の不様を晒すことだからな。恥ずかしい」
「勝手に肩入れしてる奴の羞恥心なんざ知るかよ。鼻眼鏡でもつけて踊ってみろ、恥ずかしいなんて感情吹き飛ぶぜ?」
烈火は含み笑いを織り交ぜて言った。勝手に期待されて、勝手に失望するなんて身勝手されても困るってもんだ。
もとより賭ける側は身勝手なもんなんだけどな、ダグは言いいかけたそれを閉ざすために煙草を取り出した。
しばらく沈黙の中で煙だけがふたりの間に漂っていると、掲示板に動き。決まったか、と軽い気持ちで視線をそちらに向ければ
「え……?」
――第二十二闘技舞台にてAランク闘士クライ・レッカ対Aランク闘士十三位「逆位置の死神」アベル・ザ・リバース。
「じゅう、さん、い?」
きっかり十秒間、烈火は硬直した。
そして長時間の脳細胞労働の結果、情報の理解に成功すると思わず叫んだ。天に向かって理不尽を訴えかけるようにして、目の前の小さいおっさんに。
「だーぐ! ダグ・ラック、ダグ・ラックさーん! なんか情報くれー!」
「あ、わり。眼鏡屋行かなきゃだから」
「だーぐ!」
ニヤつきながら煙草なんか吹かしてないで! 頼むから!
鬼の少女の名を夜鳥・傘といった。
名でわかる通り、夜鳥・楡の娘であるらしい。あの人、娘とかいたんだな。鬼族だし外見で年齢は計れないもんだろうが、ちょっと驚いた。
で、なんで娘さんがお父さんぶっ倒してとか物騒なことを頼んできのたかと言えば、それは父親の過保護への反感らしい。
傘は今年、学園の四年生へと進級した。六年制の学園なので、ようやく半分を終えて、折り返し地点に立ったという頃だ。その四年生にはひとつの大きな行事があるという。それは他大陸への少人数遠征だ。
学生数人で討伐者を雇い、指定の大陸にまで向かう。そして数日過ごして帰ってくるという、だいぶ危険な課外授業である。
無論、傘もその遠征に友人とともに向かう――はずだった。
しかしこの遠征、危険の伴うものであるため保護者の同意が必須であった。傘の保護者は無論、父たる楡。彼女は父に遠征の話をしたという。すると、どうだ。彼はそれを同意しなかった。
もとより学園入学の際にも難色を示した父だ、直接的な危険を被る場に大事な娘を出したくなかったらしい。鬼族といっても少女で、未熟で、傘は戦闘的な方面に特化しているというわけでもなかったから。
「この種の親御ってのはいる、過保護って奴だな。まあ、確かに遠征は危険が多い、過ぎた保護ではなく当然の保護判断だとも言えなくはない。だがうちの学園はそれが入学前には決まってる。普通は入学段階で了承済みだろ。だってのに毎回それが面倒の種になってる」
遠征をこなさなければ進級は難しい。絶対必須ではないものの、単位の都合が非常に面倒になるし、大きな経験を逃すことになる。方々の印象も悪くなる。なにより傘自身が遠征を強く希望している。
「そこが一番重要な点だ。生徒が強く希望している。ならば教師は最大限の努力する。まあ無論、それは本人のそれには敵わないがな」
なんとか傘は説得を続けた。友人たちの遠征は既に決まって、先にどこかの大陸へと旅立っても、傘は諦めなかった。ひとりになっても楡に許可をくれるように頼み込んだ。
そして楡はひとつの条件をつけて折れた。
その条件とは――「この父より強い者を護衛に同行させろ」。
無茶だ。苦茶だ。無茶苦茶だ。そんな条件無茶に決まっている。
この遠征で雇う討伐者はBランクと決まっている。それは事前に決められていたことであり、また金銭面の問題でもある。まあ、Aランクの討伐者をそんな多数雇っていては金が幾らあっても足りない。またそもそも数が揃わないのだ。
