まさかの落ちゲー その1
「ここは……?」
ドアの外に足を踏み出した途端、いきなり別の場所へ飛ばされた。
周りにはさっきまで部屋にいた俺たち五人とシフォンさん、そして知らないおっさんたち。
このおっさんたち、みんな同じ顔をしていて、小太りで何故かパンツ一丁というすさまじくキモい格好をしている。
どこかにおっさん大量生産工場でもあるのかと疑いたくなる。
俺たちの立っている場所は学校の二階と三階の間くらいの高さで、下にはガラスの容器のようなものが上に口を開けて広がっている。
そのガラス容器は平らな形をしており、奥行きはあまりなくて、横と上に広がっていた。
カロリーメイトの箱を大きくして透明にして縦置きすれば、こんなような形になりそうだと思う。
一体ここで、何をするというんだろう。
「皆様に挑戦していただく最初のゲームは、いわゆる落ちゲーです」
「「え!?」」
シフォンさんの説明に、思わず俺と小町さんは声をあげる。
「皆様には身体を変形させながらここから下に飛び込んでいただき、横一列にそろったら消えてもらいます」
「「ええええぇぇぇぇ!?」」
また俺と小町さんの声がハモった。
俺たちの世界にも「手とリス」という、上から降ってくる手とリスを横一列に並べて消していくゲームがあったが、あれを人間でやれというのかー!?
「ちょっと待った!」
理解が追いつかないので、俺はシフォンさんに質問する。
「身体を変形させてって、どうやってやるんですかっ!?」
「落ちている途中なら、ご自身のイメージ通りに身体を変形させることができます。足から頭を生やすことも可能です」
気持ち悪いだろ! そんなの!
俺は他のメンバーを見た。
無表情なのか怒っているのかよく分からない顔をしている麦穂。
露骨にイヤそうな顔をしていることりん。
おろおろしている感じの小町さん。
いまいちよく分かっていなさそうで、相変わらずニコニコと笑顔を崩さない結渚ちゃん。
「ここから落ちて怪我しないんですか?」
至極まっとうな質問を小町さんがする。
「大丈夫です。ゲームですので。もちろん死にもしません。ゲームですので」
理由になってるのか、それは。
「まぁ、とにかくあれだ。やってみよう」
何故か麦穂が前向きな発言をする。
「何でそんな、乗り気なの?」
「そんなの脳みそも筋肉でできてるからに決まってるでしょぉ?」
俺の疑問にことりんが答える。
その言葉にイラっとした様子を見せて、麦穂が言い返す。
「お前の残念なおつむよりはマシだ」
まーた始まったよ。
「まぁまぁ、おばさんたちー」
だから結渚ちゃん、火に油だってば。
「あ、あの!」
空気を読み取ったのか、無理矢理話題を変えるように小町さんがシフォンさんに質問する。
「ここに一緒にいるおじさんたちは何なんですかっ!?」
「その方たちは皆様と一緒にここから落ちていただきます。メンバーが足りませんので」
うわー、おじさんたちかわいそう。
NPCだとは思うけど。
「と、とりあえず一回やってみよ? ね? ゲームだから怪我しないって言ってるし、死ぬこともないって言ってるし、イヤになったら諦めて帰ればいいんだし。ね?」
小町さんがみんなをまとめようと頑張りだした。
こういうとき年長者って大変だな。
「せっかく来たんだしぃ試しにやるくらいならことりんはおっけぇでぇす」
「あたしもですー」
ことりんと結渚ちゃんが賛成し、俺たちのこのゲームへの挑戦が決まった。
ちなみに俺は、意見すら聞かれなかった。