落ちゲークリア
ゲームはあっさりクリアできた。
女の子たち4人が左端に縦一列に並ぶ。
落ちる順番はじゃんけんで決めて、頭の上に足が乗っても文句は言わない。
俺一人だけが何故かハブられて、右端に一人で立つ。
あとは落ちてくる熊のぬいぐるみが勝手に動いて横一列にそろい、ラインを消すのをひたすら待つ。
自分が上に戻されたら、また同じように女の子は左端に、俺は右端に降りる。
「熊のぬいぐるみぃ。かぁわぁいぃいぃ」
「たまにはこういうのも悪くないな」
「熊のぬいぐるみはぁことりんみたいなかわいい女の子に似合うのぉ。脳筋には似合わないんだからぁ」
「ぬいぐるみと同じで頭が空っぽのお前には確かにお似合いだな」
「まぁまぁ、おばさんたちー。こういうのはあたしみたいな幼さを残す女の子に似合うんですよー」
「えっと、ゲームが終わるまではみんな仲良く、ね?」
そんな会話を聞きながら、熊のぬいぐるみが100ライン消すまで待った。
さっきのおっさんとの死闘が嘘のように、特に何事もなく、誰のトラウマにもならずに、ゲームは無事に終了した。
そんなわけで、俺たちは今、初めの部屋にいる。
誰もが表情を緩ませ、さっきまでの死んだような顔が幻だったかのように思える。
「響平君は一億円で何するの?」
「うーん……。全然思いつかないですよ。小町さんは?」
「わたしは欲しいものがありすぎて、何から買っていいのか……。でもとりあえず、新しいパソコンからかな?」
いきなり一億円が手に入るとか言われても、現実感がなさすぎてピンとこない。
よく考えてみれば、特に欲しいものもなかった。
俺の場合は、しいて言うなら、新しいキャラが欲しいというくらい。
けれど、一億円でキャラを変えるにはどうすればいいんだろう。
友だち料とか払ったら、新しいキャラを受け入れてもらえるんだろうか。
その場合、三年間払い続けるんだろうか。
その前に、誰に払えばいいんだろう。
いや、待て待て。
金で買った高校生活に価値があるのだろうか。
でも、金で買わないと俺の高校生活失敗したままだ。
じゃ、金で高校生活買ってもいいよな。
「ことりんはぁ、一億円でモンブラン買い占めたいなぁ」
「一億円で専用のトレーニングルーム作るのもいいな」
「えへへへー。い・っ・ち・お・く・え・ん♪ い・っ・ち・お・く・え・ん♪」
俺が真剣に悩んでいるのに、こいつらときたら。
コンコン。
ノックの音がして、ドアが開く。
みんなの期待に満ちた視線を一身に浴びながら、シフォンさんが部屋に入ってきた。
「お待たせしました。皆様、ゲームはいかがでしたか?」
「最高だったよぉ」
間髪を容れずにことりんが答える。
「では、皆様には次のゲームへと進んでいただきます」
「「「「「!?」」」」」
その言葉に、俺たちは目が点になる。
俺はシフォンさんに質問した。
「次があるんですか?」
「いくつかのゲームをしていただくと初めに申し上げましたが」
言ってた……気がするような、しないような。
「ゲームクリアしたら一億円じゃないのか?」
麦穂の問いかけにシフォンさんは、
「ゲームをすべてクリアしたらと申し上げましたが」
と事務的に返す。
言ってた……気がするような、しないような。
「おい、響平。話が違うぞ」
「俺のせいじゃないだろ」
「響平、ことりんのこと騙したのぉ?」
「いや、俺のせいじゃないだろ」
「お兄ちゃん、ひどいですー」
「だから、俺のせいじゃないだろ」
「響平君、わたしたち基本的に人の話あんまりちゃんと聞いてないから、響平君がしっかりしてくれないと、ね?」
「小町さんまでっ!?」
一番の年長者がその発言はどうなんですか。
というか、自覚があるんならちゃんと話聞いてください。
「皆様、どうされますか? 次のゲームへ進まれますか? ここで棄権されますか?」
次のゲーム。
一体何だ。
今度はちゃんと聞いておかないと、さっきの悲劇が繰り返されてしまう。
俺は手を挙げてシフォンさんに質問した。
「シフォンさん、次のゲームってどんなのですか?」
「それは、ゲーム会場に着いてからご説明いたします」
そういえば、さっきもそんな感じで説明されなかった気もする。
「ゲーム、やりますっ!」
元気よく結渚ちゃんが返事をする。
この子の場合、どんなゲームでもやるんだろうな。
「お姉さま方、やりましょうよ! ここまで来たんですよっ! お兄ちゃんもやるって言ってますしっ!」
おい。
言ってないぞ。
ここまでって言っても一個クリアしただけで、どちらかと言うと始まったばかりだぞ。
「響平、責任とれるんだろうな」
「何のだよ?」
「ことりんはぁ、またさっきみたいな思いしたらぁ響平ぶん殴ってストレス発散するからぁ」
「ことりん、凶暴化してない?」
「響平君、社会的に消すことになったらごめんね」
「俺に何する気ですかっ!?」
こうして、俺たちの次のゲームへの挑戦が決まった。