Aランクの討伐者は上位者ゆえに数が少ないし、それに討伐者は基本的にランクによって雇う際の基本金が決まっているのである。
で、Bランクの討伐者ではまずAランク闘士である夜鳥・楡には敵わない。ただのAランクならいざ知らず、一時とはいえ数字を持って名を得ていたほどの闘士だ、対人戦経験の少ない討伐者では分が悪かろう。それなりに腕の立つ討伐者の人に頼んで戦ってもらったこともあったが、あっさり敗れた。父は強かった。せめてこっちもAランクの討伐者でも用意しないと勝負ならない。
だが学園は金を出してくれない。ならば自腹で、ともいかない。足りない。金がない。父は反対なので無論、金を出してくれるはずもなく。
行き詰った。行き止まった。
「――で、おれか」
「そうでありんす。討伐者としてはBランクで、闘士としてはAランクという稀有な立ち位置のぬし。わっちの最後の希望でありんす」
「ふぅん」
しかし夜鳥・楡。あの顔、あの性格で過保護父だったとは。頑固そうではあったけど。
「その頑固親父を同行させるのは駄目なのか」
「それじゃ遠征の意味がねぇだろ」
とリヒャルト。
親子身近な者同士で旅に出てもあまり意味がない。知らない者との旅という点もまた経験なのだ。それ以外の諸々の経験はできるにしても、重要な一点を削るのは教師として頂けない。
「時間がねぇ。遠征の期間はあと一ヶ月以内に出発しねぇと不参加と看做されちまう。俺も生徒が積極的なら、可能な限り叶えてやりたい。だが親子問題に口出しもできねぇ。なんとかならねぇかと方々手を尽くしてた。その一環としてキッシュレアにも話はもちかけてた」
「キッシュに?」
確かにキッシュなら……あぁ、Aランクだよ。あの人。いや事情を話せば格安で請け負ってくれそうではあるが、既にいないし。
「で、実はお前を推薦されてた」
「……マジで?」
キッシュまじで知らんとこで暗躍してるな。信頼は嬉しいけど、そういうことは言っておいてほしかった。あ、いや待て先が読めた。
「当初は鼻で笑った。あんな間抜け面にうちの大事な生徒を任せられるわけがねぇだろ、まだしもひとりで行かせたほうがマシだわってな」
やっぱりか、このボケが。
「だったんだが、今日意見が変わった。まさかこんな短期間でAランク闘士にまでのし上がれるってんなら、もしかするかもしれねぇ」
というかあれ、コロシアムを勧めたのもキッシュじゃなかったっけ。まさかまさか、キッシュもしかして全部計算済み? 嘘だろ、怖い。
そこは偶然の一致として。単純な親切心がバタフライ・エフェクト並みに変に作用して計略っぽく見えただけだとして。
だが、ここでひとつ問題。
「おれ、つい先日、夜鳥・楡に負けたんだが」
「なんじゃと」
「使えねぇ……」
傘の真っ当な驚きは置いておくにしても、即刻手の平返しのリヒャルトは許すまじ。
「うっ、うるせぇな! Aランク戦の初戦の相手だったんだよ、ちょっと及び腰で入ったんだよ!」
「まず及び腰になる時点でダッセェ。間抜け面の上にダッセェとか、生きてる価値あんの? 荒縄なら用意してやるけど?」
「自分で使え! つーか、幻想種とやりあうのもはじめてだったし、相手さんの情報も特になかったし、その上初見殺しされたんだぞ、そりゃ負けるわ!」
「言い訳だけは一人前か。これだからガキってのは嫌だぜ。あの負けは偶然だー、実力を出し切れてなかったんだー。馬鹿かお前、どんな負け方でも実戦だったら死んでるっつうの。なあおい、実質幽霊さんよ」
「言い訳じゃねーし! 真っ当な事実だし! 負けは認めた上での負けた理由の補足だし!」
