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1話から6話はこちらにまとめましたのでどうぞ読んでやってくださいませ。


http://lovemona.blog.so-net.ne.jp/2014-10-20

 森の中に二人の少女が立っていた。葉の間を通り抜けた光がまばらな陰を落としている。

「分かった。分かってた。信じた私がバカだったの。結局、あんたも皆と一緒なんだ」

 眼鏡をかけた少女は、降ろした両手の拳を強く握り締め、押し殺すように言い放つ。そして振り返った。肩まで伸びた黒髪が激しく揺れる。

「皆と一緒って言うのは、褒め言葉と受け止めていいのかしら」

 眼鏡の少女と相対した髪の長い少女が答える。正面からは受け止めない。顔を少し傾け、目だけを相手に向けている。二度、瞬きをする。長い睫が震えた。手に持った小杖をゆらゆらと揺らしている。

「またそんな言い方をする。私はあんたのそういうところがずっと嫌だったんだ」

「可笑しなことを言うわ。私はずっとこうよ。それを好く人もいれば嫌う人もいる。それが分かっていて、私はこうしている。あなたもそれを知っていて、私に近づいたんでしょう。分かっていて、隣にいることを選んだんでしょう。私じゃない。あなたが決めたことなのよ」

「あなたなんて言い方しないで」

「じゃあ、どう呼べばいいのかしら?夜は激しい、寂しがり屋の小猫ちゃん?」

「そ、そんなことを言うな!」

 顔を真っ赤にして焦る。

「本当は求めているくせに口ではイヤだイヤだと拒否するばかり、いざ手を止めたらもの欲しそうな顔をする子犬ちゃんかしら」

 嬉しそうに意地悪が続けられる。

「止めろ!誰かが聞いていたらどうするんだ!」

「そうね、どうしましょう?」

 背後で聞こえた落ち葉を踏む足音に、眼鏡をかけた少女が振り返る。

「言い訳をさせてもらうと、聞いていたんじゃない。聞こえてきたんだ」

 制服を着た長身の少年はそう言って髪をいじる。

「ヒサノリ………、なんでここに………」

「んん…・・・、たまたまだよ。たまたま」

 少年はゆっくりと歩き、眼鏡の少女の横を通り過ぎた。そして長い髪の少女の隣で止まり、その腰を優しく抱き、顔だけ振り返る。

「そう、たまたま彼女に呼ばれていただけだ」

 腰を抱かれた少女は妖艶な笑みを作る。

「な、なんで、そんなっ…」

 少女の質問を少年の嘲笑が打ち消す。

「しかし知らなかったな。君は夜は激しいんだ。いじらしい声を聞く機会が無かったのが残念だ」

「ふふふ。激しい声が好きなら私がいくらでも聞かせてあげる。これから毎晩」

 少女の長い指が、少年の頬を撫でる。

「二人で、私を騙していたの?」

 力をなくした声に激しい叱責が返される。

「騙したですって?先に騙したのは誰?私に黙ってヒサノリと会っていたのは誰?」

「あれは・・・・・・、そんなのじゃなくて」

「そんなのってなんなの?それにやましい気持ちが無いのなら、どうして隠したの」

「まぁまぁまぁまぁそれぐらいにして」

 少年はやんわりと宥める。

「なにが目的なの?」

 眼鏡の少女は標的を少年に変えた。

「なんで私達を仲違いさせたの?なんで私と付き合って見せたの!」

「ああ、そこに気がついたのかい。さすがだね。でも遅い。遅いなぁ」

 いつの間にか先ほどまでの勢いを失い、とろんとした目でしなだれかかっていた少女から、少年は身を離す。

「僕が欲しかったのはね、君の愛なんかじゃない。夜の激しい声って言うのは聞いてみたかったけどね」

 少年は右手を横に伸ばし、何かを掴んだかのような仕草を取った。それに合わせて眼鏡の少女の目が見開かれる。

「僕が欲しかったのは君の心の傷だ。彼女に黙って僕に会ったという罪悪感、それが欲しかったんだ」

 じりじりと後ずさりする少女をゆっかりと追いながら、少年は高らかに宣言する。

「最初に開いた穴は小さくとも、やがて必ず大きくなる。おかげでようやく僕も本来の自分の力を発揮できるようになった。宇宙電離体四角獣が一騎、ガイアバンデッドの力をなっ!」

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