記憶喪失
はじめまして、あいらと申します。
夢に見た話を基に書いたので突っ込み所が多いかもしれませんがぜひ読んでやってください。
なぜ、ここにいるかはわからない。気付いた時にはもうここにいたとしか答えられない。誰も答えてくれないし、聞ける雰囲気ではない。ってか聞ける人間もいないけど。
パニックで停止しそうな頭をフル回転させる。状況は目の前の悲惨な光景を見れば一目瞭然。此処にいてはまずい、逃げないと確実に狩られる。
誰に?
わからない。けれど、本能で理解する。ここから逃げなくてはと。
でも、どこへ?
周りには生きてる生物なんていないし、遠めに見えるのは生物だったものを襲っているナニカ。明らかに人間でない動きに逃げ切れるなんて希望は見出せなかった。
それでも、私は生存本能に従い後ろ手にあったコンクリートの建物に猛スピードで走り出した。それこそ、無我夢中で。さっきの奴等に気づかれたら私の必死の走りなんてあっという間に無駄になることはわかっていたけれど。それでも、手足が千切れんばかりに振り回し建物へと走り続けた。
運がよかったのか、食事に夢中なのか、私は奴等に気づかれる事なく建物に侵入できた。あの光景を見て“食事”と理解してしまう辺りやっぱり私の頭は壊れているんだと思う。
だって、今までそんな環境にいなかった私が何の説明もなしに状況把握ができちゃってるんだから。
今まで?
自分の中で疑問が生まれる。いままでってなに?
むしろ私ってナニ?ダレなの?
一種の記憶喪失だろうか。自分の事も、周りの環境の事も、なぜ此処にいるかもわからないのに目にした光景を頭は勝手に理解できてる。
ま、考えても一人では答えなんて出せそうにもなかったので建物内を探索してみようと思う。もしかしたら、生き残りがいるかもしれないしね。
…まただ、生き残りって、どういうことよ。わけがわからない。なんだか、もう一人の自分と頭の中で会話しているみたいな気がしてくる。そろそろ精神もやばくなってきたのかな?
この建物は見た目コンクリートだったが、内装は木造建築物風だった。パッと見の外見からして四階層になっているようだ。中央に走る廊下を挟んで両サイドに各部屋が並んでいる。和室だったり、洋間だったり。かと思えば、行き成り台所があったり。一番奥は大広間みたいになっていて階段は両端にあった。これなら奇襲がきてもどうにか逃げられるかな。ま、両サイドから攻められれば無理だけど。
1階は誰もいなかった。それもそうだ。ただの受付フロントみたいなロビーがあるだけで二階へと続く階段があるだけだから。フロントの奥に扉があるのが見えたけどなんとなく覗いて見る気にならなくてスルーした。
階段を極力音を立てずに移動して行く。どこに何がいるかわからないこの状況で警戒するなと言う方が無理な話だ。三階の長い廊下を歩いていると段々と話し声が聞こえてきた。
嬉しさのあまり普通に足音を立てて走り出すと、中間過ぎた辺りの部屋の襖がさっと開いた。私はギョッとしたが通り過ぎてしまいそうになった為慌ててキュッと靴音を鳴らし停止した。中から顔を出した人?も私に驚いたのだろう。同じくギョッとした表情だった。
「……なにしてんのさ!早く入りな!」
そう小声で急かされ私は返事をする暇もなく急いで部屋へと逃げ込んだ。