「それが言い訳ってんだ、間抜け。言葉の意味も知らねぇで使うんじゃねぇ。可哀相な脳みそしやがって、本読め猿野郎。文化人になってから出直せボケ」
「あー」
物凄い悪態の応酬に、間の傘はいづらそうに声をあげる。懸命に自己の存在をアピールし、不毛な会話に終止符を打とうとがんばる。というかこんなリヒャルトの姿ははじめて見たぞ。いつもと全然違うんだが。
「そのぅ、少々よいかや」
「……なんだ、夜鳥。今結構忙しいんだが」
「話くらい聞いてやれよ、器の小っせぇ教師様だな。あれか、お前はお猪口か、お猪口の裏か」
「なんだと、てめぇ」
「なんだよ、こら」
「じゃから! わっち、わっちの話!」
流石にふたりは黙る。今回の主役は確かに傘だ。なにを無関係に大人気ない口喧嘩をしているのか。
気付けばちょっと恥ずかしい。特にリヒャルトは教師として相応しくない顔を見せてしまったかもしれなくてバツが悪過ぎる。
ようやく黙ったふたりに、傘はやれやれと肩を撫で下ろす。そのまま、話の中で気に掛かった点を問いかけてみる。烈火に。
「……初見殺しとは、まさか刀の紋章魔法のことでありんすか」
「うん? そうそう。打ち合った瞬間アウトとか、まともに戦えもせんかったわ」
リヒャルトはなんか言いたげな顔をしつつ沈黙を守る。これ以上、醜態は晒したくない。
その横で烈火と傘の会話は繋ぐ。
「いや、あれは仕方なかろう。それよりも、それを引き出させたという点が重要でありんす。ぬしの腕前は本物のようじゃ」
「そうかなぁ」
「父は雷撃系の魔法を好んで使いんす」
「ん?」
鬼だけに雷様かよ。おヘソ隠さなきゃ。
じゃなくて、傘は真面目に真顔で烈火の目を見る。
「わっちが可能な限り父のことを話そう。対策も考えよう。どうか後生じゃ……勝ってくりゃれ」
少女の懇願は、真摯であった。
烈火からして、断るのに随分と躊躇うような――いや、違う。欺瞞だそれは。
玖来 烈火は迷わない。
こんなにも可愛らしい少女から真正面から頭を下げられたら、断れるはずもなかろう。頼られてこその男だぞ。
「女の頼みは断れないって、玖来さん、女好きすぎじゃありません?」
(違わい! 真摯な姿勢に心うたれた的な!)
軽蔑の眼差しはやめてください。客観的に見て人助けだろうが。
それに一応、理由は複数あってその合計で決断に至ったのだ。たとえばあんな負け方しちゃリベンジしたかったのは本音だし、近い内に別大陸に向かうというのも傀儡探しには必要だった。学園から収入も入るし、リヒャルトに大きめの貸しを作れるのもいい。
それと――転機が訪れたら乗っかれっていうのも修行の一環らしい。ジジイが言ってた。環境の変化に対処するのも、別の場所での生活するのも己を鍛える要素だと。
環境に慣れてしまうとすぐに腐るのが人間だから、できるだけ変化をつけて生きていけ。ジジイの方針である。面倒極まるぜ。
しかしそれに則れば、そろそろコロシアムにも慣れてきた。次のなにかを求めるべきといえばそうなのだ。たまにはジジイの言うことに従うのもいいかもしれない、今は少しでも強くなりたいから。
「女の子も慣れたら次ですか?」
(ほんと、マジそういうのじゃないって。今日の七ちゃん、なんか手厳しい……)
と、そろそろ内面でばっか考えてないで、外へとだそう。返事待つ不安げな少女に、きっと望む言葉を届けてやる。
「わかった。勝つわ――期待して待ってろ」
鬼の少女は、花咲くように笑った。
そのどきりとするほど魅惑的な笑みを見て、烈火は最適を選べたのだと確信できたのだった。
――ボコボコにされた。
――ボコボコにされた。
――ボッコボコにされた!
