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七と烈火の異世界神楽  作者: ウサ吉
幕間 コロシアム編
67/100

side.【人誑し】その一










 洗脳の異能を持つ第二傀儡【人誑し】――三崎サンザキ 誠一セイイチ

 二十一歳。元大学生であり、どこにでもいる軽いノリした男である。ただそこそこに顔立ちには優れて、言葉巧みで、女受けはいいほう。そういう人間だった。

 彼はとある事情で命を落とし、そして他の傀儡たちと同じく神子と出会う。第二神子オーランジュ、その少年のような神の子は言った。


「好きにしなよ。楽しく生き返るといいよ。ぼくはそれを見ている観客さ。そのための小道具に、君には力をあげるからさ――好き勝手に遊んでよ」


 三崎は意味がわからなかった。

 異世界とか、魔法とか、傀儡とか、神子とか、殺し合いとか。

 全然、意味がわからなくて、だから深く理解しないでいいかと考えるのをやめた。ただ目の前の出来事に対処して、できるだけ楽しく生きようと思った。自称神の子オーランジュの言った通り、好き勝手に。

 あらゆる理不尽たる超常の力をくれると言うから、じゃあ女を好きにできる力がいいと言った。できれば捨てる時にも簡単に済んで、面倒の起こらないようなのがいいと。街頭アンケートに答えるくらい気軽で、しかし欲にまみれた本音である。

 では魅了と洗脳などではどうかと提案されて、内容を聞けばまあそれでよしと受け取った。冗談半分だった。

 本当にそんな力を得ていた。

 幾度か適当な女で試してみた。話しかけただけで顔を赤らめ、ちょっと会話しているだけで擦り寄って、笑いかければわかりやすいくらいに目がとろける。触れて念じれば一発で言いなりになり、好きに扱えた。笑ってしまった。その笑顔でまた女が寄って来る。

 それから三崎はオーランジュの説明を熱心に聞いた。ここが異世界だとかいう馬鹿げた話を、信じることにしたのだ。まあ、世にも奇妙な化け物に、変な人間みたいな生物が普通に暮らしているんだ、信じざるを得まい。それに、彼には洗脳の神様能力があって、だから余裕を持てた。異世界だろうと女がいるなら別に困らない。

 人とは違う人みたいな別種族、三崎は別にそれでも可愛いならよしと洗脳した。自分のモノとした。彼はそういう意味での差別はしなかった。

 三崎のスタート地点は第二大陸――精霊種の住まう土地だ。そして精霊種は美形が多い。三崎は笑いが止まらなかった。手当たり次第に食い漁り、飽きるまで女をコレクションしては楽しんだ。

 この世界は不便が多く、面倒が多彩で、今まで当たり前だったことが容易じゃない。コンビニすらないクソったれた場所だった。だが、女はいい。

 この世界の女はいい。地球よりもずっと美人が多いし、種類も豊富だった。外国人みたいな外見の女も抱けたし、ロリも熟女も食えた。誰も文句は言わない。どころか喜んで身体を差し出し、こちらを喜ばせようと必死だ。日本語で全部通じるから面倒もない。

 この世界の女はいい。飽きて捨ててもなにも言わないし、別に用途を与えるだけで飛び上がって喜ぶ。適当に頭を撫でてやるだけで死をも厭わず尽くしてくれる。イカレちまうことはあっても、他の女が処理してくれる。

 この世界の女はいい。敵対者が隣に住まう故に、誰であれ最低限の魔法を嗜んでいたからだ。戦士として生きる者も多い。つまり、女を抱き込めば、それで戦力となって勢力を拡大できた。用途がひとつだけでないのがお得で便利だった。

 魔物とかいう雑魚も邪魔ではあったが、女どもを使えば容易に排除できた。邪魔な男どもも女どもに任せて取り除いた。

 だが三崎は自身を狙いに来るだろう六名の傀儡を思い、なによりももっともっと自由に生きるためにさらに多くの女を欲した。女とは兵隊で、金づるで、最高のお人形だ。多ければ多いだけいい。種類が豊富なほうが、その日の気分にあった楽しみが頂けるというものだ。

 三崎は手を広げた。女たちを統率し、近くの適当な村々を襲って女を補充する。その際に抵抗があってこちらのストックが減ることはあったが、どうせまた増える。問題ではない。数が増えれば制圧も楽になる。

 手始めに第二大陸を全て支配下に置き、それから別の種族に手を伸ばすのもいい。どうやらこの世界にはまだまだ他に楽しめそうな女が多いらしいと知ったのだ。強い女を傅かせるというのも、また趣きがあって楽しめる。

 別に、世界征服だとか、そんなチープで大それたことは考えていない。というか政治とか治世とかは面倒だし、誰かがやってくれたほうがいい。

 ただもっと楽に生きたい、楽しく生きたい。その欲望に際限はなく、無限に膨れ上がって多くを求める。色んなものを得たいと思う。

 それでも別に構わないはずだ。なにせ異世界なんてクソみたいに娯楽もなくてつまらない世界に放り投げられた不幸な俺には、楽しむ権利がある。神の子に保証された権利があるのだ。

 誰憚ることはない。天罰だってありえない。楽しめばいい。悦楽に浸って、面倒些事は全部女どもにおっ被せて、ひとり笑い続けるのだ。

 どうせこの世界は作り物。そこにあるのはお人形。創った者からはどう扱ってもいいとお墨付きまでもらってる。

 ここは玩具箱。精々遊び倒して暇を潰すさ。

 そうして長らく享楽に堕した生活を送っていた三崎だったが、不意に終焉は訪れる。



 その日、三崎 誠一は恐るべき絶望の具現と出会い、全てを壊される。



「貴様が――第二傀儡【人誑し】だな」










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