もうなんだよ、なんばしよっと、なんなんなの。
ダグの言った通り、「逆位置の死神」アベル・ザ・リバースは外見が恐ろしく強面の威圧感バリバリの御仁だったよ。目つき悪魔みたいだし、輪郭なんて骸骨みたいだし、黒い服とかまさに死神みたいだし。
まあ、目つきの悪さは魔族ゆえの瞳孔が縦に長くて、血のように真っ赤だからで。骸骨輪郭は細身で頬がこけてるだけで、黒い服は服が黒いだけだ。それぞれ別個に特徴として挙げればそんなに怖くない。組み合わさってかつ、おどろおどろしい雰囲気が統合してこそのお化けみたいな、死神みたいな畏怖を振り撒くのだ。
夜に振り返ったところに佇んでたら悲鳴上げるレベルで怖いわ。子供とか昼でも半べそだろ。
しかし逆位置――外見に反して内面は普通にいい人、紳士らしい。コロシアム闘士内でも評判がいいとかなんとか。
向かい合った烈火にも物腰柔らにに丁寧な挨拶してくれたり、いい試合にしましょうとか言われたりした。その顔が怖くって仕方なかったけど、なんとか面と向かえた。
とはいえ試合開始となればそのまま悪鬼。加減などあろうはずもなくぶっ飛ばされた。
初手で魔法使わせまいと急襲仕掛けた烈火に、同じく開始早々で殴りかかってきた。その反応速度、初速、思い切りのよさは烈火以上かもしれない。
開戦直後のぶつかり合いは、烈火の負け。魔族の剛力にぶん殴られた。なんとか小剣で防いだが、その小剣が軋む。防御ごとぶっ飛ばされた。
床に転がり、なんとか飛ばされた勢いのまま立ち上がったが、その段階でアベルは詠唱をはじめていた。前後衛を個人で担う――キッシュと同じタイプ。
これはまずいと小剣投擲。真っ向からキャッチされた。刃に手の平を傷つけながら、握り止められた。握力で砕かれなかったのは、リーチャカの腕前ゆえだろう。
んで、引っ張られた。
咄嗟にワイヤーは外したが、踏鞴は踏んでしまう。体性制御は玖来流にかけて整えるも、隙は晒す。接近の時間を与える。
魔法詠唱しながら突っ込んできた。
思わず悲鳴を上げかけた。スーパー怖い顔した魔族のお方が低い声で暗黒的な歌を歌いながら突貫してくる――怖い。
しかも素早い、外見に反して軽快な走りっぷりで――やっぱり怖い。烈火は泣きそうだった。
あとあと思えば、あのおっかない顔もまたビビらせる材料として活用していたのだろう。死神を名乗ることで恐怖を煽るハッタリとしているのだ。したたかで巧み。自分を把握している、できる限りを尽くしている。そこは素直に上手いと思うし、学ぶべきところだ。
かといって超怖いんですけどね。
その恐怖のせいで、烈火はギョッとしてしまって凝固する。ほんの一瞬だったが、勝負に一瞬のロスは大きい。
なんとか横に逃げ転がって、そこを魔法で撃たれて回避不可。はい終了。あっさり終了。負けました。
ぶっちゃけほとんどなんもできないまま終わった。
加減の効いた絶妙な威力の魔法に煙を吐いていると、すぐにアベルが駆け寄って傷を治してくれた。不安そうな恐ろしい顔で「大丈夫ですか」って、必死さはやはりいい人なんだなと思えた。ボコボコにされたけどね。
やはり数字持ち、名持ちの壁は厚い……。
「そういや鬼族ってなんで和装なんだ。ファンタジー世界なのに」
「往々にして創った神子によってその大陸に住まう住人の文化に影響がでるものでしてね。
それで言えば鬼族の大陸は第五大陸ですので、大陸創造主たる五の姉ぇが趣味を広げました。あの人は和服大好きですから」
以前見た第五神子は和服だったが。似合うというレベルを超越して他の姿が思い浮かばないくらいに似合っていたな。
「ん? コロシアムで見た吸血鬼は洋装だったような」
「そりゃ吸血鬼は黒いタキシードにマントと相場は決まりきってますからね、私が横槍いれてでもそのように教え導きましたよ」
えっへん偉かろう、と偉業を成した風情で胸を張る七ちゃんでありましたとさ。
魔族の特徴
幻想種。
人と外見的な特徴に差異はほとんどない。ただ、瞳孔が猫のように垂直のスリット状であり、赤または金色をしている。
魔力が風霊種並に高く、身体能力が獣人並に高い。魔法の扱いに長け、マナの取り込みが他の種族よりも効率的で早い。完全に人間の上位存在であり、不得意もない超人。生殖能力が低く、子が生まれにくい。そのため個体数が全種族中で最も少ない。
寿命は三百年ほど。
これでようやく全種族の特徴を書き終えた……。
多いな!